63.終わり_幸せの形2
――あの不思議な力に彩られた事件が終ってから一ヶ月が経って、雪と司は約束どおり遊園地に来ていた。雪が、まず手始めにと言って、司と雪と友宏と間宮の四人でゆくことに決めたのである。
「もう、司ってば。しょうがないな。次はジェットコースターに乗るから、ベンチで少し休もうか」
「……ジェットコースターに乗るのは決定なんだね」
木陰にあるベンチに四人仲良く並んで座って、休憩タイムになる。
不満げな雪におでこをつんつん突かれて、司は軽くのけぞる。
どうしたら目の前の少女が自分を絶叫マシンに連れて行くのをやめてくれるだろうか、と考えたが一向に良い案は思い浮かばなかった。
「皆さんの飲み物を買ってきます。お二人はいつもので。橋本様は?」
「あ、待って。オレも一緒に買いに行きます。あー、キャラメルポップコーン食いたい。皆食うだろ」
平衡感覚がまだ戻ってないのか間宮が、若干ふらふらしながら立ち上がった。
友宏が後をくっついて立ち上がる。
「うん、ありがとう」
雪を一人にするわけにもいかなくて、司は上げかけた腰をベンチに戻す。
その何気ないやりとりに間宮は口の端を少し上げて笑うと、友宏と連れ立って飲み物を販売するカボチャの馬車を模した大型ワゴンに向かっていった。ワゴンの前にはちょっとした行列ができていて、買うのには時間がかかるだろう。
「私、間宮さんが買ってくるのが何だか分かる。私にはソーダで、おこちゃまな司にはオレンジジュース」
友宏と間宮を笑顔で見送った雪は、ぽつりと呟く。
二人の前を様々な人たちが明るい顔をして行き交っている。
「うん、……そうだね。どうしてだろう。間宮さんは雪ちゃんが作り出したはずなのに、いつの間にか記憶がある。忘れていたものを思い出したのかな」
司は傍らに座る雪を振り返った。
二人の共通の記憶として、間宮が昔から遊園地に来ると買ってくれるものが分かっていた。
間宮が昔から司の護衛として活躍していたという記憶があるからだ。
それと同時に、やはり間宮は、雪と司が出会ったときに作られたものだという記憶もある。
「どっちの記憶もあるから混乱しちゃうわね。それに、司と普通に出会って婚約パーティーをあげた記憶もあるわ。司もそう?」
「えっ、……う、うん。あるよ」
「司が婚約したい、って言ったのよね。私が、その言葉に『はい』って涙を流して頷いて……って、もう私、司を守る事以外には力使わないわ」
「あ、うん、そ、そうしてくれると助かるよ。できれば、力は使わない方向で……」
雪の答え合わせのような確認に、司は赤くなって口ごもる。




