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才能の無い魔法盗み

作者: Scorypo

この世界では、人は偉大に生まれるのではない。そうなることを望んで生まれてくるのだ。


その偉大さとは、成人の日に行われる「マナの覚醒」によってもたらされる。初めてその身に魔力が駆け巡り、己のアイデンティティと未来を形作る、唯一無二の能力を授かる日のことだ。


ある者は竜の炎を操り、ある者は風に囁きかけて従わせる。触れるだけで傷を癒す者や、未来の糸を垣間見る者もいる。


だが、僕、ダン・ファーンに与えられたのは、一冊の本だった。


それは知識の比喩などではない、実在する本だ。黒革の表紙にはルーン文字が刻まれ、そのページは足跡ひとつない砂漠のように真っ白だった。


覚醒の日、同年代の皆が胸にマナの輝きを感じていた頃、僕が感じたのは、虚空から現れたこの本のずっしりとした重みだけだった。


僕の魂には何の力も、何の魔法的な影響も感じられなかった。僕は空っぽだった。この本のページと、まったく同じように。


だから、王立魔法学院の廊下で、僕を「魔術師ダン」と呼ぶ者はいない。彼らは僕の背後で囁き合い、僕がより正確で、より皮肉に満ちていると思うあだ名で呼ぶのだ。


盗人(ぬすっと)」と。


滑稽だろう?天賦の才と生来の力が称賛されるこの場所で、僕はルールから外れた異端として立っている。知識を盗む者、他人の創造性を糧にする寄生虫。


そして、このあだ名にはもっともな理由がある…。


この本は、僕の罪であり、同時に僕の道具だ。その能力は単純かつ破壊的。魔法の盗用。僕の目の前で誰かが魔法を唱えるたび、本が一瞬だけ命を宿したかのように脈打ち、その複雑なルーンが空白のページに刻み込まれ、僕のものとなる。そしてページに触れるだけで、まるでそれが僕の固有能力であるかのように、その魔法を呼び出すことができるのだ。


「またぼーっとしてるのか、ダン?」


この場所で唯一の友人、レオの声が僕を現実に引き戻した。僕たちは巨大な訓練場に立っていた。そこは巨大なマナ結晶が宙に浮かぶ石造りの闘技場で、壁に刻まれた古代ルーンを淡い青色の輝きで照らしている。空気は緊張と、呪文が残した微かな魔力のきらめきで満ちていた。


彼の方を向いて、無理やり笑みを作る。「このテストがどれだけ馬鹿げてるか考えてただけだよ」


僕の言葉に、レオは燃えるような赤毛を揺らして笑った。「基礎のテストだろ、ダン。マナの制御を見せるだけだ。複雑なはずがない」


「君にとってはね」と僕は呟き、大切な本を入れた革の鞄のベルトを握りしめた。「君の中には火の川が流れてる。僕にあるのは空っぽの井戸だけ。誰かがそこにバケツを投げ込んでくれるのを待ってるんだ」


レオは、同情と理解が入り混じったいつもの視線を僕に向けた。彼は僕の能力の真実を知る数少ない一人だった。


「そんなこと言うなよ。君の能力は君のやり方ですごいんだ。ユニークだよ」


「ユニークってのは、寄生虫を丁寧に言っただけだろ」僕は冷たく返し、他の生徒たちが能力を披露するのを眺めた。水を糸のように紡ぐ少女。小さな岩を浮かせて調和のとれた軌道で周りを回らせる少年。すべてが彼らの魂の一部である、生来の能力だ。


「エララ先生が来たぞ」レオが囁き、姿勢を正した。


エララ先生が入場すると、場は静まり返った。彼女は銀色の髪をきっちりと編み込んだ長身の女性で、その瞳は鷹のように鋭い。決して笑うことはなく、その存在だけで規律を保つのに十分だった。


彼女は闘技場の中央に立ち、澄み切った力強い声で言った。「今日の試験は単純です。一人ずつ前に出なさい。求められるのは、安定した『マナの球』を形成し、その後、任意の属性を付与すること。これは力の強さだけでなく、制御と精度を測る試験です。落第した者は、予科をもう一年やり直してもらいます」


緊張の数分が過ぎた。生徒たちは前に進み、ある者は難なく成功し、ある者はつまずいた。稲妻の球が形成されては消え、風の球が激しく回転しては破裂するのを見た。僕の本は、こんな基礎的なものには興味を示さなかった。僕の指の下で、それは静かで、冷たいままだった。何か価値のあるもの、盗むに値するものを待っているのだ。


そして、彼の番が来た。


カイン・デ・ヴァロワ。王国で最も由緒ある魔法貴族の跡継ぎ。プラチナブロンドの髪と、傲慢さがにじみ出る氷のような青い瞳を持つ長身の男。彼は僕を憎んでいた。個人的な憎しみではなく、原則としての憎しみだ。彼の目には、僕の存在は、彼の一族が誇る純粋で正統な魔法という概念への侮辱として映っていた。


カインは自信に満ちた足取りで前に進み、僕を一瞥してからエララ先生に向き直った。


「マナの球だけですか、先生?実に退屈ですね」彼は皆に聞こえるように言った。「もっと面白いものをお見せしましょう」


「構いませんよ」エララ先生は反対せず、むしろ挑戦するかのように細められた目で彼を見つめた。


カインは冷たく微笑んだ。彼が手を上げると、マナが球ではなく、白い輝きとなってその周りに集まった。彼のオーラは強く、純粋で、力に満ちていた。僕には聞こえない言葉を囁くと、光の糸が空中で形を成し、絡み合い、きらめく鎖のようなものを形成し始めた。


「光の束縛(ひかりのそくばく)…」隣でレオが感嘆の声を漏らした。「中級以上の魔法じゃないか!自分の属性に対する途方もない制御が必要だぞ!」


「ふむ!」


その瞬間、僕はそれを感じた。


本の革表紙から、じわりとした熱が伝わってきたのだ。


不快な熱ではない。むしろ、本から放たれる光線のようなものだった。指の下で、微かな振動を感じた。まるで、これまで触れられたことのなかったページが、中で静かにはためいているかのようだった。


一瞬目を閉じると、心の中に金色のルーンが形作られ、流れ、カインが唱える複雑な魔法の軌跡を描いていくのが見えた。本がそれを喰らい、その暗号を解読し、己の所有物として記録していた。


カインの披露が終わり、光の鎖は柔らかなきらめきと共に消えた。一瞬の静寂の後、生徒たちの間で感嘆の囁きが爆発した。カインは僕をまっすぐに見て、傲慢な勝利の笑みを浮かべた。彼のメッセージは明確だった。「これが本物の魔法だ、侵入者め」と。


「見事です、デ・ヴァロワ君。感心するほどの制御力ですね」エララ先生は平坦な声で言い、その冷たい視線をリストに戻した。「次…ダン・ファーン」


僕はその場で凍りついた。すべての視線が僕に注がれる。押し殺した笑い声と、皮肉な囁きが聞こえた。「あいつ、何をする気だ?その本で物語でも読み聞かせるのか?」と誰かが言うのが聞こえた。


