嗚呼、私のウィザードさま。2
会社
マリアが微笑して書類を揃えて言う
「よしっ お仕事完了!」
リナが言う
「な~に?マリア?随分嬉しそうだけど?」
マリアが疑問して言う
「え?」
リナが言う
「何か良い事でも あったのかしら?」
マリアが呆気に取られてから言う
「ううんっ 無い無い!何にも無いよ?」
リナが言う
「本当に?」
マリアが苦笑して言う
「本当よ~ それ所か 奉者の仕事が忙しくて こっちの仕事が間に合わなくなって 朝一番で書類をまとめに来たんだよ?これを課長に提出して 今度はすぐに ウィザード様の所へ行かないと」
リナが言う
「あら そうだったの?そうよね 今日はマリア いつも休みの日だものね?お疲れ様 奉者様?」
マリアが言う
「ホントに今回は奉者様してたって感じ いつもなら3日や4日に1度なのに 今回はエリナの保育園の件もあって 結局 毎日顔を合わせる事になっちゃって」
マキが言う
「羨ましいな~ マリアは だって それって 結局 マリアが会いたいと思えば いつでも会えるって事じゃない?私なんて もう二度と あの清掃員さんに 会えないのに~」
マリアが衝撃を受ける マキが溜息を吐く リナが一度呆気に取られた後 苦笑して言う
「そうよね 会えない人の事を思うと 溜息が出ちゃうのよね?…いつもの 誰かさんみたいに?」
マリアが反応して慌てて言う
「だ、だから あれは …違ったのっ!その… 私の勘違いで… あっ 課長!書類出来ましたーっ!」
マリアが書類を持って走って行く マキが溜息を吐く リナが軽く笑う
マンション
マリアがタクシーを降り 急いでエレベータへ向かう エレベータ内でマリアが時計を見て言う
「うん!いつもより ちょっとだけ 遅くなっちゃったけど…」
エレベータが到着する マリアが急いでドアへ向かう マリアがドアの前で一呼吸置き インターフォンを押してからドアを開けて言う
「お早う御座います!ウィザード様 お迎えに上がりました!」
マリアが身構え思う
(…く、来る!?)
マリアが間を置いてから 疑問して顔を向けた先 レイが微笑して言う
「お早う マリア」
マリアが呆気に取られた後 ハッとして言う
「あっ えっと…?お車の… 用意が…」
マリアが思う
(あれ…?)
レイがマリアの横を過ぎながら言う
「うん、行こう」
マリアが呆気に取られてレイを見る レイがドアを出て行く マリアがハッとして慌ててドアを出て 思い出した様に鍵を掛けてから 走って向かう
エレベータ内
エレベータが下降している マリアが回数ボタンの前に立ちつつ 横目にレイの様子を伺ってから視線を逸らし 表情を困らせてから思い出した様に言う
「…あ!ウィザード様?き、昨日は… 有難う御座いましたっ!」
マリアがレイを見る レイがマリアを見てから微笑して言う
「うん」
マリアが疑問し 言い掛ける
「あ、あの…?」
エレベータが到着する マリアが気付き ドアが開くとレイが出て行く マリアが追う
車内
マリアが助手席に乗り込み運転手へ言う
「お早う御座います アミス村の灯魔台神館まで お願いします」
マリアが良い終える頃 後部座席にレイが乗り込んで来る 運転手がマリアへ向いて言う
「はい お早う御座います それではアミス村の灯魔台神館へ 向かわせて頂きます」
マリアが微笑して頷いてから後部座席を様子見る レイは目を瞑って俯いている マリアが前方を向いてから思う
(何…?何だか いつもと 違う…?)
マリアが横目にレイを見る
アミス村灯魔台神館
人々が見つめる先 レイが魔力を収集している マリアがレイを見ながら思う
(結局 神館前まで 出迎えの人たちが居たから 声を掛けられなかったけど…)
周囲の設備から風が舞い上がる マリアが反応して思う
(風の灯魔… ウィザード様が得意だって 言ってた…)
周囲に風が巻き上がり 上部に集中する 人々が驚き驚愕する中 マリアがレイを見て思う
(普段と見た目は変わらないけど 昨日だって 違いは見えなかったのに 凄く緊張してたみたいに言ってたし… …それじゃ 見た目じゃ 分からないのかも?)
上部に集中した風が一気にレイへ向かって来る 人々が息を飲む中 風の攻撃がレイの前にある杖に防がれる マリアが見つめる中 レイが杖を掴み振りかざすと 風の攻撃が上空に弾かれ灯魔台に叩き込まれる 人々が怯える中 マリアが思う
(やっぱり 部屋へ戻ったら 聞いてみよう …うん!)
辺りが静まった中 灯魔台から静かに風が渦巻き始める 周囲の装置にも同じ様に風が渦巻く 人々が言葉を失う レイが向き直り来た道を戻り歩く 人々が慌ててレイへ信仰の眼差しを向け 祈るようにレイの歩みを見守る マリアが微笑する
マンション レイの部屋
マリアが地に足が着く感覚を得ると 振り返り微笑して言う
「お疲れ様でした ウィザード様」
レイが言う
「うん お疲れ様 …次も いつもの時間だろ?」
マリアが呆気にとられてから言う
「え…?あ、はい…」
レイが言う
「じゃ また 2時に迎えに来て」
レイが部屋へ上がって行く マリアが呆気にとられて言う
「は、はい… あのっ?」
マリアが呼び止めようとするが レイはさっさと寝室に入ってドアを閉める マリアが呆気に取られてから部屋を出て行く
中央公園
マリアが手作り弁当を前に溜息を吐く
「はぁ…」
マリアがふと気付いて思う
(あれ?私 今 なんで溜息なんか…?)
