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お姫様が創造  作者: ひとみんみん


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59.男と間宮

 間宮が、槍を持った処刑者の撃つ弾を視認出来ているのか、すんでの所でかわしながら、どこに持っていたのか刃渡りが司の片腕程もあるナイフを抜いて飛び掛っていく。グレネードランチャーは燃え上がると、側に居る雪が危ないからか抜かなかった。

「このっ、ちょろちょろと……」

 苛立ちに顔を歪めた処刑者のリーダーは、至近距離から間宮に銃弾を浴びせる。

 だが、撃たれた衝撃に間宮は倒れてスーツに穴が空き血を滲ませても飛び起き、何度も処刑者に切りつける。その動作はとても撃たれたものとは思えず、しっかりしていた。

「今まで、まともに弾に当たったことがないから気付かなかったが、私もお前と同じ化け物らしいな」

「私は化け物ではない。処刑者だ。『生贄』を神に捧げる使命を持った処刑者だ!」

 間宮ともみ合う処刑者が焦りを滲ませる。

 処刑者のリーダーと間宮が、至近距離で争っていると、二人の顔が不思議なほど似通っているのが浮き彫りになった。処刑者はどこまでも負を集めたような印象を受けるのに対し、間宮はその反対に雪に似た美しい顔立ちであるのに、どこか似ているのだった。

「いいや、化け物だよ。それでいいじゃないか。私は、むしろ司様を守るのに好都合で良い」

「違う!」

 間宮の慰めるような言葉に、手を止めて処刑者が叫んだ。

 そこに隙が生まれる。

 処刑者の銃を持った指が、間宮の白刃に切り離された。血飛沫を上げて銃もろとも灰色のコンクリートの床に転がる。

 バラバラになった指と銃は、数瞬床に転がっていたが、その後跡形もなく消えた。

 消えた指と銃を見て、処刑者が追い詰められたように片腕でさびた槍を構える。

「違う。違う。私は代々続いてきた処刑者だ。生贄の書もそう言って……」

「あの、古い本なら司様のお力で消えたが?」

「なっ……」

 真顔でさらりと告げる間宮に、男は冗談ではないと悟ったのか絶句した。

「雪様のお力で生まれたものは、司様のお力で消えるそうだな。お前も消えてみてはどうだ」

 事も無げに挑発する間宮は、雪を長い間、木の十字にかかったままにしておけないと考えたのだろう。

 処刑者の顔が色を失う。

 狂ったような目で、錆が浮いた槍を構え、なんの捻りもなく直線的に間宮の胸を狙った。

「間宮さん!」

 腕や肩などに弾が掠り傷ついた司が、間宮と処刑者の所に辿り着き悲鳴を上げた。

 司が短いナイフで後ろから切りつけ、処刑者の手元が逸れる。

 司は、肉を切り裂いた嫌な感触の後、返り血をまともに浴びた。人を傷つけるというのは、こういう事なのだと思うのだった。

 間宮は、逸れた槍を避けもせず、右肩を刺し貫かれた。耐えるような顔で、左腕で素早く槍の柄を掴むと、そのまま間近に迫った処刑者の腹を強く蹴りつける。

 間近から蹴られた衝撃で、処刑者がコンクリートの床に鈍い音を立てて転がる。

「うぅ……生贄を殺さなくては……」

 間宮から幾度も切られて、処刑者は体からおびただしい血を流しながらも床を這いずり、指のなくなった手を十字に張り付けられた雪に伸ばす。

 意識のない雪に、処刑者が必死に近づく構図は、無関心な神とただの哀れな神に選ばれない一般人に思えるのだった。

 間宮はいつも通りの冷静な表情に戻って、司を振り返る。

「こいつは私が殺しても宜しいでしょうか?」

 今更だったが、主の許可を求める言葉に、司は緩く首を振った。

血を流し傷ついた腕で短いナイフを静かに構える。

 その静かな気配に、この世の負を全て集めて作られたような禍々しい美貌を持つ男が、血と埃に塗れながら、ゆっくりと顔を上げる。

 その顔には、殺意も憎しみも浮かんではないなかった。ただ、無垢な子供のような表情で、司をじっと眺めている。

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