深呼吸をすると、手のひらの下で本の温かい脈動を感じた。まるで友人が励ましてくれているかのようだった。僕は闘技場の中央へ歩き、数瞬前にカインが立っていたのと同じ場所に立った。カインの目は僕を追い、悪意に満ちた期待で輝いていた。僕が屈辱を受けるのを待っているのだ。


「ファーン君」とエララ先生が言った。「単純なマナの球で十分ですよ」


僕は彼女を見て、次にカインを、そして自分の本を見た。


「失礼します、先生」僕自身も驚くほど、穏やかでしっかりとした声で言った。「僕も、もう少し面白いことを試してみようと思います」


エララは同意するように顎を引いた。


僕はカインがしたように左手を上げた。


そして右手で本を取り出し、開いた。開いた途端、本は淡い光を放ち、知識が僕の脳に流れ込んできた。


「光の束縛」を形成するために必要な言葉、ルーン、そしてマナの流れを感じた。それは僕の能力ではなかったが、今や僕の知識だった。


「き、貴様…何をしようとしている!?」金髪の彼が怒りに満ちて叫んだ。


僕は目を閉じ、周りからの驚きの息を飲む音を無視した。僕には聞こえなかったが、今や心の底から知っている言葉を囁いた。周囲の希薄なマナが僕に引き寄せられ、僕の盗んだ知識が描いた軌跡をたどるのを感じた。


皆が驚愕する目の前で、光の白い糸が僕の前で形を成し、絡み合い始めた。それは弱々しいものでも、不完全なものでもなかった。カインが披露したものと寸分違わぬ純粋さ、力強さ、そして複雑さを備えていた。もしかしたら、ほんの少しだけ、より輝いていたかもしれない。


「光の束縛(ひかりのそくばく)


目を開けた。光の鎖が僕の目の前で浮かび、致命的な美しさで輝いていた。闘技場は完全な沈黙に包まれた。耳の中で自分の心臓の鼓動が聞こえるほどだった。


カインを見た。彼の口はわずかに開き、氷のような青い瞳は完全な衝撃で見開かれていた。彼の顔から傲慢さは消え去り、信じられないという気持ちと純粋な怒りが入り混じった表情に変わっていた。


次にエララ先生を見た。僕が彼女を見てから初めて、その瞳は冷たくも平坦でもなかった。鋭い好奇心の輝きを放っていた。


僕は魔法を霧散させた。それ以上何も言わず、踵を返して自分の場所に戻り始めた。背後には、耳をつんざくような沈黙だけが残されていた。


僕は魔術師ではなかった。天賦の力も持っていなかった。だがその瞬間、皆が、そして僕自身も理解した。魔法を持たないことが、必ずしも弱いことを意味するわけではない、と。


僕は皆の前で、最初の魔法を盗んだ。そして、その後に起こったことは、まるで罰のようだった。



自分の場所に戻るまでの道のりは、人生で最も長い旅のように感じられた。一歩踏み出すごとに、まるで井戸の底に落ちていくかのような重苦しい沈黙がのしかかる。あまりの重さに、彼らの思考が空中でぶつかり合う音さえ聞こえそうだった。


レオの隣にたどり着いた途端、その堰は切れた。だが、沈黙は爆発するのではなく、囁き声となって次々と漏れ出した。


「ありえない…あいつ、光属性との適性なんてないはずだろ!」僕たちの近くに立っていた青い髪の少女が囁いた。


隣にいた少年が小声で返す。「見たか?カインの動きを完全に模倣してた。同じ動き、同じ輝き。どうやって?」


「あれが奴の能力なのか?模倣?」三人目が、畏怖と軽蔑が入り混じった声で問いかけた。「そんなの…本物の魔法じゃない。イカサマだ」


「イカサマ」というその言葉は、「盗人」よりも深く僕を突き刺した。なぜなら、その言葉には、誰もが神聖視するルールを破る、卑劣な行為だという非難が込められていたからだ。


突如、怒りに満ちた声が囁き声の壁を突き破った。


「貴様!」


カイン・デ・ヴァロワだった。彼は速く、力強い足取りで僕に向かってきた。さっきまで衝撃の仮面を被っていた彼の顔は、今や純粋な怒りの絵画へと変わっていた。その青い瞳は冷たい炎で燃え上がり、両手は固く握りしめられていた。


僕の目の前で止まると、周りの生徒たちは数歩下がり、まるで闘技場のように僕たちを中心に円を作った。


「よくもそんな真似ができたな!」彼の声が闘技場に響き渡った。もはや貴族らしい冷静な仮面を保つ気はないらしい。「答えろ、盗人め!」


大声で放たれた「盗人」という言葉に、僕は凍りついた。それは紛れもない事実だが、面と向かって非難として聞くのはまた別の話だった。


僕は顔を上げ、彼の目をまっすぐに見つめた。「だとしたら、何だ?」声の震えを隠そうとしながら、静かに言った。


彼の怒りは増し、僕の体から発せられる熱を感じるほどに近づいてきた。「これはただの魔法ではない!『光の束縛』はデ・ヴァロワ家に伝わる秘術!その血を引く者しか扱えんのだ!その汚れた手で、よくも神聖な術を汚せたな!」


「君の家系の専売特許だとは知らなかったな」自分でも驚くほど冷たい声で返した。「もう少し秘密の管理を厳重にした方がいいんじゃないか」


僕の言葉は、火に油を注ぐようなものだった。彼の手が上がり、指の周りに光の火花が集まり始めるのが見えた。彼は僕を攻撃するつもりだった。


レオが即座に僕たちの間に割って入り、防御の構えで両手を上げた。「カイン、落ち着け!ここは訓練場だぞ!」


だが、カインの目には僕しか映っていなかった。怒りが彼の理性を曇らせていた。


「そこまで!」


エララ先生の声が、剣の刃のように鋭く、場を切り裂いた。彼女は叫んだわけではなかったが、その命令的な口調は、カインを含め、その場にいた全員を凍りつかせた。彼の指の周りの火花は、即座に消え失せた。


彼女は静かで自信に満ちた足取りで僕たちの方へ歩み寄り、二人の間に立った。まずカインを見た。「デ・ヴァロワ君、感情の制御を失うのは、魔術師が弱さを見せる最初の兆候です。あなたの評価点から20点減点します」


「なっ…」


カインの顔はこわばったが、彼は反論する勇気はなかった。


次に、彼女は僕の方を向いた。その銀色の瞳は鋭く、僕の心の奥底を探っているようだった。彼女の表情は読めなかった。怒っているのか?感心しているのか?それとも、他の者たちと同じように、僕をただの詐欺師と見なしているのか?