マリアが余り手を付けていない弁当を見てから 表情を落として思う
(ちょっと前までは 溜息の理由が分かってたのに…)
マリアの脳裏に レイへの誤解の数々が思い出される マリアが思う
(あれは 全部 私の勘違いだった… ウィザード様は ただ私と一緒に お茶を飲みたかっただけで あ、あのっ 抱擁なんかは…!?き、きっと その… 神聖なウィザード様の 全く下心の無い 感情表現の一つでっ アノ言葉も… そう …だから 今の状態こそ ウィザード様の 私へ対する 紛いの無い姿…)
マリアが表情を落としている事に気付き ハッとして言う
「い、良いじゃないっ!?とっても!?そ、そうよっ!これこそ 神聖な ウィザード様っ!」
マリアが表情を落として言う
「なのに… 何で…?何だか とっても…」
マリアが思う
(…寂しい?)
マリアが弁当を片付け 静かに立ち上がる
マンション レイの部屋
インターフォンが鳴り マリアがドアを開けて言う
「失礼します ウィザードさ…ま?」
マリアが言い掛けると レイが抱き付いてきて言う
「マリアー!」
マリアが呆れつつ思う
(ア… アレ…?)
マリアがレイを剥がそうとしながら言う
「あの… ウィザード様…?」
マリアが思う
(戻ってる…?折角 神聖なるウィザード様になったかと思った…ら?)
レイが言う
「マリア!俺 やっぱ 耐えられないみたいだ!」
マリアが衝撃を受けて思う
(え!?たっ 耐えられないってっ!?)
マリアがハッとして思う
(―って、待ってっ!?違うかもしれないっ あっ!もしかして また 一緒に… お茶が飲みたかった とかって言うっ!?)
マリアが苦笑して言う
「あ、あのっ ウィザード様っ?」
レイが言う
「ずっと我慢してて… 意識しない様に 儀式とか集中してれば 忘れられるかと思ったんだけど でも…っ」
レイがマリアを見つめて言う
「マリアに負担掛けるって 分かってても 俺には やっぱり マリアしかいないんだ だから マリア!」
マリアが驚き思う
(だ、駄目よっ!?やっぱりっ!?そんなのはっ!…だ、だって急にっ!)
マリアがハッとして言う
「あ!あの!で、ではっ!ウィザード様っ!?」
レイが言う
「な、何っ?」
マリアが顔を引きつらせつつ苦笑しながら言う
「い、今は 時間が無いですからっ!?ぎ、儀式へ… 行きましょうっ!?それで その…っ お話の続きは… か、帰って来てからっ …でっ!?」
レイが苦笑して言う
「そ、そっか そうだよな… 分かった 急に ごめん 俺 もう 限界近いみたいで… マリアを見たら つい…」
マリアが衝撃を受けて思う
(私を見たらっ!?…や、やっぱりっ!?そう言う事なの…っ!?)
レイが気を取り直して言う
「それじゃ 行こう マリア …時間は 大丈夫?」
マリアが時計を見てから言う
「あ、は、はい… 少し早めに来ていたので 今出るなら いつも通りですっ」
レイが言う
「そっか なら 良かった」
レイが出て行く マリアが困惑しつつ続く
灯魔台神館
レイが灯魔作業を行っている マリアが思う
(どうしよう… 儀式が終わったら きっと 私 ウィザード様に さっきのお返事を しないといけない…)
マリアがレイを見る 人々の驚愕の中レイが火の灯魔儀式を続けている マリアが思う
(で、でもっ もしかしたら?…また 私の思い過ごしかもしれないっ だから もっと良く考えてっ ウィザード様がさっき言っていた言葉は…っ!?)
マリアの脳裏に記憶が蘇る
レイが言う
『ずっと我慢してて… 意識しない様に 儀式とか集中してれば 忘れられるかと思ったんだけど でも…っ』
マリアが困り頭を悩ませて思う
(う~っ!駄目っ やっぱり そう言う事にしか思い当たらないっ いくら神聖なるウィザード様だって やっぱり 男の人なんだしっ 奉者は基本として 女性である事が前提だしっ …奉者って そう言う事だったのっ!?)
