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アデルとエイダ

この『勇者はなぜか死なない』は簡単に言えば…ギャルゲーでありつつ、エロ様子もかなりあるような作品だ。タイトルからは想像もできないような作品だけどかなりエロゲ―に近いような感じ。



主人公のユウは幼い頃に両親を亡くし、孤児院で育てられた。




そこである日、勇者の紋章が体に現れ、そこから勇者として育つことになっていく。結果的にユウが勇者となる過程で様々なヒロインと出会い、人としても成長していくお話だ。最後には魔王を倒してハッピーエンドで終わるような物語。




よくあるような話でありつつもこの作品が評価される大きく分けて2つだ。




1つ目として挙げられるのはヒロインが性格やキャラデザを含めてとても魅力的なのだ。僕もそのライトノベルを読んでいたけど、確かに魅力的だった。


2つ目はスタートやゴールはよくある話ではあるが、そこまでの過程はかなり壮絶だったりするので今までのそういう作品としっかりと差別化が図られていて、物語が新鮮だったという点だろう。多くの人が予想するような展開ではないのだ。






なるべく原作通りの行動を心掛ける。


その理由としては変に僕が動いて、辿る道が変われば弟妹たちの運命も変わってしまうのだけは避けなければならない。少なくとも原作通りでは僕が死に、アルセーヌ家が滅びれば全てが終わるはず。僕としての最高な結果は原作通りで、弟妹がしっかりと生き延びてそれぞれやりたいことを見つけて生きていくことだけだ。



でも、一つだけ問題がある。


それはトリトス・アルセーヌが勇者ユウとの戦闘で死ぬのは決まっているし、恨まれる理由などを含めて全て分かっている。だが、それまで彼がどのような行動をするべきなのかが分からない。正直、トリトス・アルセーヌはかなり小物なので詳しいことまで原作で描かれないのだ。当たり前と言えば当たり前のことだけど、これではどう行動するべきなのか分からない。



もし、原作と違う行動を起こせば変わってしまう可能性だってある。そうなると行動はやっぱり慎重にならざる負えない。




――――――



アルセーヌ家はかなりヤバいこともしているが、それでも貴族なのだ。貴族となれば執事やメイドなどもいる。



そして次期当主になる僕には専属執事と専属メイドが2人ずつあてわられている。


専属執事の名前はアクト。20代ぐらいの男だ。黒髪で服の上からでも分かるぐらいに鍛えているのだろう。なんでうちの執事なんかやっているんだろうと不思議なるくらいに元気な人だ。


専属メイドの1人ことエイダ。金髪ロングで胸が小さい子でエルフ。僕よりも一つ下の子で性格は難しい。無口というわけではないけど、あんまり話すのが好きじゃない感じの子。


もう一人の専属メイドはアデル。白髪のショートでエルフ。年齢は僕よりも一つ下なので、エイダと同じ年だ。性格はエイダに比べれば明るい方でアクトに比べれば暗い方かな。



エイダとアデルに関しては奴隷だった子。


両親が奴隷の中から2人を選び、勝手にメイドとして紹介してきた。正直、まさか奴隷の中から選ぶなんてことをするとは思ってもいなかった。この世界の常識として貴族が奴隷を買う時は慰め者にするためであったり、過酷な労働環境で働かせるぐらいだ。貴族のメイドとしてあてがうなんて普通はあり得ないことだ。


両親がどんな考えでこんなことをしたのかは全く理解できないが、僕としてはメイドが奴隷であろうとそうじゃなかろうとどうでもいい。




すると、ちょうどドアをノックする音が聞こえ、「アデルです。入ってもよろしいでしょうか?」と言われたので許可を出す。



「失礼致します」


入って来たのは名乗りの通り、アデル。



「それでアデル、何の用?」



「主人の側にいることに理由がいりますか?」



「アデルが専属メイドとしての仕事を果たそうとしてくれるのは有難いが、お前の仕事は他にもあるだろう。別に僕に構う必要はないよ」


正直ずっと付きまとわれるのはいやだ。たまには一人になる時間が欲しいし、何よりも目の前のアデルもエイダも少し忠誠心が高すぎるのだ


「トリトス様の近くにお仕えする以外に大事な役目などありません。それにもし、トリトス様に危害を加えようとする者が現れた時にその者を嬲り殺し、もし私たちで対処できない場合は身代わりになって死ぬ、それが私たちのお役目です」