「そして、あなた、ダン君」彼女はゆっくりと言った。「あなたは予想外の能力を見せてくれました。少し、興味が湧きましたよ」


彼女は、再び全員に聞こえるように力強い声で宣言した。「本日の試験は終了です。全員、解散しなさい」


生徒たちは、僕とカインにちらちらと視線を送りながら、ゆっくりと動き始めた。だが、僕が安堵のため息をついてレオと一緒に逃げ出す前に、エララ先生は厳しく付け加えた。


「あなたたち二人は別です。デ・ヴァロワ君、ダン君。私の執務室まで来なさい。今すぐに」


全身の血が凍りついた。カインの方を見ると、その目には静かな復讐の誓いが宿っていた。そして、遠ざかっていくエララ先生の背中を見つめながら、鞄の中の本の重さをずっしりと感じた。



訓練場から教員棟までの距離は短かったが、僕にとっては敵地を永遠に歩くような行進に感じられた。一歩ごとに、不安の金床をハンマーで打ち付けられるようだった。


僕はエララ先生の数歩後ろを歩き、カインは反対側の壁際に沿って歩いていた。まるで僕の存在が彼の吸う空気さえも汚すかのように、距離を保っている。僕たちは一言も交わさなかったが、その沈黙は石よりも重く、視線が交錯する一瞬ごとに彼の目から放たれる静かな敵意に満ちていた。


廊下の脇から、生徒たちの好奇の視線が僕たちを追いかけてくるのを感じた。彼らの囁き声は蛇のようで、隅々を這い回り、僕の自信の残骸に噛みついてくる。「盗人」と「詐欺師」。はっきりと聞き取れたのはその二つの言葉だった。


やがて僕たちは、磨かれた黒檀の扉の前にたどり着いた。扉には小さなルーン結晶が刻まれ、淡い銀色の光を放っている。エララ先生は滑らかな動きで扉を開け、中に入ると、僕たちに続くよう手で示した。


彼女の執務室は、他の貴族出身の教授たちの部屋のように豪華ではなかった。むしろ、知識と秩序の神殿のようだった。壁は床から天井まで、濃いオーク材の書棚で覆われ、古い書物や奇妙な魔法道具の重みに軋んでいた。穏やかな光を放つ水晶玉、ガラスの中に保存された伝説の生き物のミニチュア模型、そして複雑な変換魔法陣が描かれた羊皮紙が壁に掛けられている。空気は古い紙と乾燥ハーブ、そして微かなオゾンの匂いが混じり合い、それは規律ある力の香りがした。


彼女は巨大な机の前の二つの椅子を指差した。「座りなさい」


僕は椅子の端に慎重に腰掛け、一方のカインはこの状況にもかかわらず、変わらぬ傲慢さで別の椅子に身を投げ出した。僕は本が入った鞄を膝の上に置き、まるで盾のように抱きしめた。


エララ先生は机の後ろに座り、その細長い指を磨かれた天板の上で組んだ。最初は僕たちを直接見ず、二人の間の虚空の一点をじっと見つめていた。まるで考えをまとめているかのようだった。


「はっきりと言っておきます」ついに彼女が口を開き、その静かな声が緊張を切り裂いた。「今日、訓練場で起こったことは、学術的な競争の域を超えています。それは、魔術師であることの核心に触れる問題です」


彼女は鋭い視線をまずカインに向けた。「デ・ヴァロワ君、あなたがダン君を窃盗で非難したのは重大な告発です。彼があなたの家系に伝わる魔法を使ったという事実以外に、何か証拠はありますか?」


カインの首筋に青筋が浮かんだ。「証拠?証拠は彼がやったという事実そのものです!こいつは」と、僕を軽蔑的に指差しながら言った。「生まれてこの方、何の魔法の才能も示していません。能力があるとしても、それは教授たちにとっても謎。誰もこいつが魔法を使うのを見たことがない。それが突然、何年もの訓練と属性への天賦の適性を必要とする中級の光魔法を使う?ありえません、これは詐欺です!」


「詐欺には手段が必要です、デ・ヴァロワ君。彼が禁じられた魔法道具や、盗まれた魔導書を使ったのを見ましたか?」エララは論理的な冷たさで尋ねた。


カインは一瞬ためらった。「いえ…しかし…」


「ならば、あなたにあるのは家系のプライドに基づいた憶測だけです」彼女は鋭く遮り、その氷のような視線を僕に向けた。まるで僕の防御の層を剥ぎ取り、不安な魂を直接見透かされているようだった。


「さて、あなた、ダン君。あなたは今日、誰も予想しなかったことを見せてくれました。実のところ、カイン君の言い分にも一理あります。あなたのあの光魔法の熟練度は、あなたの能力に関する…あるいは、その欠如に関する全ての報告と矛盾します。説明なさい」


それは僕が最も恐れていた質問だった。乾いた唾を飲み込んだ。何を言えばいい?真実を全て話せば、僕は追放され、もしかしたら囚人になるかもしれない。完全に嘘をつくのは不可能だ、彼女には見破られるだろう。


「僕は…完全には説明できません、先生」僕は言葉を選びながら呟いた。「僕の能力は複雑なんです。普通のやり方では機能しません」


エララは少し身を乗り出し、その視線はさらに鋭くなった。「はぐらかすのはやめなさい、少年。あなたの固有能力は何ですか?覚醒の日に何を授かったのですか?もっとも、答えはすでに推測できていますが」


僕は一瞬黙り込み、カインの燃えるような視線を感じた。どうせごまかしは通用しない。


「本を授かりました」


カインは嘲笑うように眉を上げた。「馬鹿馬鹿しい」と囁いた。


だが、エララ先生は笑わなかった。むしろ、彼女の目はさらに細められ、その視線にあった好奇心は強烈な集中力へと変わった。「予想通りです。その本を見せなさい」


震える手で鞄を開け、黒革の表紙の本を取り出した。僕たちの間の磨かれた机の上に置いた。この荘厳な場所では、それは素朴で古びて見えた。


エララは手を伸ばしたが、触れる直前で止めた。「よろしいですか?」


僕は頷いた。


彼女は指先でそれに触れ、一瞬目を閉じた。彼女が口を開く前に、僕はその失望を感じ取った。「何も感じません。ただの古くて空っぽの本。魔力オーラも、潜在的な力もない。私をからかっているのですか、ダン君?」


「本自体は魔法的じゃないんです」僕は焦りを感じながら素早く言った。「その能力が…」


「茶番は終わりだ」カインが怒りを込めて遮った。「時間の無駄だ。真実を知る方法は一つしかない。『マナ測定』のテストをしてください、先生。彼の属性への天賦の適性が明らかになる。もし光属性への適性がなければ、彼は嘘つきで詐欺師だ」


それは罠だった。完璧な罠だ。僕にはどの属性への適性もないことを知っていた。


エララ先生はカインを見て、次に僕を、そして本を見た。彼女はすっと立ち上がった。「良い考えですね、デ・ヴァロワ君」


彼女はガラスの戸棚の一つに向かい、拳ほどの大きさの透明な水晶を取り出した。戻ってきて、それを僕の前の机に置いた。「手を置きなさい、ダン君。水晶は、あなたが最も強い繋がりを持つ属性の色に輝きます。繋がりがなければ、透明なままです」


これが判決だった。僕は透明な水晶と、カインの勝利に満ちた顔を見た。逃げ場はなかった。


深呼吸をして、震える手を伸ばし、冷たい水晶の上に置いた。


僕は待った。彼らも待った。


一秒。二秒。十秒。


何も起こらなかった。水晶はただのガラス片のように、完全に澄んで透明なままだった。色も、輝きも、何の反応もなかった。それは僕の魔法的な空虚さの、決定的な証拠だった。