マリアがレイの姿を見る レイが杖を掴み一振りすると 押さえられていた炎が舞い上がり 灯魔台に上空から叩き込まれる 激しい衝撃に人々やマリアが思わず目を閉じると 一瞬の後 静まった館内の灯魔台に静かに炎が上がり 周囲の灯魔台に連動した装置にも炎が灯る 人々が言葉を失う マリアが表情を落として思う
(そっか… やっぱりそうなのかもしれない …ウィザード様は 優しい人だったから 今まで私にあんな風に接してくれていたけど… 私にとっての ウィザード様は 子供の頃に見た あの時の ウィザードさまの意識のままだった)
マリアの脳裏に10年前の景色が見える
周囲の炎は増し 何処かで沸きあがった悲鳴にマリアが顔を向けるとマリアの視線の先 建物の外壁が崩れ落ち人々が埋まる マリアが目を見開くと慌ててソニアの横に居るウィザードへ叫ぶ
『助けてっ ウィザードさまっ!』
マリアの声にウィザードが一度視線を向ける マリアが必死に叫ぶ
『お願いっ!皆を助けてっ!ウィザードさま!お願いっ!』
マリアの必死の呼び掛けに ウィザードは冷たい視線を返してから視線を逸らす
マリアがウィザードの姿にレイを重ねて見ていると レイが向き直り来た道を戻り歩く 人々が慌ててレイへ信仰の眼差しを向け 祈るようにレイの歩みを見守る マリアがレイを見て思う
(あのウィザードさまは ”お母さんのウィザード様”… でも この人は… ”私のウィザード様” だから…)
マリアがレイを見る レイがマリアの前で一度立ち止まり マリアを見る マリアがレイを見る レイがマリアの前を去る 案内がマリアへ頭を下げて言う
「有難う御座いました マリア奉者様」
マリアが一度微笑して言う
「…はい それでは 失礼します…」
マリアがレイを追う
マンション レイの部屋
レイとマリアが現れる マリアが考えていると レイがマリアを後ろから抱きしめて言う
「マリア…」
マリアが言葉を飲み思う
(もう引き返せない… 私は 理由は何であれ 奉者になったんだから… 今更 逃げ出す事なんて出来ない…っ それに 勘違いだったとは言えっ 昨日は 1度 気持ちを…っ)
マリアが意を決してレイへ向き直ろうとする レイが言う
「ごめん マリア… こんな事頼むつもりは無かったんだ 俺は… ”マリアのウィザード様”だから… マリアの為にって それだけを考えてた… 俺がマリアに こんな事を頼むつもりなんて まったく無かったのに…」
マリアが苦笑して言う
「い、良いんですっ 私も… 何も知らずに 奉者になってしまって… お仕えするウィザード様に 気を使わせてしまうなんて 本当はいけない事です」
レイが苦笑して言う
「マリア… ありがとう」
マリアが微笑して言う
「ウィザード様…」
マリアが思う
(やっぱり 優しい… 大丈夫 このウィザード様なら きっとっ)
レイがマリアを抱きしめて言う
「俺 最後までウィザードらしく 居たかったけど やっぱ 限界で… もう 我慢出来ない だから 早く…」
マリアが表情を顰めて思う
(や… 優しく お願いし…)
レイがマリアを強く抱きしめ 息を切らす マリアが衝撃を受けて思う
(―なっ!?…お、重いっ 苦しいっ それに…っ!?)
レイが言う
「ごめん マリア… さっきの魔法で 精神力使い切った…」
マリアが思う
(精神力って何!?それって… もしかして…?もしかしてっ!?)
レイが僅かに息を荒くして 預けていた身を上げる マリアが思う
(―理性っ!?…みたいな物っ!?)
レイが言う
「それじゃ マリア…」
マリアがレイの声に顔を上げる レイがマリアを見る マリアがレイの目にドキッとして思う
(こ… 怖いっ!やっぱり いつもの ウィザード様じゃないっ!?)
レイが言う
「急かして御免 でも 俺 マリアに 今すぐ イッてもらいたい」
マリアが衝撃を受けて思う
(ム、ムリ…っ!そんなっ 酷いっ いくらなんでも 最初は…っ!…それにっ 怖いのは 絶対嫌っ!)
レイが言う
「何でも良い マリアに任せる だから…」
マリアが言う
「ご、御免なさいっ!でも!もう少し 落ち着いている時に お願いしますっ!ですからっ!もう一度っ!改めてっ!」
レイが言う
「けど… マリア 俺 もう限界だから…」
マリアがレイを振り払って逃げながら言う
「御免なさいっ!また 必ず 来ますからっ!」
マリアが外に出ると 走ってエレベータへ逃げ込み 1階ボタンを押す ドアが閉まると 壁に背を付け 視線を落として言う
「はぁ… どうしよう…?」
エレベータが1階に到着する マンションを出て マリアが恐る恐る最上階を見る 最上階の部屋に変化は無い マリアが息を吐き タクシーを止める
会社
マリアが真っ白なモニターの前で悩んでいる マキが覗き込み疑問してから言う
「マリア?」
マリアが驚いて身をビクつかせてから言う
「キャッ!な、なんだ マキか… びっくりした…」
マキが呆気にとられて言う
「あ、ごめん?」
マリアが苦笑して言う
「あ、ううんっ 私こそ ごめん …ちょっと 考え事してて」
マキが言う
「そうだったんだ?あのさ?良ければ… お昼 食べに行かない?」
マリアが気付いて言う
「あ… もう そんな時間だったんだ…?」
マキが微笑して言う
「うんっ 何か悩んでる時はー とりあえず!腹ごしらえした方が良いよ!マリア!」
マリアが微笑して言う
「うん そうだね… それじゃ、リナも… あれ?」
マキが言う
「今日はリナ休みだよ?知らなかった?」
マリアが言う
「あ、うん… 珍しいね?何かあったの?」
マキが笑んで言う
「にっひっひ~ じ・つ・は!」
休憩所
マリアが言う
「デートっ!?」
マキが手作り弁当片手に言う
「そうなのですー!エリナの紹介で 同じ保育園の保育士さんなんだってー!」
