女騎士、屈辱の従者生活
「流石の騎士様もこれにはお手上げか」
何という卑劣漢だろう。目の前の汚物が酷く悪臭を放っている。
「貴様っ!私の顔にそんな醜悪なモノを近づけおって!……」
「ほら…早く綺麗にして貰おうか……、私のムスコを喜ばせてくれ……」
オークにいいように使われているという屈辱感もあるが、何よりも許せなかったのは、私の内に潜む「愛おしい」という感情が、よりによってこの場面で現れた事である。その気持ちを払拭するため、私はゆっくりと汚物へ手を伸ばす。生暖かいソレがニチニチと音を立て、私の手の動きに応じるかの様に臭気を強める。一瞬にして血の気が引くのを覚えた。
「もう少し、もう少しだ……」
嗚咽を堪えつつも私は処理を続ける。これが終わるのなら、私はどんな拷問ですら耐えられよう、そう思った矢先の事だった。びゅるりと飛んだそれは私の顔や胸、髪にまでかかった。
「ひぇっ!!」
突然の事に私は、声にならない声を出してしまったが、オークは冷静
にこういった。
「すまないねぇ、ムスコの機嫌が悪かったみたいだ」
そして、最後まで綺麗にするようにと、悪夢の再開を私に告げた。
こんな事になると知っていたなら……今更ながら、私の軽率な行動に後悔の念を感じた。オークのベビーシッターなど人間に出来る筈が無いのだ……
目の前のオークの赤ん坊は、おしめを替えてもらい上機嫌だ。父親は
「すまないねぇ、すぐ替えの服と風呂の用意しとくから」
と言いいそいそと動き始めた。父親であるというならおしめの替え方ぐらい覚えていただきたいものだ。
500年もの間続いた人間と魔族との戦争は、魔族側の降伏という形で幕を閉じた。共存をするにあたって、被害の大きかった魔族への支援活動が始まり、兵よりも働き手を求める世界では、勇猛な戦士たちも皆剣を置いた。由緒ある騎士の家計で、唯一女として生まれた私も、新たな仕事を見つけねばならなかった。そんな最中、偶然目に貼ったベビーシッターと言う言葉が、母上との暖かい思い出を蘇らせたのだ。
ようやくおしめを替え終わった私は、新しい母親が見つかるまでと言う曖昧な任期へ一抹の不安を感じながらも、初めての赤ん坊との生活にほんの少しだけ、期待をするのだった。
趣味です、もっとほのぼのふえろふえろ