カインの顔に、幅広く邪悪な笑みが浮かんだ。「言った通りだ。何もない。空っぽだ。奴は何かトリックを使って俺の魔法を模倣したんだ。こんな詐欺師は学院から追放すべきだ!」


だが、エララ先生は水晶を見ていなかった。彼女は本を見ていた。


何かが起こっていたからだ。


少しだけ開いていた本の最初のページに、淡い金色のルーンがゆっくりと現れ始め、虚空から自らを描き出していた。それは「光の束縛」の複雑なルーンと同じものだった。本は、どういうわけか、僕の心の中にある魔法の記憶、あるいは空気中に残ったその残滓に反応していたのだ。


エララはそれに気づいた。彼女は本の上に身を乗り出し、今度は本物の驚きで目を見開いていた。「これは?」まるで僕たちの存在を忘れたかのように、彼女は囁いた。


彼女はゆっくりと指を伸ばし、ページ上の輝くルーンに触れた。


その指が触れた瞬間、純粋な白い光が本から爆発した。光は一瞬、執務室全体を飲み込み、カインは椅子の上で身を引いて目を庇った。そして、現れたのと同じ速さで消え去った。


再び沈黙が訪れたが、今度は違っていた。それは非難の沈黙ではなく、困惑の入り混じった畏怖の沈黙だった。


エララ先生はまだ本を見つめており、その指は今や輝きが消えたページに触れたままだった。彼女はゆっくりと僕に視線を上げた。その目には、これまで見たことのない表情が浮かんでいた。怒りでも、疑いでもなかった。それは、もっと…発見に近い何かだった。


「デ・ヴァロワ君」彼女は落ち着いた声で言ったが、その声色に新たな響きがあることに僕は気づいた。「あなたは退室してよろしい。この問題はもはや、あなたには関係ありません」


「しかし、先生…!」カインが抗議を始めた。


「退室しなさい、と言いました!」彼女は議論の余地のない厳しさで命じた。


カインは立ち上がり、憎しみと困惑に満ちた最後の視線を僕に投げつけてから、執務室を出て、力強くドアを閉めた。


僕と彼女、二人きりになった。僕と、彼女と、そしてその秘密の一部を明かした僕の本。


「ダン・ファーン」彼女は再び腰を下ろし、その目は本から離れなかった。「あなたの今後の訓練は…私の直接の監督下で行うことにします」


「直接の監督下での訓練?」僕はその言葉の意味を理解しようとしながら、か細い声で繰り返した。


「でも…なぜです?」


エララは透明な水晶を脇にどけ、机の上に開かれたままの僕の本に全ての注意を集中させた。


「あなたの能力は、ダン君、あなたが思うような単なる 模倣 ではありません。模倣とは、魔法の表面的な真似事に過ぎない。あなたが行ったのは完璧な複製です。そして、この本がたった今行ったことは、模倣とは全くかけ離れた何かです」


彼女は今度は非常に慎重に、本の表紙を再び撫でた。「この本はただ魔法を盗むだけではない、そうでしょう?それは魔法の『本質』を記録する。魔法そのもののソースコードを。そしてあなたがそれに触れる時、それはあなたに魔法を唱える能力を与えるのではなく、属性への天賦の繋がりという必要性を飛び越えて、それを唱える方法の即時的な『知識』を与えるのです」


彼女の分析は恐ろしいほど正確だった。僕が何ヶ月もかけて漠然と理解したことを、彼女は数文で要約してしまった。僕はゆっくりと頷き、僕たちの間にあった秘密の壁が崩れ落ちたのを感じた。


「それはあなたを信じられないほど危険な存在にします」彼女は警告を孕んだ静かな声で続けた。「そして、計り知れない価値を持つ存在にも。間違った者の手に渡れば、この能力は王国全体の秘密を盗むことができる。正しい者の手に渡れば、魔法の世界に革命を起こすことができる」


彼女は僕に視線を上げた。その眼差しはメスのように鋭かった。「問題は、あなたの手はどちらの種類か、ということです、ダン・ファーン?」


僕は答えられなかった。そもそも、そんな質問にどう答えればいいのか分からなかった。だから、僕は答えずに黙って立っていた。


「だからこそ、私があなたの訓練を監督するのです」彼女は僕の考えを読んだかのように言った。「あなたを教えるためだけでなく、監視するためにも。今日から、あなたの授業は放課後、この執務室で私と行います。あなたの能力の限界を探り、そしてルールを設ける。そして、私たちの間で起こることは全て、絶対的な秘密とします。よろしいですね?」


「はい、先生」僕は畏怖と安堵が入り混じった気持ちで言った。この厳しい監視への畏怖と、初めてこの秘密に一人で向き合わなくて済むという安堵。



翌日の最初の訓練セッションは、魔法の授業というよりは科学実験のようだった。エララは執務室のドアを閉め、壁の一連のルーンを起動させた。ルーンは淡い銀色の光を放ってから消えた。「沈黙とプライバシーの結界です」彼女は淡々と説明した。「ここで起こることは、誰にも見聞きできません」


彼女は僕の本を部屋の中央にある小さな石の台座に置いた。「今日は基礎から始めます。私は『盗み』のメカニズムを理解したい。私の前で、単純な魔法を盗んでみなさい」


彼女は数メートル離れて立ち、手を上げた。「単純な『光球』の魔法を唱えます。あなたの本をよく観察しなさい。何を感じ、何を見るか、説明してください」


僕は頷き、全ての感覚を本に集中させた。


エララが魔法の言葉を囁くと、温かい光の球が彼女の掌に形成された。全ての初心者が学ぶ基本的な魔法だ。


光が現れた瞬間、僕はそれを感じた。本の表紙に忍び寄る、あの微かな温かさ。それは軽い空腹感、静かな消費への欲求のようだった。


本の空白のページを開くと、そのプロセスを目で見た。淡い金色のインクの線が現れ始め、驚くべき速さと精度で自らを描き出していく。それは単なるルーンではなく、マナの流れ、言葉の音の振動、そして光を形成するために必要な精神的な意図を記述した、複雑な設計図のようだった。


「描いています」僕は驚きの声で言った。「魔法を、地図のように」


「今、使えますか?」エララは光球を維持したまま尋ねた。


僕は指でページに触れた。知識が即座に僕の心に流れ込んできた。それは単なる指示ではなく、まるで植え付けられた記憶のようだった。僕は突如として、周囲のマナを集め、言葉を囁き、それを光球に形作る方法を知った。


もう片方の手を上げ、彼女の動きを真似た。魔法の言葉を囁くと、彼女のものと寸分違わぬ光球が僕の掌に現れた。


エララは僕の球と彼女の球を分析的に見比べた。「興味深い。使われたエネルギーはあなたの体からではない。あなたは周囲の環境から、空気中の自由なマナから直接引き出している。あなたの本は魔法を教えるだけでなく、あなた自身のエネルギーを消費せずにそれを使う最も効率的な方法も教えている。あなたは空っぽの井戸ではないのですよ、ダン。あなたは、導管に近い」


その言葉は僕にとって衝撃だった。「導管?」


「ええ。普通の魔術師は体内のマナを主燃料とし、補助として環境から少し引き出す。あなたは完全にその逆を行っている。だから水晶が何の反応も示さなかったのです。あなたは『源』ではなく『導体』なので、天賦の属性がないのです」


