第八夜-9
☆15
家に着いた頃には日は完全に暮れていた。
「青尉、そっちの2人、和室に連れて行ってくれ。」
朱将が呼びかけると、「分かったー。」といつものトーンの返事が来た。――うん、大丈夫そう、だな・・・たぶん・・・。朱将はまだ少し不安を残していたが、信頼することにした。大丈夫、俺らの弟はそこまで馬鹿でも、やわでもない。それより・・・――
「――大丈夫か、牧野?」
目下の心配事はこちらである。牧野は、助手席で黄佐の肩を預かりながら、顔面を蒼白にし、
「・・・あ、はい・・・大丈夫、です・・・。」
と、明らかに大丈夫そうではない調子で頷いた。
「いや、どう見ても大丈夫じゃねぇだろ・・・代償ってやつか? 何か、必要な物とかあるか?」
「いえ、あの、はい・・・代償、は、その・・・寝れば、いいんで、大丈夫なんですけど・・・。」
じゃあ何がそんなに苦しいのだろうか、と思った朱将の疑問に答えるように、牧野はぼそりと言った。
「・・・僕あの実は――血が、ちょっと、苦手で・・・。」
「・・・なのに治癒能力者なのか。」
「・・・はい。」
「大変だな。」
「・・・はい・・・。」
「あー、えっとー、ありがとうな、治してくれて。」朱将は少しだけ罪悪感を覚えて、「・・・無理させたようで、悪かった。寝るんなら和室の毛布とか適当に使ってくれていいから、とりあえず降りてくれ。」
朱将は、完全に意識を失ってぐったりしている――なのに、傷口は完全に塞がれて、血まみれになった衣服が無ければ撃たれた事が嘘のように思える状態の――黄佐をひょいと背負って、車を降りた。
「あ、あのあの、」朱将に続いて、ふらふらとした足取りで降りてきた牧野が、「その方、その、撃たれたとこ以外にも、傷がたくさんあったんですけど・・・すみません、肩を治すので精一杯で・・・。」申し訳なさそうに言った。
「それだけで充分だ。」朱将は即答した。「それ以外の怪我なんて、死ななきゃ治る。」
「あ、そ、そうですか・・・。」
「だから――」と、朱将は黄佐を背負ったまま、牧野へ向けて深々と頭を下げた。「――本当に、ありがとうございました。あんたがいてくれたおかげで、助かった。」――助かったのは黄佐だけじゃない、青尉も、そして俺もだ。
「あっ、いえいえ、そんな・・・。」初見から心底恐れていた相手に深謝され、牧野は大いに戸惑った――え、この人、絶対にヤンキーだと思ってたのに、すごい律儀だ・・・!「・・・こ、こちらこそ、お役に立てたようで、何よりです・・・。」
「いつになく神妙だな、朱将くん?」
玄関口から嫌味な声が聞こえて、朱将は姿勢を正し、嫌々振り返った。
「うるせぇな、いちいち突っかかってくんじゃねぇよ山瀬。暇なのか?」
朱将の言葉をすっかり無視して、山瀬は続けた。「青尉くんを奪還して、M=Cとユウレカの幹部、そして私を集合させて・・・これから、どう収めるんだ?」
「さぁな。」朱将は肩を竦め、「そっから先は全部、」――と、顎先で黄佐を指す――「コイツの仕事だ。俺らがやることは、コイツが目ぇ覚ますまで、お前らを家に突っ込んでおくこと。それだけだ。」
「・・・ふぅん。」山瀬はこの、手のひらの上で転がされている感じがどうにも嫌だったが、気を失っている奴が相手では何を言うこともできず、話を逸らした。「――それより、朱将くん?」
「なんだよ。」
山瀬は玄関の中を指差して、
「どう収拾付けるんだ、この事態?」
「? ――・・・あー・・・。」
