23.助けを求めよう
「誰か、頼りになる大人の人を頼った方が良いかな」
二人とも呆然としてふらふらと窓から更に離れる。
雪が顔を蒼白にしながらも気丈に呟いた。
司は本来自分が思いつくべきだったことを雪に言われて、少し気を取り直して、ほとんどへたりこみそうになっていた体に力を入れた。
「……う、うん、そうだね。僕呼んでくるよ」
「あ、ここに私が大人の護衛の人を作った方が良いのかしら」
ふらふらとしながら出て行こうとする司の肩に、雪が手をかけて引き止める。
その間にも外から、銃声が途切れ途切れに続き、低くて短い悲鳴が聞こえる。
「良いかもしれないけど、こんな夜に僕の部屋に護衛の人を作り出すの?」
「司の部屋にずっと居て守ってくれている人たちが居る……とかじゃ……。そっか。朝のときと違って、ちょっとおかしいかも。更にこんな状況で力使ったらもしかしたら力の二重掛けになって司に消してもらえないかもだし。とっさに、夜にも都合よく司の部屋に護衛の人が居る理由を思いつかないわ。司を常に守ってくれている人たちなら朝に作ったし、その人たちが側にいないのは……間宮さんとかなら近くにいるかしら」
雪は司の服の裾を再度握って離そうとはしない。顔色の悪いままぶつぶつ対策を唱えている。 とっさに『間宮』と言ったのは、さっき窓から見て見当たらなかったからだろう。
「さっき窓から見てたけど、まだ君を追ってる男達は家の中に入ってきてないみたいだし、間宮さんを探して呼んでくる時間ぐらいはあると思うよ。僕、呼んでくるから、雪ちゃんはここ……」
「一緒に連れてって」
雪が、怖いのか黒い瞳を涙で少し滲ませながら司に訴えた。
涙の膜で黒い瞳が美しくきらめいているのを目の前にした司は、恐怖が完全とはいかないまでも薄らぐのを感じた。綺麗なものや守るべきものは、人が撃たれるのを見た恐怖や命を狙われているといった恐れを払う力がある。そして払うだけでなく力も与えてくれるものなのだ、と分かった。
「危ないよ」
「いいの、連れてって。女の子を一人にするつもり? 司が私を守ってくれるから大丈夫!」
雪の言葉は、まるで司に力をかけるみたいに、朝に護衛達を作った時とまるきり同じ調子で語られた。調子をちょっと取り戻したのか、涙を滲ませながらも目をいたずらっぽく微笑ませる。
つられて司も、なんとか震える唇を笑みの形に持ち上げる。
「うん、そうだった。つい、さっき言った事だったね」