なるほど。まだこの新しい情報全てを消化しきれてはいないが、今は流れに身を任せ、その仕組みを理解していくしかない。


その後の数時間は、一連の体系的な実験に費やされた。エララは様々な属性の魔法を唱えた。小さな水の矢、ミニチュアの石の盾、微風の一吹き。そのたびに、僕の本は同じ静かな貪欲さでそれらを喰らい、僕は寸分違わぬ精度でそれを複製した。


「つまり、限界はあるのですね」しばらくして彼女は気づいた。「エレメンタルの召喚や、広範囲の天候変化など、膨大なマナを必要とする魔法は、現時点でのあなたの伝導能力を超えている可能性があります。本はそれを盗めても、あなたの体がそのエネルギーの流れに耐えられないかもしれない」


そして彼女は、僕が予想していなかった次の段階の授業に移った。


「今度は、意識的に盗みなさい」彼女は古い羊皮紙を机に置きながら言った。「これは単純な『ルーンの錠』の魔法です。私は唱えていませんが、ここに書かれています。羊皮紙に片手を、本にもう片方の手を触れなさい。あなたの能力が、書かれた魔法にも機能するかどうか見たいのです」


僕はためらった。これは違う。空中で唱えられる魔法を盗むのは受動的で、反射のように感じられる。だが、羊皮紙から直接魔法を盗むのは…意図的な侵害のように感じられた。


「さあ」彼女は拒否を許さない口調で促した。


深呼吸をした。左手を羊皮紙の冷たいルーンの上に、右手を僕の本の表紙に置いた。


今度の感覚は全く違っていた。温かさはなく、引かれる感覚があった。まるで本が僕の腕を通して、ページからインクを吸い上げているかのようだった。少し不快だった。


僕の本の新しいページにルーンが形成されていくのが見えたが、それはより遅く、より骨が折れる作業だった。


ようやく終わった時、僕は軽い疲労を感じた。


「成功しました」僕は手を上げながら言った。「でも、いつもよりずっと難しいです」


「当然です」とエララは言った。「あなたはただの魔法を盗んでいるのではない。固定され、保護呪文で守られた知識を盗んでいるのです。しかし、これは無限の可能性を開きます。図書館、古代の書庫、他の魔術師の本…全てがあなたの潜在的な標的となる」


彼女は真剣な眼差しで僕を見た。「そして、それが今日の最も重要な教訓に繋がります、ダン。あなたの能力は実に規格外です。あなたは特定の魔法を持つのではなく、全ての魔法へのアクセス権を持っている」


彼女は立ち上がって窓辺へ歩き、遠くの学院の塔を眺めた。「普通の魔術師は、自分の属性というレンズを通して世界を見る。火の魔術師は炎の中に解決策を見いだし、水の魔術師は流れの中にそれを見る。しかし、あなたは全てのレンズを見ることができる。いつ、どれを使うべきか、そして最も重要なのは、いつ、どれも使うべきでないかを学ばなければなりません」


彼女は僕の方を向き直った。その目には冷たい知性の輝きがあった。「あなたの最初のレッスンは、いかに盗むかではなく、なぜ盗むかです。そして、我々が強力な魔法に移る前に、あなたはこの質問に答えなければなりません。何にでもなれる時、あなたは誰になることを選びますか?」


彼女は、執務室の沈黙の中に響き渡るその質問を僕に残した。初めて、僕の訓練は魔法を学ぶことではなく、僕が誰であるか、無限の力の入り口に立つ盗人、ダン・ファーンが誰であるかを学ぶことになったのだ。



その後の数週間は、秘密と骨の折れる努力の霧の中で過ぎていった。


僕の生活は二重の存在へと変わった。昼間は、ダン・ファーン。皆から避けられ、教室の隅に座り、目立たず、参加もしない物静かな生徒。カインからの疑いと静かな敵意に満ちた視線に耐え、嘲笑から用心深い好奇心へと変わった生徒たちの囁き声にも耐えた。彼らは僕を、機が熟すのを待つ潜在的な脅威と見なしていた。


だが、夜になり、廊下が静まり返り、明かりが消えると、僕は変貌した。エララ先生の結界で守られた執務室の扉の向こうでは、僕はのけ者の生徒ではなく、未知の領域を探る唯一の探検家だった。彼女が名付けた通り、僕は魔法の「導管」だった。


先生の訓練は厳しく、体系的だった。それは派手な魔法を学ぶことではなかった。理解することだった。


「理解できないものを、ただ盗むことはできません」エララはいつも繰り返した。


彼女は僕にマナ理論、属性の歴史、ルーン魔法陣の哲学を学ばせた。僕が盗んだ全ての魔法を分析させ、その基本要素である「意図」「言葉」「経路」に分解させた。


「普通の魔術師は魔法を『感じる』」ある晩、単純な風の盾の構造を分析しながら彼女は言った。「しかし、あなたはそれを『思考』しなければならない。そのメカニズムを見なければならない。あなたの力は感情ではなく、詠唱の背後にある論理にあるのです」


時が経つにつれ、僕はどんな属性の魔法でも読み解くのが上達していった。上級の魔法の模倣でさえ、かなりのレベルまでマスターした。


そしてゆっくりと、僕は変わり始めた。かつては単なる受動的な道具だった僕の本は、僕の精神の延長となった。僕はその飢えを微かに刺激して、たとえ強力でなくても、周りの魔法を感じる方法を学んだ。かつては退屈で静かだった学院の廊下は、今や微かな魔法の残滓で満ちていた。授業に遅れた生徒が唱えた加速の魔法の残り香や、書庫の周りにある微かな保護オーラを感じることができた。


親友のレオは、僕と現実世界との唯一の繋がりだった。彼は僕の変化に気づいていたが、その源を理解してはいなかった。


「最近、なんだか落ち着いてるな」ある日、騒がしい食堂で昼食をとりながら彼が言った。「でも、怯えてる時の静けさじゃない。何か違う。まるで、誰も知らないことを知ってるみたいだ」


僕は軽く微笑んだ。「ようやく本の読み方を学んだだけかもよ?」


レオは笑ったが、その目は好奇心に満ちたままだった。


「そうか。頑張れよ、ミステリアス・ダン」


「頼むから、恥ずかしいあだ名で呼ばないでくれ」


レオはまた笑った。


「了解、勤勉な友よ」レオはそう言うと、僕の昼食から肉を一切れ取った。


僕は長いため息をついた…。


「ところで、カインはまだお前を見張ってるぞ。実技訓練のたびに、新しくて複雑な魔法を唱えては、お前の方を見るんだ。まるで、もう一度盗んでみろと挑発してるみたいに。奴はお前を誘い出そうとしてる」


それは知っていた。カインが力を誇示するたびに、僕の本が脈打つのを感じていた。あの強力な魔法を記録したいという、微かな欲求。しかし、僕はエララの指示に従っていた。「追い詰められるまで、決して手札を見せてはいけません。今のあなたにとって、謎は最強の盾です」