マリアが言う
「えぇ~ でも 何だか複雑ね それじゃ その彼は 保育園では いつもエリナと一緒に居るって事でしょ?」
マキが言う
「そうそうー!でも リナは気にしてないって 言ってたよー?」
マリアが苦笑して言う
「そうなんだ… 私だったら ちょっと心配かなぁ…?」
マキが言う
「同じ保育園だって 別に 仕事で同じ職場の同僚ってだけだしー?エリナは リナと彼氏さんの 共通の知り合いって事に なるだけじゃない?」
マリアが言う
「あ… そっか…」
マキが言う
「でも 良いなぁ~ 2人共」
マリアが疑問して言う
「良いって リナとその…?」
マキが苦笑して言う
「違う違う リナとマリア!」
マリアが疑問して言う
「え?私?」
マキが言う
「だって 2人とも 彼氏持ちじゃーん?居ないのは 私だけー!」
マリアが衝撃を受け 慌てて言う
「だ、だからっ 私とウィザード様は そんなんじゃ…っ!」
マリアがハッと思い出す マキが苦笑して言う
「またまた~!もう 隠さないで良いってば!隠すのは 私たち以外の人と 神様にー!なーんちゃって!にゃはははっ!」
マリアが視線を泳がせる マキが溜息を吐いて言う
「はぁ… 私も もうあの人の事は すっぱり 忘れて …良い人探そうかなぁ~」
マリアが気付いて言う
「あ!そ、その…っ あの人って… ウィザ… いやっ!れ、例の… 清掃員さんの事?」
マキが苦笑して言う
「うん… あの後 清掃会社の人に 聞いてみたんだけどね?臨時で雇った清掃員なんて居なかったとか 言われちゃって…」
マリアが衝撃を受け 表情を困らせる マキが表情を落として言う
「これじゃ もう… 諦めるしかないよね?」
マリアが困ってから言う
「…ねぇ?マキ?もし… もしっ だよ?その清掃員さんが 見つかったら… マキは お付き合い… するの?」
マキが言う
「もっちろん!だって すっごい 素敵だったもん!一目惚れっ!」
マリアが苦笑して言う
「本当は そんなに… 素敵な人じゃ ないかもよ?もしかしたら 本当は 怖い人… かも…?」
マキが言う
「それでも良い!」
マリアが驚いて言う
「えっ?」
マキが言う
「確かに 最初は 見た目が綺麗な人だなって それだけだったけど… 話をして感じたの」
マリアが言う
「話をして…?」
マリアが思う
(あの時 私 2人の後を追って聞いていたけど マキがそんなに 好きになるような 優しい言葉なんて全然無くて… むしろ 怖いと思った… あんなに排他的な言い方を するだなんて…)
マキが微笑して言う
「あー この人 誰かに頼る事を 知らない人なんだな~って!」
マリアが驚く マキが言う
「だからね?一緒に居てあげたいなーって思っちゃった!でも 本当は 私が一緒に居たいだけなのに 矛盾してるよね?」
マキが笑う マリアが視線を泳がせて言う
「誰かに頼る事を 知らない…?」
マリアが思う
(そう言えば私… ウィザード様の事 何も知らない… 名前 …さえ!?)
マリアが手作り弁当を前に言葉を失っている マキが弁当を食べつつマリアを見て疑問して言う
「マリア?食べないの?」
マリアがハッとして言う
「あ、ううんっ!食べる食べる!」
マリアが弁当を食べつつ考える
翌日 会社
マリアが思う
(とりあえず 次の灯魔儀式の予定は入れてみたけど… これを理由に 時間を伝えに来たって …行くべきかな?でも 儀式も無いのに それだけの用件で行ったら 今度こそもう逃げられない… だって時間はいつもと同じ 午前10時と 午後の3時…)
リナが出勤して来て マキと挨拶をしてから マリアを見る マリアが考えている
(…良く考えたら これって ウィザード様の言ってた お茶の時間と同じだったんだ …それなら 本当は 変えるべきなのかな?それとも…?)
リナがマキへ言う
「なんだか 凄く悩んでるみたいだけど 何かあったの?」
マキが言う
「さぁ~?昨日からなんですー」
マリアが思う
(…大体 灯魔儀式の時間なんて こう言う事は 普通に訊いたら良い筈なのに ウィザード様が あんな事言うから… …でも 本当にウィザード様のせいなのかな?やっぱり そう言う事も 奉者の勤め?そんな事 習ってないけど…っ)
マリアが溜息を吐く
「はぁ~…」
リナが言う
「ほーら 来た」
マキが言う
「来た来た~ マリアの溜息~!」
マリアが疑問して言う
「え?」
リナが言う
「また ウィザード様の事で 溜息吐いているんでしょ?」
マリアが衝撃を受けて言う
「うっ… なんで 分かるの?」
マキが言う
「分かり過ぎ~」
マリアが苦笑して言う
「あ… はは…」
リナが言う
「奉者様は大変なんでしょ?こっちの仕事 手が回らないなら 何か手伝うわよ?マリア?」
マキが言う
「そうそう!大変な時は お互い様~!」
マリアが言う
「あ… ありがとう でも 大丈夫 仕事に支障は…」
マリアの目前 真っ白な画面が開かれている マキが言う
「昨日から 全然 動いてないし~?」
マリアが驚き慌てて言う
「た、大変~っ!今日中に仕上げなきゃ いけないのにっ!」
リナが言う
「終始報告書でしょ?1週分手伝うわよ?」
マキが言う
「私も!」
マリアが言う
「ありがとう!本当に ごめんっ!」
マリアがリナとマキに資料を渡す
マンション 最上階
マリアがドアの前で溜息を吐く
「はぁ~…」
マリアがドアを見て困って思う
(おとといは 仕事に追われ 昨日は 今更って感じで 結局 今日まで来られなかった …ウィザード様 怒ってるかな?どうしよう…)
マリアが表情を困らせた後ドアを見て意を決してインターフォンを押し マリアが思う
(怒られるかもしれない… いきなり… 押し倒されるかもしれないっ でも… このまま逃げる訳にも行かないしっ!)