朱将は家の中を見て、言葉を失った。――M=Cとマッド=グレムリンの連中、ユウレカの連中、それぞれがそれぞれでぎゃーぎゃー騒いでいる。その騒ぎの所為で、疲労困憊だろうに青尉は座れもせず、能力者たちが暴れだしたりしないか気を張りながら、駆け寄ってきた辰生に感謝したり、辰生の質問攻めにあったり、柚姫に詰られたり、散々な様子だ。朱雀荒神は朱雀荒神で、拓彌たちの帰還と作戦の成功に狂喜乱舞し、酒はどこだ買いに行け、などとやりたい放題。
「どうすっかな・・・これ・・・。」
なんだかもう疲れてしまった。どうにでもなれよ・・・、と荒んだことを朱将が考えていると、不意に居間の扉が開き、
「うるっせぇぞてめぇらあっ!」
強大な怒鳴り声がすべての混乱を一息にかき消した。刀堂兄弟の父である軍武だ。朱将より迫力ある巨体に「ひぇっ。」と牧野が身を縮めた。
「近所迷惑になんだろうがっ! ちったぁ考えて行動しろっ!」
あんたの怒鳴り声が一番の騒音だよ――と朱将は思った。
「朱将っ!」
「うぇっ?」考えていたことが考えていたことだったので、朱将は咄嗟に変な声を出してしまった。それを取り繕うように、「――なんだよ、親父。」
軍武は腕を組み仁王立ちで、朱将を睨むように見、「黄佐を下ろしたらちょっと来い。聞きてぇことがある。」
「わかった。」
朱将が頷くと、軍武は和室の方を一睨みして、――その場にいた全員がさっと俯き視線を逸らした――それから居間に戻っていった。
「っつーわけだから、」と朱将はこの機に乗じて、家に入りつつ言った。「てめぇら、話し合うにしても静かにしてろよ。騒いだら親父をけしかけるからな。」
なんともダサい脅し文句だが、効き目は抜群だった。人数が半分に減ったような錯覚を覚えるほど、全員が委縮し口をつぐむ。
朱将は和室の一番奥に黄佐を下ろして、――さて、親父に事情を説明しに行くとするか。――自身も腹をくくった。まったくもって休んでいられない。長い一日になったものだと溜め息をつく。
☆16
和室は2間あり、奥の部屋には黄佐が1人寝かされ、手前の部屋には朱雀荒神の一部メンバー、M=C、マッド=グレムリン、ユウレカ、青尉と辰生と柚姫、という大所帯が押し込められていた。
沢木が現れてからずっと、その胸に縋りついてぐずっていた速美がようやく落ち着きを取り戻し、子供らしく寝息を立て始めている。まるで親子みたいだ、と青尉は思った。
奥に繋がる襖が開き、佐藤が出てきた。そして、青尉の注目に応えて、微笑む。
「大丈夫だよ。」佐藤は真っ先に結論を言った。青尉の前の、空いている場所に胡坐をかいて座る。「黄佐ちゃんなら心配はいらない。撃たれたと思しき場所は完全に塞がっていて、呼吸も安定してるし、それ以外の外傷は、銃創に比べたらまったく大したことない、軽い打撲程度だったから。」
「そうでしたか。ありがとうございます。」
青尉は深々と頭を下げた。
「いえいえ、どういたしまして。」――黄佐ちゃんに似て、律儀な子だなぁ。――佐藤はひょいと肩を竦めた。「にしても、無茶したねぇ、黄佐ちゃんってば。普段あんなに冷血人間気取ってんのに。」
「冷血・・・人間?」聞きなれない評価を耳にして、青尉は覚えずオウム返しにした。
「そーそー、冷血人間。人当たりは物凄く良くって、良く言えば対人能力が高い、悪く言えば八方美人って感じなんだけどさ。」一呼吸おいて、「黄佐ちゃんって、なかなか懐に入らせない感じがあるんだよねー。壁が高いっていうか、距離を保ってるっていうか。線引きがはっきりしてんだよ。ここまではいいんだけど、こっからは駄目、ってさ。」
「あぁ・・・そうかもしれませんね。」否定する要素が無くて、青尉は頷いた。そして柚姫に後頭部をはたかれた。