だから、僕は彼を無視した。一般の授業では最低限のことだけをこなし、まだ盗んでいない単純な魔法の形成にわざと失敗したりして、皆をさらに混乱させた。彼らは僕が一度は完璧に「光の束縛」を使いこなし、次には単純な火の魔法で蝋燭に火をつけるのにさえ苦労するのを見ていた。この矛盾が、彼らの目には僕をさらに奇妙な存在に映した。


転機は、ある深夜に訪れた。エララは僕たちのために、上級教授しか入れない図書館の一部門である禁断の書庫への特別な許可を得てくれた。その場所は想像していたような暗く恐ろしい場所ではなく、静かで荘厳で、空気は古代の知識の力で満ちていた。


「ここには、もはや使われなくなった魔法を収めた本があります」エララの囁き声が静寂に響いた。「古代の、中には危険な魔法も。あなたの本が、何世紀も誰も見ていないものを吸収できるか試したいのです」


彼女は石の台座に銀の鎖で縛られた本を指差した。「これは『朧げな影の書』。視覚的知覚を操る魔法が収められています。幻覚ではなく、物体の周りの光を実際に屈折させる、真の隠蔽魔法です」


「なぜ禁書に?」僕は慎重に近づきながら尋ねた。


「完全な隠蔽は、弱い魂を裏切りやスパイ行為に誘惑するからです。倫理に反する方法で使おうと考える者もいるかもしれません」


「例えば?」と僕は尋ねた。


「女子更衣室を覗くとか、でしょうか」


「なるほど、答えが明らかな質問をしてすみません。続けてください」


「ふむ?」エララは不思議そうに首を傾げた。


僕は向き直り、石の台座に置かれた本に近づいた。


「ふん、とにかく、魔法を模倣してみなさい」


僕は縛られた本に片手を、自分の本にもう片方の手を置いた。今度の感覚は強烈で、まるで冷たい電流に手を突っ込んだかのようだった。古い本からの激しい抵抗を感じた。まるで、何らかの意識がそのページを守っているかのようだった。


盗みのプロセスは何分も続き、額から汗が噴き出すのを感じた。終わった時には息が切れ、何マイルも走ったかのような激しい疲労を感じた。


「成功しました」僕は疲れた声で言い、自分の本に描かれた複雑なルーンを見つめた。それは今まで見た何とも違い、鋭い曲線と角で満ちていた。


「よろしい」とエララは言った。「今は休みさない。今夜、それを使おうとしてはなりません」


僕も同感だった。禁断の魔法がどのような肉体的、精神的な影響を及ぼすか、誰にも分からないのだから。


だが、運命は別の考えを持っていた。


寮への帰り道、僕は学院の庭園を見下ろす外の廊下を通ることにした。満月が石畳の通路を銀色に照らしていた。僕は疲れ果てていたが、ある種の満足感も感じていた。


突然、二つの建物の間の暗い路地から声が聞こえてきた。普通の声ではなかった。くぐもった声と、傲慢で脅迫的な口調で話す別の声。


「はっきり言ったはずだ。この区域は俺のものだ。ここで行われる商売は、全て俺を通して行われる」


その声はすぐに分かった。カイン・デ・ヴァロワ。


好奇心に駆られ、僕は大きな石柱の陰に隠れながら路地の端に近づいた。月明かりの下で、その光景ははっきりと見えた。


カインは、怯えているように見える二人の一年生と対峙していた。一人は「光の束縛」に似ているが、より細い光の糸で壁に押さえつけられていた。もう一人は膝をついており、彼の前の地面には小さな箱が開かれ、中には磨かれていない小さなマナ結晶が入っているようだった。


「これは僕の家の鉱山からの結晶です」膝をついた生徒が震える声で言った。「学費を稼ぐために、少し売っているだけなんです」


「お前の家の領地から出るものは全て、デ・ヴァロワ家の利益となる」カインは冷たく言った。「それに、お前はそれらの結晶を売る許可を得ていない。これはデ・ヴァロワ家に対する明白な窃盗だ」


なんという皮肉だ。彼が窃盗について語っている。


「今から利益の半分を俺に渡すか、さもなくば学院の管理部に不正取引の罪で報告してやる。そして、こいつが治療棟で一晩過ごすことになるよう、取り計らってやる」カインは力を込め、光の束縛がより強く輝き、押さえつけられた生徒が苦痛に呻いた。


全身の血が凍りついた。これは単なるいじめではない。恐喝であり、権力の乱用だ。これが、教授たちの目の届かない場所での、カイン・デ・ヴァロワの真の姿だった。


その瞬間、僕は考えなかった。状況を分析しなかった。忍耐と謎についての全てのエララの教えは、この露骨な不正義の前で蒸発した。僕が感じたのは、冷たい怒りだけだった。


僕は柱の完全な影の中へ一歩下がった。新しい魔法、朧げな影のページの魔法が書かれた本を開いた。訓練もしていなければ、その結果も知らなかった。だが、知識はそこにあった。僕の心の中に、はっきりと。


僕は複雑なルーンに手を置いた。舌にまとわりつくような奇妙な言葉を囁いた。閃光も音もなかった。代わりに、奇妙な感覚がした。まるで周りの世界が少し歪んだかのようだった。自分の手を見ると、それが半透明になり、そして完全に消えた。


成功した。僕は不可視になった。


深呼吸をして、柱の陰から出て、静かな足取りで路地に向かった。僕は月夜の亡霊、敵の全ての魔法を懐に忍ばせた亡霊だった。そして初めて、僕は盗むことを計画していなかった。


守ることを計画していた。



不可視のまま動くのは、想像を絶するシュールな体験だった。それは単に姿が見えないというだけでなく、存在そのものが希薄になる感覚だった。空気が僕の周りを、まるで僕が存在しないかのように流れ、月光は僕を通り抜けても影を落とさない。慎重に運んだ足音は、冷たい石畳の上で何の音も立てなかった。僕は幻、現実の海を漂う束の間の思考だった。


路地の入り口に近づくと、心臓が胸の中で激しく鼓動し、その音だけで僕の静かな存在がバレてしまいそうだった。その瞬間、カインは僕に半ば背を向け、目の前で震える手で散らばった結晶を集めている生徒に全ての注意を集中させていた。もう一人の生徒はまだ壁に縛り付けられ、痛みと恐怖で顔面蒼白になり、光の束縛がゆっくりと、しかし残酷なリズムで脈打っていた。


「急げ」カインは焦れた口調で言った。「お前らみたいなクズに費やす時間は一晩中あるわけじゃない」


今がその時だった。複雑な計画はない。僕にあるのは、盗んだ知識で満たされた本と、僕の行動を導く冷たい怒りだけだった。


僕は右手を上げ、左手はマントの下で本に密かに触れたままにした。本を見る必要はなかった。触れたページは、僕の一時的な記憶に刻み込まれている。僕は訓練場でカイン自身から盗んだ「光の束縛」の知識を呼び起こした。周囲のマナが僕の周りに集まり、僕の静かな意志に応える見えないエネルギーの流れを感じた。


僕は低い声で魔法の言葉を囁き、彼が使っている束縛そのものに魔法を向けた。


僕の体はまだ見えないので、手から光は放たれなかった。だが次の瞬間、奇妙なことが起こった。生徒を壁に縛り付けていた光の束縛が突如激しく輝き、震え、そしてまるで電球が切れたかのように、淡い閃光と共に消え去った。


