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自分の言った言葉がなんだか気障ったらしくて

 ビーコンマンはどうやら寄生虫みたいな生物らしい。頭の中に住み込んでいて、その大きさは実体が認められないくらい小さいらしい。彼は寄生先にはいつでもコミュニケーションを取ることが出来る。

 

 だから、私が家に帰ってもお風呂に入ってもご飯を食べていても「これはマチャンコ星人にとってどんな意味があるのか」と何度も私に話しかけてきた。私は彼らの目的なんて検討もつかなかったし、なによりここ最近色々なことがあったせいで、心底疲れていたので、必要最低限の言葉だけを返した。例えば……


【状況】

お母さんが、小学生の弟が大事にしていた宝物のプラモを

悪意なく捨てた。弟はそれに気がつくと激怒して、

お母さんに『デベソ』とか『クソババア』とか酷いことをたくさん

言ったもんだから、結果、大喧嘩になってしまったのだった。


 その状況を見たビーコンマンは私に質問責めをしてくるのだ。


『どうして、あのマチャンコ星人同士で争いごとが起きてしまったのか? なぜ、同じ星人同士で物の価値が違うのか?』


「当たり前じゃない……人には価値観っていうのがあって、弟にとっては大切なものでも、私とかお母さんにとってはガラクタに見えないものがあるんですよ……」


『人によって価値が違う? なんて非生産的な! そもそも、その後の問答だって、ちゃんと相手に抗議内容を伝達さえできていれば、事態は収束に向かったのではないのか?』


「うーん、でも言葉とかって、自分の意図と違うものが出てしまったり……」


『人間の伝達手段というのはなんて不完全なんだ! もう少し聞いていいか?』


「もう深夜二時だし、寝かせてください……」


『ちょっと待て! まだ聞きたいことが!』


「もう、店じまいです!」


 少し話をして思ったけど、彼らは私達人間の行動が、不思議で不思議でたまらなく、特に人間の心境とやらは全くといっていいほど理解できないし、そのうえ、解析不能な出来事が多すぎると、身体がオーバーヒートしてしまうらしかった。そんなことも分からないなんて、本当に頭が良いのだろうか?





 次の日学校に行っても、ビーコンマンは喋り続けた。教室の授業を聞いては、何やら楽しんでいるようだった。数学の答えとかは、彼にとって非常に簡単なものらしく、すぐに教えてくれるから、役に立ったっていえば役にたった。

 でも、国語の問題の方はからっきしダメみたいで、まるで『どうして坊や』のように。「このマチャンコは、なんで檸檬を置いて上機嫌になったんだ?」とか「このマチャンコは何で、自殺なんてわけのわからないことをするのだ?」と質問してくるのだった。その会話は楽しくなかなか気が紛れた。そのおかげで、昨日おかした失態によって、クラスメイトが話しかけづらそうにしてても、私はあまり気にならなかった。さすがに、ずっと話しかけてくるのは疲れてしまうけれども。


 やがてお昼休みになった。お昼ご飯はいつも、みらと一緒に中庭で食べるようにしている。彼女は毎日、私にお弁当を作って手渡してくれて、なんでそんなことをしてくれるかというと、パラレルワールドで私は不幸にも毒物を食べて死んでしまったことがあるらしく、出来る限り私の食を管理したいのだそうだ。みらは私の顔色を伺っているのか、心配そうな顔を浮かべている。


「あれから、変わったことありました?」


「うーん、そうだね……」


 私が昨日起きた、ビーコンマンとの出来事を報告すべきか悩んでいたところ、私の脳内で『おい! 貴様、くれぐれも余計なことを言うんじゃないぞ!』という声が大きく響いた。


「ちょっと、うるさいわよ……」


 私が思わず口を出して、彼に抗議をすると、みらは涙目になって、


「りく先輩に……怒られたぁ!」


 と騒ぎだすもんだかららちがあかない。やっぱり彼女には黙っておくことにしよう。事態がとても大きくなってしまう未来が見える。


「さて、あれから、あのサイトについてしばらく考えてみたんですが……ちょっと気になる点があるんですよぉ」


 そういうと、みらは自分のノートパソコンを開き私の方に差し出してきた。


「どういう意味?」


「昨日の『佐藤ガンバ』がりく先輩を攻略する方法を見てみてください。


『手順1

思い切って、デートに誘う! 誘い文句は直球に! 彼女は大阪のツタンカーメン

展にずっと行きたいと思っていたから、まず断られないぞ!』ってありますけど、

肝心の誘い文句が書いてないんですよ。普通攻略サイトって書くくらいだったら、

そこまで書くと思いませんか?」


「そう言われればそうねぇ……」


「つまり、この誘い文句がりく先輩が気に入るものでなかったら、そもそも成功し

ないんじゃないですか?」


「……そうだね、私にも心に響く言葉と響かない言葉があると思うし」


「そこを書くことができないなんて、攻略サイトとしてはちょっと不親切だとは思

いませんか?」


「多分……そこまでは計算できないんじゃないかな? ……このサイトなんとな

ーく分かってきたけれど、私の趣味とか好きな食べ物とか、行動から導けるような

ものはやたら詳しいけれど、気持ちとかをあらわす攻略手段は具体性に乏しいじゃ

ない? つまり、まだまだ不完全なのよ」


 私がふと感じたことをいうと、

 頭の中で『ワレワレ、ビーコンマンニフカノウハナイ!』


 と機械音声のような声が聞こえてきた。ネイティブジャパニーズに変換できていないところをみるに、恐らく動揺しているのだろう。私はもう気づいている。彼らは私達の心までは予想できない。だって、その計算をする知識が彼らにはないのだから。


「け、計算……ですか?」


みらは訝しげな顔をして首を捻る。


「そう、計算。私の心は計算で導くことが出来るほど簡単ではないってことね」


 自分の言った言葉がなんだか気障ったらしくて思わず笑みがこぼれる。みらは呆れたような顔をしていた。


「りく先輩の心って、結構チョロいもんだと思いますけどねぇ……」


「みらちゃん、あなたって子は……」


「とにかく! なにかあったらすぐに報告してくださいね!」


「みらちゃん、ありがとう」


 私が彼女に微笑むと、みらは顔を真っ赤にして


「……まぁ私はりく先輩のお役に立てればそれでいいですけどぉ!」


 と伏し目がちに答えた。

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