嗚呼、私のウィザードさま。3
会社
マリアが資料を見ながら独り言を言う
「明日は タヘス村とメンデール村… これでアウターサイドの村は全て終わるから 今度はセンターサイドの灯魔を終わらせるべき?それとも…」
課長が咳払いをして言う
「う、うんっ マリア君?」
マリアがハッとして慌てて言う
「は、はいっ!課長っ!」
課長が言う
「今見ていたのは 何処の商社の資料かね?」
マリアが衝撃を受け困って言う
「あ… いえ… その…」
課長が資料を渡して言う
「先ほど提出された書類 数字が間違っている 趣味の書類を見ている暇があるのなら しっかりと見直しをしたまえっ!」
マリアが資料を受け取りつつ言う
「す、すみません…」
課長が文句を言いつつ立ち去る
「まったく…」
マリアが資料を見つつ表情を困らせて席に座りながら言う
「あぁ… こんな初歩的なミスするのなんて 何年振りだろう… 課長が怒るのも無理ないなぁ 気を付けなきゃ…」
課長がリナの前で言う
「リナ君」
マリアが呆気に取られて課長とリナを見る 課長が言う
「どうしたんだね?先ほど商社から連絡があったが 君があの様なミスをするとは 今回は私の方から 先方へ謝罪を行っておいたが…」
リナが課長へ言う
「申し訳ありません 課長」
課長が言う
「風邪でも引いたのかね?今 うちの部署では 君に倒れられては困るから 遠慮なく休める時に 休みは取っておなさい」
マリアが言う
「リナが仕事でミスするなんて 珍しい…」
マキが言う
「リナ最近寝不足で辛いって言ってたから~ そのせいかもー?」
マリアが言う
「そうなの?最近寝不足って… どうかしたのかな?」
マキが言う
「本人は 新しいプロジェクト任されたせいだって 言ってたけど~ どう考えても彼氏さんのせいかなー?だって 毎日 彼氏さんの部屋に行ってるらしいから?」
マリアが衝撃を受けて言う
「え?毎日っ!?」
マキが笑んで言う
「にしし~ マリア知らないでしょー?リナ毎晩 彼氏さんに夕食作ってあげてるんだよ~ リナの手料理にすっごく喜んでくれたらしくて それから 毎晩一緒に食べてるんだって!」
マリアが感心して言う
「へぇ~ 知らなかった」
マキが言う
「だから 私の誘いじゃ イタリアンのお店も 行けないってさ~ やっぱり 女友達より 彼氏さん優先ですかー?マリア先輩もー?」
マリアが衝撃を受け慌てて言う
「だ、だからっ 私は そんなんじゃなくてっ!」
課長が怒りの咳払いをする マリアが衝撃を受け仕事をする マキが苦笑してから仕事に戻る マリアが思う
(新しいプロジェクトが始まってたなんて 知らなかったなぁ… 以前なら リナに声が掛かるときは 私にも 声が掛けられていたのに…)
マリアが言う
「やっぱり 副業のせいかな… はぁ~…」
マリアが書類作成を終えて言う
「よしっ!今度こそ完璧!」
マリアが書類を見ながら言う
「あ… 出来ればこの会社 一度 直接商談をしたいなぁ きっと上手く話を進められそうだし …でも 商談するとしたら 木曜日しかないから 明日だなぁ…」
マリアが思う
(明日は 奉者の仕事が あるし…)
マリアが考えてから気付いて言う
「ん?でも 良く考えたら 会社に寄る時間は無いけど 商談だけなら出来るかも?」
マリアが思う
(そうよね… 会社の方は休暇だけど 休暇に商談をしちゃ いけないなんて規則はないし)
マリアが時計を見て思う
(朝一番に商談をお願いして 2時間もあれば十分 タへス村には30分あれば間に合うから 10時じゃなくて10時半でも間に合う!)
マリアが言う
「よし!そうしよう!」
マリアが電話に手を伸ばす
マンション前
タクシーが到着する マリアが急いでエレベータへ向かい 乗り込むとホッと気を吐いて言う
「はぁ… 思ってたより時間が掛かっちゃった… でも 上手く話を進められたし これで 課長にも最近の失敗を 帳消しにしてもらえるかも?」
エレベータが到着する マリアが急ぎながら思う
(ううんっ 1度や2度じゃ 失敗の上塗りは難しいから もっと頑張らなきゃ!)
マリアがインターフォンを押して ドアを開けて言う
「お早う御座います ウィザード様 お迎えに上がりました」
レイが言う
「マリア!」
マリアが言う
「さぁ 行きましょう!」
レイが言う
「あ、うん… マリア どうかしたのか?今日は…」
マリアがさっさとドアを出て行く レイが一瞬驚いた後追い掛ける マリアが足早にエレベータへ向かう レイが足早に追って行く
エレベータ 内
下向するエレベータ内で レイが言う
「マリア?」
マリアが苦笑して言う
「今日は神館の場所が ここから近い場所だったので こちらに来る前に 1つ仕事をしていたんです」
レイが言う
「そうか… マリアは 忙しいんだな?」
マリアが苦笑して言う
「奉者を始めた影響で ちょっと 仕事に支障が出てしまったので それを挽回しようと思って …実は午後にも もう1件!」
レイが言う
「そうなのか…」
レイが考える エレベータが到着する マリアが降り レイが続く
後日 会社
課長が言う
「マリア君!」
マリアが慌てて言う
「は、はいっ!課長!」
課長が言う
「流石は マリア君だ!素晴らしい成績じゃないか!」
マリアが呆気にとられて言う
「え?」
課長がマリアの下へ来て資料を渡して言う
「最近どうしてしまっていたのかと思っていたら 何だ 新規の取引先を 一挙に狙っていたのか!いや、そうとは知らずに あのマリア君が どうしてしまったのかと 私は心配していたのだよ?はっはっはっ!」
マリアが苦笑しつつ言う
「あ… は、はい…っ 実は そうだったんです?あは… はは…っ」
マリアが心の中で思う
(あ~ 実は たまたま 商談した新規の2社と 偶然にして 新製品の取引契約が成功した だなんて 言えない…)
課長が喜んで言う
「この調子で どんどん頼むよ!?マリア君!」
マリアが言う
「は… はい…」
マリアが思う
(まぁ 良いか… お陰で 私の課長への信用も 戻ったみたいだし)
マリアがリナを見て思う
(リナには 悪い事しちゃったかなぁ…?)
課長がリナに言う
「リナ君 悪いが やはりプロジェクトの方は マリア君の方へ…」
マリアが表情を落として思う
(ごめんね リナ… そんなつもりは 無かったんだけど… その新規の取引先が まさか プロジェクトに関連していたなんて…)
マリアが視線を逸らして言う
「でも… もしかしたら 偶然じゃなくて その影響で商談が上手く行ったのかも…」
リナが微笑して言う
「良いんです 課長 私には元々荷の重いプロジェクトでした マリアなら新規の顧客とも 上手く話を進められると思いますので 彼女の方が適任です」
マリアが驚いてから表情を落として言う
「リナ…」
リナがマリアへ向いてウィンクをする マリアが苦笑して頷く
昼休み
マリアが驚いて言う
「た、退職っ!?」
リナが微笑して言う
「ええ」
マリアが言う
「そんなっ!?どうして!?」
マリアがハッとする リナが軽く腹を撫でて苦笑して言う
「うん、実は そう言う事」
マリアが気を落ち着け言う
「で、でも… そんな急に辞める事 無いじゃない?それこそ 出産の1ヶ月前ぐらいでも…」
リナが言う
「マキから聞いてるかもしれないけど 私 今、彼の家から出勤しているの そうすると この会社って ちょっと 遠いのよ …だから この際 すっぱり辞めてしまって 彼の家の近くにある会社か 後々の事も考えて パートでも良いかなって」
マリアが残念そうに言う
「そう… でも それならしょうがないね?…もちろん 結婚するんだよね?結婚式も… やるの?」
リナが言う
「うん、まだ ハッキリ決まっては居ないんだけど もし結婚式をやる様なら マキにもマリアにも 招待状送るからね?」
マリアが微笑して言う
「うん… 楽しみに待ってる」
リナが言う
「ありがと …後 プロジェクトの方 ごめんなさい 結局 マリアにやってもらう事に なってしまって」
マリアが慌てて言う
「え?う、ううんっ!私こそっ 途中で取っちゃうみたいで… たまたま 上手く行った商談に 課長が気を良くして それだけなのっ その… ごめんね!折角の最後の大仕事を…っ」
リナが苦笑して言う
「あ… 違うのよ マリアの顧客リストに マルエツ商事とミハマ商事の資料入れたの… アレ、私なの」
マリアが驚いて言う
「えっ?」
リナが言う
「マリアなら あの条件の2社があれば きっと商談を進めてくれると思って こっそり…」
マリアが苦笑して言う
「なんだ… そうだったんだ 通りで 話が上手く進み過ぎると思った どちらの会社も 今売り出し中の新商品を 喜んで欲しがるんだもん 冷静になって考えたら 可笑しな話」
リナが言う
「試したりなんか するつもりは無かったのよ?ただ 本当にマリアが こっちの仕事を続けるつもりなのか ちょっと 心配で…」
マリアが呆気に取られる リナが言う
「本当はね?マキに譲ろうと思ってたの でも マキ 今の時期って お爺さんの田畑を手伝う時期でしょ?農家の子だから しょうがないって言うのはあるけど いつもこの時期に1週間以上休む事になるから そう言う状態で 今進めているプロジェクトは 任せられないかなって… それで」
マリアが言う
「そっか… 分かった 仕事の方は心配しないで?私やマキに任せて 幸せになってね!リナ!」
リナが微笑して言う
「ええ!ありがとう マリア!」
10日後 会社
マキが言う
「お久し振りに おっはようございまーす!」
マリアがマキに抱き付いて言う
「マキー!」
マキが一瞬驚いた後 ふざけて言う
「きゃー マリア先輩ー!愛が苦しいです~!」
昼休み
マキが言う
「そっかぁ~ それで 私もリナも居なくて マリア 1人で大変だったんだ~?」
マリアが言う
「もぅ~ 大変所じゃないったら~ 2人が居なくて この10日間大忙しよ~」
マキが苦笑して言う
「ごめん ごめん それじゃ 少しだけでも 手伝いに来れば 良かったね?」
マリアが苦笑して言う
「でも、マキも忙しかったんでしょ?いつも収穫期が終わると こっちの仕事の方が断然楽だって言ってるもんね?」
マキが言う
「あ~ 実は 今回は収穫の手伝いの為に 休んだんじゃなかったんだ…」
マリアが疑問して言う
「え?でも マキリンストリートの周りの田畑は 収穫されていたよ?私 奉者の仕事で ウィザード様のお部屋に行く時に いつも見ているもの」
マキが苦笑して言う
「お爺ちゃんがね この町に そのウィザード様が ご滞在されるようになったから もう安心だって それで あの一帯の田畑を全部 お父さんに譲ったの それで お父さんは 家族でやるより しっかり人を雇ってやった方が良いって …お父さんも小さい頃から 手伝いをさせられてきたから 家族でやるには限界だって 考えていたらしいんだ」
マリアが言う
「そっか… それじゃ マキ 今回の休みは?」
マキが微笑して言う
「それは~ 内緒~!今回は切り替え時期だったから 課長にもバレなかったけど 来年はそうは行かないと思うから!」
マリアが言う
「あ~ 良いんだ?マキが長期休暇を満喫している間 私は 1人で大変だったんだから~」
マキが言う
「ごめーん!今度ケーキおごる!」
マリアが呆気に取られた後 マリアとマキが笑う
翌朝 マリアの部屋
マリアがベッドに寝ていると携帯が鳴る マリアが寝苦しそうに起きて言う
「ん~ もぅ… 折角の休日なのに こんな早くに誰~?」
マリアが携帯を手に取って衝撃を受けて言う
「えっ!?奉者協会からっ!?」
マリアが気を引き締めて携帯を着信させて言う
「は、はいっ マリア・ノーチスです!」
マリアが携帯に返事をしながら言う
「…はい 各村への灯魔儀式は 周囲の状況を確認した上で 進めているつもりですが 何か問題が…?」
マリアが驚いて言う
「え?…大灯魔台の灯魔儀式に?」
マリアが慌てて言う
「し、しかしっ この町の管轄にある灯魔台の灯魔は まだ 終わっていません!それに 通常 大灯魔台の灯魔儀式は 全ての町の灯魔がなされた後に 行うものだと習いましたが!?」
マンション レイの部屋
マリアが言う
「それで 急を有する為に 6つの町が既に灯魔作業を終えているので 残る1箇所として この町のウィザード様に 参加して頂きたいと…」
レイが言う
「そっか でも 断るしかないな?」
マリアが一瞬驚いた後言う
「え?それは… やっぱり この町の灯魔作業が 終わっていないから …と言う事ですか?私も そう思って聞いてみたんですけど そちらは気にしなくて良いと言われてしまって…」
レイが言う
「ああ、そっちは別に 気にしなくても良いだろうけど そうじゃなくって」
マリアが言う
「そうではなくて?」
レイが言う
「うん 早く行かないと 今日の灯魔儀式に 間に合わなくないか?」
マリアがハッとして時計を見て言う
「あっ!ほ、ホントっ!大変!」
灯魔台神館
レイが灯魔儀式を行っている マリアがホッとして見つめながら思う
(最近 このパターンが定着して来た気がする… 私の気が緩んでいるのかもしれないけど いつも 時間や次の灯魔場所を 教えてくれるのは ウィザード様になってる…)
周囲に砂が巻き上がり 上部に集中する 人々が驚き驚愕する中 マリアが思う
(お陰で 出発時間のギリギリに行っても間に合うし 私が必死に資料を見て 灯魔場所を考える必要も無くなって… 私はただ 灯魔神館へ儀式の連絡をして その儀式に付いて行ってるだけって感じ…)
上部に集中した砂が一気にレイへ向かって来る 人々が息を飲む中 砂の攻撃がレイの前にある杖に防がれる マリアが見つめる中 レイが杖を掴み振りかざすと 砂の攻撃が上空に弾かれ灯魔台に叩き込まれる 人々が怯える中 マリアが思う
(お陰で 大分助かった… 正直 その辺りが 以前のままだったら プロジェクトも リナから引き継いだ仕事も きっと出来なかったと思う)
辺りが静まった中 灯魔台から静かに砂が流れ始める 周囲の装置にも同じ様に砂が流れる 人々が言葉を失う レイが向き直り来た道を戻り歩く 人々が慌ててレイへ信仰の眼差しを向け 祈るようにレイの歩みを見守る マリアが苦笑して思う
(これじゃ 何の為に 奉者って居るんだろう?もしかし 私 ウィザード様に甘え過ぎなのかな?)
マリアの横に居た管理人がマリアへ向き言う
「本当に有難う御座いました マリア奉者様」
管理人が深々と頭を下げる マリアが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「いえ それでは…」
マリアの横をレイが過ぎ去る マリアが言う
「失礼します」
マリアがレイを追う
マンション レイの部屋
レイとマリアが現れる マリアが言う
「お疲れ様でした ウィザード様」
レイが言う
「うん お疲れ様 次の出発は1時か?」
マリアが言う
「いえ、今日からは 以前と同じ様に 2時の出発で予定しています」
レイが言う
「そっか それなら 少しゆっくり出来るな?」
マリアが言う
「あ… やっぱり 1時だと 大変でしたか?」
レイが言う
「大変って程じゃなかったけど 2時ならゆっくりお茶を飲んで その後 休憩していられるから 気が休まるな?」
マリアが言う
「では… すみませんでした 私の仕事に合わせてもらってしまって…」
レイが言う
「マリアが忙しいなら しょうがないだろ?俺は”マリアのウィザード様”なんだからさ?そのくらい いくらでも協力するぞ?」
マリアが苦笑して言う
「有難う御座います… ウィザード様」
レイが微笑して言う
「礼には及ばないよ」
マリアが言う
「では… また2時に お迎えに上がります」
レイが言う
「うん」
マリアが部屋を出て行く
中央公園
マリアが手作り弁当を食べつつ 軽く溜め息を吐いて言う
「ふぅ… プロジェクトも終わって マキも帰って来てくれて 灯魔儀式の時間も元に戻って やっと 一息着いた感じ…」
マリアがふと思い出す
レイが言う
『マリアが忙しいなら しょうがないだろ?俺は”マリアのウィザード様”なんだからさ?そのくらい いくらでも協力するぞ?』
マリアが苦笑して言う
「”マリアのウィザード様”かぁ… そう言えば ウィザード様って 初めて会った時からそうだった」
マリアが思い出す
マリアが言う
『…いえ、なら ウィザード様は 何でウィザード様になったんですか!?』
レイが言う
『それは もちろん』
レイがマリアを抱きしめて言う
『”マリアのウィザード様”になる為だよ!マリア!』
マリアが思う
(あの時は すっかり 軟派なウィザード様だと思っちゃったけど 結局 こう言う事だったのかな…?だとしたら 本当に ”私のウィザード様”なのかも?)
マリアが空を見上げて思う
(う~ん… でも どうなんだろう?もし… ウィザード様の奉者が 私じゃなかったら?そうしたら ウィザード様は ”誰のウィザード様”になるんだろ?それは やっぱり…)
マリアが視線を落として思う
(その 奉者の ウィザード様に なるのかな…?)
マリアが思う
(そうよね… きっと そう言う事…)
マリアが溜息を吐く
「はぁ~…」
リナが言う
「なぁ~に~?マリア 相変わらず ウィザード様を思っての溜息?」
マリアが驚き顔を向けて言う
「リナっ!?どうして!?」
リナが近くへ来て言う
「今日って マリアは休暇を取る曜日だったでしょ?だから お昼時はもしかして ここに居るんじゃないかと思って?」
マリアが微笑して言う
「あ… そう言えば リナの実家って ここの近くだもんね?今日は何?引越し?」
リナが言う
「ええ 引越しの立会いで でも 今は業者の人たちが お昼休みだから」
マリアが言う
「そうなんだ 私もそう お昼休み!」
リナが言う
「奉者様は ウィザード様と お昼を一緒にしたりはしないの?折角なのに?」
マリアが苦笑して言う
「しないよ それに ウィザード様は修行中ですから!お昼ご飯は基本 食べないらしいの」
リナが言う
「そうなの?大変ね?」
マリアが言う
「そのせいか 食事代わりに飲でいる紅茶は とっても美味しいけどね?」
リナが言う
「へぇ~ ウィザード様が飲用する紅茶って言うと やっぱり 最高級の紅茶とか?」
マリアが言う
「ううん 紅茶の銘柄は 一般的なの紅茶だったよ?私たちが飲むのと同じ …ただ、ウィザード様が入れる時には 魔法を掛けるから えっと… 活性魔法って言ってたかな?」
リナが言う
「それじゃ 本当に魔法の紅茶?そんな紅茶を頂けるだなんて 奉者の役得ね?」
マリアが気付いて言う
「言われてみれば そうだね?誤解のせいもあって 最初は断ってたけど その内 忙しくなって それ頃じゃなくなっちゃって」
リナが呆気に取られてから苦笑して言う
「ふ~ん… あぁ そうね ごめんなさい 忙しくさせちゃって」
マリアが気を取り直して言う
「ああっ 良いの良いの!マキも戻って来たし プロジェクトも終わったから 今はもう 落ち着いたから」
リナが言う
「そう なら 良かった」
マリアが言う
「それで そっちはどうなの?今日引越しして …もう籍は入れたの?」
リナが言う
「ううん 引越しは今日だけど 籍とか そっちの方はまだなの 彼の方が今仕事が忙しいらしくて 私も 今は彼の実家の 家業を手伝っているんだけど 割と忙しいかな?彼も後々は 家業を継ぐ予定みたいなんだけど 今は 別の仕事に没頭してて」
マリアが言う
「あれ?保育園の保育士さんだよね?」
リナが言う
「ううん… そっちは 辞めたの 今は別の仕事を始めたらしくて」
マリアが言う
「何をしているの?」
リナが苦笑して言う
「それが… 落ち着くまで 秘密みたい」
マリアが言う
「え…?」
リナが言う
「もしかしたら 少し言い辛い仕事なのかもしれないから 向こうが言える様になるまで 黙って待っていてあげようと思って」
マリアが言う
「そうなんだ… リナ凄いね 本当に彼の事が好きなんだ?」
リナが微笑して言う
「ええ 大好きだから 何があっても… だから 待っていられるわ」
マリアが微笑する
マンション 最上階
エレベータが到着する マリアが歩きながら思う
(リナ… なんだか凄く綺麗だったな… 大好きだから 待っていられる… 彼の事 信じていられるんだ… それって)
マリアがインターフォンを押し ドアを開けながら思う
(とっても 強くて 素敵だと思う…)
マリアが言う
「ウィザード様 お迎えに上がりまし… たっ!?」
レイが言う
「マリアー!」
レイがマリアに抱き付く マリアが表情を顰めて思う
(ア… アレ…?何日振りかに 戻った?)