解放された生徒は膝から崩れ落ち、息を切らしながら、薄赤い跡が残る手首を押さえた。


カインは即座に彼の方を向き、完全に困惑して目を見開いた。「何…?」彼は自分の手を見て、次に解放された生徒を見た。まるで自分の魔法が勝手に失敗したことが信じられないかのようだった。「どうして…?」


僕は彼に考える時間を与えなかった。彼の集中が乱れている間に、僕は別の魔法を呼び起こした。エララ先生に何度も盗ませられ、分解させられた単純な魔法の一つ、「風の一撃」だ。基本的な魔法だが、時には最も単純な道具が最も効果的だ。


僕は集中させた見えない風の一撃を、膝をついた生徒が集め終えたばかりの結晶が入った小さな箱に向けた。箱は彼の手から飛び、石畳の路地を滑って、たった今縛られていた生徒の足元で止まった。


「それを持って行け!」僕は叫んだが、自分の本当の声は使わなかった。単純な音の魔法の知識を使い、声色を変え、まるで四方八方から同時に聞こえるかのように、より深く響かせた。


二人の生徒は恐怖と混乱の中で飛び上がった。彼らは顔を見合わせ、箱を拾い上げると、振り返ることなく路地から走り去った。カインだけが、見えない敵と対峙して取り残された。


「誰だ!?」カインは叫び、怒りと警戒心で目を光らせながら、ぐるりと一回転した。「姿を現せ!対峙することもできないほどの臆病者か?」


彼は掌に光を集め始め、輝く球を形成した。それは暗い路地を照らし、隅々まで明らかにした…僕を除いて。僕は彼から数メートル離れた場所に完全に静止し、彼の傲慢な顔に恐怖が忍び寄るのを見ていた。彼は未知と対峙していた。そしてそれこそが、貴族を何よりも恐れさせるものだった。


僕は最後の仕上げを加えることにした。訓練の授業で別の生徒から盗んだ、音を模倣する単純な音響魔法を思い出した。


僕は低い声で囁き、カイン自身の声を真似て、その声を周りの壁から響かせた。「どうした?影が怖いのか、カイン・デ・ヴァロワ?」


彼はその場で凍りついた。自分の声で恐怖を非難されるのは、明らかに効果があった。彼の目は見開かれ、呼吸が速くなった。「お前は誰だ!?」


僕は答えなかった。代わりに、ゆっくりと静かに路地の外へ後退し始め、彼を彼の悪魔と疑念と共に置き去りにした。安全な角までたどり着くと、隠蔽の魔法を解いた。体が突然現実に戻り、まるで重みが虚空を満たしたかのように感じた。壁にもたれかかり、疲労がどっと押し寄せるのを感じた。それは肉体的な疲労だけでなく、精神的、神経的な疲労だった。


二つの魔法を連続して使い、さらに複雑な隠蔽魔法を使ったことで、僕の集中力は消耗しきっていた。だが、息を取り戻そうと喘いでいると、これまで経験したことのない新しい感覚が内側から湧き上がってきた。それは単なる満足感ではなく、力の感覚だった。魔法の力ではなく、影響力の力。


僕はカイン・デ・ヴァロワと対峙した。決闘で彼を打ち負かしたのではない。彼のプライドを打ち負かしたのだ。僕は彼の心に疑いと恐怖の種を植え付けた。その種は暗闇の中で育つだろう。


僕はまだ温かい本を見つめた。エララ先生が言っていたことが分かり始めていた。何を盗むかではなく、盗んだものをどう使うかが問題なのだと。今夜、僕は力を誇示するために魔法を使ったのではない。弱い者を守るために使ったのだ。僕は魔術師ではなかったし、伝統的な意味での盗人でもなかった。


僕は何か別のものだった。影の中の力。そしてそれが、なぜか、僕をこれまで以上に本物だと感じさせた。



翌日、いつものように学院の正門をくぐると、奇妙な噂が聞こえてきた。どうやら、あの夜路地を彷徨った亡霊は、混乱し怒れるカイン・デ・ヴァロワだけでなく、小さな伝説をも残していったらしい。学院の亡霊、影で介入し、いじめっ子を止め、不当な扱いを受ける生徒を助ける謎の守護者についての噂が、野火のように広がり始めていた。物語は語られるたびに膨らみ、ある者は古い教授の霊だと言い、またある者は学院の魔法そのものが呼び出したエーテルの存在だと主張した。


僕は食堂や廊下でこれらの囁き声を聞きながら、奇妙な乖離感に襲われた。彼らは僕について話しているが、それを知らない。僕は彼らの中に座っている、相変わらず誰からも無視される生徒、ダン・ファーン。その一方で、彼らは僕のもう一つの人格を称賛していた。


僕はエララ先生に全てを話した。無謀な行動、彼女が定めた第一のルールである「謎」を破ったことを叱責されると予想していた。しかし彼女は代わりに、黙って耳を傾け、その鋭い瞳で僕の顔を探り、むしろ起こったことを聞いて少し嬉しそうにさえ見えた。


「罰する必要はありません。あなたはすでに、私の根本的な問いに答えましたから」僕が話し終えると、彼女はついに言った。


「どの問いですか?」僕は困惑して尋ねた。


「『何にでもなれる時、あなたは誰になることを選びますか?』」彼女は最初の質問を繰り返した。「あなたは盾になることを選んだ。結晶を盗んで私利私欲を満たす代わりに、守るべき者を守るためにその力を使った。それがあなたの真の本質です」しかし、彼女の声には警告の色があった。「ですが、それは危険でもあります。カインは諦めないでしょう。彼は今、あなたが誰なのかを知ることに執着している。彼は探し、一族の影響力を使って、本来見るべきでない記録にアクセスしています」


彼女は正しかった。カインはより静かで集中的になったが、それは恐ろしいやり方でだった。彼の表面的な傲慢さは消え、氷のような決意に取って代わられた。僕は彼が深夜まで図書館にいるのを見かけた。珍しい魔法の能力や謎のアーティファクトに関する本を研究していた。彼は僕を捕まえるための証拠を見つけようとしていた。


避けられない対決は、双子星祭の間に訪れた。それは学院で毎年開催されるイベントで、最高の生徒たちが王国の貴族や高位の魔術師たちの前で魔法決闘を繰り広げる。


僕はただの観客であるはずだったが、カインには別の計画があった。


祭りの最高潮、彼が決勝戦で圧勝した後、カインは大闘技場の中央に立ち、賞品の受け取りを拒否した。彼は音声を拡大する水晶を手に取り、満員の観客席に響き渡る声で言った。


「紳士淑女の皆様、尊敬する教授方。この栄誉を受け入れる前に、解決すべき問題があります。我々の中に、臆病者が隠れています。影に忍び込み、魔法と自然の法則を弄ぶ盗人、今や『学院の亡霊』として知られる者が」


