33.友宏へ相談
「なんだあれ」
勢いをそがれた友宏が、椅子に力なく座って呆然と呟いた。
可愛い女の子大好きなはずの友宏が消極的なのを見て、司は不思議に思う。
まだ自分が雪の婚約者と決まっていなかった昨日でさえ、友宏は雪に対してそんなに積極的でなかった。
「いや、何か僕、トモも着いていくかと思ったよ。トモ、可愛い女の子好きだよね?」
司も今の騒動で呆気に取られ、友宏の前の席に腰を下ろした。
「津川さんが、イチジョーの婚約者になる前もそんな事言ってたな。いくらオレでも、友達が好きな女の子に言い寄るようなことはしねーよ」
「そっか、そうだよね。ごめん、変なこと聞いて」
「後、まぁ、美人っちゃー、美人だけど。俺から見て、恋愛の対象外だな。あれだけ、美人過ぎると、もはや崇拝の対象っていうかなんていうか」
友宏はこだわりなく笑う。先ほどの騒動で、どさくさに紛れて自分のものにした玉子焼きを口に放り込んだ。
司も玉子焼きを取り返そうとしていた事をすっかり忘れて、ふやけた竹輪を口に運んだ。
「……相談って、その雪ちゃんの事なんだけど。彼女、性質の悪い男達に狙われているみたいで…….昨日もその……ウチに変な人たちが入ってきて。僕は、彼女を守ろうと思ったんだけど、結果的に彼女に守られちゃって」
たどたどしく情けなさそうに喋る司の言葉に、友宏がいちいち納得したように頷いた。
「あー、分かる分かる。津川さんって強いもんな。さっきも俺、危うく首捻りそうになったし」
「僕にできることなんて雪ちゃんの盾になる事ぐらいかなって思ったんだけど。隣に居てって怒られるし。僕は雪ちゃんの事守りたいんだけど、正直、昨日みたいなことがあると、自分はどうしてったらいいのかよく分からなくて。自分を投げ出すなとも言われるし……」
自分の中の袋小路を司は吐露してしまい、ご飯を食べるのをやめて弱々しく俯いた。
「雪ちゃんの役に立ってるのって、僕の家の力だけで……僕自身が役に立つ為にはどうすればいいんだろう。本当はこういう事、自分で解決するべきなのかもしれないけど、考えれば考えるほど、僕は要らないんじゃないかって思えてきて。トモ……僕はどうしたら良いと思う?」
「イチジョーはイチジョーのままで良いと思うけど」
司の力の無い言葉に、友宏は何でもないことのようにあっけらかんと軽く笑った。
友宏の意外な言葉に、司は弾かれたように顔を上げる。
「えっ、でも」
「昨日も、津川さん『助けて』って司に甘えてただろ? 隣に居てっていうのもそれだけ、イチジョーの存在に頼ってるって事なんじゃないのか?」
屈託なくヘラヘラ笑いながら友宏は先を続ける。
司は、そういう考えもあるかもしれないと思いながら、一方でそんな虫の良い考えで良いのだろうかと思う。
結局、困って曖昧に微笑んだ。
「別に津川さん本人に『役立って欲しい』って頼まれたわけじゃないんだろ。オレはイチジョーが気に病む問題じゃないと思うね。時々、自分の事見えてないときあるけど、イチジョーはもう十分強いと思うし、役立ってると思う。普通だったら誰かの盾になるとか考えられないし。そういう良い捨て身加減って、イチジョーの魅力じゃないか」
そう言って、友宏は、
「イチジョーが中学の時、オレに声をかけてくれた時のことを覚えてるか?」
と嬉しそうに聞く。




