第二話
運営イベントにより、ウッドヒルズが陥落した。
この街は、プレイヤーの街としては最大級と言われた街の一つであり、
周辺街を併合しており、その繁栄ぶりから三本木ヒルズと呼ばれて
恐れられていた。
だが、魔王の使者イベントで相手がAIだからと暴言を繰り返し、
魔王軍の侵攻を受けたのだった。
その暴言ぶりには、運営も怒っていたのであろう。
ことあるごとにその際の映像を流していた。
プレイヤー達も、これはないよねと、概ね侵攻を支持。
所属プレイヤー達にも見限られたウッドヒルズはあっけなく陥落した。
ざまあ、との発言が、ユーザー交流コミュで飛び交ったのであった。
だが、街を統治するプレイヤー達にとっては異なる。
運営がプレイヤー街を陥落させることがあるという実例を示されたのだ。
危機感を持ち、対策に乗り出す。
すぐに大同盟が国際連合を名乗って結成されたが、この組織の主導権を
握って勢力を強めようとする者達により、事実上空中分解。
泥沼の対立から、我こそは正当国際連合であると、十以上の陣営にわかれ
世界大戦に発展した。
シュガーブルクは、国際連合には加わらなかった。
いや、声をかけられなかったので加わる機会がなかったのだ。
別にアーネストやシュガーブルクが嫌われている訳ではない。
シュガーブルクは、すぐに思い出されるような大勢力といえる存在では
なく、周辺の大勢力とは直接境を接しないため、国際連合提唱者達から
存在を忘れられていたのだ。
「世界大戦に絡まずに済んだのは幸いでしたが、このまま孤立している
ことが良いとは言えません。気づいたら周り中敵だらけなんてことに
なってから動いても、遅いのですよ」
「もし、今回義理のある相手から声をかけられていて、参加せざるを
得なくなったらどうなった。ほどほどに目立たずに、名誉ある孤立をして
おいた方が、良かったのではないか?」
「世界大戦に参加した街は疲弊しております。戦前とはシュガーブルクの
存在感が違うのです。短期的には、脅威に考えるものも出てくるかも
しれません」
「存在感が変わったならば、黙っていても声をかけてくれるんじゃない
かしら?下手に動いて目立つ方が下策よ」
各人の意見はまちまちで結論がでない。
最終的には、アーネストに決めてもらえばいいという気楽さが見え隠れ
していることに、本人達は気づいていない。
アーネストは、いつもの穏やかな表情を浮かべながらも心の中で
嘆いていた。
一緒に最良を考えてくれる仲間と言える存在がいないことを。
アーネストには、慕ってくれる配下のプレイヤーには事欠かない。
だが、同格の仲間と言えるプレイヤーがいないことが、今回のように
ネックになることもあるのである。
最終的には、アーネストが決断していたため、周りが彼の孤独に
気づけていないこともあるかもしれない。
結局アーネストは、近隣の大戦に疲弊した街を援助しながら関係を深める
という策を採用した。
誰も提案せず、アーネスト自身が考えたものであったが、会議では異論が
出ないどころか、提案後すぐに賛成の連呼が発生。
アーネストは、誰にも悟られぬように溜息をした。