観客席は驚愕の沈黙に包まれた。僕はレオの隣で後方の席に座っており、顔から血の気が引くのを感じた。


「私は何週間も調査を重ねました」カインは続け、その目はまるで僕を探すかのように観客席をさまよった。「そして、この現象に状況が一致する生徒は、この学院にただ一人しかいない。天賦の能力を持たないが、突如として魔法の熟練を示した生徒。真の力の代わりに、謎の道具を与えられた生徒。お前のことだ…ダン・ファーン!」


全ての頭が僕の方を向いた。何千もの視線が僕を突き刺すのを感じた。隣のレオは衝撃で凍りついていた。貴賓席では、エララ先生がわずかに立ち上がり、その顔は氷の仮面のようだった。


「挑戦する、ダン・ファーン、この詐欺師め!」カインは叫んだ。「今、ここで。公式な決闘だ。お前の全てのトリック、全ての盗んだ魔法を使え。お前の亡霊が、白日の下に耐えられるか見せてもらおう」


それは完璧な罠だった。拒否すれば、僕は臆病で有罪に見える。受け入れれば、魔法界のエリートたちの前で全ての秘密を明かさなければならない。


僕はエララを見た。彼女はほとんど見えないほどゆっくりと頷いた。それは同意ではなく、メッセージだった。「選択はあなた次第です。私はあなたをこの瞬間のために準備させました」と。


以前の僕なら、全てを無視して立ち去っただろう。だが、僕の能力がここまで進化した今、もう逃げはしない。


僕は立ち上がり、石の階段を降りていった。一歩一歩が、まるで最後の一歩のように感じられた。闘技場の床にたどり着くと、カインが勝利の笑みを浮かべて待っていた。


「ようやく穴から出てきたな、盗人め」僕たちが向かい合うと、彼は囁いた。


「その言葉を聞くのはうんざりだ」僕は自分でも驚くほど落ち着いた声で返した。「復讐したいなら、やってみろ」


審判が決闘の開始を宣言した。カインは時間を無駄にしなかった。彼は光の魔法の弾幕を放った。純粋な光の槍が、致命的な速さで僕に向かって飛んできた。


僕は反撃しようとはしなかった。代わりに、訓練したことを実行した。


僕は本に触れ、訓練中に盗んだ何十もの防御魔法の知識を呼び起こした。石の盾が地面から隆起して最初の槍を防いだ。風の波が二本目を逸らし、水の障壁が空中に形成されて三本目を消し去った。僕は滑らかに動き、異なる属性から防御を編み出した。全ての動きが計算され、論理的だった。


観衆は驚愕の沈黙の中で見ていた。彼らは一人の生徒が、火、水、土、風、そして光の魔法を同等の熟練度で使うのを見ていた。それは不可能であり、既知の魔法の法則全てに反していた。


「それだけか、カイン・デ・ヴァロワ?」僕は落ち着いた声で尋ねた。「これは戦いと呼ぶには程遠い。ただの力任せの誇示だ」


彼の怒りは増した。彼はより複雑な魔法、鎖、槍、光の弾丸を使い始めた。そしてそのたびに、僕の本が解決策を囁いてくれた。僕は彼が魔法を唱えるのと同時にそれを盗み、分析し、弱点を見つけ、別の魔法でそれを打ち消した。僕は彼と戦っているのではなく、単に怪我を避けるための適切な反応を示しているだけだった。


「どうして…どうしてそんなことができる!?」彼は叫び、疲労が見え始めた。彼は膨大な量のマナを消費していたが、僕はただの導管で、闘技場の満ちた雰囲気からエネルギーを引き出していた。


「簡単なことを教えてやろう、カイン」僕は静かに言った。


「お前は魔法を贈り物、生まれながらの権利だと思っている」僕はゆっくりと彼に近づきながら言った。「だが僕は、それを言語だと見ている。そしてお前は、一つの訛りでしか話せない。僕は、その全てのアルファベットを学んだんだ」


「何を馬鹿なことを言っている!偉そうに、この詐欺師が!」彼は叫び、絶望の瞬間に、残った全ての力を一つの破壊的な魔法、僕が見たことのない一族の秘術に集めた。彼の周りの空気を歪めるほど強力な、純粋な白いエネルギーの巨大な光線が、僕に向かって放たれた。


僕はそれを防げないことを知っていた。それを盗んで分析する時間はなかった。


だから、僕は試みなかった。


代わりに、僕は「朧げな影」の魔法が書かれたページに触れた。光線が僕に届く寸前に、僕は魔法の言葉を囁いた。


僕は消えた。


破壊的な光線は僕が立っていた空間を通り抜け、闘技場の遠い壁に衝突し、観客席全体を揺るがす爆発を起こした。


僕はカインの真後ろに再び現れた。彼は息を切らし、背を向け、自分が引き起こした破壊を見つめ、勝利したと思い込んでいた。


僕は攻撃魔法を呼び出さなかった。その必要はなかった。


僕はゆっくりと手を伸ばし、彼の肩に置いた。


「言っただろ…お前は戦い方が下手だ」と、彼の耳元で囁いた。


「なっ…」彼は完全な衝撃で目を見開き、後ろを振り返る勇気もなかった。


彼に触れた瞬間、僕はもう片方の手で本に触れた。魔法を盗もうとしたのではない。何か新しいこと、一度も訓練したことのないことを試した。彼のマナを読み取り、僕の本が見るように、彼のソースコードを見ようとした。


一瞬、僕は幻視に襲われた。強く純粋だが、乱れて暴力的な黄金の光の川が見えた。何年ものプレッシャー、一族からの期待、そして十分に優れていないことへの恐怖を守るために築かれたプライドの盾が見えた。


そして僕は彼の耳元で、ダンとしてではなく、亡霊として囁いた。


次の瞬間、僕は自分の声をカインの声に変えて囁いた。「お前の力は悪くない、カイン。だが、使い方が下手だ。まず使い方を学んでから、俺に挑め、この弱虫が」


僕は手を引いた。カインは、その言葉の重み、自分の魔法の本質を自分以上によく理解する者がいるという絶対的な衝撃から、膝から崩れ落ちた。


闘技場は沈黙に包まれた。歓声はなく、深い畏怖があった。僕は観衆を、微笑むエララ先生を見た。彼らはもはや僕を盗人とも、亡霊とも見ていなかった。有望な魔術師への尊敬の眼差しがあった。


僕は背を向け、カインを膝まずかせたまま闘技場を去った。出口で待っていたエララ先生の方へ歩いていくと、彼女の顔には初めて、輝くような笑みが浮かんでいた。


「今日、あなたは彼らに新しい名前を与えました」彼女は静かに言った。


「それは何です?」と僕は尋ねた。


「盗人でも、亡霊でもない。『記録官(アーキビスト)』。全ての魔法を読み、記録する者」


僕は手の中の本を見た。もはや重荷でも、恥ずべき秘密でもなかった。それは僕のアイデンティティだった。僕には天賦の力は必要なかった。なぜなら、僕には全ての力への鍵があるのだから。


「悪くない響きだ。気に入った」僕は微笑んで言った。


僕の物語はここで終わったのではない。始まったばかりだ。世界は本で、失われた魔法で、読まれるのを待つ秘密で満ちている。そして僕、記録官ダン・ファーンは、全世界の魔法を読み始めようとしていた。

お読みいただきありがとうございます。


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