マリアがドアを開けて言う
「お、お早う御座いますっ!ウィザード様っ!」
マリアが正面を向いた状態から ふと気付いて横を向くと レイがキッチンのシンク近くで水を飲み終えた様子で振り向いて 一瞬2人が止まった後 レイが軽く息を吐いて言う
「お早う… マリア」
マリアが言う
「あ、あの… 本当に 御免なさいっ ウィザード様 私…っ」
マリアが頭を下げる レイが呆気に取られた後苦笑して言う
「ああ… 良いよ 何も マリアは悪く無い だから 俺に謝ったりなんかしないで」
マリアが驚いて顔を上げる レイが苦笑して言う
「この時間って事は 灯魔儀式の予定も 入ってるんだろう?」
マリアが言う
「は… はいっ お車の用意が出来ていますっ」
レイが言う
「うん… じゃ 行こうか」
マリアが言う
「は、はい…っ」
エレベータ内
マリアが回数ボタンの前でレイの様子を横目に見てから思う
(元気無いみたい… そうよね… だって 私が… …傷付けちゃった よね?謝らないと… あ、謝ったっけ?それで… 許してくれた… これで 良かったのかな?灯魔儀式にも行ってくれるみたいだし …今度こそ 神聖なウィザード 様…?)
マリアが横目にレイを見る レイは無表情に居る マリアが視線を逸らして思う
(これで 良かったんだよね…?)
エレベータが到着し マリアが出ると レイが続く
ポリニ灯魔台神館
レイが灯魔作業を行っている マリアが見つめている 人々の驚愕の中レイが火の灯魔儀式を続けている マリアが思う
(ここも火の灯魔… 何だか意外 いつもなら 同じ灯魔は続かないのに… 偶然?)
マリアがレイの姿を見る レイが杖を掴み一振りすると 押さえられていた炎が舞い上がり 灯魔台に上空から叩き込まれる 激しい衝撃に人々やマリアが思わず目を閉じると 一瞬の後 静まった館内の灯魔台に静かに炎が上がり 周囲の灯魔台に連動した装置にも炎が灯る 人々が言葉を失う マリアが僅かに違和感を感じて思う
(…同じ火の灯魔が 続いたせいかな?なんだか… いつもより 迫力が無いような…?)
マリアがレイを見ていると レイが向き直り来た道を戻り歩く 人々が慌ててレイへ信仰の眼差しを向け 祈るようにレイの歩みを見守る マリアがレイを見る レイの表情は見えない マリアが思う
(やっぱり いつもより… なんだか弱い感じがする いつものウィザード様なら もっと… 私が見ても 怖いと感じる 強さがあって…)
マリアがレイを見る レイがマリアの前を去る マリアが一瞬呆気に取られる 案内がマリアへ頭を下げて言う
「有難う御座いました マリア奉者様」
マリアがハッとして言う
「あ、いえっ!…それでは 失礼します!」
マリアがレイを追う
マンション レイの部屋
レイとマリアが現れる レイがマリアを解放すると マリアが気を取り直して言う
「…お疲れ様でした!ウィザード様!」
レイが沈黙する マリアが一瞬驚いてから苦笑して言う
「あ、そ… それでは いつも通り」
レイが言う
「マリア」
マリアがビクッとして言う
「は、はいっ!」
レイが言う
「午後の灯魔儀式は キャンセルして…」
マリアが驚いて言う
「…え?」
レイがマリアを見て微笑する マリアが呆気に取られた後慌てて言う
「え、ええっと… り、理由を 確認させて頂けますかっ!?ウィザード様のご指示であってもっ そ、その… 一応 灯魔儀式には事前の準備がっ」
レイが言う
「うん… 多分 出来ないと 思うから…」
マリアが言う
「お、思うって…?具体的には… えっ?」
レイがマリアに抱き付く マリアが驚く レイが言う
「しばらく このままで居させて… マリア…」
マリアが困って言う
「あ… あの… つまり …そう言う理由で?」
レイが言う
「うん…」
マリアが困り悩んで思う
(え~っと… それじゃ キャンセルの理由は …失恋って事?それにより 灯魔儀式に望む気力の低下… そ、そんな事を 言わなくちゃ駄目って事?)
マリアが横目にレイを見る レイは動かない マリアが困って思う
(それは… 確かに 私が悪いかもしれない でも… それを理由に 灯魔儀式をキャンセルするって 有りなのっ!?そんなの会社だったら 絶対許されない …だからっ!)
マリアが意を決して言う
「だ… 駄目ですっ!」
レイが僅かに反応する マリアが言う
「お気持ちは分かりますがっ あ、後一回だけ 頑張って下さいっ!私も… で、出来るだけ 協力しますからっ!」
マリアがハッとして思う
(あっ!も、もしかしてっ 私 また 何か間違った事言っちゃったっ!?まずい 訂正するなら 早くっ!)
レイが言う
「無理…」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「もう… 俺… 何も 出来ない」
マリアが思わず言う
「はぁっ!?」
レイが言う
「もう無理… だから 儀式はキャンセルして… それでマリア 今日はもう少し このまま 一緒に居て… いるだけだけで 良いから」
マリアが怒って言う
「甘えないで下さいっ!ウィザード様っ!」
レイが驚く マリアがハッとして言う
「ご、ごめんなさい… で、でもっ!儀式のキャンセルは駄目です!もう一回だけ頑張って下さいっ!その後でしたら 予定を調整出来ますからっ!」
レイが言う
「う、うん…」
マリアが言う
「それではっ!いつも通り また2時にお迎えに来ますっ!良いですねっ!?」
マリアが言い放つと共に ドアを出て閉めて去って行く
中央公園
マリアが溜息を吐いて言う
「はぁ… 言い過ぎちゃったかな… 奉者がウィザード様を叱るだなんて きっと 前代未聞…」
マリアの脳裏に 清掃員姿のレイが思い出される マリアが表情を顰めて言う
「…うっ でも ある意味 アノ人も 前代未聞なウィザード様だし… これって 良いコンビなのかも…?」
マリアがハッとして慌てて言う
「ち、違うっ!私とウィザード様はっ そう言うんじゃなくてっ!…って」
マリアが呆気に取られてから 肩の力を抜いて言う
「私… 何1人で言ってるんだろう…」
マリアが溜息を吐く
マンション レイの部屋
マリアがドアを前に表情を困らせてから 顔を左右に振って 気合を入れて言う
「よしっ!」
マリアがインターフォンを押して思う
(何だか いつも このドア開けるのが… でも もう 何も恐れるものですかっ!大丈夫っ 何が来ても もう怖くないっ!)
