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一の剣


「——なにをごちゃごちゃ言っているんだ貴様ら!!」


 コーガの怒号が色街の一角に響いた。それを軽蔑の眼差しで見つめるティターニ。


「なにあいつ? ブットル知り合いなの? なら言葉遣いから教え込まなきゃダメよ。初対面でお前だなんて、品性の欠片も感じないわ。綾人だって最初は酷いものだったけれど、私の献身的指導の賜物によって——」


「ティターニ、少し黙っててくれ」


 ブットルのすげない口調にティターニは眉根を潜め、人の話を聞かないなんて正気かこいつ? と顔を顰めるが天然蛙はつっこまない。


「貴様らを拘束する! 言い訳は牢獄内で聞いてやる!」


 コーガは一歩前に出て刀を向ける。

 煩わしいといった表情でそれをみるティターニはブットルに向き直る。


「ブットル。あなた何をやったの? あの人凄い怒ってるけど、それに牢獄って、まさか、あなた! この爆発の原因は——」


「いい加減しろ! エルフ! さっきからペラペラと! 全部お前に言っているんだ! 爆発の犯人はお前だろうが、爆発の中心地から跳び立つ姿を見ている者が何人もいるんだぞ、オイ! なんだその顔は⁉︎ 何を言っているんだこいつみたいな顔をするな——」


「せぇっい!」

 

 ——それは落雷よりも早い一閃だった。音速を超える斬撃がコーガの言葉を遮る。

 

 ティターニは咄嗟に短剣を引き抜き、斬撃を受けるが勢いは止まらない。そのままエルフの首を跳ねる勢いであったが、氷の壁が地面から現れそれを防ぐ。

 氷の壁は見事に両断され地面に落ち、消えて行く。


 氷魔法はブットルの魔法である。ティターニ同様瞬時に反応し対処したが、いくら意表をついた攻撃とはいえ、この二人を手玉に取るなどそうそうに出来ない事である。


「コーガ君。何を遊んでいるのですか? 相手は犯罪者ですよ? 五剣帝の末端とはいえ犯罪者と仲良くする道理はありません」


「す、すみません。サマリさん。彼らを拘束します」


「へぇ。あれが噂に聞く五剣帝なのね。今のが刀を使った抜刀術かしら。実に興味があるわ」


 ブットルは答えず一瞥だけティターニに送る。

 エルフの目は爛々と輝き戦闘準備を始める。


 ティターニの値踏みし合格したらしいサマリは刀を鞘に納め抜刀ができる構えとなっている。

 先程までコーガに言い負かされ、情けない姿を晒していた少女は一剣士の眼で敵を見据える。か細い呼吸で肩を上下すると、この場全てを飲み込む威圧感を多方に広げる。


「コーガ君。私はエルフの人を拘束するから、君は亜人族の人を、二人とも相当な手練れだから、憲兵には下がるように指示をお願い」


「はい! 拘束が無理な場合はどうしますか?」


「その時は——」


 サマリが言い淀んでいる間に、コーガは憲兵に下がるよう指示を出す。

 雨を次第に止む兆しを見せている。丁度ティターニが起こした爆発で起きた火災や崩壊が止まるのと同時だった。


 ——マズイな。どうしてこうなった。とブットルは考える。

 

 チラと横を見ると戦闘狂よろしくの表情で二振りの短剣を構え、五剣帝に挑みかかろうとするティターニ。

 前方では憲兵を背に五剣帝も刀を構えている。

 一触即発であったが、それはある人物の一言で終わる。


「サマリ! コーガ! 何をしているのです! 戦闘よりも人民誘導、消化作業が先です。五剣帝の判断は国の判断という事を忘れないように」


「アクア様!」

「す、すみません! アクア様のいう通りです。今すぐに取り掛かります」


 一喝で、コーガとサマリは戦闘体制を解き、後方へ走っていく。


「すみません。客人方。何か用入りのようですが少々お待ち下さい」


 肌色に赤い瞳と橙色の髪。起伏にとんだ女性らしい体型。

 

 その者は——五剣帝、一の剣・アクア・スカイラと名乗った。

 赤い瞳の中心は水色である。どこか無機質な魚の目を彷彿とさせていた。


「チッ!」


 戦闘狂は舌打ちし、戦いの動作を取りやめ、消化活動を行う。

 ブットルは一息つき、同じく消化活動をしながら一の剣・アクア・スカイラと名乗った女性を観察する。


 彼女は明確な指示を出し。憲兵を統率している。

 黒い軍服を着用し、大きな羽織を肩に掛けている。羽織は白色だが、縁は紅蓮のように赤々としていた。


 迫力や凄みは感じられないが、何か不安を駆り立てる雰囲気を纏っている。

 もしも戦闘をしたら——そう考えただけでもブットルは身震いした。恐らく死ぬか生きるかになるだろう。と予想を立てる。


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