9.姫の悲しい過去語り2
「ママの欲しがってたダイヤの指輪あげる。これね、雪ちゃんからのプレゼントなの」
台所で鍋の様子を見ている母に後ろから抱きつくと、いつも笑顔で振り返ってくれた。
その日も母は、自分の好きなシチューを作ってくれていた。
温かい優しい匂いがこじんまりとした一軒家に充満する。
自分の周りはいつも暖かいもので満たされていた。
「あらあら雪ちゃん。綺麗なダイヤね。おこづかいを溜めて買ってくれたのね。ありがとう、ママ大事にするわ」
ママは、指輪を飾るダイヤのあまりの大きさに、ガラス玉と勘違いしたのだろう。笑顔ですんなりと受け取ってくれた。
ママの細い指に、大粒のダイヤがきらめく。
「違うよ。買ったんじゃないよ。雪ちゃん、出てきてっておねがいしたもん」
「そうなの。雪ちゃんはお店から買わなくても大丈夫なのね」
その時、雪は幼かったが、母が自分の言葉を本気にしていないことが解っていた。
ママは、ダイヤが、お金でしか手に入らないと思い込んでいる。おかしなママ……、そう思った。