レイがマリアの頭を撫でながら言う
「マリアー こんなに早く 戻って来てくれるって事は やっぱり!」
マリアが疑問して言う
「え?こんなに早く戻ってって… いつも通り…」
マリアがハッとして思う
(あっ しまったっ!今日から時間を 以前と同じに 戻したんだったっ!?)
マリアがレイを引き離しながら言う
「ち、違うんです!これはっ あのっ!」
マリアが思う
(時間を間違えて…!)
レイが苦笑して言う
「分かってるって マリア!」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「マリアは 大灯魔台の儀式の事が 気になったんだろ?それで」
マリアが言う
「あ…」
マリアが思う
(忘れてたっ!!)
レイが言う
「相変わらず マリアは 仕事熱心だよな?」
マリアが呆れて思う
(私… 奉者失格 かも…?)
マリアがソファに座り資料を見ながら言う
「私が習った時には 大灯魔台の灯魔儀式は 灯魔作業を終えた6つの町の 6人のウィザード様が集まるって聞いていたんですが 今朝の電話では6人の準備が終わったので 残りの1名として ウィザード様にって… それって どう言う意味なんでしょう?」
レイが紅茶を入れつつ言う
「ああ それはさ?昔は 大灯魔台の儀式は 6人でやってたんだけど あんまりにも失敗が多いから 1人増やしたらしいな?…はい マリア」
マリアが紅茶を受け取りつつ言う
「あ、有難う御座います… えっと それじゃ 結局 7人でやるんですか?」
レイがマリアの隣に座って言う
「うん 儀式の失敗は 本番までは有り得無いけど 途中までの起動儀式にも参加しないと 本番で魔力の性質が合わなくなっちゃうからな? 結局 やる事は一緒だよ」
マリアが言う
「やる事は一緒… それじゃ…」
マリアが紅茶を一口飲み思う
(あ… やっぱり 魔法が掛かってる)
マリアが密かに微笑する レイが言う
「その7人目だって 他の6人と 同じって事だよ でも どの道 俺たちは参加出来ないから 断りの連絡を入れたら 良いんじゃないか?」
マリアが言う
「え?どうして…?何で 参加出来ないんですか!?」
レイが言う
「何でって それはもちろん」
マリアが言う
「もちろん?」
レイが言う
「儀式が行われるのは マリアの会社がある日だからさ?」
マリアが衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?」
レイが言う
「マリア 月曜日は絶対休めないって いつも言ってるだろ?」
マリアが慌てて言う
「そ、それは 言ってますけどっ!?…まさか それだけの理由で!?」
レイが言う
「それだけって… マリアにとっては 大切な事だろう?」
マリアが言う
「そ、それは そうですけどっ!?」
レイが言う
「だから無理!それに 大灯魔台の灯魔儀式って ウィザードの認定審査だし」
マリアが言う
「認定審査?」
レイが言う
「うん 町に配属される方じゃなくて 神に選ばれる方のな?」
マリアが言う
「え…?」
レイが言う
「各町の管轄する灯魔台へ灯魔を行ったって事は ウィザードとしての修行は終わったって事だから 次は 神に選ばれる為の試験を受けるんだよ それが 大灯魔台の灯魔儀式」
マリアが資料を見ながら言う
「そ、そんな事は書かれて…っ あ、でも 確かに 儀式の参加者は その能力を 灯魔台巡礼者たちに 評価されるって…」
レイが言う
「うん その巡礼者たちって言うのは 普段 俺やマリアが灯魔儀式に行く時に 神館に居て見てる連中だよ あいつらも その町の代表として 大灯魔台の灯魔儀式に巡礼して 自分たちの町の灯魔台への灯魔に対する評価も含めて 全てのウィザードを審査をするんだ」
マリアが言う
「そうだったんですか… それで 普段の灯魔儀式の時にも いらしてたんですね?」
レイが言う
「そう言う事だな あいつらは普段も評価してたって事だよ あ、それに その大灯魔台でのウィザードの評価は 奉者もするんだぜ?マリア」
マリアが紅茶を飲んでいた状態で慌てて驚いて言う
「えっ えぇっ!?」
レイが言う
「何て言っても 奉者はウィザードの一番近くに居る人なんだから 奉者の権限は大きいんだ 奉者の投じる1票は 巡礼者たちの100票に値する」
マリアが驚いて言う
「そ、そんなにっ!?」
レイが言う
「まぁ そうは言っても よっぽどの事が無い限り 自分の奉者の票を得られないウィザードは 居ないだろけどな?」
マリアが言う
「あ… そう… なんですか?」
レイが言う
「それはそうだよ?だって 嫌いなら さっさと辞れば良いだろ?そのウィザードの奉者をさ?」
マリアが気付いて言う
「あ… そっか… 奉者は退任する事も 出来るんだっけ…」
レイが苦笑して言う
「それをしないで わざわざ 大灯魔台の儀式まで付き合って そこで そんな事される程 酷いウィザードは 前代未聞だな!」
マリアが紅茶を飲みつつ思う
(確かに 100票の重みを持つ票を 自分のウィザードから外す奉者なんて 考えられない… それこそ 奉者失格よね…?)
マリアがふと気付いて レイを見てから言う
「あ… あれ?ウィザード様は?お茶は?」
レイが言う
「ん?ああ、俺は さっき戻った時に飲んだから」
マリアが一瞬呆気に取られる レイが言う
「そろそろ時間だな?」
レイが立ち上がって寝室へ向かう マリアが慌てて言う
「あっ は、はいっ!」
マリアが時計を見て紅茶を飲み干してから カップを見て思う
(それじゃ… 私の為だけに 淹れてくれてたんだ…)
マリアが微笑する レイが法衣を着て戻って来る マリアが言う
「では 行きましょう!」
レイが言う
「うん!」
マリアが歩きながら思う
(私がもし 評価をするとしたら?…もちろん ウィザード様に票を入れる …だって 色々有ったけど)
レイが振り向いて疑問して言う
「マリア?どうかしたのか?」
マリアが微笑して言う
「いいえ!」
レイが微笑して頷く マリアがドアを開ける レイがドアを出る マリアが思う
(この人は ”私のウィザード様”だから!)
マリアがレイを追う
ケーキ店
マリアが言う
「今日は私のおごりだから!好きな物 思いっきり食べて!」
マキが喜んで言う
「やったぁ~!」
リナが笑って言う
「相変わらずね?マキは」
マリアがリナを見て言う
「リナも遠慮しないでね!?」
リナが苦笑して言う
「ありがとう」
マキが喜んでデザートを選んでいる マリアが言う
「でも リナちょっと痩せた?つわりとか やっぱり辛いの?」
リナが言う
「ん?ううん… つわりは あんまり無いんだけど…」
マリアが言う
「どうかしたの?」
リナが苦笑してから気を取り直して言う
「ううん!何でもないわ 出産に対して ちょっとナーバスになってるのかな?美味しいデザート一杯食べて 気分転換しちゃおう!」
マリアが微笑して言う
「うん!それが良いよ!」
リナが言う
「所で マリア?なんで今日は ケーキのご馳走パーティーなの?」
マリアが言う
「実は…」
マキがケーキをたくさん選び取って来て言う
「絶対休暇禁止の超多忙デーである 月曜日に休暇を申請した バツゲームでーす!」
リナが言う
「え?月曜日に?それは…」
マリアが頼み込んで言う
「リナっ!お願いっ!その1日だけっ!私の代わりに 書類作成をしてくれないっ!?」
リナが呆気に取られて言う
「えぇ!?」
マリアが言う
「会社に行かなくても出来るように マキに中央公園まで 資料を運んでもらうから お昼にそれを受け取って~ 午後5時までに!…ダメ?」
リナが軽く笑ってから言う
「うっふふふっ そう言う事?」
マリアが言う
「そう言う事…」
マキがケーキを食べながら言う
「そー言う事ー!」
リナが言う
「分かった 協力する!」
マリアが言う
「ありがと~っ!リナっ!マキも!本当に助かる!」
リナが言う
「その代わり」
マリアが言う
「その代わり 何!?何でも言って!?」
リナが言う
「そこまでして 月曜日に休暇を取る …理由を教えなさいっ」
マリアが言う
「あ~ そ、それは… 実は…」
月曜日 マンション レイの部屋
マリアが言う
「お早う御座います!ウィザード様!お迎えに上がりまし… たっ!?」
レイが抱き付いてきて言う
「マリアー!」
マリアがレイを剥がしながら言う
「ウィザード様っ!どうして法衣を着てないんですかっ!?今日は大灯魔台の灯魔儀式なんですからっ 余裕を持って 早めに出発しますと お伝えしたじゃないですかっ!?」
レイが言う
「うん!だから 俺 マリアに 選んでもらおうと思ってさ!」
マリアが言う
「え… 選ぶって?」
レイが言う
「今日はいつもと違って 大灯魔台の灯魔儀式なんだから 俺たちの他にも 6人のウィザードと 6人の奉者が居るんだ!」
マリアがハッとして思う
(そ… そっか… 他のウィザード様を目にする事になる とは思ってたけど 奉者も私の他に6人…)
レイが言う
「って事は 法衣の色も 気にしなきゃいけないだろ?」
マリアが衝撃を受けて言う
「えっ?法衣の… 色っ!?」
レイが言う
「大灯魔台の灯魔儀式は 今までの灯魔台儀式の 集大成なんだから その修行の成果を 色で現さないと 見た目で分からないだろ?」
マリアが困って言う
「しかし… それを言うのでしたら 私たちは まだこの町の灯魔台の灯魔儀式を 全て終わらせてはいないのですから 一番低い色にしなくては いけないのでは ないですか?」
レイが言う
「けど、灯魔台の灯魔儀式は ウィザードにとっては 唯の修行の一部なんだからさ?重要なのは 魔力の強さだ」
マリアが言う
「魔力の強さ… そう言えば」
マリアが思う
(大灯魔台の灯魔儀式に付いての資料に ウィザードの正装資料が載ってた… そこに 色に付いての事が書かれてて 一番低いのが黒… そこから 神様の衣服とされている 白色へ向かう程 偉い人 …つまり 魔力の強い人って事になるのかな?)
レイが言う
「マリアはいつも ウィザードらしくって言うからさ?俺も 基本色のままにしてたけど 今回はマリアだけじゃなくて 他の奉者たちにも見られるんだから 正しい色で分からせた方が良いだろ?」
マリアが不満そうに思う
(それって つまり 他の奉者の女の子たちには 自分が凄いって事を見せ知らせたいって訳?…やっぱり この軟派ウィザード様はっ)
マリアが不満そうに言う
「それじゃ ウィザード様ご自身は 何色にするつもりなんですか?」
レイが言う
「うん やっぱ 白かな?」
マリアが衝撃を受ける レイが嬉しそうに言う
「けど、マリアが控えめが良いって言うのなら 少し色を付けて ワインレッドでも良いし ライトグリーンとか スカイブルーでも けど、黄色系にするんだったら やっぱり 白の方が似合うかなって 俺は思うけど?」
マリアが怒って言う
「黒にして下さいっ!」
レイが衝撃を受けて言う
「えっ!?黒ぉっ!?何でっ!?」
マリアが怒って言う
「何でも何もありませんっ!まったく 何で 貴方はそうなんですかっ!?折角 かなり 見直していたのにっ!一気に 初日に 逆戻りですよ!」
レイが焦って言う
「えぇえーっ!?俺 初日だって 黒なんて着て無いよぉ!?マリアー!?」
マリアが言う
「大体 修行途中の身でありながらっ 大灯魔台の儀式に出るんですから!少しは 謙虚にして下さい!恥ずかしいじゃないですかっ!?」
レイが言う
「だって 俺 強いしー!?」
マリアが言う
「強くたって駄目ですっ!そんなんじゃ 神様だって 選んではくれませんよっ!?」
レイが言う
「別に良いもんっ 俺は ”マリアのウィザード様”だから!マリアにだけ選んでもらえれば それで良いの!」
マリアが言う
「だったら 黒にして下さいっ!」
レイが言う
「えぇえ~ なら せめて いつもと同じ 紺色にしようよ?黒じゃ変だよ ウィザードの癖に 魔法使いみたいじゃないか?」
マリアが言う
「でしたら いつもと同じで結構ですっ!早く着て来て下さいっ!遅れちゃいますよ!?」
レイが言う
「それじゃ マリアー」
マリアが怒って言う
「もう マリアーは 良いですから 早くっ!」
大灯魔台神館
マリアが神館を見上げて言う
「わぁ… 大灯魔台神館は 建物も大きいですね…」
レイが言う
「マリアは 大灯魔台の灯魔儀式を見るのは 2回目だろ?」
マリアが言う
「あ、はい でも 以前 見た時は 私は まだ6歳程度でしたから 正直 何が何だか良く分からなくて 改めて見ると やっぱり凄いです…」
レイが言う
「それに今度は その時とは違って マリアは奉者として来たんだから 凄いよな?」
マリアが苦笑して言う
「何も分かって居ないのは 余り変わってない気もしますけど」
レイが言う
「今回は俺が ”マリアのウィザード様”としているんだから 何も心配はないよ!」
レイが歩き出す マリアがハッとして言う
「あの…っ ウィザード様っ」
レイが立ち止まって言う
「ん?」
マリアが言う
「もし 万が一 この大灯魔台の灯魔儀式が失敗して 魔力が暴走したら… 私、ウィザード様に ”お願い”をしますから …その時は この神館に居る 皆を助ける為に 魔法を使って下さい」
レイが一瞬呆気に取られる マリアが真剣に見詰める レイが苦笑して言う
「分かってる …けど 俺は そうはさせないから」
マリアが言う
「え?」
レイが微笑して言う
「言っただろ?俺に掛かれば 儀式の失敗なんて有り得ない ”マリアのウィザード様”は 最強のウィザードだからな?」
マリアが呆気に取られた後 苦笑して言う
「はい… そう信じています …行きましょう!」
レイが頷く マリアとレイが神館へ向かう
大灯魔台神館 受付
マリアが自動ドアを抜け入って来ると 先に 受付をしている奉者2が居る マリアが思わず声を出して反応する
「あ…っ」
マリアが奉者2の後ろに居る ウィザード2を見て思う
(初めて見る 他のウィザード様…っ)
レイがマリアに遅れて マリアの横に立つと ウィザード2が僅かに反応して振り返る マリアがハッとしてウィザード2を見る ウィザード2が僅かに表情を顰めた後 マリアを一度見てから再びレイを見る マリアがウィザード2の視線の先に気付きレイを見る レイは無反応にしている マリアがレイへ向けていた視線をウィザード2へ戻すと 受付を終えた奉者2が ウィザード2を見た後 レイとマリアを見る マリアが反応して言う
「あ、あの… こんにちは!」
マリアが微笑する ウィザード2が奉者2へ言葉を伝える マリアがそれを見て疑問すると 奉者2マリアへ向かって来る マリアが呆気に取られると 奉者2が微笑して言う
「こんにちは 初めまして 私はミレイ・クレシアと申します」
マリアが慌てて言う
「あっ マリア・ノーチスと申します 宜しくお願いします」
奉者2が言う
「こちらこそ 私のお仕えする ウィザード様からも 宜しくお伝えするようにと」
マリアが驚いて言う
「え…っ!?」
奉者2が一度レイを見てからマリアへ言う
「それでは また後ほど」
奉者2が礼をする マリアが慌てて言う
「あ、は、はいっ 後ほどっ!」
マリアが礼を返すと 奉者2が去りウィザード2と共に施設の奥へ向かう マリアが肩の力を抜いて言う
「びっくりした… まさか あちらのウィザード様から 宜しく伝えるようにだなんて…」
レイが言う
「マリアは 堂々としていれば良いよ」
マリアがレイを見て言う
「え?」
レイが言う
「行こう」
マリアが慌てて言う
「あ、はい…っ」
マリアが受付へ向かう
ホール
マリアがホールのドアを開けながら言う
「このホールが 控え室前の 集合場所だそうです」
マリアがドアを開け レイへ向けていた視線を正面へ向けると同時に驚いて言う
「わっ!?」
マリアの視線の先 ホール内に5人のウィザードと同数の奉者が居る マリアが思う
(わ… わぁ…っ!す、凄い さっき 他のウィザード様を見ただけでも ビックリしたのに それが 5人もっ!)
レイがマリアに続いてホールに入る 途端にホール内に居たウィザードたちがレイへ視線を向ける マリアが自分の後ろに居るレイに向けられた視線に一瞬驚き 間を置いてレイを見てから思う
(び、びっくりした…っ!殆ど全員同時にっ …一瞬 私に視線が向いたのかと思って 心臓が止まるかと思った …でも?)
