22.襲撃の夜
――そこまで、話していた時、ふいに外が騒がしくなった。
静かな夜に、一気に喧騒の密度が増し、人が叫ぶ声が途切れ途切れに聞こえる。
一条院家の番犬達がひっきりなしに吠える音や荒々しい足音、家具が手荒に扱われる不協和音が襲ってくる。
外がライトアップされたかのように明るくなった。
二人とも窓に駆け寄って見ると、真昼のように照らされた庭をたくさんのダーク スーツを着た男達が走っているのが見えた。
「な、何。あいつら正面突破?」
雪が目を見開いて窓から乗り出した。
その言葉で、司は自分が事態を甘く見ていたことを悟った。
なりふり構わず朝に雪を追い掛け回していた連中なのだ。
当然、そこが一条院家だって追ってくる事は予測できてもいいはずだった。
スーツを着た男達はざっと見積もって三~四十人はいた。手にはきらめくナイフや銃を持っている。日本の法律上、そんなものを持っていない「止まれ!」と叫ぶだけの一条院家の一般雇われガードマン達を威嚇しながら、噴水や彫刻の合間を飛ぶように駆け抜けている。
「危ない! あの人たち、銃を持ってるのに窓から乗り出すなんて!」
司が慌てて雪を窓から引き離す。
狙撃されない程度には窓から離れて、二人で下の様子を見ていると何やら様子が変ってきた。
ガードマンの通常の制服を着た人達と入れ違いに、黒服を着た護衛部隊が敷地内から集まってくる。
その数は、雪を追っているダークスーツの男達の数にも劣らないぐらい多い。通常のガードマンとは違って、何故か銃を持っている。基本的に視力の良い司の目は、その中に朝、護衛してくれた人の顔を見つけて驚く。
男は、警告も無く無言で銃を構えて引き金を引いた。
パンッ……と、爆竹の爆ぜるような音が夜の庭に響く。
ダークスーツを着た男が、お腹を抑えてあっさりと前のめりに芝生へ倒れた。
人が倒れる音は、二人の所までは届かなかったが、実際に銃で撃たれる人を見て、二人の顔が蒼白になる。
「そんな……」
「……司っ」
救いを求めるように雪が、司のトレーナーの裾をギュッと引っ張った。
司はあまりの出来事に、とても雪を慰める程度の余裕は生まれなかった。痛いほど拳を握り締める。
二人はどうして良いのか分からなかった。家の中に居れば安全なのかすら判断できなかった。




