表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/24

14


「ヨルマン、投降しろ!もう逃げられないぞ」


団長が剣をヨルマンに向けて言うが、ヨルマンは首を振る。

手には魔法球を抱えたままだ。

魔力と体力を吸い取られて顔色が悪い。


「お前は女に騙されているんだよ!どうせあの女が持って来いって言ったんだろ?」


魔法騎士の一人が優しく言ってさりげなく近づこうとするが、ヨルマンが剣を抜いて降り降ろした。

緑色に輝いている刀身から出た突風が吹き、近づこうとしていた魔法騎士が吹っ飛んだ。


「エオノラは俺を騙してはいない!俺はエオノラを救うためにやっているんだ」


ヨルマンが叫んだ。


「エオノラはヨルマンの愛する女性の名前だ」


イザベラの前に立っているシドが教えてくれる。


「何から救うんだ」


アントムもさりげなくヨルマンの背後に回って優しく言う。

少しずつヨルマンは魔法騎士に包囲されていくが、ヨルマンは気にした様子もなく呟いた。


「これを持っていかないと彼女が殺されてしまう!時間が無いんだ。早く、モロト国にこれをもっていかないと・・・」


ヨルマンは焦っているのか早口で言うと、呼吸が荒くなりよろよろと歩き出した。


「ヨルマンを止めろ!撃て!」


団長が命令をすると、ヨルマンを取り囲んでいた魔法騎士達が一斉に青白く光る剣をヨルマンに向けた。

騎士達が剣を振るうと刀身から出た光がヨルマンへと向かう。


「彼女の命がかかっているんだ・・・」


呟くヨルマンから爆発音が響き光った。


「魔力暴走だ!伏せろ」


シドが叫ぶが間に合わず、ヨルマンを囲んでいた魔法騎士達が一斉に吹き飛んだ。

イザベラの前に居たシドもヨルマンの魔力暴走に当たり倒れて呻いている。


「クソッ、ヨルマンの野郎。そう簡単に魔力暴走ができるとかおかしいだろう」


魔法騎士達は呻いて立ち上がれず、ヨルマンもかろうじて立っているのがやっとのようでかなり弱っている。

イザベラは周りを見回して息をのんだ。


今、この場に立っているのはヨルマンと自分だけだ。


他の騎士達はシドも含めてすべて倒れて呻いている。

ヨルマンは弱っており、魔法球がヨルマンの体力と魔力を奪っているとすればイザベラでも取り返せるのではないか。

一瞬で判断をして動いたイザベラにシドが気づき手を伸ばす。


「ダメだ。イザベラ」


「大丈夫よ!私は魔法が効かないのよ!」


謎の自信に満ち溢れたイザベラの言葉にシドは首を振る。


「無理だ」


イザベラの足を掴もうとするシドの手は届かない。

イザベラは一歩踏み出して、ヨルマンを見た。

ヨルマンは空を見つめたままイザベラを見てはいない。

フラフラと立っているのがやっとのヨルマンから魔法球を奪うことは難しくないはずだ。

倒れている騎士達をよけながらイザベラはヨルマンへと走り出した。

ヨルマンのもとへ近づくと視界が定まっていないヨルマンがイザベラを見た。

ヨルマンと目が合い一瞬躊躇するがイザベラは走った。

弱っているヨルマンの手に持っている魔法球を取ろうと手を伸ばす。

もう少しで手が届くと言うときにヨルマンがイザベラに緑色に光る剣を振り下ろした。

刀身からでた光がイザベラに向かい消滅した。


「ひぃぃ。魔法が効かない体で助かった」


イザベラはヨルマンからのけ反り小さく悲鳴を上げた。

やはり自分に魔法が効かないと安心してイザベラはヨルマンが手の持っている魔法球に手を伸ばし掴んだ。

そのまま取ろうとすると、振り上げたヨルマンの剣が薙ぎ払われイザベラのお腹を切った。

激痛が横っ腹に走りイザベラは勢いよく飛ばされる。


「イザベラ!」


ヨルマンの剣で飛ばされたイザベラを見てシドは力を振り絞って立ち上がった。

吹き飛ばされたイザベラは宙を舞い屋上の外へと落ちていく。

イザベラはゆっくりと景色が流れ、シドが叫びながら駆け寄ってくるのも、ヨルマンがふら付きながらも走って行くのもなぜかはっきりと見えた。

ヨルマンが逃げてしまうと思ったが、自分が城の屋上から地上に落ちる途中であることを思い出して手の伸ばしているシドに掴まろうとイザベラも手を伸ばす。

イザベラの手はシドに届くことは無く、地上へと落ちていく。

下へ落ちる浮遊感にイザベラは息を止めて衝撃に耐えようと目を瞑った。

この高さから落ちたら最悪、死んでしまうかもしれないとそれでもなんとか体を小さくしてすこしでも衝撃が耐えられるようにする。

もうダメだとイザベラが諦めかけた時に体がふわりと浮き、背中に少しの衝撃。


「う・・・痛い」


背中も痛いがヨルマンに切られたお腹も痛い。


「大丈夫か?」


小さく呻くイザベラに地上を守っていた騎士達が心配して集まってきた。

落ちたイザベラの背中を起して頬を叩かれて、薄っすらと目を開くとランドルが心配そうにのぞき込んでいたがその頭皮が太陽に当たり眩しくてまた目を閉じた。


「うっ、ランドルさんの頭が眩しい・・・・。切られたお腹が痛い・・・・」