ウィザードたちの反応に 奉者たちが徐々に気付いて視線を向け始める マリアが疑問していると レイが言う
「マリア 控え室は?」
マリアが慌てて言う
「あ、は、はいっ!えっと… 控え室の番号は …1番です」
マリアが思う
(何で 寄りによって 1番なのっ!?せめて 5とか6とか… 7番があるなら そこで良いのに…っ)
レイが先行する マリアが慌てて追って行き 部屋の鍵を開ける レイとマリアが部屋へ入る
控え室
レイが進み入り マリアが扉を閉めると言う
「はぁ~… 緊張した…」
レイがソファに座ると微笑して言う
「マリアが緊張しなくても良いだろ?」
マリアがレイの下へ向かいながら言う
「そうは言いましても 私は ウィザード様以外のウィザード様を見るのは 14年振りで それも あんなに大勢居ると… 物凄い迫力で」
レイが言う
「14年前だって 6人のウィザードが 儀式をやったはずだが?」
マリアが言う
「私の記憶にあるのは 1人だけです お母さんのウィザード様だけで…」
レイが言う
「そうなのか」
マリアが言う
「あの時は とっても怖い思いをしたので それ以外は 殆ど覚えて居なくて…」
レイが沈黙する マリアが時計を見てから言う
「早めに来たのは良かったですが 時間までどうしましょう?やっぱり 皆さんに ちゃんとご挨拶した方が 良いですよね?皆さんホールにいらっしゃいますし 一息吐いたら 私たちも ホールへ出た方が…」
レイが言う
「マリアの好きで良いよ 疲れるんなら ここに居た方が良いだろ?」
マリアがホッと微笑した後 ハッとして言う
「い、いえっ!いけませんっ!」
レイが呆気に取られて言う
「え?」
マリアが言う
「こう言う時こそ!積極的に ご挨拶してこそっ!後の成績に繋がる物です!」
レイが疑問して言う
「成績?」
マリアがレイへ向いて言う
「行きましょうっ!ウィザード様っ!皆さんに ご挨拶しましょうっ!」
レイが言う
「あ… ああ マリアがそうしたいなら 俺は別に…」
マリアが言う
「別に じゃありません!ウィザード様のお好きな 奉者の女の子たちだって 一杯居ますよ!?」
レイが疑問して言う
「はぁ?」
マリアがレイの腕を掴んで言う
「はぁ?じゃ ありませんっ この際ですから許します!さあ!皆さんと違って 黒っぽい法衣でも 堂々と行きましょう!」
レイが困惑して言う
「え、えーっと… マリア?」
マリアがレイの襟首を持ち上げて言う
「はいっ マリアです!行きますよ!ウィザード様っ!」
レイが引き上げられている状態で慌てて言う
「わ、分かった 分かったから とりあえず下ろしてっ」
マリアがハッとして言う
「ああっ すみませんっ 思わず気合がっ」
ホール
マリアがドアを開けると ホールに居た10人の視線が一気に集まる マリアが身を強張らせて思う
(う…っ 何でこんなに 視線が集まるの…?)
マリアが自分の後に部屋を出て 後ろに立ったレイを横目に見てから思う
(う~ん… もしかして”灯魔儀式を終えていない町のウィザードだ”って事が分かるのかな…?何で…? あ やっぱり)
マリアがウィザードたちを一瞥してから思う
(法衣の色?でも… ウィザード様は 法衣の色は 魔力の強さだって… それなら この中で ウィザード様の色は一番暗い色だから …逆に それで 視線を集めてるのかな?)
奉者たちが自分のウィザードから言葉を受けている マリアが気を取り直して思う
(ううんっ!怖気ていては駄目!こう言う時は 声を掛けた者勝ちってものだからっ 思い切ってご挨拶に行こう!…で、誰から行くべき?やっぱり 法衣の色が明るい人から? …え?)
マリアが向かおうと顔を上げた先 奉者3が言う
「初めまして リア・サインと申します 3番の控え室を使用している ウィザード様の奉者をしております」
マリアがハッとして 3番の控え室を見る ウィザード3がマリアを見てからレイを見て視線を逸らす 奉者3が言う
「本日は宜しくお願い致します」
マリアがハッとして 慌てて言う
「あ、失礼しました 私はマリア・ノーチスと申します」
奉者3が微笑してからレイを見る マリアが奉者3の視線を確認しつつ言う
「こちらこそ 宜しくお願いします」
奉者3が微笑し 礼をしてから立ち去る マリアが向かおうとすると 次々に奉者たちが挨拶に来る マリアが慌てて応対する
最後に挨拶をした奉者とウィザードが去ると マリアがホッと息を吐く レイが言う
「大丈夫か?マリア?」
マリアが苦笑して言う
「は、はい… 私から行くつもりが あっという間に来られてしまって 心の準備が出来ていなかったせいもあって しっかりご挨拶 出来なかったです」
レイが言う
「ああ あいつらは 俺たちが出てくるのを 待っていただろうからな?」
マリアが言う
「待っていた?では 来たのが遅過ぎたのでしょうか?…あ、でも」
マリアが周囲を見る 周囲では挨拶を行っている マリアが思う
(挨拶はまだ 終わってなかったみたい)
マリアが周囲を確認しつつ思う
(あ… やっぱり 法衣の色の順に優劣が付いているんだ …って?良く見れば 法衣の一番明るいウィザード様が2番の控え室だわ そこからどんどん暗い色に… …と言う事はつまり?)
マリアがハッとして思う
(それじゃっ まさかっ!?)
控え室
レイが奥へ向かって行く マリアがドアを閉め レイへ向き直って言う
「あ、あの… ウィザード様?」
レイが言う
「ん?何だ?マリア」
マリアが言う
「もしかして ですけど… この部屋割りって」
レイが言う
「ああ、魔力順だよ?」
マリアが思う
(やっぱりっ!!)
マリアがレイを見て言う
「あの… つかぬ事をお伺いしますが」
レイが言う
「ん?どうした?マリア?」
マリアが言う
「ウィザード様は 私たちとは違って 魔力の強い弱いが分かるんですよね?って事は もしかして あのウィザード様たちの奉者への耳打ちって ひょっとして」
レイが言う
「ああ、ウィザードたちが自分の奉者に 教えてるんだろう?俺がすげぇ強いってさ?」
マリアが思う
(やっぱり そうなんだっ!?)
レイが微笑して言う
「けど ここまで来ちゃえば 魔力の分からない奉者でも 部屋番号を見れば分かるからさ?マリアも気分良いだろ?俺としては 白い法衣を着てれば 儀式の時も マリアのウィザードが一番強いって 巡礼者や見学者にも分かるから 良いと思ったんだけどな?」
マリアが言う
「え?あ…」
マリアが思う
(なんだ… そう言う意味だったんだ…)
レイが言う
「それにしても 6番の奴まで 割と明るい色だったな?」
マリアがハッとしてから 困って言う
「あ… ご、ごめんなさい… 私が」
レイが言う
「あ、いや、そうじゃなくてさ?マリアじゃないけど もう少し謙虚な色で来て欲しかったよな?これじゃ 多分 俺だけだと思うんだよ 7番目の奴と 同じ色なの」
マリアが一瞬驚いて言う
「え?7番目って… それは」
レイが言う
「ここには 昔の通り6番までしか控え室が無いけど 何処かに居るだろ?もう1人」
マリアが言う
「あ、つまり もしここに7番目の 控え室があったら そちらを使われる予定のウィザード様… ですね?」
レイが言う
「うん …こっちは良いとしても あっちの奉者が 気にするかもな?」
マリアが苦笑して言う
「それに、他のウィザード様の感じですと 7番目の方まで ウィザード様より 明るい色の可能性も ありますよね…?」
レイが言う
「いや、それは無いよ 以前より 明るくするって事は無いと思う」
マリアが言う
「以前より…?え?それはどう言う?」
館内放送が流れる
『間もなく 大灯魔台 灯魔儀式を開始致します ウィザード様 共に奉者様方は 大灯魔台 控え出口まで お越し下さい 繰り返します…』
マリアが言う
「あ、お、お時間ですね …あら?奉者も台座へ?」
レイが言う
「ああ、灯魔儀式では 奉者の力も大切だからな?」
マリアが驚いて言う
「えっ!?奉者の力っ!?」
レイが言う
「うん!期待してるからな!マリア!」
レイが部屋の出口へ向かう マリアが慌てて言う
「え?え!?えぇえーっ!?そ、それ どう言う意味ですかっ!?ウィザード様ぁっ!?」
マリアが慌ててレイを追う マリアとレイがホールへ出ると 係員が言う
「それでは 大灯魔台 控え出口の方へ ご案内致します」
係員が歩き出すと 皆の視線がレイへ向く レイが係員に続く マリアが視線をめぐらせた後レイに続くと 2番の控え室前からウィザード2が続く
通路
マリアが後方を伺ってからホッと息を吐いて思う
(良かった… 一瞬付いていくべきか悩んだけど いつもの灯魔儀式の時 奉者も案内の人に続いて行くし 後は… 控え出口まで ウィザード様と同行すれば良いのかな?…それにしても ”奉者の力も大切”って言ってたけど あれって どう言う事?…今回は私も 何かやるの?)
マリアが悩むと係員が立ち止まり 道を示して言う
「1番から3番までの控え室の方はこちらの通路をお進み下さい 出口にも番号が振られておりますので そちらの方へお願い致します 4番以降の方はこちらになります」
係員が4番以降を先導する レイが言われた通路へ向かう マリアが続き2番3番が続く
レイが1の番号が記されている控え出口へ向かう マリアが向かおうとすると 2番以降のウィザードと奉者たちがそこを過ぎ去る マリアがそれを見てから 1番の控え出口付近へ視線を向けると レイが出口前に立っている マリアがレイのもとへ向かうと 出口の先に大灯魔台が見える マリアが驚いて言う
「わぁ… 大きいっ いつもの灯魔台より 10倍くらいあるみたい」
レイが言う
「そうだな 何しろ6人… あぁ 7人掛りだもんな?」
マリアが言う
「そうですね 7人ものウィザード様で… あら?そう言えば 7人目の方 ホールにもいらっしゃらなくて ご挨拶出来ませんでしたが?」
レイが言う
「ああ、わざとだろ?一度 儀式を失敗させてるんだから」
マリアが驚いて言う
「えっ!?」
レイが真っ直ぐ見据えて言う
「それでも 生き残ったウィザードだからな?…けど、まさか 本当に来るなんてさ?その根性には 俺も 驚いたよ」
マリアがレイを見ていた状態からハッとして レイの視線の先を見て 驚きに目を見開いて言う
「ウィザード… さま…っ」
マリアの視線の先 ”ウィザードさま”が居る レイが言う
「あれこそ 奉者の力だろうな?マリア」
マリアが驚いて言う
「えっ」
マリアが思う
(奉者の!?…それじゃっ!?)
レイがマリアを見て微笑する マリアがレイを見てからハッとして再びウィザードさまを見て その横に居る ソニアを見て息を飲んで言う
「お母さん…っ」
ソニアが驚いていて言う
「マリアが…っ どうして…っ?」
ウィザードさまが言う
「マリア?」
ウィザードさまがマリアを見る
マリアがウィザードさまの視線にハッとすると ウィザードさまの目を遮るようにレイが立つ マリアが気を取り直してレイを見上げる レイが言う
「法衣もお揃いで 従えている奉者が 親子だなんてさ?普通なら面白い所だけど マリア 今日の事 お母さんと話でもしてたのか?」
マリアがハッとして言う
「あ… い、いえ…っ!今日の準備に忙しかった事もあって 母には… 何も…」
マリアが思う
(まさか ここで お母さんと会っちゃうだなんてっ 考えても居なかった…っ 大灯魔台の灯魔儀式が 無事に終わったら 伝えようと思ってたのに…)
レイが言う
「そうなのか… うん?マリア もしかして あのウィザードが来る事 知らなかったのか?」
マリアが言う
「ウィザード様は ご存知だったのですかっ!?」
レイが言う
「うん、灯魔台の灯魔儀式をやる順番を決めるのに 他の町の灯魔状況を見てたからな?」
マリアが視線を落として言う
「そう… だったんですか…」
レイが言う
「マリア?」
マリアが苦笑して言う
「あっ い、いえ 何でもないです」
アナウンスが流れる
『これより 大灯魔台 灯魔儀式を…』
マリアが思う
(奉者になった事を伝える所か 一緒に 大灯魔台の灯魔儀式に 奉者として参列する事になるだなんて… でも)
マリアがレイを見てから思う
(このウィザード様と一緒なら きっと 儀式は成功する だって ”私のウィザード様”は …最強のウィザード様だから!)
アナウンスの続きが聞こえる
『それでは ウィザード様方 灯魔儀式を お願い致します』
マリアが言う
「あ、あのっ ウィザード様っ」
レイがマリアへ向く マリアが微笑して言う
「頑張って下さいね!」
レイが一瞬呆気に取られた後 笑んで言う
「ああ!任せとけって!」
マリアが微笑する レイが微笑してから大灯魔台へ向き直って 歩いて行く マリアが出口付近へ行き 大灯魔台へ向かって行くウィザードたちを見た後 周囲の状況を見る 奉者たちがマリアと同じく 出口付近でウィザードたちを見つめている マリアがソニアを見る ソニアも他の奉者たちと同じくウィザードたちを見詰めている マリアが思う
(今は 私も… お母さんや 他の奉者たちと同じ様に 儀式の成功を… ウィザード様たちの 無事を祈ろう!)
マリアが祈りの手を握ってから レイを見る
ウィザードたちの一部が各自灯魔位置で立ち止まる レイが灯魔口へ向かう ウィザードさまがレイに続くと 他のウィザードたちが続く レイが灯魔口で5大属性を確認して 僅かに目を細める ウィザードさまが言う
「大灯魔台の属性は 起動作業を終えるまでは 分からないぞ」
ウィザード2が言う
「彼ほどの能力があれば 分かるんじゃないのか?」
レイが言う
「いや 先輩の言う通りだ 完全に魔力が抜けてる」
ウィザード3が言う
「では どうする?その先輩に習って 火で行くか?」
レイが言う
「あの大灯魔台の属性は 結局なんだったんだ?」
ウィザードさまが言う
「…水だったな」
ウィザード4が言う
「真逆か 失敗する訳だ」
レイが言う
「水だと分かったのは?」
ウィザードさまが言う
「起動を終えた時だ」
レイが言う
「何故変えなかった?」
ウィザードさまが言う
「起動は補助灯魔台の全ての灯魔と連動する …誰も 1からやり直そう とは言わなかった」
ウィザード2が言う
「押し通すつもりだったのか」
ウィザード3が言う
「そう言う連中は多い 20年前に神に選ばれたウィザードも その1人だろう?」
レイが言う
「彼は炎のエキスパートだった 基礎魔法の火に頼る お前たちとは違う」
ウィザードたちが反応してムッとする ウィザードさまが苦笑して言う
「流石に言ってくれる」
ウィザード2が言う
「ならどうする?属性を合わせるか?」
レイが言う
「もちろん」
ウィザードさまが言う
「エキスパートではない 我々で成功させるには それしかない」
ウィザード3が不満そうに言う
「…チッ 面倒だな どうせ 今世代選ばれるのは エキスパートの子息殿に決まっているのに それに付き合わされるだなんて」
他のウィザードたちが反応する レイが言う
「俺はいくつもりは無い 最後まで残れよ 譲ってやるから」
ウィザードたちが驚く ウィザードさまが言う
「本気か?」
レイがウィザードさまへ微笑して言う
「先輩と同じだよ …流石 親娘だよな?ウィザードを惚れさせる… なんてサ?」
ウィザードさまが驚いた後視線を逸らす ウィザードさまの後方にソニアが居る ウィザードたちが各自灯魔場所へ向かう マリアがソニアを見る ソニアがマリアを見てからウィザードさまへ向く マリアがそれを見てからレイへ向く
ウィザードたちが各自 灯魔場所に立つとウィザードたちの視線がレイへ向く レイの前に杖が浮かび魔力が収集され 一瞬の後周囲に炎が集まる ウィザードたちがそれを見て各自の構えで魔力を収集し炎を集める ウィザードたちの炎が終結し 大灯魔台の上部に集まる マリアが息を飲んで思う
(す、凄い…っ いつもの灯魔儀式の何倍だろう?こんなに距離があるのに ここまで空気が熱くて… 呼吸が苦しい…っ)
マリアがつばを飲み周囲の状況を見る 他の奉者たちも圧倒されつつ堪えている マリアが気合を入れて思う
(そうよねっ 自分の仕えるウィザード様が 頑張っているんだもん 私たちだって…っ)
マリアがレイを見る
ウィザードたちが横目に他のウィザードの様子を気に掛ける ウィザードさまがレイを見る レイは誰も見ずにいつも通り行っている マリアがレイを見つめる 炎が大きくなりやがて意思を持って7つに分かれ ウィザードたちへ襲い掛かって来る マリアがハッとすると 炎が各ウィザードたちの杖に防がれる マリアが見つめる中 レイが杖を取り振り上げると炎が弾かれ大灯魔台の灯魔口へ叩き込まれる 他のウィザードたちが次々それに倣う 7つの炎が灯魔口に入ると 大灯魔台に連動した補助灯魔台の1つに炎が灯る マリアが呆気に取られて 炎の灯った補助灯魔台を見る
レイの前に杖が浮かぶ マリアがそれに気付いて目を向けると レイの周囲に水が集まる マリアが他のウィザードたちを見る 他のウィザードたちも同様に水の魔法を集める マリアが思う
(今度は水…?あ、もしかして?)
マリアが補助灯魔台を見る 補助灯魔台は5つある 大灯魔台の上空に集められた水が徐々に大きくなり やがて意思を持って7つに分かれ ウィザードたちへ襲い掛かって来る レイが杖を振り上げると 水が弾かれて大灯魔台の灯魔口へ叩き込まれる 他のウィザードたちも同じくする 補助灯魔台に水が灯る マリアが思う
(あの補助灯魔台に 5つの灯魔を 全て灯すのかも…?)
レイの前に杖が浮かび上がる マリアが見つめる レイが杖を振り上げると 砂が弾かれて大灯魔台の灯魔口へ叩き込まれる 他のウィザードたちも同じくする 補助灯魔台に砂が灯る マリアが思う
(いつもは 午前と午後に1度づつ… そういえば1度だけ午後に2回 続けた事はあったけど… それを5回も続けてだなんて …大丈夫なのかな?)
