7.姫の能力
司が、多分事の張本人であるはずの雪に話を聞こうとして目を向けると、雪は大きく頷いた。
「そういえば、トモくん。ついさっき可愛い女の子に呼び出し受けてたよね。そろそろ行かなくて良いの? 告白とか真剣な話なんじゃない?」
雪の言葉に友宏は弾かれたように立ち上がった。
「そういえば、忘れてた。昼飯なんてのんきに食ってる場合じゃない。行ってくる。後は二人でごゆっくりー」
友宏は、まだ食べかけの弁当箱をしまうと、時計も回収して猛スピードで去っていった。
後には、呆然としている司と得意げに笑っている雪が残った。
友宏と司は今まで同じクラスでずっと一緒に居たの。
なのに、司は可愛い女の子に友宏が話しかけられている所など見かけなかった。
と、いう事は……、
「また、雪ちゃんがやったの?」
司は恐る恐る尋ねた。
何かまた自分の把握できない事が起こった、という恐怖に背筋が寒い。
「ええ、そうよ。あたしがやったの。だってトモくんが居たら話しづらいでしょ」
雪は笑みを濃くする。
司は雪の美しさゆえに人外のものに感じられて、少し後ずさりした。
雪は相手の腰の引けている様子に声を立てて笑った。
「離れないでよ、司。今からちゃんと説明するから」
美しい少女は、一転して少し泣き笑いのように目を悲しそうに細めて司を見つめる。
司が離れた分の距離をそっと近寄り、司の指先をちょっと握ってから放した。
「ごめん……」
自分が怯えた事が雪を傷つけてしまったと司は悟る。この静かな雰囲気を崩さないように静かに謝った。
指先に残る微かな少女の体温が、確かに彼女は人間だと告げた。
「いいのよ。私の力を知っている人は、大抵そんな目で私を見るから。でも、司は最初、私を好きだって目で見てくれたでしょ。よく男の子が可愛い女の子に向けるイヤラシイ目でもなくて。だから、嬉しかった。初めから変な事言う私を受け止めてくれたじゃない? 本当に嬉しかった。今も嬉しい。そんな司と一緒に居られて」
雪はまたちょっと微笑んだ。
司は、少女の艶やかで美しい微笑みに赤くなる。なんだか、目の前の同じ年の女の子に良いように操られていると感じてしまう。
でも、それでも自分は良いとさえ思いはじめている。




