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剣とか魔法とかチートとか関係ねぇ男なら拳で語れ  作者: 木村テニス
一章~その男巻き込まれ体質につき~
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敵とかいて胸と読む

好みのなろう作品漁ってて投稿忘れるとかそんな事は絶対に無いのです。ハイ絶対に!

 たこ。


 タコ。


 蛸。


 凧。


 Tako。


 ………。



 ――タコってあのうねうねと動く生き物よね。全然私と似てないと思うのだけれど。そもそも二足歩行の私と何本もうねうねする足をもつタコだと形状からして違うわよね? じゃあ何故タコと言ったのかしら? 容姿が似ているとか? でもうねうねするタコと私では確実に違うわよね。そもそも高貴なるエルフと補食されるうねうねのタコとでは明らかにというか次元のレベルで違うと思うけれど……そもそも何故あの時タコと言ったのかしら? 実は今までタコに似てると思ってたとか…いけないわねこれじゃあ最初の思考に戻ってしまうわ。そもそも私とタコの共通点というのが見つからないのよね無理矢理探そうとすると生命がある位じゃないかしら、じゃあ生命があるからお前はタコと同じだって事? 自分で考えておいてこの答えは間抜けに過ぎるわね。というかそもそもタって本当にあのタコかしら。タコと私、私とタコ……。



「やはり何度考えても謎ね。本人に直接聞くのが一番だわ」



 ミストルティンの街を出たティターニは、真っ直ぐに東地区の山岳に向かう。始めてタコと呼ばれた事に動揺し、思考が停止した事を思いだす。


 それもその筈。今まで蝶よ花よと愛でられてきたティターニ。


 その美貌から彼女の外見を酷く言う人物は存在しなかった。内面は置いといてだが……ともかく今までの人生で綺麗、美しい、何よりも輝く宝石。と言われ男女関係無くその美を称賛され、本人も満更ではなかった。


 なのに異世界から来た男に、タコと言われた。


 始めて外見を悪く言われた事に理解が及ばない。というよりは真剣に考えてしまう。



 ――私って異世界人から見たらタコに似てるのかしら?


 ティターニは今の今までずっとそれを考えていた。怒りというより真実を知りたい知的欲求が高まる。



 ――真相を聞いたら。ついでに、本当についでに綾人を助けてあげてもいいわね。どうせ今頃魔物の大軍の前で泣いているでしょうし。



 そこでふと気付く。



 ――そういえば、なぜ私は綾人の前ではこんなにも舌が動くのかしら?



 ティターニはエルフである事に誇りを持っている。故にエルフ以外の種族は取るに足らない生き物。


 ましてや言い寄る他種族の男等は、ゴミ以下の認識なので話すのも煩わしいと思ってしまう。



 ――他種族の男は私を見ると必ず求婚を迫るか下衆の目線を向けてくるのに綾人はしないわね。私に魅力が無いのからかしら?でも今までは引く手あまただったからそんな事は……となるとやはり外見がタコに見え……いえ、今はその考えは横に置いて置くとして。



 頭に浮かぶんだのはヘラヘラと笑う間抜けた顔。



「ムカつくわね!」



 今まで感じたことの無い感情にじれながらティターニは加速する。小高い山を一つ越えると魔物の叫び声が聞こえる。


 魔物の声に混ざる聞き慣れた人間の叫び声。その声を聞いたティターニは薄く微笑み、さらに加速しようと地面を蹴ると




 ――ぱん!




 掌と掌を勢いよく合わせたクラップ音が、ティターニの耳に届く。



 その瞬間に山岳地帯の風景が変わる。緑や岩肌、多くの樹が消え、変わりとばかりに崩れた塀や、ひび割れた石畳みの地面が姿を現す。


 塀の近くに掲げられた旗には小さな炎が揺めき。潰れた防具や折れた武具。


 石畳みや塀には血がこびりつき昼近くだったはずの空が夜に変わりこの風景とよく酷似していた。


 ティターニの足は止まり、敗戦直後の城塞を思わせる風景を見渡したあと呟いた。



転移結界?(メタシスシアベアリア)