マリアが心配する
レイの前に杖が浮かび上がる マリアが見つめる レイが杖を振り上げると 雷が弾かれて大灯魔台の灯魔口へ叩き込まれる 他のウィザードたちも同じくする 補助灯魔台に雷が灯る ウィザードの5と6が僅かに苦しそうにする マリアが気付き目を向けて思う
(やっぱり辛そう…)
マリアがレイを見る レイの前に杖が浮かび上がる マリアが一瞬驚いてから 苦しがっていたウィザード2人を見る ウィザード2人が気を取り直し構える レイが杖を振り上げると 風が弾かれて大灯魔台の灯魔口へ叩き込まれる 他のウィザードたちも同じくする 補助灯魔台に風が灯る 更に2,3,4番のウィザードが僅かに苦しそうにする マリアがハッとしてウィザードさまを見る ウィザードさまも僅かに息を上げてから大灯魔台を見上げる マリアがウィザードさまの視線を追って視線を向けると 驚いて言う
「あっ ウィザード様っ!?」
レイが灯魔口へ手をかざし 僅かに表情を顰めて言う
「…まだ 分からないな?」
マリアが見つめていると レイのもとにウィザードさまが来て言う
「どうだ?」
レイがウィザードさまを見て言う
「分からない 僅かな差はあるが」
ウィザード2が来て言う
「分からないだって?」
ウィザード3も来て言う
「それじゃ どうするんだ?」
レイが言う
「どの属性かは 分からないけど 補助灯魔台には全ての属性を灯しているんだ もう一度ずつ投下すれば 正しい属性だけが灯るだろ?」
ウィザード4が来て言う
「後5回も やれって言うのか?」
ウィザードさまが言う
「当たりを 引けなければな?」
ウィザード5が来て言う
「無理だ… 火だけなら兎も角 もう一度全属性をやるなんて 持たない」
ウィザードさまがレイへ向いて言う
「同感だ 2属性を試して 無理なら 今回は潔く諦めるか?」
レイが言う
「先輩たちは合計で8回 灯魔を成功させていた筈だが?」
ウィザードさまが言う
「一属性だ 基本魔法の火だけを」
ウィザード2が言う
「その方が良かったかもな 今回はエキスパートの子息殿が居たんだし」
レイが言う
「俺は父親ほど 優秀じゃない」
ウィザードさまが苦笑して言う
「謙虚だな?」
レイが言う
「事実だよ」
ウィザード6が言う
「何にしても 一度休憩を入れないか?ここまで来たら 少し時間を空けるのだって 同じだろう?」
レイが言う
「そうだな 起動灯魔力が少し位下がった所で 一属性で押し通す訳じゃないんだ 灯魔力に影響は無い」
ウィザードさまが言う
「休憩を入れると 立ち上がりは 苦しくなるのだがな」
レイが笑んで言う
「先輩は歳だから」
ウィザードさまが苦笑して言う
「言うなよ」
ウィザード2が疑問して言う
「仲良いな?知り合いか?」
レイが言う
「そうかもな?」
ウィザードさまが言う
「だろうな?」
ウィザードたちが各出口控えへ向かう マリアが一瞬呆気に取られレイを見上げる レイが微笑して言う
「少し 休憩だって」
マリアが微笑して言う
「はい お疲れ様です!」
レイとマリアが歩いて行く
控え室
マリアがドアを閉めてから向き直って歩きつつ言う
「他のウィザード様たちと 何かお話し していましたよね?」
レイがソファに座って言う
「うん 何の魔法にしようかって」
マリアが微笑して言う
「あ… なるほど それは大切ですね」
レイが言う
「後は ちょっとした 世間話とか?」
マリアが衝撃を受けて言う
「せ、世間話っ!?」
レイが微笑して言う
「うん」
マリアが困惑して思う
(失敗をすれば 命に関わるような 大事な儀式の時に 世間話 だなんて…っ!?…やっぱり ウィザード様たちって 分からないわ…)
マリアが呆れて息を吐く
「はぁ…」
レイが言う
「マリア」
マリアが疑問する レイが微笑して言う
「マリアも座りなよ?ずっと立ってて 疲れただろ?」
マリアが苦笑して言う
「あ… はい… でも 緊張していて それ頃じゃないですけど」
レイが言う
「この後も 少し続くかもしれないから 遠慮せずに!」
レイが身を寄せて 自分の隣を勧める マリアが苦笑して言う
「あ、はい では…」
マリアがソファに向かいつつ思う
(何で この控え室って ソファ1つ以外に 椅子が無いのかな?奉者の事考えてないの?)
マリアがソファに腰を下ろして思う
(これじゃ まるで ウィザード様のお部屋に居る時みた… いっ!?)
マリアが衝撃を受けると レイがマリアに抱き付いている マリアが呆れて思う
(もしかして こういう目的の為…?)
レイが言う
「うーん こうしてると やっぱ 落ち着くなぁ…」
マリアが思う
(こっちは 儀式はもちろん お母さんを前に すっごい緊張しているのに…っ)
レイがマリアの頭を撫でる マリアが心の中で溜息を吐く
(はぁあ~…)
大灯魔台 控え出口
マリアがソニアを見る ソニアがマリアを見た後レイを見る マリアが視線に気付いてレイを見る レイが言う
「これで 灯魔儀式は無事に終わるから マリアは安心して見てなよ」
マリアが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
「あ、はい …が、頑張って下さいね?」
レイが言う
「うん!」
レイが出て行く マリアが微笑した後ソニアを見る ソニアが視線を落としてから 気を取り直してウィザードさまを見る マリアがその視線を追って視線を向ける
ウィザードさまが灯魔口を確認している レイが来て言う
「分かんないだろ?どうしようか?」
ウィザードさまが言う
「そうだな… 威力の低い属性から試すなら 何とか3回まで持つか…」
レイが言う
「でも 少しだけど 反応の低い属性がある それは 省くべきだと思うんだ」
ウィザードさまが言う
「土と… 水か?」
レイが言う
「うん」
ウィザード2が言う
「なら 最初は火 次が雷 その次が風か?」
ウィザードさまが言う
「厳しいな 万が一 威力が偏れば 風は受け止め切れる自身が無い…」
レイが言う
「風なら 俺に任せとけよ 先輩はどうせ 引退試合だろ?」
ウィザード2が言う
「威力が偏れば 俺だって厳しい 雷が灯らなかったら 止めにしようぜ?」
ウィザード3が言う
「俺も 初戦で引退なんて したくは無い」
ウィザード4が言う
「全員で 中止を申請すれば 全員にマイナスが付くとは言え 今日の灯魔儀式は無効に出来るだろう そうしよう」
レイが言う
「いや、それなら 雷が灯らなかったら 風は 俺と先輩で引き受ける」
ウィザードさまが言う
「お、おいっ」
レイが言う
「心配するなよ 無理だったら 俺が助けてやるから それに先輩の分は ある程度は全員で受け持つ …よな?」
ウィザード2が言う
「わざと偏らせるのか?」
ウィザード3が言う
「そんな事出来るのか?」
レイが言う
「この前 灯魔の打消しをやったんだけど その時気付いたんだ 真逆の属性を叩き込むと 灯魔が反発する …これを利用出来るんじゃないかなぁって?」
ウィザードさまが言う
「風の灯魔を行う際に 土魔法を混ぜろ… と言う事か?」
レイが言う
「折角 余分に1人居るんだから 灯魔魔力は足りる筈だ 試してみようぜ?」
ウィザード2が言う
「だが 風の灯魔を行いながら 土魔法を取り入れる …同時に2つの魔法を放つなんて …出来るか?」
レイが言う
「出来るよな?先輩 昔から 灯魔中に 余計な魔法使ってるもんな?」
ウィザードさまが言う
「あの頃から 気付かれていたのか …恐ろしいな エキスパートは?」
ウィザードたちが各灯魔場所へ着く マリアが周囲を見渡す 奉者たちが真剣に見詰めている マリアが思う
(補助灯魔台に全ての灯魔が灯った… ここからが本番?ウィザード様は 控え室で ”少し続くかもしれない”って言ってた… 続くかもって事は 続かないかも?それは…)
マリアがレイを見る
ウィザードたちの視線がレイへ向く レイの前に杖が浮かび魔力が収集され 一瞬の後周囲に炎が集まる ウィザードたちがそれを見て各自の構えで魔力を収集し炎を集める ウィザードたちの炎が終結し 大灯魔台の上部に集まる マリアが思う
(また 火の魔法… これを何度もやるのかな?…そう言えば 10年前も そんな光景を見たような…)
マリアの脳裏に 10年前の魔力暴走の映像が過ぎる マリアがぐっと目を閉じて思う
(こ… 怖い…っ でも 大丈夫っ 今回だって もしもの時はっ ”あのウィザードさま”がっ)
マリアがウィザードさまを見る マリアがハッとしてレイを見る レイはいつも通り行っている マリアが思う
(そう… それに今度は ”私のウィザード様”も 居るんだから… 儀式の失敗は無いって 豪語していたし!)
マリアが頷いてレイを見つめる
炎が大きくなりやがて意思を持って7つに分かれ ウィザードたちへ襲い掛かって来る マリアがハッとすると 炎が各ウィザードたちの杖に防がれる マリアが見つめる中 レイが杖を取り振り上げると炎が弾かれ大灯魔台の灯魔口へ叩き込まれる 他のウィザードたちが次々それに倣う ウィザードたちが灯魔口を見る マリアがウィザードたちの様子に 同じく灯魔口を見る 奉者たちも同じくする 灯魔口に変化は無い ウィザードたちが僅かな反応をして ウィザードたちがレイを見る マリアや奉者たちがレイを見る
レイの前に杖が浮かぶ マリアがそれに気付いて目を向けると 他のウィザードたちも同様に構える レイの周囲に雷が集まる マリアが他のウィザードたちを見ると 他のウィザードたちも同様に雷の魔法を集める マリアが思う
(今度は雷… 火を続けるんじゃないんだ …それに 何だか私だけじゃなくて 他の奉者たちも… ううんっ 違う 皆が ”私のウィザード様”の行動を確認してる …そうなんだ やっぱり ウィザード様は…)
マリアがレイを見る レイはいつも通り澄まして雷を集めている マリアが他のウィザードを見る 他のウィザードたちは僅かながらも苦しそうにしている マリアが思う
(特別… 凄いウィザード様 なんだ…)
マリアが視線を向ける 大灯魔台の上空に集められた雷が徐々に大きくなり やがて意思を持って7つに分かれ ウィザードたちへ襲い掛かって来る レイが杖を振り上げると 雷が弾かれて大灯魔台の灯魔口へ叩き込まれる 他のウィザードたちも個々に負担を受けつつも何とか雷を灯魔口へ向かわせる ウィザード6が歯を食いしばって最後の灯魔を行うと ウィザードたちが目を細めて灯魔口を見つめ 一瞬の後 皆が思う
(((灯らないっ!?)))
ウィザードたちの視線がレイへ向く レイが僅かに目を細めつつ レイの前に杖が浮かぶ ウィザード2が僅かに表情を顰めつつ構える ウィザード2を見たウィザード3が頷いて構える ウィザード5とウィザード6が表情を困らせつつ構える ウィザードさまが横目にソニアを見てから意を決して構える マリアがそれに気付いて目を向けると ソニアがウィザードさまを見つめている マリアが何かを感じつつレイへ向く レイの周囲に風が集まる マリアがハッとして思う
(風の魔法…っ)
マリアがふと他のウィザードたちを見る 他のウィザードたちも同様に風の魔法を集めている マリアが思う
(何だろう…?なんだか… ドキドキする…っ)
マリアが大灯魔台を見る 大灯魔台の上空に集められた風が徐々に大きくなり やがて意思を持って7つに分かれる マリアが違和感を覚えて思う
(何か?さっきまでと違うっ?)
マリアがレイを見る 風魔法がウィザードたちへ襲い掛かって来る ウィザードたちが自分たちの杖で自分に向かってきた風魔法を受け止める レイに向かってきた風魔法が一段と大きく 受け止めた際に大きな衝撃波がある マリアが思わず悲鳴を上げる
「きゃあっ!ウィザード様っ!?」
マリアが顔を向けると レイが僅かに表情を顰めつつも堪えると 杖を掴んで振り上げる レイへ向かっていた風魔法が弾かれ 凄い衝撃と共に灯魔台に叩き込まれる 続いてウィザード2、3、4、5、6が何とか同じくする ウィザードさまが最後まで残る マリアがハッとして思う
(ウィザードさまがっ!?)
レイがウィザードさまを見る ソニアがハッとして 思わず踏み出す ウィザードさまが堪えきれずに思う
(これで終わりか…っ すまない ソニア…)
ウィザードさまが風魔法に負けて弾き飛ばされて言う
「ぐ…っ」
ウィザードさまが床に倒れる マリアが驚き息を飲むと ウィザードさまを弾いた風魔法が暴走し再びウィザードさまへ襲い掛かって来る ウィザードさまが顔を向け観念すると 同時にソニアがウィザードさまに抱き付いて来る マリアが驚く ウィザードさまが言う
「ソニア…っ」
マリアが叫ぶ
「お母さんっ!!」
マリアが思わず踏み出した瞬間 レイがウィザードさまの前に立ち 風魔法を食い止める マリアが驚く ソニアが顔を向けると レイが僅かに堪えてから杖を振るう 風魔法が弾かれ台座に叩き込まれる 一瞬の後 大灯魔台に風が灯る ウィザードたちが反応すると共に 会場内から声が上がり 間を置いて 巡礼者たちが祈りを捧げる
ウィザードたちが息を吐き レイたちを見る ウィザードさまが起き上がり苦笑して言う
「お陰で 無様な幕引きとなった」
レイが言う
「成功したんだから 良いだろ?」
ウィザードさまが言う
「そうだな もう悔いは無い…」
ウィザードさまがソニアへ向いて言う
「…そうだろう?ソニア」
ソニアが微笑して言う
「はい」
レイが苦笑する
レイがマリアへ向き直る マリアが言葉を失っている レイがマリアの下へ戻って来る マリアがホッとして言う
「ウィザード様」
レイが微笑して言う
「ただいま!マリア 約束通り成功させて来たぜ!」
マリアが微笑して言う
「はい …それに 有難う御座いました 母を助けて下さって」
レイが疑問して言う
「え?母を?」
レイが振り返り ウィザードさまとソニアを見てからマリアへ向いて言う
「…ああ、そうだな?」
アナウンスが入る
『大灯魔台 灯魔儀式は 無事成功致しました 続いて この度の灯魔儀式を用いまして ウィザード様の不認定投票を行います』
マリアが驚いて言う
「ふ、不認定投票…っ」
マリアが思う
(失礼な…っ 灯魔儀式を成功させたんだから 不認定なウィザード様なんて…っ)
マリアがハッとして 表情を落としつつウィザードさまを横目に見て思う
(そっか… これは ただの灯魔儀式じゃなくて 神様に選ばれるウィザード様を 選出する為の 審査を兼ねているんだ…)
マリアが巡礼者たちを見る 巡礼者たちが白い紙を用意している アナウンスが流れる
『それでは 投票に先立ちまして 各ウィザード様へお仕えする 奉者様のお名前を発表させて頂きます 大灯魔台へ向かい 右手前より レミィ・クレシア奉者様 その後方 アリル・レイン奉者様…』
奉者2と奉者3が控え出口の外に立ち 名を呼ばれると礼をする マリアが気付き 慌てて控え出口の外へ向かう アナウンスが言う
『その後方 マリア・ノーチス奉者様』
マリアが名を呼ばれ どきっと胸を高鳴らせつつ 頭を下げて思う
(う… 何だかっ 凄く 緊張する …だって)
マリアが頭を上げ正面へ視線を向けると 多くの巡礼者たちの視線がマリアへ向けられている マリアが緊張して思う
(う、うわぁ~… 私 今絶対 ”あの”ウィザード様の奉者 として見られてる…っ でもっ ウィザード様は凄いけど 私は…)
マリアが横目にレイを見る レイが気付き微笑する マリアが苦笑して思う
(もっと 自信持たないと よね?…だって ウィザード様は いつも ”マリアのウィザード様”だって そう言ってくれるもの…)
アナウンスが続いている
『…その後方 ソニア・ノーチス奉者様』
マリアがハッとして顔を向ける ソニアがキリッと人々へ向いてから静かに礼をする マリアが一瞬見惚れた後 表情を落として思う
(お母さん… 今 どんな思いなんだろう…?)
マリアがソニアを見る ソニアが深い礼をゆっくり戻す マリアが表情を悲しませて思う
(やっぱり 他の人より 長かった… まるで 謝罪… ううんっ お願いしていた…? …そうよね だって 灯魔儀式は成功したけど お母さんのウィザード様は…)
奉者たちが出口控えへ戻って行く マリアがその様子に自分も倣いながら横目にソニアを見て思う
(あの状況を見た 巡礼者の人たちは きっと… 不認定票に お母さんのウィザード様を… お母さんの名前を書く…)
マリアが巡礼者たちを見る マリアが息を吐いて思う
(私だって… もし私が 一般の投票者なら きっとそうする… 他のウィザード様は大丈夫だったのに 1人だけ…)
マリアの脳裏に記憶が蘇る ウィザードさまが風魔法に弾かれ床に倒れる マリアがぐっと目を瞑って思う
(魔法を押さえ切れなかった…っ それに奉者に庇われて 他のウィザードに助けられた… 不認定の1人の名前を 書かなきゃいけないなら 当然そうなってしまう…)
マリアが溜息を吐いて思う
(あのウィザードさまは 本当は凄いのに… だって 10年前は あの失敗した大灯魔儀式で 暴走した魔法を収めてくれた… 私のお願いを聞いてくれて…)
マリアの脳裏に 記憶が蘇る
幼いマリアが目を見開き ソニアの横に居るウィザードさまへ叫ぶ
『助けてっ ウィザードさまっ!』
幼いマリアの声にウィザードさまが一度視線を向ける マリアが必死に叫ぶ
『お願いっ!皆を助けてっ!ウィザードさま!お願いっ!』
幼いマリアが目を開くと視線の先 ウィザードさまの杖が強く光っている マリアが驚きハッとして周囲を見る 暴走していた炎が強い風に巻き上げられている マリアがウィザードさまを見る ウィザードさまの顔は見えないが ソニアが驚いている マリアが言う
『ウィザードさま… 助けてくれた… やっぱり お母さんの ウィザードさまが…』
マリアが視線を落として思う
(折角 お会い出来たのに あの時のお礼も言えないで… こんな お別れになってしまうだなんて…)
マリアが溜息を吐く
「はぁ…」
と、同時に係員が控え出口の外から言う
「失礼致します」
マリアが驚いて言う
「キャッ!あっ はいっ!?」
係員が一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「…失礼致しました こちらを」
係員がマリアに赤い票を渡す マリアが呆気に取られつつ言う
「え?あ… これは?」
係員が微笑して言う
「はい こちらは 奉者様だけにお配り致します ウィザード様の 認定票 と なっております」
マリアが疑問して言う
「に… 認定票?」
係員が言う
「はい ウィザード様にお仕えされる奉者様方へ 不認定票を お渡し致します事は 失礼に値すると …代わりまして 巡礼者様方とは異なり 認定票は ウィザード様として 相応しいと思われる方へ 票を投じる物です」
マリアが言う
「相応しいと思われる…」
係員が微笑して言う
「はい、そちらの票は 不認定票100票を 打ち消す形として 集計させて頂きますので お間違え無く ご記入をお願い致します」
マリアが驚いて言う
「ひゃ、100票もっ!?」
係員が微笑してから言う
「それでは 後ほど票を回収しに参りますので…」
係員が立ち去る マリアがハッとして思う
(あ、そう言えば ウィザード様が 先日言っていた …奉者の票は100票に値するって これの事だったんだ?)
マリアがレイを見る レイが他方を見つつ軽く息を吐く アナウンスが流れる
『それでは 投票作業 また 集計作業が完了するまで ウィザード様方は 控え室の方でお待ち下さい 奉者様は 投票を終えた後…』
レイが反応してマリアを見る マリアが一瞬呆気に取られる レイがマリアの手元を見てから苦笑して言う
「それじゃ、俺は先に行ってるからな?マリア」
マリアが一瞬驚いた後 思い出したように認定票を見てから言う
「…あ!はい 私も 投票を終えたら すぐに向かいます」
レイが言う
「うん」
レイが立ち去る マリアが出口へ向きふとソニアを見る ソニアはウィザードさまが去るのを見送っている マリアが軽く息を吐き 認定票を見てふと気付いて思う
(この認定票は 不認定票100票を 打ち消す…)
マリアが巡礼者を見て思う
(大灯魔台の灯魔儀式に 参列する巡礼者数は 200人… その200人の内 全員とは言わなくても きっと半分以上は お母さんの名前を書く… だったら もし私が この認定票に ”お母さんの名前” を 書いたら!?)
