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新世紀の殉教者

愛の奴隷が石材を積み上げる

作者: keisei1

 唾を吐いた石材とコンクリートの破片が転がる汚れた街角

 

 吐き出した罵詈雑言の刃 美辞麗句の塗り薬は何の役にも立ちはしない


 黒猫は 鋭く淀んだ瞳で 僕を睨み付けて立ち去っていった


 百人 百通りの生き方に 皆が気づいた こんな時代の 


 滲んで朱色に空を塗りたくる夕暮れがやけに痛々しい こんな日に


 祈りの言葉をマネた愛の言葉なんて空回りするばかりだ

 

 愛の詩が彼女に そう あの街角で飴玉を舐めて

 

 濁った空を憎むように仰ぎ見る彼女に 届くなんて考えた奴は誰だ


 それは多分男のことも、女のこともろくに知りもしない浮浪者崩れの僕だ それはきっと 


 どうかこの自己嫌悪の雄叫びがうねるように天に届けと願うばかりだ


 そして叶うならば ヤハウェの首も アッラーの首も ヤマトタケルノミコトの首も根こそぎ斬り落として欲しいくらいだ 

 

 そう 今や世界で一番有名なイエス・キリストの首だって



 ナイフで切ったカーテンと絵画の残骸が散らばる汚れた僕の部屋


 吐き気を催す優しさの包帯も 自分を切り刻むだけの悪態のエッジも何の役にも立ちはしない  

 

 黒烏くろがらすは死肉を貪るそのくちばしを尖らせて飛び去っていった


 自由と放恣と怠惰がごちゃ混ぜに ミキサーにかけられたこんな時代の


 空を横切る 憂鬱な雨と陰鬱な雲が やけに体を突き刺すこんな日に


 名の知れた詩人の愛の言葉をマネた 告白紛いの詩なんて空転するばかりだ


 そんな愛の詩が あの二人きりで過ごした部屋へ 置き去りにした彼女に 届くかもしれないなんて

 

 甘い考えを持った大馬鹿野郎は誰だ 


 それは多分 女の体も 男の体もろくに知りはしない 世捨て人崩れの僕だ それはきっと


 彼女と僕の距離を隔てたものが 一体なんだったのか


 それは 老子や孔子 ショーペンハウエルの聖者共が揃って話し合ったって答えはでないはずだ


 どうかこの被害妄想 自己憎悪の叫喚きょうかんが唸るように天に届けと願うばかりだ


 そして叶うならば ジョン・レノンの首も ダリの首も レオナルドダヴィンチの首でさえも 根こそぎかき斬って欲しいくらいだ

 

 そう 今や世界で一番 悪名高き イエス・キリストの首だって


 僕はそう叫んで 愛の奴隷はそう叫んで 石材を積み上げていくだけだ

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