マリアがドアノブを掴んで思う
(強気に行かないとっ!)
マリアがドアを開けて言う
「失礼します!ウィザード様っ!お迎えに上がりましたっ!」
マリアが空かさず横を向いてシンクの辺りを見るが レイは居ない マリアが一瞬呆気に取られてから 気を取り直して正面へ向いて言う
「ウィザード様?」
マリアが様子を伺うとリビングのソファに動きがある マリアが気付き言う
「ウィザード様?お時間ですよ?」
マリアが待つが反応が無い マリアが表情を困らせて思う
(これは… …つまりボイコット?…いや、だとしても ウィザード様は 一応このドアさえ出れば ウィザード様らしく 振舞ってくれるからっ!)
マリアが部屋へあがりつつ言う
「お、お邪魔します… ウィザード様~?」
マリアが思う
(何とかして玄関までっ あ…!でも もし 法衣とか着てなかったら ちょっと面倒かも…?流石に その状態で引きずって行ったら…)
マリアがソファを見ると レイが法衣を纏った状態で座っていて マリアの気配に顔を上げて言う
「マリア… もう一度会えて 良かった…」
マリアが一瞬疑問した後 気を取り直して言う
「…何言ってるんですか?お時間ですよっ?もうお迎えの車も来ていますからっ!」
レイが言う
「ごめん… やっぱ 無理みたいだ… マリア…」
マリアが一瞬困った後 気を引き締めて思う
(大丈夫っ こんな時こそ 強気に行かないとっ!)
マリアが言う
「無理じゃありませんっ 用意も出来ているなら そのドアさえ出てしまえば 大丈夫ですからっ!さぁ 立って下さいっ!」
マリアがレイの服を掴んで引き上げると 軽々引き上がる マリアが一瞬呆気に取られた後言う
「え…?」
マリアが思う
(軽い…?こんなに?…あ、でも ひょっとしてこれも 魔法…とか?)
マリアが言う
「で、では… 行きますよ!?この1回さえ終われば 後は ゆっくり休んで下さって 結構ですから!」
マリアがレイの腕を掴んで引っ張ると レイがそのまま倒れる マリアが驚いて目を見開いて言う
「…え?」
レイが倒れると 杖が床に倒れる音が続く マリアが立ち尽くして言う
「… … ウィザード… 様…?」
マリアが表情を驚かせたまま 身を屈めて言う
「ウィザード様?…え?嘘…?…ウィザード様?ウィザード様っ!?」
マリアが必死に叫ぶ
「そんな…っ どうしてっ!?ウィザード様っ!?ウィザード様ぁああ!!」
レイが目を閉じて意識を失っている
救急車のサイレンが鳴る
マリアが救急車内で呆気に取られている 救急隊員がテキパキ作業しながら言う
「意識レベル低下 脈拍低下っ 強心剤投与しますっ!」
マリアが怯えつつ言う
「何で…!?どうして…!?…どうしようっ!?ウィザード様が…っ!?」
マリアが視線を向ける レイの意識は戻らない
病院
処置室の前 マリアが通路の椅子に座って呆然としていると携帯が鳴る マリアがハッとして携帯を見てから 慌てて着信させつつ通話場所へ移動する 携帯から係員の声がする
『こちらは ライズ村灯魔台神館管理部のリステと申しますが マリア奉者様のお電話で 間違いないでしょうか?』
マリアが慌てて言う
「は、はいっ!す、すみませんっ 連絡もしないで…」
マリアが言葉を飲んで涙を流し始める 携帯から係員の声がする
『あ… はい 既に 灯魔儀式のお時間が 過ぎているようですが 何か ご都合が…?』
マリアが言う
「はい… すみません 今日の灯魔儀式は 出来なくなってしまって… 連絡 するように言われていたんですが… 私が…っ」
マリアがしゃがみ込む 携帯から係員の声がする
『…は、はい それでは… 本日は中止と言う事でしょうか?』
マリアが涙を拭いながら言う
「はい… ごめんなさい…」
携帯から係員の声がする
『畏まりました… では 後日と言う事で そちらの日程の方は…?』
マリアが言う
「日時は 改めて連絡します… 最優先にします… でも 何時になるか…」
マリアが処置室を見て 涙を流す マリアが携帯を切り言う
「…出来るのかも … 分からない…っ」
マリアが思わず携帯を手放し 椅子に崩れるように腰掛け 手で顔を覆う
病室
レイが呼吸器を付けられた状態で寝ている 医者が容態を見て点滴の調整をした後 振り向いてマリアへ言う
「お命の心配は もうありません」
マリアがハッとしてから微笑して言う
「…良かった」
マリアが肩の力を抜く 医者が微笑して言う
「貴方は こちらのウィザード様の 奉者様で?」
マリアが言う
「は、はい…」
医者が苦笑して言う
「では もう少し 体調管理を徹底なさって下さい ウィザード様の修行とは言え 程々にしなければ 本当に御命を落としかねません」
マリアが言う
「ウィザード様の修行?」
医者が言う
「酷い栄養失調です それに この3、4日 まったく食事をされていませんね?」
マリアが言う
「え…?」
医者が言う
「私は ウィザード様の修行内容に関しましては素人ですが 強い魔力を得るには可能な限りの食事制限が有効だとか?しかし、如何に魔力やその他が優れていようとも 身体を動かしたり 体温保持をするにも そして、心臓はもちろん 内臓を動かすには やはり食事によって得られるエネルギーが必要です 共に ビタミン、カルシウム… その他 必要な栄養素は しっかり取るようになさいませんと また 倒れてしまいますよ?」
マリアが言う
「…えっと?では?今回の…?」
医者が言う
「はっきり言ってしまえば 餓死寸前でした」
マリアが驚いて言う
「がっ 餓死っ!?」
マリアが視線を泳がせて思う
(それは… どうして!?あのウィザード様が そんなに厳しい修行を!?それとも …まさか あの 失恋の… せい?)