マリアが認定票を見つめて思う
(私の票で 100票を相殺出来るっ!そうしたら… 残りの票数は もしかしたら ギリギリでも お母さんのウィザード様は 不認定の審査を免れるかもしれない!?)
マリアが顔を挙げ 大灯魔台を見つめて思い出しながら思う
(あの灯魔儀式の状況を思い返せば… お母さんのウィザード様だけじゃない 他のウィザード様たちだって とっても苦しそうだった… もしかしたら お母さんの名前以外を書く巡礼者も 居るかも知れない…)
マリアがハッとして思い出す
(そう言えば 巡礼者の人たちは いつもの 灯魔台での灯魔儀式も 評価に入れるって… だとしたら 望みがっ!?)
マリアが認定票を見て表情を落として思う
(…本当なら ここには自分の名前を… 自分のウィザード様に 認定の票を入れるもの …でも ウィザード様の力は圧倒的だった 誰も不認定票なんて入れるはずが無いっ …だったら この票で ”あの”ウィザードさまを…っ!?)
マリアが息を飲む マリアが認定票にペンを向けて思う
(これが あの時… 私のお願いを聞いてくれた ウィザードさまへの 14年越しの…っ)
係員が投票箱を持って現れて言う
「ご記入は お済でしょうか?」
マリアが微笑して言う
「はい」
マリアが 2つ折りにした赤い票を 投票箱に入れながら思う
(ウィザード様を選ぶ神様に 私のお願いが 伝わりますように…)
投票箱に入れられた票に ソニア・ノーチスの名前が書かれている
控え室
ノックが響き マリアがドアを開けながら言う
「失礼します ウィザード様」
レイが顔を上げ微笑して言う
「マリア」
マリアが近くへ来ると レイが座っているソファで身を寄せて言う
「はい、マリア!」
マリアが苦笑してから言う
「あ、はい では… 失礼します」
マリアが思う
(きっと また… 抱き付かれちゃうだろうけど 立っていられない… ちょっと 疲れちゃった)
マリアがソファに座ると レイが微笑しマリアに抱き付く マリアが苦笑する レイが言う
「マリアも お疲れ様だな?」
マリアが苦笑して言う
「はい お疲れ様でした… 見て居ただけの私が 疲れちゃう位ですから ウィザード様たちは もっと疲れちゃってますよね?」
レイが苦笑して言う
「うん… 流石にな?特に俺なんか 認定審査なんて 受けるつもりも無いのに …けど 大灯魔台の効力はデカイから それを灯すなら 力は貸さなきゃな?」
マリアが微笑して言う
「ウィザード様… 私が最初の時 ウィザード様に お伺いしたの 覚えていますか?」
レイが言う
「ん?」
マリアが言う
「私が ”ウィザード様は 何でウィザード様になったんですか?”って聞いたら」
レイが微笑して言う
「それは もちろん ”マリアのウィザード様”になる為だよ!マリア!」
マリアが苦笑して言う
「覚えていらっしゃったんですね…?」
レイが言う
「覚えても何も それは今だって変わらない」
マリアが苦笑して言う
「でも、それじゃ 可笑しいんじゃないですか?」
レイが言う
「え?何でだ?」
マリアが言う
「だって… ウィザード様は ちゃんと ”人々の為に” 魔法を使っているじゃないですか…?田畑に雨を降らせたり 灯魔儀式の属性を合わせる事で 自然環境を戻す事を考えたり 今回だって大灯魔台の効力を気にしたり それって その ”私のウィザード様になる為” なんかじゃないですよ?」
レイが一瞬呆気に取られた後 笑って言う
「あっはは 何言ってるんだよ マリア?それは全部 マリアの為だ」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「俺はマリアの為に やってるんだよ?だってそうしないと マリアと一緒に居る この世界を守れないだろ?」
マリアが驚いて言う
「こ、この世界をっ!?」
レイが言う
「そうだよ?マリアが居ないなら 俺はそんな事しないよ」
マリアが驚き言葉を失う レイが言う
「だから俺は マリアに会うまで 全然 何もやらなかったもん 素質も力も全部あったけど ウィザードにさえならなかった …マリアに会って マリアがウィザードさまに お願いするから だから俺は マリアの力になれる ウィザードさまに なろうと思った」
マリアが言葉を失っている レイがマリアを抱き締めて言う
「だから マリア 何でも言って 俺マリアの為なら 何でもしてあげるよ …俺にとっては 神々にどう思われたって構わない 言っただろう?マリアの為が一番だよ」
マリアが言う
「ウィザード様…」
レイが苦笑して言う
「けど 今はちょっと疲れちゃったな …やっぱ マリアの言う通り 修行が足りないのかな…?」
レイがマリアに抱き付く マリアが苦笑して思う
(私の為… 嘘じゃなかったんだ…?いつも 私の為にって…?そっか… あんなに凄い灯魔儀式も ウィザード様にとっては そう言う概念なんだ …私たちとじゃ 規模が違い過ぎて 分からなかった)
マリアがレイを見る レイはマリアに甘えて目を閉じている マリアが苦笑して思う
(そう言えば 何かある度に ”マリアの為に マリアの為に”って… このウィザード様は 本当に それしか考えてないのかもしれない… 神様に選ばれる事も 考えない… それなら このままでも良いのかな?これからも一緒に 灯魔儀式をして… ”マリアの為に” って …もっと色々 お願いをしちゃおうかな?それで 一緒に…)
マリアが微笑すると レイが一瞬脱力して杖を持つ手が緩み 杖が床に落ちて軽い音が響く マリアがハッとすると 同時にレイが目を覚まして言う
「…ん?あ… 一瞬 寝ちゃったみたいだ」
マリアが床に落ちている杖を見ると 杖が浮き上がってレイの手に戻る マリアが微笑して言う
「それだけ 疲れているんですよ 少し休んでいても良いですよ?ちゃんと 起してあげますから」
レイが言う
「うん けど 折角 マリアが居るんだから 勿体無いだろ?」
マリアが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「ウィザード様…」
レイが言う
「それに 一応」
マリアが疑問する レイが杖を見て言う
「ウィザードにとっては 今は 寝て待っていられるような 時でもないしな」
マリアが言う
「え?でも… ウィザード様は 神様に選ばれる事を 望んでは居ないのですよね?他のウィザード様たちは その為に この審査を受けていらっしゃるのに」
レイが言う
「うん それはそうだけどさ?けど、手は抜けないよ 下手をしたら この杖を失う事になるから」
マリアが疑問して言う
「杖を?」
レイが言う
「ああ、ウィザードとして不認定なら ウィザードの権利を失うんだから ”マリアのウィザード様”で居られる この杖を奪われてしまう」
マリアが驚いて思う
(―えっ!?)
レイが言う
「その待ち時間に 杖を落とすって ちょっと縁起悪いよな?ま、俺に不認定票入れる奴なんて 数人しか思い当たらないけど」
マリアが慌てて言う
「そんなっ!?その 数人って言うのはっ!?」
レイが言う
「巡礼者の中には まだ 俺たちが灯魔儀式をして居ない 灯魔台を持つ村の巡礼者たちもいるからな?そいつらは 早くやれよって 催促の意味合いで 俺に入れるだろ?ま、それでも 数的に5票も行かないだろうから 大丈夫だよ マリア」
マリアがホッとして思う
(良かった… 一瞬 焦っちゃった…)
マリアが気持ちを落ち着けて思う
(でも… やっぱり 言って置いた方が良いかな?私が ”お母さんのウィザード様”に 認定票を入れたって… ウィザード様… 怒るかな?)
マリアがレイを横目に見る レイが言う
「なぁ?マリア」
マリアが慌てて言う
「は、はいっ?」
レイがマリアへ向いて言う
「部屋に戻ったら 大灯魔台の灯魔儀式を 成功させたお祝いに 俺と一緒に お茶を飲んでくれる?俺ちゃんと頑張ったからさ?」
マリアが一瞬呆気に取られてから微笑して言う
「あ、はい それは もちろん!」
マリアが思う
(あぁ… 本当はマキとリナに大仕事を頼んでいたから その連絡とかお礼とか しようと思ってたんだけど …でも)
レイが微笑して言う
「やった!嬉しいな!マリアー」
マリアが苦笑して思う
(そう言えば ウィザード様って こんな事で喜んでくれる… 灯魔儀式も何も 全て私の為にって してくれていたのに… だったら マキとリナには悪いけど 今日くらいは ウィザード様を優先して…)
レイが言う
「それじゃ マリアは?」
マリアが呆気にとられて言う
「え?」
レイが微笑して言う
「マリアは何か無いのか?俺にお願いとか?」
マリアが考えながら言う
「お願い?私の…?」
マリアがふと気付いて言う
「あ、それなら ウィザード様!」
レイが微笑して言う
「うん!」
マリアが微笑して言う
「中央公園の灯魔儀式を やってもらえませんかっ!?」
レイが呆気に取られて言う
「は?」
マリアが衝撃を受けて言う
「あ…っ」
マリアが思う
(あ~っ 私ってばっ!…折角 良い感じの会話だったのにっ 灯魔儀式で疲れているウィザード様に お願いする事が また 灯魔儀式って…っ なんて言うか…っ 何かもっと…っ)
レイが噴出して笑う
「ぷっ …あっははははっ!」
マリアが呆気に取られる レイが言う
「やっぱ マリアは マリアだよな?こんな時くらい もう少し 違う お願いしてくれるかと 思ったのにサ?」
マリアが呆気にとられつつ思う
(そ… そうなんです… 流石に 私も ちょっと そう 思いました…)
レイが苦笑して言う
「けど、その方が 俺たちらしいかもな?」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「分かった!マリアがそう言うなら 俺はそうするよ!」
マリアが言う
「あ… しかし ウィザード様は お疲れで…」
レイが言う
「うん けど 次の大灯魔台の灯魔儀式は 1週間後になるから… そうだな その前に ちょっと ゆっくりして 5日後位に!」
マリアが言う
「しかし その… 大灯魔台の灯魔儀式は 残り5箇所ある訳ですから その間にウィザード様へ 負担を掛ける訳には」
レイが言う
「大丈夫だって 俺にとっては マリアのお願いが優先だもん 俺は ”マリアのウィザード様” だからな?」
マリアが呆気にとられてから 苦笑して言う
「…はいっ!」
レイがマリアを抱き締める マリアが苦笑して思う
(結局 いつもの通り… でも やっぱり これで 良いのかも…?)
マリアが密かに微笑する
大灯魔台 控え出口
レイとマリアがやって来る アナウンスが言う
『長らくお待たせ致しました これより 各奉者様のお名前をお借りし お仕えするウィザード様への不認定票数を 発表させて頂きます』
マリアが視線を向ける 視線の先ウィザードさまがソニアを見る ソニアがウィザードさまを見上げ微笑している マリアが苦笑してから視線を戻す アナウンスが言う
『不認定票数は200票で御座います それでは 発表をさせて頂きます 不認定票数 4票 ミレイ・クレシア奉者様』
マリアが視線を向ける 奉者2がホッとしてウィザード2を見上げる マリアが微笑する アナウンスが言う
『不認定票数 8票 エニ・ミメール奉者様 不認定票数 13票… 』
マリアが思う
(200票の内 100票は私の認定票で相殺してある… だから、あのウィザードさまの票から100票を除いた 残りの票数が 他のウィザード様より少なければ…)
マリアが視線を向ける アナウンスが言う
『不認定票数21票…』
マリアが目を瞑って思う
(ここまでの合計は46票 残りは54票っ ウィザード様に5票以下が入るとしても 次のウィザード様の票数が 約半分の25票に届かなかったら… きっと もう… どうか お願い…っ)
アナウンスが言う
『不認定票数 25票 リア・サイン奉者様 』
マリアが驚いて思う
(25票…っ!?それなら もしかしたらっ!?)
マリアが正面を見据える レイが困惑している アナウンスが言う
『不認定票数 26票 ソニア・ノーチス奉者様』
ウィザードさまとソニアが驚く マリアが驚いた後 表情を落として思う
(ダメだった… そんな… たった1票の差だったなんて…)
マリアが溜息を吐く アナウンスが言う
『従いまして この大灯魔台 灯魔儀式に置きます ウィザード認定審査の結果は 最も多くの不認定票数 103票を持ちまして マリア・ノーチス奉者様の ウィザード様であると決定致しました』
マリアが呆気にとられて言う
「…え?」
レイが言う
「俺が…?」
マリアがレイを見て言う
「な、何?何で?どうしてっ!?」
アナウンスが言う
『この結果を持ちまして ウィザードとして 不認定であると評価されました ウィザード様からは この場を持ちまして ウィザードの称号を剥奪致します』
マリアがウィザードさまを見て思う
(何!?どうして!?こんな結果に!?私は あのウィザードさまの事だけを 心配していたのにっ!?)
マリアがハッとして気付いて思う
(はっ でも 可笑しいわ だって あのウィザードさまへの認定票は お母さんだって入れた筈っ 他の奉者たちだって 自分のウィザード様に…っ!?それなら そもそも 不認定票数が100票以下のウィザード様に 不認定の票数が付く筈が無い!?それなのに 票数があったって事は …まさかっ!?)
マリアがレイを見て思う
(私が認定票を入れなかったからっ ウィザード様に 100票の不認定票がっ!?)
レイが気付いて言う
「…もしかして マリア 認定票を あのウィザードに入れたのか?俺じゃなくて あいつにっ?…何でっ!?」
マリアが驚きに言葉を失う レイが言う
「何でマリアが あいつにっ!?だって マリアは俺のっ!」
マリアが慌てて言う
「ち、違うんですっ 私っ!」
レイがハッとして視線を向ける マリアが驚きレイの視線の先を見ると 係員がやって来て言う
「ウィザード様 残念ですが 貴方から ウィザードの称号と共に力を …ウィザードの杖を回収させて頂きます」
レイが言う
「クッ…」
レイが係員へ向き直る マリアが困って言う
「え…っ?そ、そんな…っ」
マリアが焦って思う
(違うのっ!こんなつもりじゃっ!私は ただ あのウィザードさまを 守ろうとしただけなのっ!それなのに…っ!)
マリアが息を飲むと レイが杖を手放し 係員が受け取り礼をして去って行く マリアが表情を焦らせて思う
(あっ!待って!持って行かないで!その杖は!ウィザード様の大切な…っ!)
レイが杖の行く末をじっと見つめている マリアがレイの姿に同じく杖へ視線を向けると驚いて思う
(え…?…何をするの?)
マリアの視線の先 杖が鉄の台に固定される マリアが驚いて目を見開く 鉄の台の上には 鉄の重石が吊り下げられている マリアが驚いて思う
(まさかっ!?)
マリアが思わず踏み出して思う
(止めてっ!駄目ーっ!!)
一瞬の後 鉄の重石が落ち マリアの視線の先 激しい音と共に杖と杖にある魔石が粉々になる マリアが驚き口元を押さえて思う
(う、嘘…っ!?)
マリアの横でレイが俯く マリアが言葉を失う アナウンスが言う
『只今を持ちまして 本日の大灯魔台 灯魔儀式 及び ウィザード認定審査を終了致します』
マリアが言葉を失っている レイが言う
「そっか…」
マリアが驚きレイを見る レイが視線を向けないまま言う
「”マリアのウィザード様”は あいつだったんだな?それを知らないで 俺は…」
マリアが驚いて息を飲む レイが苦笑して言う
「マリア 今まで勝手な事言って …ごめん」
マリアが驚いて言う
「え…?」
マリアが呆気に取られて思う
(勝手な事なんて…っ ごめん なんて言わないでっ 違うのっ 違うんですっ ウィザード様っ!!)
マリアが口を開こうとするが言葉にならない マリアが強く目を閉じて思う
(駄目…っ 言葉が出ないっ)
レイが言う
「…それから」
マリアがハッとしてレイを見る レイが微笑して言う
「ありがとう」
マリアが驚いて目を見開く レイが立ち去る マリアがレイへ手を向けながら思う
(ち、違うの…っ!違うのにっ どうしたら…っ!?)
マリアが動かない足を動かそうとしながら思う
(待ってっ!行かないでっ!ウィザード様っ!…ウィザード様ーっ!!)
マリアが力を失い座り込むと レイが立ち去った先を見て言う
「私の… ウィザード様が…」
マリアの傍を 風が吹き抜ける
マリアの部屋
マリアがベッドを背にうずくまっている 携帯が鳴り 長く鳴り続けた後留守電になる ピー音の後 課長の声が聞こえる
『マリア君っ どうかしたのかね!?君が9時に商談予定を入れていた エルイン商社の方が既にお見えになっているっ 代わりの者を用立てているが すぐに社へ!…いや、まずは 連絡を…!』
携帯からピー音が鳴り切れる マリアが顔を上げ言う
「…会社に …課長に連絡しないと」
マリアがバックを引き寄せ漁って 携帯を取り出すと 一緒にレイの部屋の鍵が出て来て落ちる マリアがハッとして鍵を見てから ゆっくり鍵に触れ言う
「それより ウィザード様に… ちゃんと 説明… しなきゃ… …だって 私のせいでっ」
マリアの脳裏に記憶が蘇る
マリアが思わず踏み出して思う
(止めてっ!駄目ーっ!!)
一瞬の後 鉄の重石が落ち マリアの視線の先 激しい音と共に杖と杖にある魔石が粉々になる マリアが驚き口元を押さえて思う
(う、嘘…っ!?)
マリアの横でレイが俯く
マリアが鍵に触れていた手を震わせ 鍵を握ると同時に携帯が鳴る マリアが携帯を見て 折りたたまれた携帯を開きながら思う
(課長に お詫びをしなきゃ… 商談を入れてたのに 急に…)
マリアがディスプレイを見て驚き 慌てて着信させて言う
「はいっ!マリア・ノーチスです!」
マリアが思う
(奉者協会からっ!ウィザード様っ!?)
