『夢の風船』『鉤の遊び』
『夢の風船』
ぼくは自由に、なりたくて、
夢の風船、膨らませたよ。
赤鬼みたく、頬赤く染め、
夢を吹き込み、結び目つくり。
それとばかりに、空に飛ばせば、
風船は、ふわふわ飛んで、
ゆるーんと、落ちた。
ぼくは何度も、繰り返したよ。
蜂に刺されて、ぱちんと破裂。
ぼくは悲しく、俯いた。
裸のお腹に、結び目ひとつ。
お臍がぼくに、微笑んだ。
きみもまた、風船さ。
大地はそれを、見護ってたよ。
『鉤の遊び』――柳田國男「遠野物語」より
「屁ぇひったんは、誰かいな?」
童のひとり、問いかけり。
「屁ぇひったんを、当てましょう」
巫女の娘、萱を手折って、
鉤を作りて、目を閉じた。
童たちは車座くんで、
ぐるりぐるりと輪を描き、
声を揃えて謳ったよ。
なむさいむさい
べろべろの鉤は
とうたい鉤で
だれやひった、かれやひった
ひった者に、ちょっちょ向け
娘、目を開け、鉤を手に、
「ひったんは、しゅうちゃんですね」
云われた男子、驚いた。
「ひったん誰や、問うたるとき、
おらは気づいてしまったさ。
人のせいには、ならぬなり」