第二夜-8
☆8
「山瀬 真智勇・・・へぇ、何だか難しい名前。一歩間違ったら中二病と診断されちゃいそうだね。“真なる智恵を持ちし勇者”~みたいなさ。」黄佐は名刺を見てわざと明るく批評した。それから、名刺に穴が開きそうなほど見つめている青尉の顔を覗き込んで尋ねる。「ね、そうは思わない?」
「・・・。」
青尉は虚ろな目を名刺の文字列から1ミリたりとも動かさなかった。
あっちゃー、無反応っすか~・・・けっこうキちゃってんなぁコレは・・・―――黄佐は髪を掻きむしって、話を変えた。
「青尉、とりあえず病院に行こう。骨折はちゃんと見てもらった方がいい。変にくっついちゃうと困るからね。あと、このあとは熱が出るから、今日は学校は休みなよ。連絡しといてあげるから、ね。ほらほら、着替えておいで。とっとと行ってきて今日は早く寝ちゃいなよ。考え事はまた後でいいんじゃないかな? 疲れてる時はどんなに考えたって、いい答えは出ないもんだよ。人生の先輩からのアドバイスさ。今は今のことを考えようじゃん。これから考えなきゃいけないこととか、やらなきゃいけないこととか、いろいろあるけどさ、優先順位は間違えちゃいけないよ。何をするにしたって、まずは体調を万全にしなきゃ。わかるでしょ? ほら、動いた動いた!」
黄佐が急かして手を叩く。手拍子に反応して踊る玩具か何かのように、青尉がのろのろと腰を上げ、2階へ向かっていった。
それを見届けて、黄佐は振り返った。―――・・・さぁてと、こっちの人はどうしたもんかね。厄介だな~。
朱将はソファーにぐったりと背中を預け、何もない空中を睨み付けている。何を考えているのだろうか、だいたい予想は付くが、考え込まれて動作を停止されては困る。今の段階では答えは出ないし、当事者でない黄佐たちでは尚のこと、何も出来ない。
・・・って、分かっていても、考えちゃうのが朱兄なんだよな~。―――その点、黄佐は冷めていた。さて、どうやって彼を再起動させようか。再び髪を掻いて脳を刺激する。
「朱兄、俺、青尉に付き添って病院に行ってくるから。学校に連絡しといてよ。」
朱将は無言で頷く。
黄佐は慎重に言葉を選んで言った。
「・・・あのさぁ朱兄。心配なのは分かるし、俺だってどうにかしたいと思ってるよ。でも、青尉はもう子供じゃないんだ。自分の身の振り方くらい、自分で決めるさ。俺らは当事者じゃないし、口出しはできないよ。」
「・・・。」
「それに、これって実は、そんな深刻に考えることじゃないかもしれないよ?」
「・・・どういうことだ?」
朱将は初めて反応らしい反応をし、黄佐を見上げた。黄佐は努めて明るく、身ぶり手振りを付けて話し出す。
「難しく考えるからいけないんだよ。つまりこれはさ、青尉が『stardust・factory』に入るか入らないか、っていう話でしょう? あの人は何かいろいろと御託を並べていったけどさ。青尉が狙われる理由とか、俺らがどーのこーのとか、そういうのを抜けば、あの人・・・山瀬さん? が言ったことって要するに、“他の組織よりうちの方が得だぞ”ってことだよね。ほら、そしたらさ、あとは青尉の気持ちだけじゃない? 青尉が入るっつったらそれで良し、入らないっつったらそれでも良し。俺らは青尉の決定に応じて、サポートすればいいんじゃないかな。あんまりお節介を焼いてもしょうがないって。時には放っておいてやるのも、家族の務めだと思うよ。」
「・・・そうだな。」
朱将は今度ははっきりと頷いて、立ち上がった。
「学校に連絡して、仕事に行く。病院の方は頼んだぞ。費用は立て替えておいてくれるか?」
「はいよー。」
「・・・・・・悪いな。」
その一言にいろんなものが込められていることに気付き、黄佐は笑って、兄の肩を軽く叩いた。
「気にしなさんな。」
文字数の調整が上手くいかない・・・(泣
読んでくださった方々に最大限の感謝をこめて。
今後ともどうぞよろしくお願いします。