「いってーな、なんだよ柚姫。」
「別に。深い意味は無い。」
青尉の鋭い眼光を意にも介さず、柚姫は飄々と言った。意味分かんねぇ・・・――と青尉は呟いて、
「おっしゃっ! キタっ!」
辰生の唐突な叫び声にびくりとそちらを振り返った。
辰生は携帯を片手に、顔中を笑みで満たして、「少尉! やったぞ! やった! これで全部終了だ! 綺麗に揃った! 終わった!」
「・・・え、何が?」辰生が散々こちらに協力してくれたことは分かっているし、心から感謝している。その有能さには感服した。が、意味不明な言動は意味不明な言動だ。
青尉の、不審なものを見る目に向かって、辰生は携帯画面を突き付けた。そこはどうやらチャットルームのようで、
「M=C第一支部は解放――っていうか放棄された! んで、M=Cによる宣戦布告は撤回されたから・・・これで戦争回避完了だ!」
青尉が文字を読む前に、辰生がそう宣言した。その言葉に和室中が沸いた。M=C関係者の歓声、ユウレカの嘆き、stardust・factoryの嘆息、悲喜交々の声が一瞬だけ和室に充満し――すぐに軍武のことを思い出して――収束した。
その中で辰生の声だけが朗々と響く。
「いやぁ、良かった良かった。さすがに、ユウレカ上層部が動いたみたいだなー。M=Cの方も、あの状態で全面衝突は出来ないもんな。うん、うん。――良かった。」
自分のことのように喜ぶ辰生に、青尉は何と言ったらいいのか分からなくなって、俯いた。そして柚姫に後頭部をはたかれた。
「さっきから何なんだよ、柚姫!」
「別に。」柚姫は至って冷たい声で、「ただ――礼はきちんと言いなさいって、黄佐さんに散々叩き込まれてんの、私は知ってんだからな。」
「っ・・・。」青尉は柚姫を睨み、またそっぽを向いた。「分かってるよ、んなこと。」
険悪な調子で言い合う2人の間に、辰生はからからと笑いながら顔を突っ込んだ。
「え、なになに、お礼? 礼を言われるようなことしてないんだけどなー俺。でもしょうがないなー、どうしても少尉が言いたいってんなら謹んで受け取ってやろうじゃん、あっはっは!」
「ありがとう、辰生。」言い淀むと言いにくくなる。それを分かっていて青尉はすぐさま言った。「何から何まで・・・本当に、助かった。ありがとう。」
改まって言われるとちょっと照れくさいな・・・ほんと、少尉って真面目な奴だよ――と思いつつ、辰生は青尉に向かって握り拳を突き出した。
「いいってことよ。なっ!」
「ん。」
拳を打ち合わせる。皮膚の裂けている青尉の拳に、衝撃が響いて痛みが走ったが、痛みある勝利にはちょうど良い祝砲だと思えた。
☆17
黄佐ははっきりと、自分はどうやら死んだらしい、と思った。
記憶では、全身を蹴られ殴られ、煙草の火を押し付けられ、窒息寸前まで川に沈められて、体の中で痛くない場所なんて無かったはずなのに――今は、どこも痛くない。
痛みも、苦しみもなく、真っ暗闇の中をふわふわと漂っている。
何も感じない。
全身が空っぽになっていく。
なるほど、これが死ぬってことなのか。・・・だとしたら、そう悪いもんじゃないな。
と黄佐は思って――次の瞬間泣き出した。
・・・嫌だ。嫌だいやだイヤだっ! 何が悪いもんじゃないな、だよ! 俺はまだ死にたくない、死にたくない! やりたいことがたくさんあるし、やってないこともたくさんあるし、何より・・・何より、まだ居たいんだ。朱兄と、青尉と、父さんと母さんと――俺だけ先にいなくなるなんて、そんなの絶対に嫌だっ!
・・・助けて・・・っ!
