62.終わり_幸せの形1
空高くどこまでも続くような青空が広がっている。
太陽は力強く照りつけ、地上のものの輪郭を濃く露わに地へ刻み付けていた。
幸せそうな歓声がそこら中から聞こえ、暑さを撥ね返していた。
「ちょっと、回してってば、司も間宮さんも!」
「回せ回せー。おい、イチジョー!」
「司! トモくんを見習ってよ」
中には夏の暑さを撥ね返しすぎである位、大はしゃぎな者達も居る。
晴天の空の下、色鮮やかなコーヒーカップがオレンジやピンクや赤に光を弾いてぐるぐると回っている。
司と雪と友宏と間宮の乗ったコーヒーカップは例によって、目にも留まらないのではというスピードで回っていた。順番待ちの人達やゆったりとコーヒーカップを楽しんでいる人達は、唖然としたように四人の乗ったカップを眺めている。
思いっきりカップのテーブルを回す派の雪に加えて、何にでも悪乗りする友宏が参戦し、コーヒーカップは通常ではあり得ない位の速度を出していた。
「う、うん。ごめん、ちょっと待って」
司は元気な雪を見られて嬉しいのだが、体に加わる横向きの多大な重力に負けて、曖昧な笑みを浮かべたまま、前回と同じくぐったりとしている。
護衛長でしっかりしていなくてはならないはずの間宮も目が回ったのか、スーツの襟元を緩め眉間を押さえて力なく俯いていた。
雪と友宏は、そんな二人を困らせるのが面白くてならないというように笑みを弾けさせる。
「待てないって」
白いワンピースをカップの回る風にはためかせながら、雪が口を開けて笑い転げた。
もうテーブルを回す白い腕は、釘で打たれた跡が薄く残っているものの、力でみなぎっているようだった。
強い日の光に照らされて、天下無敵の美少女は今日も強烈に美しい魅力を放っている。
「しっかりしろよ、イチジョー」
婚約者についていけていない司の背中を、元気付けるように友宏が少々強すぎる勢いで平手打ちする。片手では、テーブルを回すのをやめていないのが、凄い所である。




