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お姫様が創造  作者: ひとみんみん


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6.司のお家はお金持ち

 所変わって、あいにくの曇り空で誰も居ない屋上に、司と友宏、それに雪はお昼を食べに移動していた。

 クラスで食べると皆の視線が痛いからである。

 天下の一条院財閥(と皆は言うが、実際にどのくらいの財閥なのか、まだ司と雪には分っていなかった)の御子息であり次期総帥の一条院司と、今をときめく美少女転入生津川雪とが、何故か仲良くしているのである。皆、気になって仕方ないのだろう。

「相変わらず、イチジョーって金持ちなのに弁当は普通なのなー」

 友宏が、場を取り持とうとして軽薄にヘラヘラ笑いながら司の平凡な弁当を覗き込む。

 手が込んではいるけれども、玉子焼きやらミートボールやらが詰まった普通の弁当だった。

「僕は金持ちなんかじゃないよ」

「はいはい、普通の男子高校生で居たいわけね。なぁ、オレンジ一切れあげるからさ、その玉子焼き二切れちょうだい」

 友宏が、弁当に入っているあまり瑞々しくないオレンジを、行儀悪く箸で指す。

「何言ってるんだ。一切れに決まってるだろ」

「金持ちのくせにケチー」

 そう言いながらも友宏は司と物々交換をして、すぐさま口に放り込んでおいしそうに玉子焼きを噛み締めている。

「あら、二人とも良いのね。私なんてコンビニで買ったパンよ。パン」

 うんざりしたように雪が持っていたメロンパンを振る。

「お母さんが作ってくれないの?」

 司が何気なく聞くと、雪は目を細めて複雑な笑いを浮かべた。

「ウチ、お母さんなんて居ないわ。お父さんもね」

「ご、ごめん。あ、僕の弁当少し食べる?」

 司は慌てて、さっきはケチっていた玉子焼きやらウインナーやミートボールを弁当の蓋に載せて、雪の前へ押しやった。

 雪はさっそく、添えられていた爪楊枝で器用に玉子焼きを口に入れた。

「……別に良いの。ちょっとした事情があってね。でも、ありがとう。あ、この玉子焼き、だしが効いてておいしい」

 ふんわり、と雪が嬉しそうに笑った。

 その笑顔をまともに正面からみた司は、また朝の時のように真っ赤になった。

「だろ、イチジョーの母さんは料理上手いからなー。料理は出来る限りコック使わないで頑張ってる良い母さんだ」

 友宏がのんびりと会話に参加する。

「ウチ、そんなに金持ちじゃないよ。だから母さんだって自分で料理しないと、財閥って言っても、とてもやっていけないしね」

 司よりも司のウチの事情を知っていそうな友宏に、司がカマをかける。

 友宏は、司の言葉がギャグだと思ったのか大口を開けて笑った。

「またまた、イチジョーが『普通』に憧れてるのは知ってるけどな。一条院財閥って言ったら誰でも知ってる一種のブランドじゃないか。経済、政治、どっちの分野でも一条院が関わっていない事があるか? 俺、今だって一条院製の時計してるぜ。それだけ、生活に食い込んでるだろ。それに日本の次期首相が一条院一族の人が有力だってのは有名な話じゃないか。俺、テレビちゃんと見たんだぞ」

「ええっ、そこまでっ?!」

 友宏の長いお喋りに、司と雪が同時に声を上げる。

 友宏は、そんな二人へ自慢げに一条院製と裏側に漢字で彫られた時計を見せる。

 司と雪が、友宏から時計をひったくって見ると、確かにそこには「一条院製」と彫られていた。

「それ、日本だけの限定発売で、本来なら俺に手の届くようなもんじゃないのに、イチジョーが去年の俺の誕生日にくれたんだろ。何、今更イチジョーまで真剣に眺めてんだよ?」

「い、いや。そうだったよな」

 司は曖昧に笑って相槌を打つ。

 確かに司は去年、友宏に時計をプレゼントした。

 しかし、それは高校生でも買えるような、ほんの2、3千円くらいの安物の時計だったはずだ。

 これはどういう事なのか。

 そんな司の疑問などおかまいなしに、トモの時計は豪奢に金色に光を放っている。

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