55.本当に大事な人って?
二人で他の護衛の者達と一緒に、一条院家の門まで走った。
――人々のあらゆる罪を自分一人で、少しでも洗い流す事ができるなら、喜んで……、私は人々を愛しているのです。私がその為に生まれてきた事を感謝します。
走る司の頭には自分の内なる声が響いていた。
初めて『処刑者』と会ったとき以来聞かなかったのに……。
自分が本当に『元生贄』だったとして、この言葉通り自己犠牲で死んでしまったんだろうかと、長い一条院家の門までの道を走りながら思った。
――何故なら、自分には自分の死によって、罪が許され、祈り、高みへと登る大勢の人々が見えるから。
雪ちゃんと出会う前までの自分なら、この自分であり自分ではない声に賛成したかもしれない。
だけど、現『生贄』の雪ちゃんと会って、それが間違っている事が分かった。そんな独りよがりの自己犠牲なんて間違っている。誰かに押し付けて、浄化される罪なんてないはずだ。誰もが、一人一人自分の罪を背負って生きていく。背負いきれないなら助けあって、生きていかなくてはならないはずだ。
それに何よりも、『人々を愛している』だなんて、誰も好きじゃないって事だったんじゃないだろうか。愛していたはずの人たちの顔は誰一人として思い出せない。
今、強烈に思い浮かぶのは、無邪気な顔で笑う雪ちゃんだ。
もしかすると、僕はこういう気持ちを知る為に、『生贄』の力を打ち消す力を持って、雪ちゃんと出会ったのかもしれない。
司は、そんな事を考えながら、門まで辿り着く。
門前に護衛の者達がまわした車に乗り込んで、友宏の案内に従い雪の行方を追った。