マリアが話を聞き言葉を失ってから 驚いて言う
「え?何を…?私は…っ」
携帯から声が聞こえる
『つきましては 一度本部へお越し頂きまして そちらの手続きと共に ウィザード様がご利用であられた お部屋の鍵を』
マリアが言葉を失い 携帯を持っている手を脱力させる もう片方の手の下に鍵が鈍く光る
奉者協会
テーブルの上に鍵が置かれる マリアが鍵から手を離すと 係員が受け取って言う
「はい 確かに 鍵の返却をお受け致しました」
マリアが言う
「あ、あの… ウィザード様は?」
係員が疑問して言う
「はい?」
マリアが言う
「私の…っ マリア・ノーチスが仕えている ウィザード様は 今どちらにっ!?」
係員が一瞬間を置いてから微笑して言う
「あ、はい」
マリアがホッとする 係員が言う
「マリア・ノーチス奉者様は 本日より ご希望のウィザード様へ仕える事が 許可されました」
マリアが呆気にとられて言う
「え?ご希望のウィザード様へ …って?」
係員が言う
「はい 前例の無い事で有りました為に 最終決定までに 丸一日の時間を有してしまいましたが 予ての規定通りに マリア・ノーチス奉者様は ご自分が投じた 認定ウィザード様へ 仕える事が 正式に許可されました」
マリアが言う
「認定ウィザード様って…?」
係員が微笑して言う
「先日の ウィザード認定審査の際 貴方が認定票を投じた ウィザード様です」
マリアが呆気にとられて言う
「そ、それじゃっ お母さんのっ!?」
マリアがハッとして口を押さえる 係員が微笑して言う
「そうですね ソニア・ノーチス奉者様が 既にお仕えしているウィザード様です 1人のウィザード様に2人の奉者様が仕えると言うのも 前例の無い 初めての事となりますので 奉者協会の方でも 議論されたようですが 親子で協力して仕えると言うのですから 良いのかもしれないですね?」
マリアが呆気にとられて言う
「そんな…」
マリアが思う
(私は そんなつもりじゃなくて…っ ただっ)
マリアがハッとして言う
「あのっ そうじゃなくてっ そのウィザードさまではなくてっ 私が仕えていたウィザード様ですっ!」
係員が呆気に取られた後言う
「…あ、はい そちらのウィザード様は 認定審査の決定により 既に ウィザードの称号は剥奪されましたので もう ”ウィザード様”ではありません 従いまして 今後は奉者も付きませんし 協会の方も 一切の関わりを持ちません」
マリアが言葉を失った後 脱力して言う
「そんな…」
マリアの脳裏にレイの言葉が思い出される
レイが微笑して言う
『俺は”マリアのウィザード様”だからな!』
マリアが顔を覆って言う
「ウィザード様…っ」
マリアの部屋
マリアがベッドを背にうずくまって テーブルに置かれている携帯を見つめている 携帯が鳴り 留守電が着信する 携帯からマキの声がする
『マキでーす!マリアー?どうしたのー?連絡無いって 課長が心配してるよー?…あ、それから 月曜日の仕事の方は ちゃんとやって置いたから 心配しないでねー?リナが 凄い頼りになったよー!流っ石 リナ大先輩ー!にゃはははっ!マリア大先輩も 明日はちゃんと出社しなよー?あー?もしかして ウィザード様とー?』
マリアがハッとすると 携帯からピー音が鳴り 携帯が切れる マリアが息を吐いて視線を落とす ドアがノックされ ソニアが言う
「マリア 居るの?」
マリアが顔を向けて小さく言う
「お母さん…」
ソニアがドアの外から言う
「マリア… お母さん 全く知らなくて… 驚いちゃったわ それに…」
マリアが言葉を飲み身を静める ソニアが言う
「…どうして あんな事を?」
マリアが驚き目を丸くする ソニアが言う
「どんな理由があったにしても 自分の仕えるウィザード様へ 認定票を投じないだなんて… 奉者としても 人しても… お母さん どうかと思うな?」
マリアが表情を悲しめる ソニアが言う
「お母さんは マリアがとっても強くて とっても優しい子だって 知っているわよ?…だから 票の事を聞いた時は 信じられなかった …マリアだって あの場所に辿り着くまでに ずっと一緒に居たのなら 自分のウィザード様の事を 一番大切に思えるでしょう?…なのに どうして?」
マリアが言う
「違うのっ!お母さんっ!私っ!」
マリアが強く目を閉じて言う
「一番大切だったよ!だけどっ 私 知らなかった 気付かなかったのっ!ウィザード様に票を入れなかったら その分が 不認定票になっちゃうだなんてっ!本当に知らなかったの…っ」
ソニアが沈黙する マリアがドアを見て言う
「お母さんっ!?」
ソニアが言う
「その事を 知らなかったなんて 関係ないと思うな…」
マリアが呆気にとられて言う
「え…?」
ソニアが苦笑して言う
「そんな事は関係ないの 私は 自分のウィザード様に ”認定票を投じない” なんて事は 絶対に出来ないわ」
マリアが疑問する ソニアが言う
「だって そんな事をしたら 彼の今までの努力や苦しみを 否定する事になるから 奉者は ”それ”を認定しているのよ」
マリアが驚いて言う
「今までの努力…?苦しみを…?」
ソニアが微笑して言う
「奉者は ウィザード様と 一心同体だもの 彼の苦しみは私の苦しみ 彼の喜びは私の喜び… その逆も …同じだって言ってくれたわ」
マリアが呆気に取られる ソニアが苦笑して言う
「まぁ それは 特別なウィザード様だけでしょうけど 少なくとも… 奉者はウィザード様のそれらを同じくして 誠心誠意お仕えすると言う事が 勤めなのだから 奉者の認定票が 別のウィザード様に渡る様な事は …今までは決して無かったのよ」
マリアが視線を落として言う
「私は…」
ソニアが言う
「…それで 貴方本当に お母さんの仕えている ウィザード様に お仕えするつもりなの?」
マリアが困惑して言う
「あ… えっと…」
ソニアが言う
「さっき家に電話があって 貴方が以前から勤めていた会社の 課長さんから 『急ぎの仕事があって 携帯に連絡したけど 繋がらなくて どうしたのか』って …貴方 奉者をしながら そっちのお仕事も続けていたのね?」
マリアが言う
「う、うん…」
ソニアが言う
「…それじゃ 分かっちゃったわ」
マリアが言う
「え?」
ソニアが言う
「本当に ウィザード様にお仕えをするつもりなら まずは一度 お母さんに声を掛けて頂戴 …お休みなさい マリア」
マリアが言う
「…うん、お休みなさい お母さん…」
ソニアが去って行く
会社
マリアが頭を下げて言う
「昨日は 無断欠勤を致しまして!真に申し訳有りませんでした!課長っ!」
マリアが強く目を閉じて思う
(絶対 怒られるっ!)
一瞬間を置いて マリアが疑問して思う
(…って あれ?)
マリアが顔を上げると 課長が溜息を付いて言う
「はぁ… 本来なら 大いに声を荒げたい所だが… マリア君 今 うちの部署には 君しか居ないんだ」
マリアが言う
「え?」
課長が言う
「従って 昨日の事などは もう良い 今はとにかく しっかりと仕事をこなしてくれ」
マリアが呆気にとられつつ言う
「あ、は、はいっ 分かりました 本当に すみませんでした…っ」
マリアが疑問しつつ席へ戻ってから 軽く息を吐いて言う
「ふぅ… 怒られなかった… 何でだろう?」
マリアが思う
(別に 怒られたかった訳じゃないけど… 何だか肩透かしって言うか…?何かあったのかな?)
マリアが言う
「ねぇ マキ 何かあったの?…あれ?」
マリアが周囲を見渡して言う
「マキ…?」
マリアがカレンダーを見て思う
(マキの公休日は 今日じゃないのに… 来てないみたい?臨時休暇… かな?)
マリアが疑問してから課長を見る 課長が表情を困らせ頭を掻いて溜息を吐く マリアが疑問する
マリアが書類を確認して軽く息を吐いて言う
「月曜日の確認は これで終了!」
マリアが微笑して思う
(やっぱり リナの仕事は完璧だなぁ… 無理をお願いしたけど 本当に助かっちゃった…)
マリアが書類の山を持って来て言う
「後はこれ… 課長が急に これ全部に目を通せだなんて… 昨日の罰かな?…でも やらない訳には行かないし 取り合えず一通り…」
マリアが書類を見ながら疑問して ぱらぱらと全体を確認してから驚いて思う
(ん?…あれ?この書類って 全部?…まさかっ!?)
マリアが驚いて言う
「た、退職っ!?」
課長が息を吐いて言う
「うむ…」
マリアが慌てて言う
「マキが退職だなんてっ!?一体どうしてっ!?」
課長が言う
「聞けるものなら 私が聞きたい …リナ君が急な寿退社で 唯でさえ 人手不足だった所 マキ君は 毎年の収穫期の長期休暇を終えたと思ったら 次は、退職願いだっ マリア君!ここで 君まで 辞める等とは 言わないでくれよっ!?」
マリアが困惑しつつ言う
「あ… は、はい…」
マリアが視線を落として思う
(マキ… 急にどうしたんだろう?私 何も聞いてない… それだけ急だったって事?)
昼休み
マリアが携帯で呼び出し音を鳴らしているが着信されない マリアが表情を落として携帯を切って言う
「マキ… 出ないな…」
マリアが息を吐いてから 手作り弁当を取り出し 周囲を見てから思う
(寂しい… 以前は リナとマキが… 少なくとも、どちらかとは一緒だったのに… これじゃ まるで 休暇の日に 中央公園で1人で食べてた時と同じ…)
マリアがハッとしてから 表情を落として言う
「もう… あそこで1人で食べる事も 無いんだ…」
マリアが弁当を食べようとして やはり箸を止め 息を吐く
「はぁ…」
マリアの部屋
マリアが椅子に座り カレンダーを見て言う
「あ… 明日は 私、公休日だった …どうしよう?」
マリアが表情を落として思う
(いつもだったら ウィザード様と 灯魔台の灯魔儀式へ向かう日… でも…)
マリアがカレンダーを手に取って思う
(しばらくは 6つの大灯魔台の灯魔儀式に参加するから 少なくともそれが終わるまでの6週間は 灯魔儀式には行かない予定だった… …それなら 私 どうしたかな?久し振りに 自分の休暇を…)
マリアの脳裏に記憶が蘇る
レイがマリアへ向いて言う
『部屋に戻ったら 大灯魔台の灯魔儀式を 成功させたお祝いに 俺と一緒に お茶を飲んでくれる?俺ちゃんと頑張ったからさ?』
マリアが一瞬呆気に取られてから微笑して言う
『あ、はい それは もちろん!』
レイが微笑して言う
『やった!嬉しいな!マリアー』
マリアが苦笑して言う
「たまには 用事の無い状態で ウィザード様のお部屋に行ったら ウィザード様… きっと喜んでくれただろうな… 美味しい紅茶もご馳走してくれるし… ううんっ!たまには私が!…あっ」
マリアが息を吐いて思う
(何か してあげたら良かった… 私 何もしてあげなかった気がする …そう言えば 一度早起きして朝食を作りに行ったっけ?…そうは言っても その元は 私のせいで倒れさせちゃって… それなのに やっぱり ウィザード様は)
マリアが思い出す
レイが言う
『大丈夫だって 俺にとっては マリアのお願いが優先だもん 俺は ”マリアのウィザード様” だからな?』
マリアが苦笑して言う
「”私のウィザード様”だったのに…」
マリアが頭を抱え涙を堪える
玄関
ソニアが帰って来て言う
「ただいまー」
マリアが部屋から出て来て言う
「お帰りなさい お母さん」
ソニアが言う
「マリア 会社には連絡をしたの?課長さん とっても心配していらしたみたいだけど?」
マリアが言う
「うん、今日は 会社に行って来たから」
ソニアが言う
「そう… それなら良いのだけど」
ソニアが廊下を進む マリアが言う
「あ、お母さん あのねっ」
ソニアが言う
「うん?何?」
マリアが言う
「私、一度 お母さんのウィザード様に お会いしたいの」
ソニアが立ち止まる マリアが言う
「長年連れ添った お母さんが居るんだもん もう1人の奉者なんて 要らないって分かってる …けど 私どうしても あのウィザードさまに会って お礼を言わないと…」
ソニアが言う
「お礼を?」
マリアが言う
「うん… こんな形で お会い出来る機会を得てしまったけど それでもっ やっぱり 14年前のお礼を!」
マリアが思う
(間違いとは言え この目的の為に 私はウィザード様に 酷い事をしてしまった… だから これを終わらせて 私も 奉者を辞めよう… …だって 私は…)
ソニアが一瞬驚いた後 息を吐いて言う
「…14年前と言うのは あの大灯魔台の灯魔儀式が 失敗に終わった時の事でしょう?…今回の成功で 過去の事として 収められると思っていた所だから …もう 蒸し返さなくても 良いでしょう?」
マリアが言う
「でも…」
ソニアが言う
「でも そうね 一度 貴方と話をしたいって 仰っていらしたわ?」
マリアが言う
「え?」
ソニアが言う
「でもね 私からすれば…」
マリアが言う
「お母さん?」
ソニアが苦笑して言う
「何でもないわ ウィザード様は貴方が自分の奉者になる事を お許し下さっているのだから 貴方が来ると言うのなら 止めるものは何も無いから」
マリアが言う
「…ありがとう それじゃ 明日にでも お邪魔して良いかな?お母さんは 明日は行くの?」
ソニアが言う
「ええ 朝は6時には出るから 一緒に行くなら 間に合わせてね?」
マリアが言う
「え?明日も6時なの?」
ソニアが言う
「ええ そうよ」
マリアが言う
「う、うん… 分かった」
ソニアが立ち去る マリアが思う
(明日も6時か… どうしてかな?お母さんのウィザードさまは 大灯魔台の灯魔儀式を続けるはずなのに だったら 明日は何も…?)
マリアが疑問した後立ち去る
朝
マリアが慌てて何とか身支度を整え玄関に来ると ソニアが苦笑して言う
「相変わらず 早起きは 苦手みたいね?マリア」
マリアが苦笑して言う
「う、うん… お母さんが 羨ましいよ」
マリアとソニアが外に出ると ハイヤーが待機している
車内
マリアが言う
「お母さん ウィザードさまのお部屋まで いつもハイヤーを使っているの?」
ソニアが言う
「ええ、毎日の事だから タクシーを使うより こちらを契約してしまった方が 経費を抑えられるのよ」
マリアが言う
「え?毎日って…っ お母さん 奉者以外の仕事の時も この車を?」
ソニアが疑問した後 苦笑して言う
「何言っているの マリア?お母さん 奉者になってからは それ以外の仕事なんて やっていないわ?」
マリアが呆気にとられて言う
「え?だって… いつも 毎日 お仕事に行ってるから」
ソニアが言う
「ええ いつも 毎日 奉者のお仕事に行っているのよ?」
マリアが呆気にとられて言う
「え…?」
ウィザードさまの家
マリアがウィザードさまの家を見て言う
「お母さんのウィザード様は マンション暮らしじゃないのね?」
ソニアが言う
「そう言えば あの町は特別ね 普通はウィザード様のお部屋を マンションの1フロアにするなんて事は無いから」
マリアが言う
「そうなんだ…」
ソニアが家の鍵を開ける マリアが言う
「それで 今日は お母さんのウィザード様は?何かあるの?何処へ行くの?」
ソニアが疑問して言う
「え?何処にも行く予定は無いわよ?マリアも知っているでしょ?大灯魔台の灯魔儀式が終わるまでは 灯魔台の魔力補給も 行わないわ」
マリアが疑問して言う
「う、うん… それじゃ 今日は?」
ソニアがドアを開けてからマリアへ向いて人差し指を立てて言う
「しー… ここからは静かに」
マリアが呆気にとられて言う
「…あ、うん…」
ソニアが入って行く マリアが思う
(まだ お休み中なのかな…?それじゃ 何をしに?…もしかして 朝食でも作りに来たのかな?)
マリアが中へ入り周囲を見渡してから部屋へ上がりつつ 小声で言う
「お邪魔しま~す…」
マリアが部屋へ進み入り 周囲を見て思う
(内装や間取りは 同じみたい… あ、それで、お母さんは…?あれ?キッチンじゃない?)
マリアがキョロキョロ見渡してから ソニアを見つけてランドリーへ向かう マリアが向かうと ソニアがランドリーに干してある 法魔帯を巻いている マリアが言う
「え?包帯…?」
ソニアが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「包帯じゃなくて 法魔帯… ウィザード様だけじゃなくて 魔法を使う方は 使っているでしょう?」
マリアがふと思い出して言う
「あっ そういえば ウィザード様も いつも手に…」
ソニアが疑問して言う
「手だけじゃなくて ウィザード様ほどにもなれば 手足や身体にも巻かないと 魔力が強過ぎて 皮膚を傷めてしまうから」
マリアが呆気に取られて言う
「えっ?そうなんだ…?」
ソニアが疑問して言う
「”そうなんだ”って…?」
マリアが疑問して言う
「ん?でも この…法魔帯?薄っすらと色がついてる?ウィザード様が使っていたのは 真っ白な… 本当に包帯みたいに白かったけど?」
ソニアが苦笑して言う
「法魔帯の色も 魔力の強さと同じよ… 貴方のウィザード様は 白い法魔帯を使っていたと言う事は それだけ 魔力の強い方だったって事でしょう?その彼が… どうして あの場所で 紺色の法衣を着ていたのか?お母さんは 不思議に思っていたの」
マリアが衝撃を受けて言う
「あっ そ… それは…」
マリアが視線を逸らして思う
(あ~ 言えない… ウィザード様が 他の奉者の女の子たちの目を 気にしているんだと勘違いして 黒色の法衣を着させ様とした その結果だったなんて…っ)
ソニアが苦笑して言う
「でも 法魔帯は法衣の色とは違って 正しい色にしないと 使用する魔力が落ち過ぎてしまったり 逆に 怪我をさせてしまう事にもなるから ちゃんと管理しないと… それも奉者の大切なお仕事ね?」
ソニアが法魔帯を巻き終える マリアが言う
「それも 奉者の仕事…?」
ソニアが苦笑して言う
「そうよ?でも、白色より上は無いから 貴方はその分 気が楽だったんじゃない?」
マリアが衝撃を受けて思う
(う…っ そんな事 知りませんでした… なんて言えない…)
マリアが苦笑して言う
「う、うん… そう だね…?」
ソニアが微笑してから法魔帯を持って外へ向かう マリアがハッとして気を取り直して付いて行く ソニアが法魔帯を置き 掃除道具を用意してやって来る マリアが呆気にとられて言う
「お、お掃除?」
ソニアが言う
「ええ、今の内にね?」
マリアが呆気に取られながら ソニアの行く先を見て言う
「瞑想室…?」
マリアが追う マリアが部屋の中を覗くと ソニアが掃除をしている マリアが驚いて言う
「も、もしかして この部屋のお掃除を…?」
ソニアが言う
「ええ もちろんよ?ウィザード様のお部屋のお掃除は お部屋に入る事が許される奉者以外は 出来ないでしょ?」
マリアが衝撃を受け思う
(え…?私 一度もやった事無い…)
ソニアが言う
「マリアもやっていた事でしょ 何を今更言っているの?…あ、お母さんのやり方とは 違うかしら?でも やっぱり床はモップより 雑巾掛けの方が 気持ち良いと思うのよ」
マリアが思う
(うっ… 何も言えないっ)
マリアが背を向けて思う
(…って 言うか 私 こんな事 講習会で習ってないっ!?奉者は ウィザード様の灯魔儀式の 予定と手配を行って 随行するものだってっ!それ以外なんて 講習では何も …って あれ?そう言えば 講習会を受けようと思った時…)
マリアが思い出す
回想
マリアが言う
『あの~ 私、仕事をしているので この講習会の日程ですと 講習の後半半分しか受けられないんですが… それだけでも 受講させて頂けますか?』
講師が言う
『うーん… そうですねぇ… 確かに 後半に比べ 前半で教える事は 難しい事は無いので 一般的な料理や掃除など 家事全般が出来る女性なら 省いても 支障は無いかもしれませんが…』
マリアが喜んで言う
『あ!それなら 私っ 大丈夫ですっ!子供の頃から 料理や掃除とか 一般的な家事は 全部やっていたのでっ!』
講師が言う
『そうですか それなら 後は ウィザード様に誠心誠意 お仕えすると言う気持ちがあるのなら… うん、それに マリアさんは お母様が 現役の奉者様ですね?それなら 講習で学べない その辺りの事は お話を聞いて置いて下さい 講習で習うより その方がよっぽど 良い勉強になるでしょう』
マリアが微笑して言う
『はい!分かりましたっ 母に聞いておきます!』
講師が頷く
回想終了
マリアが視線を落として思う
(そ、そうだった… すっかり忘れちゃってた… って言うか ウィザード様が 初日から あんなだったからっ)
マリアの脳裏に レイの記憶が蘇る
レイが言う
『儀式の予定なんて 2,3日前に連絡すれば十分だよ それより 今はマリアの言う通り 少し休む …だから おいで マリア』
マリアが呆気にとられて言う
『え?おいでって?』
レイが言う
『マリアは俺の奉者なんだから 寝室でも何処でも 入って良いんだぜ?』
マリアが驚き頬を染める レイが微笑して言う
『だから こっち来て 2人きりで部屋に戻ったら やる事は決まってるだろ?』
マリアが思う
(そ、そうよっ ウィザード様がっ あんな事言うからっ そ、そのせいでっ!)
