64.終わり_幸せの形3「造られしもの」
二人が婚約者だという設定は、雪の作り出した事だと分かっているのに、同時に自分が勇気を出してプロポーズした時の記憶もあって、司は居た堪れなかった。
「結局、私の力って何だったのかしら。司の言ったように元からあったものを言い当てているにしてはおかしいし。かといって、私が作り出したものって言い切るのもイマイチなのよね」
「じゃ、どっちもとか」
「どっちもか……うーん。わかんない」
唸って桃色の唇を突き出して考え込む雪を、司は火照った顔のままで見守った。
どっちもと言ったものの、確かに、自分はこんなに可愛くて無邪気な美少女に、出会って恋におちたとしても告白さえできないだろう。仮に自分の家がお金持ちだとしても、一緒に住むなんて考えられない。
司の顔に陰りが差す。
「なーに考えてるの、司。また落ち込んでるんでしょ。私が司を好きなんだから、もっと胸張ってよ」
司の腕に雪が抱きついて、暖かさが伝わった。どちらだとしても、雪が今、自分の側にいてくれることには変わりない、と司は微笑んだ。
雪も笑って甘えるように、自分の婚約者に肩を寄せる。
司は雪を守るようにそっと肩に手を回した。間宮さんと友宏が戻ってくるまで、形のある幸せを抱いていようと思った。
――あの事件が終ってから、司と雪の周りにはもうスーツを着て冷たい目をした男達の気配は、もう感じられない。
司の胸から、自らの手で消してしまった者達の面影は消えなかったが、その罪を背負い償いながら雪と生きていこうと決めていた。
もう自分の大事な少女が、周りや自身を憎んで悲しい人たちや物を作り出さないように、隣で全てのものから守っていこうと誓っていた。
終わり
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