その時ふっと、暗闇に光が射し込んだ。
「黄佐っ!」
「黄ぃ兄っ!」
声がする方へ、光が差す方へ、黄佐は手を伸ばして――。
黄佐は目を開けた。自分がいる部屋の電灯は消えていたが、隣室とを区切る襖の隙間から光が射し込んできていて、すぐに、我が家の和室であると分かった。
ゆっくりと呼吸をし、息を整える。全身が汗にまみれている。どうやら、多少うなされていたらしい。――昔のことを、思い出したような気がする。黄佐は声なく苦笑して、目元を拭った。
「――~~能力って~~~にも、色々と種類があってだな。治癒の方法っていうか、種類が異なるんだよ。単純に傷を治すもの、本人の自己修復力を促進させて治すもの、局地的に時間を巻き戻して傷自体を“無かったこと”にするもの、自分の体力を分け与えるもの、傷を別のエネルギーに変換して自分に移すもの・・・などなどってね、様々なんだ。」
「へぇ・・・牧野さんは、どれに当たるんだ?」
「え? えっとー・・・どうなんだろう? 単純に治す・・・感じかな、たぶん。」
誰かの話し声が聞こえる。聞くともなしに聞きながら、黄佐は自分の体の点検を始めた。――左肩・・・すごい、何も痛くない。あれ、俺、撃たれたんだったよね? 星屑から呼んできた治癒能力者に頼んだのかな・・・。――有難い半面、申し訳なくなって、黄佐は唇を噛んだ。――あれは、完全に俺の判断ミスだった。
そういえば、今はどういう状況なんだろう。青尉は? 朱兄は? 戦争はどうなった? 疑問渦巻く頭を抱えながら、黄佐は静かに上体を起こした。
「いいですねぇ治癒能力者! 組織に1人は絶対に欲しい、ヒツヨウフカノウですよヒツヨウフカノウ!」
「それを言うなら必要不可欠、な。」
「君らはどうしてそんな呑気に喋っていられるんだい・・・? 理解できないよ。」
「悔しいけれど同感だな。私にもよく分からない。」
「だって、他にすることねぇし。」――青尉の声だ。それが分かった瞬間、黄佐は思わず泣きそうになった。――良かった、助かったんだ・・・朱兄が間に合ったのか。良かった・・・――それから、続いた言葉に反射的に飛び起きた。「それに、逆に黙ってたら、気が変になりそうだしな・・・心配で。」
「青尉っ!」黄佐は襖を思いっきり開け放ち、すぐそこに座っていた青尉を背後から抱きしめた。そしてそのまま――ヘッドロックをかける。「お前はいつから、兄貴を心配できるような立場になったのかなぁ散々こっちに心配かけさせたくせにっ!」
「えっ、黄ぃ兄っ? もう大丈夫なのかっ・・・て、ちょ・・・待っ・・・ギブ! ギブギブ! ギブです!」
割としっかり絞められて、青尉は黄佐の腕をタップし降参の意を伝えた。
しかし黄佐は意にも介さず、「いやぁ、良かった良かった。本当に良かったよ。撃たれた時はさすがに、“あ、これもうダメかな”って思ったんだけどねぇ、あっ、もしかしてあなたが牧野さん? ですよねーだと思った。あなたが治してくれたんでしょ? いやぁありがとうございました、本当、御迷惑をおかけしまして。当初の予定だったら青尉の腕を治してもらうつもりだったんですけど、ちょっと俺が逸った所為で、色々と狂っちゃって申し訳ない! まぁでも結果オーライ? って言って良い? あーあと辰生くん、ありがとうねぇ、突然の変更にもきっちり対処してくれて。助かったよ! “虎穴に入らずんば”って朱兄に伝えてくれたんだねー、おかげ様でどうにがっ」
唐突に黄佐がのけぞって尻餅をつき、マシンガンが止まった。降参していたはずの青尉が伸びあがるように頭突きをしたからだった。その拍子にヘッドロックも外れる。
「いっ、てぇー! 舌噛んだ! ひっどいな青尉!」
「酷いのはどっちだよ・・・。」青尉は座り直して、胡坐の上に肘をつき、顔を隠すように額を手に当てた。「もしもあれで・・・俺の所為で、黄ぃ兄に何かあったら、笑い事じゃすまなかったし・・・っ。」