マリアがハッとして顔を上げると ソニアが掃除を終わらせ片付けをしている マリアが視線で追うと ソニアが法魔帯を持って寝室へ向かう マリアが呆気にとられて思う
(え?お母さん 何処に?もしかして 寝室のお掃除とか?…で、でもっ 寝室には ウィザードさまが居るんじゃっ!)
マリアが戸惑っていると ソニアが寝室をノックしてから ドアを開け入って行く マリアが呆気にとられつつ思う
(え?え…?良いの?だってっ!?)
マリアが寝室のドアの前まで行き困る 室内からソニアの声が聞こえる
「今日はマリアが一緒に 来ているんです 貴方様と お話をしたいと」
マリアがハッとして慌てて向かって言う
「あっ お、お早う御座いますっ!その… こんな朝早くに すみませんっ!」
マリアが頭を下げて思う
(まさか もう 起きていたとは思わなかったっ!てっきり 眠っている周りをお掃除するのかと… でも 良く考えたら そんな筈ないよね…?)
マリアが顔を上げ思わずドキッと驚く マリアの視線の先 ベッドに腰掛けているウィザードさまの前で ソニアがウィザードさまの腕に法魔帯を巻いている ウィザードさまがマリアを見る マリアがハッとすると ウィザードさまが言う
「彼の票を受け 私が残ったそうだな?」
マリアが驚き視線を落として言おうとする
「あの… 私…」
ソニアが言う
「認定票に自分の名前を書かない事で 自分のウィザード様に不認定票が入ると言う事が 分からなかったそうです」
マリアが言う
「…はい」
ウィザードさまが言う
「それで 何故 私に?」
マリアが視線を泳がせて言う
「あ、それは…」
マリアが顔を向ける ソニアが法衣をウィザードさまに着せる マリアが一瞬呆気に取られる ソニアが自然に法衣を調えている マリアが気を取り直して言う
「わ、私っ… 14年前の お、お礼を言いたくて…」
ウィザードさまが立ち上がり マリアを見る マリアが踏み出して言う
「14年前っ あの…っ 大灯魔台での灯魔儀式の事故が起きた時っ わ、私っ ウィザードさまに お願いをしましたっ!皆を助けて欲しいと…っ 何も分からなかった私は 母と共に あの場所に居た ウィザードさまに 必死にお願いをしましたっ それでっ!」
ウィザードさまが言う
「暴走した魔力を収め 且つ 幼い君を押し潰そうとしていた あの瓦礫さえも吹き飛ばし 君を守った …君の願いを聞き入れたウィザード …それが 私であると?」
マリアが驚いて言う
「…え?」
ウィザードさまが言う
「君は14年間 勘違いをしていた様だな?」
マリアが驚いて言う
「勘違い…?で、でもっ 確かに あの時!」
ウィザードさまが杖を取る マリアが杖を見て言う
「その杖が 強く光っているのを 私は見ましたっ!幼い私でも それは 分かりましたっ!ウィザードさまの その杖が 魔法を放った事をっ!」
ウィザードさまが杖を見て言う
「確かに この杖が 魔法を放った事は事実だ …しかし それは 私が行った事ではない …本来 己の杖を他者に使われると言うのは ウィザードにとっては 屈辱的な事だが 私は あの時 彼に感謝をした… 私では ソニアの娘である 君を守る事は 出来なかった」
マリアが呆気に取られている ウィザードさまが言う
「君を守ったのは 14年前も 彼だ」
マリアが驚く ウィザードさまが言う
「14年振りの再会が まさか あの様な結果になるとは… 彼は誰よりも優秀な 君のウィザードだ」
ウィザードさまがマリアの横を過ぎ去る マリアが言葉を失う ソニアが表情を落としてから 部屋の掃除に取り掛かる マリアが思う
(私の… 勘違いだった…?全部…っ 14年前の事さえっ!?)
マリアが振り返ると ウィザードさまが瞑想室へ入ってドアを閉める マリアの脳裏に ウィザードさまの言葉が蘇る
ウィザードさまが言う
『君を守ったのは 14年前も 彼だ』
マリアが思う
(”彼”って… それはっ!?)
ウィザードさまが言う
『14年ぶりの再会が まさか あの様な結果になるとは… 彼は誰よりも優秀な 君のウィザードだ』
マリアが目を見開いて思う
(”私のウィザード様”っ!!)
マリアが一度強く目を瞑ってから 部屋を飛び出す ソニアが表情を悲しめる
マリアが泣きながら走り タクシーに飛び乗ると 一度言葉を詰まらせてから言う
「…っ イーストエンドストリートの 499へ お願いしますっ!」
タクシーの運転手が呆気にとられつつ言う
「あ、は… はい」
タクシーが発車する マリアが涙を堪えながら思う
(会いたいっ!会って… 会って 謝りたいっ!お礼を言いたい…っ …ううんっ 違うっ 会いたいのっ!ただ ”私のウィザード様”に 会いたいだけっ!!)
マンション 前
マリアがタクシーを降りると 走ってエレベータへ向かう エレベータが下りて来ると マリアが乗り 回数ボタンを押し 上昇中に思う
(鍵は返してしまった …もう あのドアは開けられない …ウィザード様は ウィザードではなくなったって 言ってたから …もう 居ないのかもしれないっ でも… それでもっ!)
マンション 最上階
エレベータが到着すると マリアが駆け出してドアの前に立ち思う
(ウィザード様に 会う方法は 私には これしか 分からないからっ!)
マリアがインターフォンを押し 一瞬待ってから ドアノブを掴もうとすると ドアノブが動きドアが開く マリアが驚いて思う
(ウィザード様っ!?)
マリアが顔を上げると同時に マキが言う
「マリア…?」
マリアが驚き言葉を失ってから言う
「マ… マキ…?どうしてっ!?」
マキが言う
「マリアこそ…」
マリアが言う
「どうして マキがここにっ!?ここは ウィザード様のっ!」
セイが言う
「マリアって… あいつか?マキ?」
マリアが驚いて思う
(…この声っ)
セイがドアから出て来てマリアを見る マキが一瞬驚いて言う
「あっ 駄目だよっ ウィザード様は 奉者以外の人と 喋っちゃ駄目だって…」
セイが言う
「そいつだって 奉者だろ?だったら 良いんじゃないか?」
マキが言う
「あ、そっか…?」
マリアが言う
「あ… 貴方は… あの魔法使いの?」
セイがムッとして言う
「もう魔法使いじゃない この姿を見れば分かるだろう?」
マリアが呆気にとられて言う
「…ウィザードに?」
セイが微笑して言う
「そう言う事だ」
マリアがマキを見て言う
「で、でもっ それなら どうして マキが…」
マリアがハッとして思う
(…まさかっ!?)
マキが苦笑して言う
「ごめん マリア… マリアには ちゃんと 言うつもりだったんだけど…」
マリアが言う
「会社を辞めたのも… この為…?」
マキが苦笑して言う
「うん… ホントはさ?私も マリアみたいに 掛け持ち… したかったんだけど 奉者協会の 講習受けてみたら 全然…?掛け持ちなんて 出来ないなって…?」
マリアが呆気に取られた後 慌てて言う
「そ、それでっ 奉者の方を選んで 急に 会社を辞めちゃったのっ!?」
マキが苦笑して言う
「うん… ごめんね?迷惑掛けちゃって… でも 私、セ… あっ えっと… ”私のウィザード様”に 誠心誠意 お仕えしたくて」
マリアが驚く マキが微笑して言う
「ずっと 傍に居て 支えてあげたいんだ… だから 会社やマリアに迷惑掛けるって 分かってたけど 辞めちゃった…」
セイが僅かに表情を苦しめた後 部屋へ戻りながら言う
「少し休む… 水 持って来てくれ」
マキが心配して言う
「あ、うんっ すぐ持って行く」
マリアが呆気に取られる マキが言う
「まだ 魔力の定着が終わってなくて ウィザードになったばかりだから …だから ごめんね マリア?また 落ち着いたら連絡するから!」
マキがドアを閉める マリアが呆気に取られたまま 閉められたドアの音が響く マリアが立ち尽くした後 ゆっくりエレベータへ戻る
会社
マリアが作業を止め溜息を吐く
「… はぁ~…」
マリアが間を置いて周囲を見てから 視線を落とす
自宅
マリアが玄関を開けて言う
「ただいまー」
マリアが通路の先を見てから息を吐いて思う
(お母さん まだ帰ってないよね?…いつも帰って来るのは9時くらいだもん …朝は6時から 夜は9時まで 毎日 …ずっと ”お母さんのウィザード様”と 一緒に居たんだ…)
マリアの脳裏に記憶が思い出される
マキが微笑して言う
『ずっと 傍に居て 支えてあげたいんだ…』
マリアが言う
「マキも 同じ… あのお部屋で ”マキのウィザード様”と 一緒に居てあげるんだ…」
マリアが息を吐き 表情を落として自室へ向かう
マリアの部屋
マリアが部屋に入ると 部屋に進み入る マリアが荷物を置き椅子に座ると視線を向ける 視線の先に奉者講習会の資料がある マリアが手に取って見ながら言う
「”奉者様”か… そっか 毎日 朝から晩まで… きっと お母さんもマキも お掃除とか… 食事の用意だってするんだろうな… だって ウィザード様は お米の焚き方さえ 知らないんだから…」
マリアが資料を閉じ息を吐いて言う
「…私 どうして やってあげなかったんだろう…?”マリアのウィザード様”だったのに… 私 あの人の奉者だったのに… 灯魔儀式の手配だけで 他は… 何も…」
マリアが視線を向ける 手帳がある マリアが手帳を見ながら言う
「あ… いけない 明日は午前中にミレル商事との商談入れたんだった 朝は少し早く行かないと…」
マリアがふと気付いてから 息を吐いて言う
「そっか… 掛け持ちなんて 出来るものじゃなかったんだ… あんなに楽しみにしていた お迎えの前日だって 仕事が忙しくて お母さんに聞くのも忘れちゃって… …あ、違う 私、お母さんに 奉者になった事 言わなかった… 私が ウィザード様に お願いする事が お母さんを傷付けると思ったから …それに 私も 奉者として自信が無くて」
マリアが手帳を閉じて息を吐いて言う
「最初から駄目だったんだ… 私 奉者失格だった …ウィザード様は 物凄いウィザード様だったのに… …でも 何でだろう?私 それなら…」
マリアの脳裏に蘇る
レイが言う
『俺は”マリアのウィザード様”だからな!』
マリアが苦笑して言う
「そっか… ”私のウィザード様”だったから 私… ずっと甘えちゃってたんだ… 私が何もご奉仕しなくても あの人は ずっと ”マリアのウィザード様”だったから…」
マリアが頭を抱え 息を吐いて思う
(…でも もう 居ないんだ… ”私のウィザード様”は 私のせいで…)
マリアが俯く
会社
マリアが商談中に言う
「こちらとしましては それ以上の ご提供は出来かねると… どうか この条件で」
客が言う
「いえ 我が社としましても この商品開発には 並々ならぬ投資をしての 開発に漕ぎ着けた訳ですので そこに掛けた 費用はもちろん 人材も…」
マリアが席に戻り 資料を置きつつ息を吐いて言う
「…あの感じじゃ きっと駄目だろうなぁ やっぱり あれだけの技術を譲ってもらうのに うちの会社からの提供がこれじゃ… 釣り合わないよねぇ…?」
マリアが息を吐いて言う
「はぁ… しょうがない この取引は 潔く手を引こう これ以上お願いしても きっと無理だろうから…」
マリアが視線を向けると時計が正午を回ろうとしている マリアが気付いて言う
「あ、お昼だ 丁度良いかも?お昼を食べて 気を取り直して… 午後は午後で もう1件 商談が入ってるし…」
マリアが荷物を探りながら言う
「…やっぱり 2人が居ないと厳しいなぁ お昼だって 1人じゃ 寂しいし… …ん?」
マリアが携帯を手に取ってディスプレイを見て言う
「着信だ… 誰だろう?」
マリアが携帯を操作して驚いて言う
「あ… リナからっ!」
マリアが荷物を持って立ち去る
中央公園
マリアが周囲を見渡してから気付き 微笑して小走りに向かいながら言う
「リナー!」
水の無い噴水のふちに腰掛けているリナが マリアの声に顔を向ける マリアが微笑して言う
「ごめんね 待たせちゃった?」
リナが微笑して言う
「ううん 大丈夫よ マキも居たから」
マリアが一瞬驚いて言う
「…え?」
マリアが顔を向けると リナの横にマキが座っていて マリアを見て微笑して言う
「お疲れ様ー マリア!」
マリアが僅かに表情を困らせつつ言う
「あ、お… お疲れ様 マキ…」
リナが言う
「マキがね?お昼休憩だって言うから マリアも丁度良い時間じゃないかと思って 電話したの」
マリアが言う
「あ… うん 私も そう!丁度お昼休憩!…隣良い?」
リナが言う
「もちろん」
マリアが苦笑しつつリナの横に腰掛け 手作り弁当を取り出す リナが微笑して言う
「こうして3人で食べるの 久し振りね?」
マリアが言う
「うん 本当に …会社に2人が居なくて 凄く寂しいよ」
リナが言う
「それなら マリアは会社じゃなくて いつもここで お昼にすれば マキと一緒に食べられるじゃない?」
マリアが言う
「え?」
リナが言う
「マキは最近 お昼はいつもここで 1人で食べているんだって さっき話をしていたの」
マリアが言う
「あ… そうなんだ?」
マキが言う
「うん だって ウィザード様は 修行の為に お昼は食べないからさ?その彼の前で食べる訳に行かないし …マリアも そうしてたんじゃないの?」
マリアが言う
「あ… うん… そうだね」
リナが言う
「まさか マキまで 奉者様になるだなんて 話を聞いた時は 驚いちゃった」
マリアが言う
「リナに 話したんだ?」
マキが言う
「うん!この前 マリアが休みを取った 月曜日に!」
マリアが言う
「そうだったんだ…」
マキが言う
「うん、丁度あの日 セ… あぁ 危ないっ ”私のウィザード様”が この町に配属になるって分かってね?それで 私を 奉者に選んでくれたんだ~」
マリアが驚いて言う
「え…?ウィザード様が 奉者を選んだ?」
マキが言う
「うん そうだって 聞いたよ?奉者のリストに 私の名前があって 驚いたって!」
マリアが一瞬の後 ハッとして言う
「…奉者のリストに?…え?それじゃっ まさかっ ”私を” 選んだのはっ!?」
マリアが思う
(私は… 奉者の娘だから 奉者協会が それで選んだと思ってた…っ!でも違うのかもしれないっ …もしかして!?)