医者が言う
「それから 奉者様」
マリアが言う
「は、はいっ!?」
医者が言う
「搬送に向かいました 救急隊員たちの知識不足では有りましたが ウィザード様の杖を」
マリアが言う
「杖?」
医者が言う
「ウィザード様の杖は ウィザード様の取り入れられた 魔力を保持するのに 必要な力です 従って可能な限りお傍に置く方が 安心でしょう」
マリアがハッとして思う
(そう言えばあの時…)
マリアの脳裏に レイが倒れた時 杖の落ちた音がした事が思い出される マリアが言う
「あ、はいっ 部屋にあると思います!持ってきます!」
医者が言う
「では そちらをお願いします また 意識が戻られましたら 診察を致しますので」
マリアが言う
「はい 有難う御座いました」
マリアが頭を下げる 医者が言う
「お大事に」
医者が立ち去る マリアがホッとした後 レイを見て言う
「ウィザード様…」
マリアがレイの近くへ行ってから微笑して言う
「今 杖を持って来ますからね?」
マリアが立ち去る
マンション 最上階
マリアがやって来ると ドアの前でインターフォンを押そうとして ハッとして苦笑して言う
「今は 押す必要は ない か…」
マリアがドアを開け 中へ入りながら言う
「鍵も掛けずに行っちゃったんだ… 灯魔台神館への連絡もしなかったし… 私 奉者失格かも…」
マリアが部屋の中を見て 杖に気付き近付いて言う
「自分の仕える ウィザード様を 倒れさせちゃったんだから 今更… でも 修行の為の食事制限… 食事を食べていなかったって言うのは… それも 私のせいなの…?やっぱり 私が…?」
マリアが考えてから気を取り直して言う
「今は 駄目!私はまだ ウィザード様の奉者なんだから しっかりしなきゃ!」
マリアが杖に手を伸ばし触れようとすると 杖に風が纏わり一瞬浮き上がる マリアが驚き慌てて手を引いて悲鳴を上げる
「キャッ!?」
マリアが手を引くと 風が消え 音を立てて杖が落ちる マリアが驚いて言う
「な、何?今の…っ!?杖が勝手に…っ …もしかして 魔法?」
マリアが杖を見つめて思う
(気のせいなんかじゃなかった 実際 触れてもいないのに 杖が床に落ちて 音が…っ)
マリアが言う
「まるで 風の魔法みたいに… あっ」
マリアが気付いて言う
「風の魔法… ウィザード様の…」
マリアが恐る恐る杖に触れようとする 杖の周囲に風が吹く マリアが驚いて思う
(や、やっぱり…っ!)
マリアが手を引いて思う
(どうしよう?触れられない …でも 杖を持っていかないと …折角ウィザード様が 修行をして取り入れた魔力が 失われてしまう)
マリアが杖を見る 杖は変貌無く有る マリアが思い出して思う
(いつも ウィザード様はこの杖を使って 灯魔作業をしていて… ベリク村で野生動物を退治した時も… この杖は ウィザード様に力を貸してくれて …それに いつもの帰りの魔法の時も …なのに 今はどうして?持ち主の ウィザード様が居ないから?それじゃ…)
マリアがふと気付いて言う
「あ、そうだ!」
マリアが杖を見て 改めて言う
「あ、あの… ウィザード様の杖さん?私、いつも貴方とウィザード様にお世話になってる 奉者のマリアです …えっと、今 貴方の持ち主である ウィザード様が ここではなくて 病院に居るんです それで… 私が、貴方を ウィザード様の所へ お届けしますから …だから 魔法は使わないで 安心して 大人しくしていて欲しいんです …ね?」
マリアが思う
(…って 事で どうかな!?魔法が使える杖なら 人の言葉を理解する事だって…っ で、出来そうな気がするっ!だって… よく 物にも魂があるって言うしっ!?)
