35.友宏の友情
「あの時のイチジョーの捨て身さ加減と何でも受け入れてくれそうな笑顔と雰囲気には感動したな。一瞬、『うるせぇ』って言って、机蹴って終わりにしようかと思ったけど、イチジョーの平和そうな笑顔見たら、質問に答えて、和やかに会話するのも良いかもなって思ったし」
長い昔話が終わり、友宏がいつもと同じ感想を述べる。
そしていつも通り、司はその感想を聞いて、自分が蹴られなくて良かったと安心する反面、トモならそんなことはしないと思うのだった。
「トモはかっこいいから、そういう事するはずなかったよ。そんなかっこ悪い事しなかったはずだと思うな。そういえば、あの後、トモにクロスリング見立ててもらって買ったけど、やっぱりシルバーってトモみたいに全体でコーディネートしないと似合わなかったな」
無邪気に友宏のシルバーを指して笑う司に、友宏が機嫌よく笑い返す。
「いや、かっこいいって言うならイチジョーだろ。未だにその包容力のある雰囲気と笑顔は真似できない神の領域だしな。別にクロスリングだって似合ってるからつけてくれば良いのに」
「そうだね、またつけてみようかな」
そうして、男二人がいつの間にか相談から昔話に花を咲かせている間に、昼休みの予鈴が鳴った。
急いで弁当箱を片付け始める。
次の授業はクラス移動無しで古典という、昼休み後には眠気を誘う授業だった。
「でも……さっきの話だけど、自分が直接役に立っている事を実感したいなら、護身術とか習ったらどうだ? 間宮さんとかそういうの詳しそうだろ?」
今まで危険な目にあったことのない一介の高校生には、簡単に思いつきそうにも無い提案をサラリと友宏がしてのける。中学当時は喧嘩三昧の日々を送っていたからだろうか。
なるほど、と司は手を打ち合わせた。
「ありがとう、トモ。間宮さんなら教えてくれそうだ。聞いてみるよ」
名案だと目を輝かせて喜ぶ司に、友宏は、
「別にオレは変る必要は無いと思うけどな」
と付け加えるのも忘れない。
何にでも反抗してきた友宏には、司が眩しく感じるのか素直に喜ぶ様子を見て、軽く目を細める。
友 宏が終始笑っている面倒見の良い奴になったのは、司と友達になってからだ。そんな簡単な事は、昔から二人を知っている周りの人間には周知の事実である。
しかし、どこか決定的に惚けている司はやっぱり気付かないのだった。