マリアが思い出す
レイが言う
『だから俺は マリアに会うまで 全然 何もやらなかったもん 素質も力も全部あったけど ウィザードにさえならなかった …マリアに会って マリアがウィザードさまに お願いするから 俺はマリアの力になれる ウィザードさまに なろうと思った』
ウィザードさまが言う
『君を守ったのは 14年前も 彼だ』
マリアが驚きに言葉を失ってから俯く リナが気付き疑問して言う
「マリア… どうしたの?元気ないわね?」
マリアが苦笑して言う
「…うん」
リナがマリアの弁当を見てから言う
「食欲も無いの?」
マリアが苦笑して言う
「うん… ちょっと…」
マリアが弁当を片付ける リナがマキと顔を見合わせてから リナが苦笑して言う
「もしかして ”マリアのウィザード様”と喧嘩?」
マリアが一瞬反応する リナが続けて言う
「マリアは いつも ウィザード様の事で 溜息ばかり吐いてて… ふふっ 何だか懐かしいわね?マキと一緒に マリアをからかって」
マリアが苦笑して言う
「うん…っ」
リナが言う
「マリアはマキと違って 意地っ張りだから ムキになっちゃって 可笑しかった …その点 マキはちょっと詰まらないかな?マキは自分の性格に 素直だから」
マキが笑んで言う
「えっへへ~」
マリアが沈黙する マキが言う
「あ、そうだ マリア!」
マリアがマキを見る マキが資料を出しながら言う
「私 マリアに確認しなきゃいけなかったんだ!もうすぐ 私のウィザード様が この町の管轄にある 灯魔台の灯魔儀式を開始するから」
マリアが呆気にとられて言う
「灯魔儀式を…?」
マキが資料を出して言う
「うん 今日で5日目で …でも やっぱり 無理はさせたくないから 後2日休ませて あさってから始めるつもりなんだけど …それで マリアたちで アウターサイドの村は全部終わらせてあるみたいだから 次は 何処をやるつもりだったのかなー?って 一応 聞いておこうと思って!」
マキがマリアを見る マリアが呆気に取られた状態から 視線を落として言う
「…アウターサイドが終わった後は …まだ決めてなかったんだけど …でも」
マキが言う
「でも?」
マリアが思い出す
レイが言う
『それじゃ マリアは?マリアは何か無いのか?俺にお願いとか?』
マリアが考えながら言う
『お願い?私の…?あ、それなら ウィザード様!』
レイが微笑して言う
『うん!』
マリアが微笑して言う
『中央公園の灯魔儀式を やってもらえませんか!?』
レイが呆気に取られて言う
『は?』
マリアが衝撃を受けて言う
『あ…っ』
レイが噴出して笑う
『ぷっ …あっははははっ!』
マリアが呆気に取られる レイが言う
『やっぱ マリアは マリアだよな?こんな時くらい もう少し 違う お願いしてくれるかと 思ったのにサ?』
レイが苦笑して言う
『けど、その方が 俺たちらしいかもな?』
マリアが言う
『え?でも…』
レイが言う
『大丈夫だって 俺にとっては マリアのお願いが優先だもん 俺は ”マリアのウィザード様” だからな?』
マリアが涙を堪え手を握り締めて言う
「次の灯魔儀式は ここをって…」
マキが言う
「ここ?あーそっかぁ なるほどぉ アウターサイドが終わったから 他をやる前に 町の中心をって言うのは重要かもしれない!流っ石 マリア大先輩ー!」
リナが軽く笑って言う
「マキは 奉者様としても 頼れる先輩を持ったわね?」
マキが言う
「はいー!」
マリアが視線を落とす リナが言う
「所で この町の管轄が マキのウィザード様になったって事は マリアは?”マリアのウィザード様”は 今は何処の町の担当になったの?マリアも休日には 相変わらず 奉者様をしに行ってるんでしょう?」
マリアが両手で顔を覆う リナが一瞬驚いてから疑問して言う
「マリア?」
マリアが言う
「居ないの… 私のウィザード様は …もう居ないのっ 私のせいでっ!」
リナが呆気に取られて言う
「…え?」
マリアが言う
「私が何も分かっていなかったせいで 私のウィザード様は ウィザードじゃなくなっちゃったっ …大切な杖を奪われてしまったの 折角仲良くなって…っ この中央公園の灯魔をしようって 約束したのに…っ マキとリナにも 灯魔儀式 見せるって… 約束してたのにね?…ごめんねっ」
リナが呆気に取られてから 表情を落として言う
「マリア…」
マキが言う
「…やっぱ それ 本当だったんだ?…話聞いた時には 信じられなかったけど …でも マリアが言ってた事 改めて考えたらさ?自分のウィザード様に 苦労しているみたいだったから それでかな~…?って…」
マリアが言葉を飲んで顔を左右に振ってから言う
「違うのっ 何もかも私のせい…っ!だから もう一度会って… 会いたいって マキが居たあの部屋に行ったの…っ でも やっぱり居なかった…っ だから もう… 私はっ 私のウィザードさまには もう 二度と会えないのっ!」
マリアが涙を流す リナとマキが言葉を失う 鳥たちが一斉に飛び立つ リナとマキや通行人が驚くと 次の瞬間 周囲に魔力が集まる リナとマキが驚いて周囲を見渡す 周囲に水の魔力が集まる マリアの涙が水の魔力に収集され マリアが呆気に取られ周囲を見てから ハッとして上を見上げると 上空に大量の水が集結している リナが言う
「な… 何…っ?」
リナがマキを見る マキが分からないといった様子で顔を左右に振る マリアがハッとして言う
「これは… 水の灯魔儀式…っ!?」
マリアが振り返り目を見開く リナとマキが驚くと 灯魔台の上空に集められた水が マリアたちとは反対側に居る レイへ襲い掛かる リナとマキ、通行人たちが驚いて息を飲む 水がレイの前にある杖に防がれる レイが一瞬視線を強め 杖を掴み振り上げる 水が弾かれて大灯魔台の灯魔口へ叩き込まれる マリアが呆気に取られ 他の人たちが驚きに言葉を失っている 沈黙の一瞬の後 灯魔台に水が灯る 通行人たちが呆気に取られてから わっと拍手をする マキが言う
「こ、これが… 灯魔儀式…っ!?」
マリアが言う
「ウィザード… 様…っ」
リナとマキが驚いてマリアを見る マリアが言う
「ウィザード様… 私の ウィザード様っ!」
レイが背を向け立ち去って行く マリアが思わず踏み出して言う
「あ…っ」
リナが言う
「”マリアのウィザード様”なのっ?」
マキが言う
「マリアっ 早く行かないとっ!」
マリアが怯えて言う
「で、でもっ 私…っ」
リナとマキが言う
「マリアっ」「早くっ!」
マリアが踏み出し 追い掛けながら思う
(声を掛けなきゃっ!でも 何て…!?ごめんなさいって?ありがとうって?…分からないっ!でも…っ!何か言わなきゃっ!?何かっ!!)
マリアがレイを追い 言葉を掛けようとした瞬間 レイの持つ杖が砕け散る マリアが驚く レイが立ち止まり杖を持っていた手を押さえて言う
「ってぇ…」
マリアがレイの手を見ると 杖の破片が手に刺さっている マリアが驚き慌てて言う
「だ、大丈夫ですかっ!?ウィザード様っ!?」
マリアが駆け寄って レイの手に触れようとすると レイが慌てて言う
「あっ 触るな!マリアっ」
マリアとレイが同時にハッとして顔を見合わせ 驚いて見詰め合う マリアがレイの変化にハッとする レイがマリアの反応に気付き顔を逸らしてから言い辛そうに言う
「その… 杖の破片って 結構 鋭くて… 危ないから」
マリアがハッとして言う
「あっ で、でも…っ」
レイが手から破片を取って言う
「活性魔法を掛けておけば すぐ治るし…」
レイが魔法を掛けていると マリアがハンカチを取り出し レイの手に巻くレイが呆気に取られる マリアが手を見つめたまま微笑して言う
「…有難う御座います」
レイが言う
「え?」
マリアがレイを見て言う
「ここの灯魔儀式 やって下さいって… 私がお願いしたのを…」
レイが言う
「ああ…」
マリアが表情を悲しめて言う
「それから ウィザード様…っ」
マリアがレイの顔を見つめて表情を落とす レイが視線を逸らして言う
「…もう ウィザードじゃ ないけど」
マリアが驚く レイが言う
「ここの灯魔儀式をやろうって言ったのは… それは 俺が ”マリアのウィザード様”の時に 約束した事だったから… けじめとして終わらせただけで… だから礼はいらない」
マリアが困って言う
「でも…っ」
レイが微笑して言う
「マリアが あのウィザードの奉者になれて …良かった」
レイが歩き出す マリアがハッとして思う
(ち、違うっ それは…っ それに 私は そんなつもりじゃなくてっ!)
マリアが遠退いて行くレイを見て 一歩踏み出して思う
(だ、駄目っ!…今、行かせてしまってはっ 今度こそ 二度と会えなくなってしまうっ!だからっ!!)
マリアが言う
「ま… 待ってっ 待って下さいっ!ウィザード様っ!!」
レイが立ち止まる マリアが言葉を捜してから言う
「あ、あの…っ …それじゃ!一緒に…っ 一緒に!お茶を飲みましょうっ!?私も約束しましたっ!あの灯魔儀式が終わったら 一緒にお茶を飲もうってっ!」
マリアがレイを見て言う
「ですから…っ」
レイが沈黙してから言う
「…そうだな 分かった」
マリアがホッと微笑する
喫茶店
マリアとレイが店に入り席へ向かう マリアが苦笑して言う
「2人で お店に入るのって 初めてですね?」
レイが言う
「あの姿じゃ目立つし 話も出来なかったからな」
マリアが言う
「…はい」
マリアが席に座る レイが帽子を取って席に座る マリアが一瞬驚いてから微笑して言う
「あ… 髪… 切ったんですね…」
レイが一瞬反応してから言う
「ああ… 3日もしたら色も戻ったし 魔鉱石の効力が無くなれば 髪から魔力を吸収する事も なくなるから…」
マリアが一瞬驚いてから 視線を落として言い掛ける
「あ… ご ごめ…」
レイが言う
「って言っても 髪から取り入れる分なんて 本当に微量で 俺にとってはどうでも良い事だったけど 長い方が ウィザードらしいだろうって?…それだけだよ」
マリアが言う
「ウィザードらしい… そう… ですね」
レイが言う
「うん」
マリアが思う
(それじゃ… やっぱり それも… 私の為… だったのかな…?私が…)
マリアが言い掛ける
「私が…」
店員が来て言う
「ご注文は お決まりでしょうか?」
マリアがハッとして店員を見る レイがメニューを軽く見て言う
「セイロンティー」
店員が言う
「はい」
マリアが慌てて言う
「あっ 同じのでっ」
店員が言う
「はい 畏まりました」
店員が去る マリアが思う
(あ… でも 今更 私の為だなんて… そんな事…っ …あ、それよりっ!)
マリアがレイを見て言う
「あ、あの… 私 ウィザ… あ、貴方に 何と お詫びをしたら 良いのか…」
レイが言う
「俺に お詫びって?」
マリアが言う
「はい 私… 私が あの時 考えていたのは あのウィザードさまに… ”お母さんのウィザード様”に 認定票を入れないと 不認定の評価を受けて もう 会えなくなってしまうって…」
レイが言う
「うん」
マリアが言う
「それで 私は… 私はウィザード様に 他の人の不認定票が入る事は 無いと思って 安心していたんです… だから 自分の認定票で ”お母さんのウィザード様”を助けよう…って」
レイが言う
「そっか…」
マリアが言う
「ですから 私は…っ」
店員が来て言う
「失礼します」
マリアが言葉を止め視線を泳がせる 店員がテーブルにティーセットを2つ置いて言う
「ごゆっくり どうぞ」
店員が立ち去る レイが2つのティーポットに お湯を入れながら言う
「マリアが認定票を あのウィザードに入れなかったら あいつは杖を失ってた …そうなれば 大灯魔台の灯魔儀式には もう出ないから そこで会う事は もう無かっただろうな?」
マリアが言う
「それに 私…」
レイがティーポットに魔法を掛ける マリアがそれを見詰めながら言う
「あのウィザードさまに… お礼をしたかったから…」
レイがカップに紅茶を入れつつ言う
「お礼?」
マリアが言う
「あっ でも それは違ってっ …それより私っ あの時 認定票を入れなかったら それが ウィザード様への不認定票になってしまうなんて事っ 知らなくて… 考え付かなくて…っ!だからっ 本当は… 貴方から ウィザードの称号を奪うつもりなんて 無かったですっ!」
レイが反応し マリアへ譲ろうとしていた紅茶を持つ手を止めて言う
「ああ… そっか ごめん」
マリアが疑問して言う
「え…?」
レイが紅茶を持つ手を引いて言う
「勝手に作っちゃって… もう 俺は ”マリアのウィザード様”じゃないんだから こんな事されたら 迷惑だよな?」
マリアが呆気にとられて言う
「あ、いえっ そんな…っ」
レイが自分の側にあった ティーセットに片手を置いて言う
「こっちなら 使ってないから…」
マリアが慌てて レイの引こうとした紅茶を押さえて言う
「こ、こちらを 頂きますっ!」
レイが呆気に取られてから苦笑して言う
「そっか…?悪いな?」
マリアが言う
「え?」
レイが自分の分を作りながら言う
「だって 魔力の掛かったお茶は 自分の仕える ウィザードのしか貰わないのが道理だろ?”マリアのウィザード様”は あいつになったんだから」
マリアが言う
「そ、それは…」
レイが言う
「あの時は 驚いたけど 普通は既に奉者を従えているウィザードの 2人目の奉者になんか なれないから …最初から そのつもりだったんだろ?俺は考え付かなかったよ… マリアはやっぱ 頭が良いな?」
マリアが言う
「そ、そうじゃなくて…」
レイが紅茶を飲む マリアが困って思う
(どうしよう…っ!?上手く説明出来ない…っ だって 謝る事が多過ぎて…っ 何処から言ったら良いのか… 私は…っ)
マリアが紅茶を見て言う
「…頂きます」
レイが微笑して言う
「うん どうぞ」
マリアがレイの微笑を見て一瞬驚いてから紅茶を飲んで思う
(あ… いつもの紅茶だ… ウィザード様が入れてくれる紅茶は いつも美味しくて… それに)
レイが微笑してマリアを見詰めている マリアが思う
(ウィザード様は いつも嬉しそうにしてくれるから 私も 何となく 嬉しくなっちゃって…)
マリアが苦笑して言う
「ごめんなさい 私… ずっと… 14年間 勘違いをしていて…」
レイが言う
「え?勘違い?」
マリアが言う
「はい… それに… そのほかにも 一杯… 私… 貴方に数え切れないほど 謝る事があって… 正直 何からお詫びしたら良いのか 分からないんです」
レイが言う
「マリアが 俺に謝る事なんて 1つも無いよ?」
マリアが驚いてからレイを見上げる レイが微笑して言う
「俺が勝手に ”マリアのウィザード様”になりたいって思って やった事だから マリアが謝る事なんて 何も無いだろ?」
マリアが言う
「で、でも… 私のせいで ウィザードじゃなくなっちゃって…っ」
レイが言う
「別に良いよ ”マリアのウィザードさま”じゃ 無いんだったら 俺は ウィザードだろうと 魔法使いだろうと 何でも良いんだ 俺が やりたかった事は 14年前から マリアの力になる事だったから」
マリアがハッとして言う
「―そのっ!14年前っ 大灯魔台の暴走した魔力を収めてくれたのはっ 私のお願いを聞いてくれたのは ”お母さんのウィザード様”じゃなかったって…!?」
レイが言う
「ああ あれは 俺がやったよ?」
マリアが言う
「な、何でっ 言ってくれなかったんですかっ!?それなら 私っ!」
レイが言う
「俺はあの時 ウィザードじゃなかったから 杖も無くて あのウィザードの杖を借りて 魔力を収める事は出来たけど その後 魔力反動を受けて 3日間昏睡状態だったんだ …おまけに 自分が吹き飛ばした 瓦礫の破片で怪我してさ?カッコ悪いだろ?」
レイが軽く左前髪を上げて見せる 額に傷跡がある マリアが一瞬驚いた後ハッとして思い出して言う
「あ…っ」
マリアが思い出して思う
(あの時 私の後ろに居たっ あの 男の子っ!?)
レイが苦笑して言う
「ウィザードになれば 杖もあるし デカイ魔法を2つくらい使っても 倒れたりしないし… それに あの時 マリアは何度も”ウィザードさま”に お願いしてたからさ?それなら 名実共に 俺が ”マリアのウィザードさま”に なってやろうって思ったんだ …けど」
マリアがレイを見る レイが苦笑して言う
「マリアにとっての ウィザードさまは あの頃からあいつで 俺がウィザードになっても 意味が無かったんだな?」
マリアが表情を落として言う
「そ、そんな事っ それに 私の為に…っ」
レイが言う
「最初から全部 俺が勝手にやった事だ でも、短い間だったけど マリアと一緒に灯魔儀式をやったり 話をしたり 楽しかったよ 本当に それに、その間は 俺も ”マリアのウィザード様”を やれたもんな?だから 俺は ウィザードになって良かったよ」
マリアがレイを見る レイが微笑して言う
「それじゃ!」
レイが立ち上がる マリアが言う
「え…?」
レイが伝票の上に金を置いて言う
「どっちの仕事をしてるにしても もう 昼休憩は 終わりだろう?俺のせいで マリアが怒られたら 嫌だからな 後、一緒に お茶飲んでくれて ありがとな?マリア」
レイが帽子を取って立ち去る マリアが慌てて立ち上がり ハッとして伝票と金を持って向かう
喫茶店 外
レイが道を歩いている マリアが喫茶店から出て走って来て言う
「ま、待って下さいっ!ウィザード様っ!…ウィザード様っ!」
レイが疑問して立ち止まり 振り返って言う
「ん?俺を呼んだか?マリア」
マリアが言う
「そうですよっ」
レイが言う
「そっか まぁ いっか?で 何だ?もう…」
マリアが言う
「勝手に 話を終わらせないで下さいっ 私 何も お詫び出来ていないのにっ!」
レイが言う
「え?だから マリアが謝る事なんて 何も無いって」
マリアが言う
「そうじゃ無くてっ」
レイが言う
「”そうじゃ無くて”?」
マリアが言う
「そ、その… わ、私 確かに 14年間勘違いしてましたけどっ でも やっぱり…」
レイが言う
「”やっぱり”?」
マリアの脳裏に走馬灯の様にレイとの思い出が蘇り マリアが言う
「”私のウィザードさま”は ウィザード様だけですっ!」
レイが一瞬驚いた後疑問して言う
「…え?あ…?えーっと?」
マリアが言う
「だ、だから 私は… ”お母さんのウィザード様”の 奉者にはなりませんし… それに…っ!」
レイが呆気に取られて言う
「え…?そうなのか…?それじゃ…」
マリアが言う
「私が ウィザード様って呼ぶのは 貴方しか居ないですっ!ですから…っ こ、これからも… …”私のウィザード様”で 居て下さい…っ」
レイが驚く マリアが表情を落として言う
「駄目… ですか?」
マリアが視線を落として思う
(…そうよね?こんな勝手な事を言って …今更 何を言ってるんだ って… 怒るよね…?)
レイが言う
「駄目な訳無いだろ マリア!マリアがそう言うのなら 俺はそうするに決まってる!」
マリアが驚いて顔を上げて言う
「えっ?」
レイが言う
「でも 良いのか?マリア?俺 ウィザードじゃないぞ?」
マリアが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
「…良いですよ 私なんて… 奉者失格ですから」
レイが言う
「え?そうなのか?」
マリアが言う
「だって 私、奉者の仕事 何も出来ていなくて… ウィザード様に 全然 ご奉仕しなくて…っ」
レイが言う
「そんなの 気にする事無いだろ?」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「マリアはマリアで良いんだよ 俺は”マリアのウィザード様” だったんだから マリアの力になる事だけを考えてたよ だから マリアのお願いを聞くのが 俺は嬉しかったんだ」
マリアが驚く レイが言う
「だから これからも 俺が ”マリアのウィザード様”なら 何でもやってやぞ マリア!だって…」
マリアが疑問して言う
「だって…?」
レイが笑んで言う
「俺は 魔法使いでも 実力は ウィザード以上 だからな!」
マリアが驚いて言う
「えっ!?」
レイが言う
「言っただろ?マリアのウィザードは最強だって 魔法使いになったって そこらのウィザードになんか 負けないよ!ただ 杖は負けるんだ だから マリアが どうしてもって言うならさ?」
マリアが言う
「”どうしてもって言うなら”?」
レイが言う
「そこら辺の弱いウィザードを ぶっ倒して そいつの杖を―!」
マリアが衝撃を受け慌てて言う
「だ、駄目ですよっ!!」
レイが言う
「何で?」
マリアが言う
「な、何でって…っ 駄目なものは駄目ですっ!」
レイが言う
「ん?そうなのか?じゃ しょうがないから また 魔法使い用の杖でも買うかなぁ」
マリアが呆れて言う
「そうして下さい…」
レイが言う
「所で マリア?」
マリアが言う
「何ですか?」
レイが言う
「本当に 昼休憩の時間は 大丈夫なのか?」
マリアがハッとして時計を見て衝撃を受けて言う
「きゃぁあっ!大変っ 商談の時間がっ!ここからじゃ 会社まで間に合わないっ!」
レイが言う
「それなら 任せとけっ!マリア!」
レイが植え込みに落ちている 木の枝を取って マリアを軽く抱く マリアが呆気に取られて言う
「え!?枝でっ!?」
レイとマリアが浮き上がり 風に消える
会社前
レイとマリアが現れる マリアが呆気に取られた後周囲を見渡す レイが言う
「ほら 到着!」
マリアが呆気に取られた後微笑して言う
「あ、有難う御座います!ウィザード様っ!」
レイが喜んで言う
「礼には及ばないよ!それじゃ お仕事 頑張ってな!マリア!」
マリアが喜んで言う
「はい!いってきます!ウィザード様!」
マリアが会社の入り口へ走り 自動ドアを抜けてからふと振り返る 振り返った先レイは居なくなっている マリアが一瞬言葉を失った後微笑して思う
(きっと 大丈夫…っ だって あの人は 何があっても ”私のウィザード様” なんだから!…うん!)
マリアが頷きエレベータへ向かう
つづく