だんだん涙交じりになっていく声が、鼻をすする音が、わざとおちゃらけてみせた黄佐を責め立てる。――やっべ、まずったなぁこれ・・・さぁて、どうしようか・・・。
「ごめん、青尉。俺が悪かった。」ここまでは真摯に。ここからは――「――高校生にもなってそんなに泣くなよーお子ちゃまだなー。」――煽るように。
「はぁっ? 泣いてねぇしっ。」
「ブラコン野郎って言われるぞ。」
「うるせぇよっ!」
顔を上げて噛みつけば、黄佐はすかさず青尉の目を指差して、
「あ、ほら、やっぱ泣いてたじゃーん、目ぇ真っ赤ーあははっ。」
その言動にイラっときた青尉は反射的に黄佐の脇腹を殴った。
「痛いっ! ひっど、俺一応怪我人なんだけどっ?」
「さっき骨折してる人間にヘッドロックかけておいて、よくんなこと言えたなっ!」
「分かってないなぁ、それはそれ、これはこれってやつよ。」
「はぁっ? 何が? 怪我の程度としてはこっちの方がひでぇんだけど?」
「ふふっ、怪我自慢乙ー。」
ことさら煽り立てる口調でそう言うと、青尉はわなわなと震えたと思ったら不意に立ち上がって「・・・もういいっ! ふざけんな馬ー鹿っ!」と叫ぶなり和室を出て行ってしまった。
階段を駆け上がっていく音が聞こえて、それが静まると、「へっへっ、怒らせちった。」と笑って、黄佐はその場に大の字に寝転がった。
「わざとやったな?」と、山瀬。
「えぇ、まぁ。」黄佐は平然と肯定した。「泣かれるよか怒られた方がマシですし――」と、壁際に座った沢木と碓氷の方を一瞥して、「――まともに言い争って“誰が一番悪いか”議論になっちゃったら、キリがないでしょう? “そもそも論”ほど無意味なものもないし。」
「・・・なるほど。」と、山瀬は頷いて、「それで、君が今回の件を収めるんだろう? 何が目的で、ここまでやったんだ?」
山瀬の問いに、沢木と碓氷も表情を変えた。黄佐の“目的”のためにここまで連れてこられ、そのために大人しくしているのだから。
「ん? あー、そっか、大事な大事な最後の仕上げを、忘れちゃいけなかったね。」黄佐は反動をつけて起き上がった。「それじゃあ、組織の皆さん? 最後の勝負を――」と言いかけて、ふと自分の計算違いに思い至った。「――って、やっべ、駄目だ。」
「何がだ?」
「青尉のことなのに青尉抜きでやったら駄目じゃんか・・・やっべぇ! あー、俺の馬鹿っ!」頭を抱えた黄佐。が、次の瞬間には拝むように両手を合わせて、「というわけなんで、ごめんなさいっ。お手数おかけしますけれども、山瀬さん、明日の朝もう1回うちに来てくれませんか? うちに泊まっていってくれてもいいんですけどっていうかそうしてくれた方が正直有難いんですけど。まぁお好きなように。そんで、話は明日にしましょう! みんな今日は疲れてますし、ね! あ、辰生くんと柚姫ちゃんは明日も学校あるし、帰るでしょ? 送ってくよ。」
「えっ、あっ、はいっ。」
「ありがとう、黄佐さん。」
「いえいえ、お安い御用で。」
黄佐が2人を連れて立ち上がると、それに合わせてもう1人が立ち上がった。
「黄佐ちゃーん、俺も帰るよー。」と佐藤。
「あっ、佐藤、」――まだいたんだ、と一瞬だけ思ったが、言葉にはしなかった。「こんな時間まで手伝ってくれてありがとな。今度何か奢るよ。」
「お、やったね! じゃあ今度うちでゲームしようよ、黄佐ちゃんのお金でピザ取って。」
さっすが、佐藤は遠慮なく要求してくれるね。まぁいいんだけれど――と黄佐は両手を上げて、「はいはい、了解。サトー様の仰せのままにってね。」
そんな黄佐の様子を見ていた佐藤は、ふと思いついたように言った。「あとさぁ、黄佐ちゃん?」
「ん? 何?」
「照れ隠しはほどほどにした方がいいんじゃないかなー? って俺は思うけどね?」
「・・・。」佐藤の鋭い指摘に、黄佐は一瞬固まって、やがて苦笑した。「・・・善処するよ。」




