表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お姫様が創造  作者: ひとみんみん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/64

48.雪のお菓子「素敵なものいっぱい」

 司が、銃をしまうと、タイミング良く射撃場の重々しい防弾の扉が開いた。

ひょっこりと雪が顔を覗かせる。司の顔を見ると、花が咲いたような笑顔で手を振った。

「司ー! お茶しようよ。私、この前調理部で習ったケーキ作ったの」

 見ると、雪はワゴンを押したメイドを二人と犬達を引き連れていた。

 大きいワゴンの上には特大のデコレーションケーキが乗っている。山ほどの赤い熟れた苺と真っ白な生クリームがどっさりかかったケーキは、司の両腕でようやくギリギリ抱え込めるくらいの大きさだった。他にもクッキーやマドレーヌ等の焼き菓子がワゴンに所狭しと乗っている。

「すごいね、雪ちゃん。これ、全部雪ちゃんが作ったんだよね? 大変だったでしょ」

 司がそのお菓子の量に圧倒されて目を見張りながら、雪の方へ近づくと、雪は照れたように笑って司の腕に抱きついてきた。犬達も司の足にじゃれ付いてくる。

「頑張ってる司に食べてもらおうと思って作っちゃった」

 雪の着ている白いキャミソールのレースと肩まで伸びた絹糸のような黒髪が、ふわりと司の腕をくすぐった。

 薄い水色のデニムのズボンに白いレースが一杯ついたキャミソール、クリーム色のカーディガンでラフに装っていても、雪は無邪気で可愛い。

 司は、間近に迫る美少女に即座に真っ赤になってうろたえる。

 何よりも嬉しいのは雪が自分の為に、こんなに一杯お菓子を作ってくれたという事だった。

 男が捕まって、力を使う必要もなく、お菓子を作る余裕もでてきたのだろう。

「ありがとう。泣きたいくらい嬉しい」

 そう言って、既に目が潤んでいる司に、雪が更にきつく抱きつく。

 じゃれあっている二人の後ろで、射撃場の大きな木製のテーブルにメイド達がてきぱきとお菓子をテーブルにセットしていく。

「まるで、マザーグースの歌のようですね」

 と間宮が何か眩しいものでも見るように目を細める。

「えっ、何々? 間宮さん」

 雪が、自分の婚約者の腕を離さないまま、間宮の腕も掴む。

 司も興味津々で間宮の言葉を待つ。

 間宮は黒いスーツの腕を掴まれたまま、微かに笑った。

「女の子は何でできている。お砂糖にスパイス。素敵なものが一杯。そういうもので、できている。確かに雪様を拝見しておりますと、頷けます」

 大人故だからかストレートに褒め言葉を口にする間宮に、雪は頬を上気させる。

そして、チラッと窺うように脇の婚約者の方を見るので、司とばっちり目が合った。

 強い奇跡の力なんて抜きにしても、こんなに無邪気で可愛いから、どこかに居る誰か遠い存在から『生贄』に選ばれてしまったのかもしれない、とふと司は考える。

 だけど、そんな内心は押し隠してにっこりと笑った。

「僕もそう思うよ」

 司が間宮に同調すると、雪はパッと顔を輝かせる。

 瞳が生き生きと煌いて、薄桃色のふっくらとした唇が、司の頬に当たって離れる。

 司が身構える暇もなかった。不意を突かれた司は、ケーキの上の苺みたいに赤くなって雪と見詰めあう。

 二人を足元で犬達が行儀よく座って眺めている。

 その二人の様子は実に微笑ましく、間宮もメイド達も穏かに笑いながら見守っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