3.突然のお誘い
更新は2日に一回はできるかな…?
教室には本日2度目となる静寂が訪れる。
その理由がまたもや俺というのは間違いないのだが…。
「清隆くん?聞いてるの?」
俺の顔の前で「おーい」と言わんばかりの顔をしながら覗き込んでくる。
ここは嘘でも恥ずかしがるのが定石というものだろう。
「せ、先輩。近いですよ」
そういうと、「ちょっとからかっただけだよ」と言うかと思ったが予想外の反応をする。
急に顔を赤らめながら、小さい声でごめんと呟くと俺から少し距離を取る。
誰もが予想していなかったこの状況を見てクラスの中にはある話が出る。
「もしかして、藤ノ宮って会長とデキてるんじゃ…?」
一瞬でクラスに残っていた人たちの間にその思考が伝染してゆく。
そして、そこらじゅうからあることないこと色々な話が出てきてしまっている。
このままじゃ非常にまずい。
なんとかして打開しなければ…、
「とても大切な話があるの。場所を変えますね」
俺には拒否権がなかったらしく、すぐに手を無理やり引っ張られる。
俺は仕方なくついていくことにする。
………
……
…
「すいません。今回の件は断らさせていただきます」
「理由を聞いてもいいですか…?」
「はい。第一に、俺なんかに生徒会役員が務まるとは到底考えれない。
それに、俺はただ平凡で至って普通の高校生活を楽しみたいだけなんです。
生徒会なんかに入ったら、そうもいかなくなるもは目に見えてわかります」
俺は、「それでは」と言い部屋を後にしようとする。
しかし、何やら腕の方に柔らかい何かが触れているように感じる。
恐る恐る、自分の手を辿ってみると北川綾音が俺の手を握っていた。
人生最初で最後かもしれない女子からのボディータッチ。
数秒だったが俺はその感触を肌で感じ記憶する。
「どうかお願いします!」
手を握られながら、上目遣いでお願いしてくる。
手を握る+上目遣い+可愛い=死
「わかった。表立っては行動したくはないができるのか?」
体が言うことを聞かない。
頭では断ったほうが良いとわかっているのにどうしても口が動く。
そして、今からは断れそうにもない雰囲気になり生徒会長は期待の眼差しで喋る。
「では、改めまして。この学校で生徒会長をやらしてもらっている北川綾音です。
少し強引に引き込んじゃったかもしれないけど、これからはよろしくね」
「はあ」
生徒会長は快く俺の入会を受け入れてくれているが他のメンバーはそうでもない。
眼鏡をかけ、鋭い視線で俺の方を睨んできている輩もいる。
おっと、輩では失礼だな。生徒会副会長だ。
「俺は認めないからな。たとえ生徒会長の推薦があろうと、絶対に」
やはり思っていた通りのことを口にした。
正直にそういう事を言われるとやはり心に来るものがあるな。
生徒会室を見渡すと沢山の書類や資料、ポスターなので埋め尽くされている。
やはり生徒会は仕事が多いのだろうか、入ってそうそう俺は早速後悔をする。
帰り道。
すっかり日が沈みかけ、空が綺麗なオレンジ色に染まる頃。
いわゆる黄昏時というやつだ。
俺は一人で帰るつもりだったのだが…、
「ねぇねぇ、清隆くん。好きな人いる…?」
唐突に女子の恋愛トークに巻き込まれてしまった。
もっぱら、俺はなるべく会話に参加しないようにしていた。
その甲斐なく会長が急に俺に話題を振ってきたのだ。
「清隆くんの好きな人、私も気になるな」
少しこちらの顔を覗きこみ気味の姿勢で七条は言う。
そう、何故かこいつも一緒に帰っているという意味不明な状況が出来上がっているのだ。
おそらく、彼女はこのクラス。いや、学年一の美女と言っても良い程容姿は整っている。
「いや、好きな人なんかは特にいないな。まだこの学校の生徒のことをあまり知らない」
俺は取り敢えずは誤魔化したつもりだったが…、
「あ〜。恥ずかしくて言えないのかぁ。うんうん、そうだよね」
何か勝手な解釈をされてしまっているような気がする。
俺の直感が彼女の誤解を解くべきだと叫んでいるがそんなことは出来そうにもない。
それに、俺をからかっているのか七条までもが会長に便乗している。
これだから、女子が嫌いなんだ。
その時、近くの茂みから何やら猫の鳴き声が聞こえてくる。
俺はすぐにその鳴き声の主は何なのかに気づくと、この場を切り抜ける活路を見出す。
今日の朝一緒に登校してわかったのだが、会長は大の猫好きなのだ。
朝も、猫を見つけては直ぐに駆け寄り、猫を撫でるという動作に走っている。
案の定、今の鳴き声を聞いた彼女は目を輝かせながら鳴き声の元へと走ってゆく。
「うわっ!君、可愛いね。お名前はなんていうの?」
そんな事猫に伝わる訳もなく目の前の猫はふてぶてしく「ニャ〜」と鳴く。
予想外にも七条も猫好きだったようで二人の視線が俺から外れる。
そうと気付いた俺はすぐさま走り出し家の方向へと向かう。
彼女たちには悪いが、俺の平凡な学園生活のためには仕方のないことだ。
後ろからは「待って!」と聞こえてくるかと思ったが聞こえてこなかった。
余程彼女たちは猫に夢中なのだろう。
走りながら思ったが、俺、今日で女の子から2回も逃げているのでは…?
前までは女子が俺から逃げていたのだがなんとも罪な男である。
うんでも、平凡な学園生活のためには必要な犠牲も多くある。
何となく自分の中で言い訳が終わった時にはもう我が家の前にいた。
もうあたりはすっかり暗くなっている。
俺は満足そうな顔をしながら家の扉を開く。
すると俺の帰りを待ちわびていたのか母が俺の胸に顔を埋めかす。
「きよちゃん。今日は大丈夫だった…?」
「ああ、それなりに楽しめた。あと、俺はもうあの頃の俺じゃない」
「うん、そうね…」と言うと食卓につく。
父は今日は遅くまで仕事があるようで今は家にはいない。
俺と母は頂きます。を言うとご飯を口の中にかきこむ。
こうして、俺の波乱万丈の学校生活の初日が幕を閉じる。
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