「ふふっ。流石暴欄の女王ね。一目で見破るなんて」



 コツコツとこの場にそぐわないピンヒールの音が響く。音の方向を確かめずにティターニは言葉を紡ぐ。



「私急いでいるの。今すぐにここから出してくれれば……貴女を殺さないでおいてあげるわ」



「あら? 初めましてなのに自己紹介位させて頂戴」



 ティターニの言葉を受け流す妖艶な魔人族の女。コツコツと響く歩みを止め優雅に一礼する。



「初めまして暴欄の女王ティターニ・L 。魔人族のオフィールと申します」



 ティターニは魔人族の女、オフィールを見る。浅黒い肌、腰元部分に蝙蝠のような羽、額には一角。


 目を細めさらに見る。正確にはオフィールの胸を見る。際どい黒の衣服は妖艶なオフィールをさらに美しく見せる。


 収まりきらずこぼれる二つの()を見た後にティターニは自分の胸をそっと見る。



「ごめんなさいね」



 と謝られたティターニのこめかみがぴくぴくと動く。



「な、何に謝ったのか理解に苦しむ所だわね。そんなことより自己紹介が終わったのだからここから出してもらえるかしら?」



「ふふっ。貴女をここ(転移結界)から出さないようにするのが私の仕事なの。事が終わったらちゃんと出して上げるからそれまでは私とお話でもしない?」



 ティターニは鋭い目付きでオフィールを睨む。対してオフィールはどこまでも妖艶に微笑む。



 ――この場所があっぱいお化けの心象風景なのか現実の風景なのか、私は何処に閉じ込められたのか。どういう原理で転移結界が稼働しているのか……何も分からないわね。こんな禁忌どうやって一人で発動させたのかしら? おっぱいお化けを殺してもここから抜け出せるのかも分からないし非常に困ったわね。早く綾人の所に。


 何かを思い出しぐるぐると回る思考を一度中断する。



「シンプルに考えると言ったばかりなのに私もまだまだね」



 ティターニは腰元から白と黒。二振りの短剣を引き抜き剣先をオフィールに向ける。



「なんだか色々考えるのが面倒になったわ。貴女を殺せば転移結界から出れると信じてとりあえず殺してみようかしら」



「暴欄の女王は慎重に慎重を重ねるタイプと聞いていたのに、ふふっ。やっぱり何でも直接目にするのが一番ね」



 オフィールの目の前の空間が螺旋を描きながら歪む。螺旋の中心から十字架を模した杖がゆっくりと這い出る。柄を掴むオフィールはまた妖艶に微笑んだ。



「荒事はあまり得意じゃないのよね」



 呟くと同時に七色の魔法陣がオフィールの周囲に表れる。初めて見る戦闘スタイルに眉根を寄せるティターニは再度()をみた後


「貴女、絶対友達いないタイプよね?」



 という皮肉が戦闘開始の合図となった。




 ーーー




「もうよい」



「はい?」



 人骨椅子から立ち上がるレットは、隣の蛙族(グルヌイユ)のブットルにそう告げた。



「もうよいとはどういっ――」



「私が直接相手をする。魔物共を引かせよ」



 それだけ言い。レットは魔物(ひし)めく台風の目に向かって歩き出す。


 ブットルは直ぐ様脳内操作(テレキス)魔法で、魔物達を後方へと下がらせる。


 魔物の花道を口角を上げながら悠然と歩くレット。彼は重度の少年愛好家だが、その前に闘争を好む一人の戦士。


 魔物の大軍を前に一歩も引かずに戦う綾人は、レットの中で性玩具から戦士へと昇格した。


 愛でる対象が戦士である。これはレットを酷く興奮させた。根底にある圧倒的なサディスティック性は、一つの想いを生み出す。



 圧倒的な力で戦士である綾人を征服したい。



 二度と拳が握れないように、二度と二本の足で立てないよう痛め付けた後は。ゆっくりゆっくりロマンスを囁いて愛でる。それを繰り返す何度も何度も。そして完膚なきまでにその心をへし折る。


 「あぁ」と感嘆の声を上げるレット。想像すればするほど彼の股間は硬く膨張する。



 今まで貧弱で儚げな性ばかりを貪っていたレットに訪れたのは、力と力の果てに辿り着く絶頂(エクスタシー)


