27.イケニエだったの?
「……また、別の生贄は、差別のシガラミから人々を解放し、自由にしようと動いていたが、ある日、その解放しようとしていた人々の一人から撃たれ、一言『神よ』と呟いた。生贄は、人々を生まれながらに持っている罪から解放し、自由にする為、大きな力を持って、度々生まれてくる。そして、その存在で多くの罪を浄化する為に、惨たらしく……死ぬ。いえ……死ななくてはならない。神にその血を捧げるのです」
男は、淡々とそう口にしながら、底冷えするような暗い視線を司から離さない。
明かりはきちんと灯っているのに、男の纏っている闇で、辺りが暗くなったようなそんな錯覚を起こさせる男だった。
そして、その闇の深さに、司は惹き付けられるかのように知らない内に、一歩、男の方へ震える足を踏み出していた。
怖いのに、魅せられていたのだった。
『生贄』という言葉に懐かしさすら感じる。
――人々のあらゆる罪を自分一人で、少しでも洗い流す事ができるなら、喜んで……、私は人々を愛しているのです。私がその為に生まれてきた事を感謝します。
司の頭には、自分ではない自分の声が響いていた。
男の言葉は真実だと、分かっていた。
――何故なら、自分には自分の死によって、罪が許され、祈り、高みへと登る大勢の人々が見えるから。
「司っ、何してるの!」
雪の言葉さえ、司には遠く聞こえる。
自分に向いている銃口さえ、今は怖くなかった。
「あなたは昔、生贄であったことでもあるのでしょうか。生贄であったなら随分模範的な行動だったのに残念です。ですが、今は、私と同じ生贄を生み出すための負の存在のようですので、いりません。私がいるのは……」




