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『告白! 成功! 十七手詰め!』

 高校を出て通学路を少し逸れたところに人通りの少ない住宅街がある。そこをうねうねと進むと、木造家屋を改造して作られた喫茶店がある。この店は私達の行きつけの店だった。ここは、駅前のファストフード店などよりも人が少ない。その店にいるのは、家に居づらいからか、いつも暇つぶしにコーヒーを啜っている老人や、自分でも理解しているのか怪しい小難しい本を、難しい顔をして読んでいる大学生らしき若者がいるだけだ。

 私達は可愛く、男子生徒に注目される人間なので、じっとりとした目線を避ける為に、なるべく人のいない場所に寄るようになっていた。


「なんでわざわざ、こんなところまで来たの?」


 みらにアイスティーを飲ませて、一息をつかせたあと、私は早速彼女が騒ぎ立てる『本題』を聞くことにした。みらは私の顔を見てから軽く喉を鳴らす。そして、氷を一つ口に含んで強くかみ砕いてからこう言った。


「……すごいもの、発見しちゃったんですよ」


「すごいもの? また異世界人の本でも見つけたの?」


「今日は違いますって……これを見てください! 大変なことになってますよ!」


 みらは鞄から薄いノートパソコンを取り出して、なにやらホームページのようなものを見せてきた。


「なあにこれ?」


 そのホームページは、パッと見るとグー○ルのようなページであり、変なロゴマークの下に、検索バーがあるシンプルなページだった。


「家でネットサーフィンをしていたら、本当に偶然見つけたんです。多分どこかのURLを入力してたときだったと思うんですけど。そのアドレスを間違ったらこんなページが急に表示されて……。でも、見てくださいこのページURLがないんですよ!」


 確かに本来URLが表示されているスペースに、それを見つけることが出来なかった。


「あ、それよりここを! よーく見てください」


 みらが指を指したところをよく見てみると、そのロゴマークに小さく、


   『田中りく攻略サイト』という文字が刻まれていた。


 私の名前? 攻略? サイト? 一瞬なんのことか分からなかった。


『攻略サイト』はテレビゲームが好きな人間なら、一度は目にしたことがある言葉だろう。私もRPGが好きでよくプレイしているけれど、下手くそだからすぐに行き詰ってしまう。そんなときに参考にしてしまうのが、有志のゲームファンが運営している攻略サイト。ゲームを進める為に必要な情報が載っているのでなにかと便利だ。でもその攻略する対象として、なぜか私の名前が刻まれている。もしかして、みらはこんなものを見せて私を驚かせたいのだろうか。


「もしかして……なにかのイタズラ? みらちゃんが作ったとしたらセンス悪いわね、あんま面白くないけど」


「私が作るはずないでしょう! なんで先輩みたいな色ボケ脳内電波ピンク女を喜ばせるために、わざわざこんな手間かけたサプライズをしなけゃならないんですか!」


「そこまで言わなくてもいいじゃない……。じゃあ、誰のイタズラなのかしら? それにどういう趣旨のサイトなのか、全然検討つかないんだけど」


 お手上げですね、とみらは首を横に振る。


「使い方はすごく簡単なんです。それに、これさえあれば誰でもりく先輩を『モノ』にすることが出来るらしいんですよ!」


「言っている意味がよく……」


「百聞は一見にしかず……ですね。今から実践してみせますよ」


 そう言うと、みらは検索バーに『佐藤ガンバ』と入力した。


「ガンバくん? 私のクラスメイトでサッカー部の……その人がどうかしたの?」


 彼は私のクラスメイトの一人で、部活がない日はいつもパソコン室に入り浸り、じっとりとした目で私を見る一人だ。女の子達からは顔がカッコいいと噂されているけれど、少し人につられて調子に乗ると事があるから、そういうところは私の好みではない。


「まぁ、見ててください!」


 エンターキーを強く『タァン!』と叩くと、数秒のブランクの後、何やらフローチャートのようなものがページ全体に表示された。そこには


『佐藤ガンバくんが、今日から最短スケジュールで田中りくと付き合える方法!』


 と確かに書かれてあった。なんだこれは。と首を捻りながらそのページに顔を近づけると……。


『手順1

×月×日。思い切って、デートに誘う! 誘い文句は直球に!

彼女は大阪のツタンカーメン展にずっと行きたいと

思っていたから、まず断られないぞ!』


  ワンポイント:制服は着崩したりせず、キチンと着ていくこと。

         あまりはしゃいだりせず、落ち着いた雰囲気を出していこう。


補足:彼女の行動パターンを頭に入れ、放課後パソコンルーム直行を防ごう。

パソコンルームに入ったら最後、話しかけづらくなってしまう!

行動はなるべく早く移すようにしよう!


『手順2……』

『手順3……』


 とあるのだった。他にもそのフローチャートには、事細かに手順が紹介されているようで、ページをスクロールしていくと、最後に赤い大きな文字で、


『ここで告白! 成功! 十七手詰め!』と書かれてあった。


「な、なにこれ……?」


「誰が作ったかは知りませんが、この方法を使えば、ガンバさんはりく先輩を『オトす』ことが出来るみたいです」


「オトす……って?」


「好きにさせちゃうことが出来るみたいです」


 そんな馬鹿な。そんなもの簡単に鵜呑みにするはずがない。みらからノートパソコンを奪い取り、そのページを眺める。他にも様々なコンテンツがあるようだった。私の好きな食べ物ランキングや、今後の機嫌の良い日悪い日チェッカーなど。

 それだけではない、私が誰にも言ったことがないような恥ずかしい情報まで……しかも、このサイトの煽り文句に『これらの知識を活用すれば、田中りくを落とすことなんて簡単に出来るぞ!』と書いてあり、やけに自信満々にアピールしていることが、また癪にさわる。


「……りく先輩って、好きな一番、好きな食べ物焼き芋だったんですねぇ」


「ちょっと! そんなに見ないで、恥ずかしいから……」


「実際当たってるんですか?」


「……当たってる、恥ずかしいから誰にも言ったことがないのに」


 私は焼き芋が好きだということを隠し続けている。どうしても食べたくて、我慢が出来なくなったときは、わざわざ隣町まで行ってマスクとサングラスをして、まるでアヤシイ薬の密売人のような気持ちで買っていたというのに……。一体誰にバレてしまったのだろう?

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