 レットは高鳴る胸を抑えつつ綾人近付いていく。



 そんな熱視線に気付かずに「男は根性~!!」と叫びながら大振りの拳を自分よりも二回り大きい、


 岩男(ロックン)に当て腹部に穴を開ける。人型だが全身が岩の魔物である岩男(ロックン)は、腹部に手を当て(こんな死に方は嫌だ)というような目で砂塵に変わっていく。


 荒く呼吸を吐き出したあとに次の獲物を相手にする為に視線をさ迷わせた時にようやく。



「あら?」



 魔物共が距離を取っていることに気付く。綾人はラッキーとばかりに膝に手をつけ休憩をする。



 ――正直もうやべぇな。



 肩を上下に揺らしながら額の汗を拭う。もうどれくらい魔物と戦っているだろうか。


 握る拳は震え、うまく力が入らない。膝が笑い立っているのがやっと。倒しても倒しても減らない魔物に心が磨耗し始めていく。


 低位・中位の冒険者ならばとっくに魔物に殺されている。上位の冒険者ならば魔物を百匹倒せれば良い方だ。


 高位の冒険者となれば話は別だが、それでも綾人は奮闘している。


 スキルをフル活用し、強い意思を持ち、戦闘中に新たに習得したスキルで大軍に向かう。


 それでもここまで持ちこたえる事は有り得ない。ではなぜ綾人が生きているか? それは一人の亜人の好奇心が、綾人を助けていたに他ならない。



 ――ははっ。ついにレットが直接行ったか頑張れ人間族の兄ちゃん。どうなるか分からんけどレットに一泡吹かせてくれ。


 蛙族のブットルは、レットに気付かれないように何度目かの回復魔法:リザレクトヒールを綾人にかける。


 綾人の足元に白い魔方陣が現れる。体が白い光に包まれ、傷が癒され疲労が軽減していく。


 綾人の命を繋ぎ止めていたブットルは、コレが最後だぞ。と聞こえる筈もない小声で呟いた。



 ――あっ、まただ。


 傷が癒され疲労が回復していく、自身の体に疑問を持ちながら膝についていた手を離し、背筋を伸ばすと。正面から悠然と歩く敵が目に付く。



「貴様を戦士として認めてやる」



 その声は圧力の塊。本能が敵だと告げていた。



「あっ?」



「貴様を戦士として認めてやる誇りに思え」



 唇を歪めながらレットは綾人を見下ろす。


 綾人はレットを見上げる。魔人族特有の浅黒い肌、背中には蝙蝠のような羽、左右の頭部から真横に伸びる角。腹立つ程の色男、んでなんか目が怖い。


 綾人がレットに感じた第一印象はこんなものだ。二人は睨み合いながら言葉を交わす。



「お前がコイツ(魔物)らの頭」



「質問は私がする。貴様の名は綾人で間違いないか」



「あ? 俺の方が聞いてんだろカスが」



「……その口の悪さがどう変わるか楽しみだ」



「っつか。お前ささっきから何ニヤニヤして――」



 何だか下から圧力を感じるので何となく目線を下げる綾人。


 ………



「喜べ綾人貴様は――」



「……お前何で勃起してんの? ハイパーキモいんですけど」



「貴様のお陰で私は一つの境地に辿りついた」



「はっ?」



「我が寵愛を与えるに相応しいがその前に――」


 レットの言葉を遮ったのはフルスイングの拳。痛々しい打撃音。レットが肩に手をかえようとするのを察し、鼻っ面を全力で殴る。全力で


 殴られた衝撃を殺しきれずに、一メートル程後方に吹き飛ぶレット。しばらくは突っ伏していたが、笑いながら立ち上がり戦闘開始の咆哮を上げる。



「寵愛の前に血湧き肉踊る殺し合い(デート)と洒落込もうか!」



 殴られたせい所為か興奮の為か、彼の目は血走り鼻からは血が流れていた。


 この時綾人が思っていた事は唯一つ、



 ――何で俺に関わる異世界人って頭おかしい奴しかいないんだろ?


 という、的確かつ答えの出ない事だった。

稚拙な文章ですが最後までお読み頂きありがとうございます。

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