朦朧としながら言うイザベラに、ランドルは顔をしかめてイザベラの怪我の確認をする。


「腹を切られたのか?失礼するぞ」


「ううっ、かなり痛いの。きっと大怪我だわ・・・シドに愛していたって伝えて」


呻きながら言うイザベラにケガの確認をしていたランドルが冷たい目を向けた。


「お嬢さんよ、服を切られただけで怪我一つしてないが」


「えっ?」


驚いて起き上がってヨルマンに切られたところを確認する。

確かに洋服は切れているが、血も出ていない。

イザベラは思い出してスカートのポケットに入れていたシドが発明した筒を取り出した。

金属で来ていた筒は傷がついている。


「これが守ってくれたんだな。運が強いお嬢さんだな」


ランドルが頭を撫でながら言うと、イザベラは頷いた。


「愛の力ですね」


「いや違う。運の強さとシド隊長の魔力の強さだな。とっさに落ちてくる嬢ちゃんを風の魔法で衝撃を和らげたんだ」


イザベラは胸がいっぱいになって、城の上を見上げた。


シドが心配そうに下を覗き込んでいるのでイザベラは立ち上がって手を振った。


「シド!シドの発明の筒が私を守ってくれて私は怪我一つしていないわ!」


元気に手を振るイザベラを見てシドは安心したのか、そのまま意識を失い倒れ込んだ。


「うわぁ、シドが気絶しちゃった」


「上に居る魔法騎士は、全滅らしい」


「それなのに、このお嬢さんを助けるなんてすげーなシド隊長。気力で動いていたんだな」


青ざめるイザベラに回りを囲んでいた騎士達が呟いた。





「ヨルマンの野郎、あいつ魔力爆発を自在に操れるようになったのか?」


医務室で寝込んでいた魔法騎士達は顔色は悪いが文句を言うまでには復活していた。

魔法騎士師たちが集まり、さながら騎士の詰め所のようになっている。

ヨルマンは一瞬のすきに逃げてしまって見つからなかった。

シドは気絶したまま医務室に運ばれたが、今は青い顔をしてベッドに横になっている。

イザベラはシドのベッドの横に椅子を置いて座って魔法騎士達の話を聞いていた。


「そんなもん自在にできるものなのか?」


騎士の一人が言うと、アントムが書類を見ながら頷いた。


「ヨルマンの彼女の命が危ないとか言っていたから、気分が最低に落ち込んでいたのかもしれないね」


「それでも、そう簡単に魔力爆発なんてできませんよね。しかも、彼女の命が危険だなんてウソに引っかかるなんて・・・ヨルマンは純粋すぎるだろ。モロト国に行かないとって言っていたけれど、モロト国は美人の彼女が住んでいた国じゃないですか」


隊士の一人が言う。


シドのベッドの横に座っていたイザベラが驚いて声を上げた。


「えっ?モロト国出身なんですか?ヨルマンの恋人は」


「そうだよ。モロト国から逃げてきたという彼女とヨルマンは付き合っていたから団長は別れろって、ずっと言っていたんだよ」


まだ顔色が悪いシドがベッドの上で言うと、ベッドの上の団長も頷く。


「だから俺は言っただろう。あの女はスパイだって。実際、あの女の命が危ないとしても魔法球を盗むなんて言語道断だ。この国の防衛が崩れた」


イザベラは不安になって、シドの顔を見た。


「モロト国が攻めてくることは無いんですか?」


「解らないね。一応、モロト国とこの国の国境地帯にも魔法球が置いてあって防御はしているけれどね。そこを超えてこないといけないから、もし攻めてきてもすぐにわかると思うけれど」


「我が国は、魔力が強いのが揃っているが、魔法騎士がモロト国よりはるかに少ないから外から魔法で攻められたらお終いだ」


アントムが難しい顔をして言った。


「えっ・・・そんな・・・」


やっとシドと上手くいったのに他国に攻められるなんてとイザベラの顔色がますます青くなる。

そんなイザベラを安心させるようにシドが微笑んだ。


「そんな心配しないでも大丈夫だよ。魔法球に変わらないぐらいの防衛を僕達がすればいいんだから」


魔法騎士達が一斉にため息を付いた。


「騎士の教本で勉強したことを本当にやるとは思わなかった」


「どういうこと?」


首をかしげるイザベラにシドが説明をする。


「今までは魔法球に魔力を貯めてそれが防衛に回されていたけれど、それを人力で行うんだ。24時間数人で魔法を錬成して国を防衛する。体力が続く限りね」


「それは、大変ね。魔法球は他にはないの?」


「無いよ。盗まれるとは思わなかったからね。先人がどうやって作ったのかさっぱりなんだ」


シドが言うとアントムもため息を付いた。


「国境の詰め所にも一つあるからそれから解明できないかと、優秀な博士を送っているよ」


難しい話になってきたのでイザベラはよく解らなかったが頷いておく。


「何とかなるといいわね」


「今までも優秀な博士が研究していて同じものが作れなかったんだから無理だと思うよ」


シドが言うと、医務室に居た騎士達が一斉にため息を付いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