8.姫の悲しい過去語り1
「さっきの話だけど、中学2年生くらいまでは親は居たのよ。ある日、目の前で跡形もなく消えてしまったの。物心ついた時親は居たから、もっと昔に願ったのかもしれない。『ママとパパが欲しい』ってね。ふふっ、生まれたときはどうしたんだろう。まさか自分の親が自分の願い事の産物なんて思いもよらなかったけど。それに、私の願った事は大抵消えないのにどうして親だけ消えちゃったのか、分らない。……とにかく、朝からの出来事で分ったと思うけれど、私の願った事は全て本当になるの。願いが実現するのとは少し違って、無い物を作り出す事ができる。……信じられる?」
そこで、雪は話を切って司から目を逸らし、高い空に目を向けた。まるで、消えた両親が曇り空の雲の向こうにいるかのような悲しげな目だった。信じてくれなくても良い、と瞳が語っていた。
少女の悲しそうな澄んだ瞳に白い雲が映る。
冗談でこんな悲しそうな目ができるはずはない、司はそう思った。
それに今日の信じられない出来事の数々が既に、美しい少女の言葉が本物だという証拠になっている。これだけ色々なことがあったのに冗談でした、では済まされない。
「信じるよ。君の願った事は全て本当になる。朝から、信じられないことが色々起こったんだ。その事が、初対面2人の共有の妄想だっていうのもおかしい」
司はこれ以上ないくらい真剣な顔で頷いてみせた。
朝、少女の美貌に浮かされて「好きだ」と告げて、「助ける」と約束した時より目の前の人を守りたいと願った。
司の目の前の美少女の口が、小さく笑みを形作った。
雪は、司をまた綺麗な目でじっと見つめる。
「……どうして自分にそんな力があるって分ったの?」
なんとか自分が信じている事が伝われば良い、と司は質問を投げかけて話を続けた。
「食べたり眠ったりするのと同じで、最初から知っていた。もっと小さい頃は、皆黙ってるだけで自分と同じ力があるのだと思ってた。だって、皆、私が力を使ったのを覚えてないし。自分も覚えてないだけだって……そう思ってた」