アデルの目は間違ったことを言ってないと疑っていない。なんでここまで信頼されるまでになってしまったのか分からない。



これ以上、アデルに何を言っても無駄だということは過去の経験から分かっているので話を変えることにした。



「アデルは学校とかに行きたいとか思うの?」



「学校ですか…別に何とも思いません」



「そっかぁ…。その感じだとエイダも同じ感じなのかな」



「私の母親とかは王都の学園に通っていたらしいですが、私は別に通いたいとは思いませんでした。それよりもトリトス様にお仕えすることが今の私にとって最高の喜びですので」


こんなに僕のことしか頭にない理由は他のことをまだ知らないからではないだろうか。アデルぐらいの年齢であれば他にもたくさん興味を持っていて普通だ。それなのに今のアデルには僕しか見えていない。



そう言えば、今までしっかりとアデルやエイダのことを考えていなかったけど、この子たちの給金とか一体どんな風になっているんだろう。



「アデルって給金はどうなってるの?」



「そんなの頂いていませんよ。というかいらないです」



「やはりそうなのか」


これはブラックだ。


アデルやエイダの仕事ぶりを考えれば金銭が支払われて然るべきだ。たぶん、そこは元奴隷なので給金が支給されていないというところなのだろう。



「これからは俺の小遣いからお前たち二人の給金を出すことにするよ」


僕の小遣いは貴族ということもあってそれなりに高い。二人の使用人を雇うぐらいのお金はある。



「そんなのいりません。私もエイダもトリトス様と出会えたことが嬉しいのです。トリトス様のような素晴らしい方にお仕えできるだけで十分です。そこに金銭を貰うなど絶対にできません」



「と言っても、キミたちだってお金がないと不便じゃないのか?」


自分の欲しいものを買うこともできない。それに専属メイドはほとんど休みがないというブラック体制だ。自由な時間というのもあんまりなく、ほとんど拘束される。少なくともそれに見合うだけの給金が支給されないとさすがにまずい。



「不便ではありません。私たちはトリトス様にお仕えすることが最高の喜びですので」





「いや、それだけじゃ―――――


僕の言葉の途中でドアが開き、なぜかエイダが中へと入って来る。



「アデルだけずるい」


まるで当たり前かのように入って来るので反応するのが遅くなってしまった。



「ずるい?」



「うん。トリトス様のお側にお仕えしたい」


この子もこの子で忠誠心が強い。でも、ここでエイダが来てくれるのはちょうどいいタイミングだ。



「エイダってお金欲しくない?」



「欲しくない」


即答。


普通、お金って欲しいものじゃないのかな。

それとも奴隷ということもあってお金をあんまり知らないのか。


「お金って色んなものが買えるんだよ」



「知ってる。でも、そんなのいらない」



「え…持っていれば役に立つものだよ。好きなものを買う時とかさ」



「好きなものはあるけど、お金じゃ買えない」



「え、あるの!?」



「ある」



「参考までに教えてもらっていいかな?」


この子たちの誕生日は本人たちも分からないので、僕のメイドになった日を誕生日にすることにしている。そしてその誕生日はまだ先なのだけど、何か誕生日プレゼントを渡すときの参考にさせてもらいたい。



だってこの子たちって何が好きか分からないんだもん。


前にそれとなく欲しいものがないかって尋ねた時に返って来た言葉が「私たちはトリトス様にお仕えすることが全てです。望みがあるとすれば一生私たちをトリトス様のメイドにさせてください」という感じだ。


これじゃあ、何が欲しいのか本当に分からない。



「だめ」


「え、だめなの?」


「だめ」


「どうしても教えてくれない?」


「だめ」


「そ、そっかぁ…」


あんまり無理強いは出来ないし、これは仕方ないのか。



僕は視線をエイダからアデルに移して同じ問いをしてみることにした。


「アデルは何か欲しいものとかないの?」



「ありますが、私もエイダと同じでトリトス様に教えません」



「え、僕って嫌われてるの?」



「そういうわけではございません。ただ打ち明けずらいこともあるのです」


それを言われてしまうと、これ以上追及はできない。僕は思ったよりも二人から信頼されていないのかもしれない。




そんなことを考える、今日この頃であった。

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