マリアが意を決して 杖を持つ マリアが思わず閉じていた目を開いて 呆気にとられて言う
「あ… 持てた…」
マリアが杖を見てからホッとして言う
「凄い!言葉が分かるだなんて!まるで魔法の杖みたいね?」
マリアが呆気にとられて言う
「ああ… 魔法の杖 なんだった…」
マリアが苦笑すると 床に落ちていたウィザードの帽子が風に吹かれる
マリアが部屋を出て言う
「今度はちゃんと 鍵を閉めないと…」
マリアが鍵を取り出そうとするが 片手に杖片手に帽子を持っているので苦労し 困って言う
「えっと… しょうがない ちょっと 失礼して」
マリアがウィザードの帽子を頭に乗せ 杖を抱き バックを漁り鍵を取り出して ドアに鍵を掛ける マリアが微笑して言う
「よし 今度こそ 鍵は OK!」
マリアが鍵をバックにしまいながら言う
「次は 早くウィザード様に この杖をお届けしないと!」
マリアが帽子の事を忘れて エレベータへ向かう
マンション外
マリアが待たせていたタクシーの運転手に言う
「お待たせしました 中央病院へ戻って下さい」
運転手が一瞬マリアの姿に驚いてから微笑して言う
「あっははっ はい 分かりました」
マリアが疑問する 運転手が言う
「もしかして お客さん 奉者様ですか?」
マリアが一瞬驚いてから 気付いて杖を見て言う
「え?あ、はい そうなんです」
運転手が微笑して言う
「お似合いですよ?そのお帽子も」
マリアがハッとして 赤面しながら慌てて帽子を外して言う
「ああっ!こ、これはっ さっき 両手がふさがっていたものでっ!」
マリアがタクシーに乗り込む タクシーのドアが閉まり 運転手が発車させながら言う
「いや 女性のウィザード様って言うのも 良いかもしれませんね?」
マリアが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「もうっ ウィザード様になるには 大変なんですよ!?」
運転手が楽しそうに笑っている マリアが微笑する
病院 レイの病室
マリアが病室の前に到着する ドアに向き直ってドアを開けようとしてから 思い出したように言う
「個室だし 一応 ノックするものよね?」
マリアがノックしようとして 再び両手がふさがっている事に気付き 軽く息を吐いて言う
「ま、いっか もう一回だけ… 今度は忘れずに 入る前に外せば良いんだから?」
マリアが苦笑し 帽子を頭に乗せてノックをしてドアを開けつつ言う
「失礼します ウィザード様… っ!」
マリアがドアを開けると レイが顔を向ける マリアがハッとして慌てて駆け寄って言う
「ウィザード様っ!…良かった~…」
マリアがホッとしてレイを見る レイが呆気に取られた後微笑して言う
「マリア… ははっ マリア ウィザード様みたいだ…」
マリアがハッとして慌てて言う
「…あっ ま、また やっちゃったっ!こ、これはそのっ!そこで 両手がふさがってて…っ!」
マリアが慌てて帽子を外し 困り怒って言う
「そ、それよりっ!ウィザード様っ!どう言う事ですかっ!?ご飯食べてなかったんですかっ!?駄目じゃないですかっ!?」
レイが言う
「うん… だって…」
マリアが困り怒って言う
「い、いくら そのっ し、失恋… き、気持ちが 落ち込んでいてもですねっ!?ウィザード様として 生きる為に ご飯を食べる事も 大切な お仕事ですよ!?」
レイが言う
「マリア… ごめん」
マリアが言う
「私だってっ 怒りますっ!」
レイが言う
「うん… でも 食べ物が…」
マリアが言う
「喉を通らないって言うのは 分かりますが…」
レイが言う
「無くって」
マリアが呆気にとられて言う
「…って へ?」
レイが言う
「どうしたら 食べ物が手に入るのか 俺 知らないし… それで マリアに…」
マリアが衝撃を受け言う
「…なっ!?…そ、それじゃっ!?」
マリアが心中思う
(―まさかっ!?)
レイが言う
「それで 俺 マリアに もう限界だから 早く行って… 何でも良いから… 食べ物を 探して来て欲しいって…」
マリアが挫折して思う
(食べ物だった…!!)
会社
マリアが溜息を吐く
「はぁあ~… もぅ…」
リナとマキが言う
「出たわ マリアの溜息」「”もぅ” まで付いた!」
リナとマキが顔を見合わせ 微笑して言う
「マーリーア?」「今度は どうしたのっ!?」
マリアが言う
「実は…」
リナとマキが期待して言う
「実は!?」「なになにっ!?」
マリアが顔を逸らして思う
(言えないっ!私の勘違いで ウィザード様が ”餓死しそうに”なった だなんて…っ!!)
リナとマキがマリの視線の先へ向かう マリアが更に顔を背けて思う
(しかも ウィザード様は… ”食べ物を手に入れる方法”を 知らなかった だなんて…っ!!)
マリアが溜息を吐いて 小声で言う
「…でも 確かに ウィザード様が ”スーパーで買物してる” なんて… 想像出来ないし…」
リナが言う
「え?スーパー?」
マキが言う
「買物?」
マリアが慌てて言う
「ち、違うのっ!その…っ 実は…」
昼休み
リナとマキが驚いて言う
「ウィザード様がっ!?」「入院しちゃったっ!?」
マリアが手作り弁当片手に苦笑して言う
「う、うん…」
リナとマキが顔を見合わせる マリアが言う
「あ、でも すぐに退院出来るみたいで 後は自宅療養でも良いみたい …だから 午後は半休を取って お迎えに行くの」
リナが言う
「そう… 急みたいだけど 午後の仕事は大丈夫なの?」
マキが言う
「何か有るなら 替わって置くよ?」
マリアが言う
「あ、うん 大丈夫 ありがとう 今日は大した仕事は無かったから!」
マリアが心中思う
(こんなにしょっちゅう 2人に迷惑掛けられないから 書類作成を持ち帰りにしたって事は 隠しておかなきゃ…)
マリアが1人頷く マキが言う
「それで ウィザード様は ”何で” 入院しちゃったの?」
マリアがギクッとする リナが心配げに言う
「何か病気?でも すぐに退院って事は 怪我?」
マリアが慌てて言う
「あ、な、なんかっ ちょっと修行を 強化し過ぎちゃったみたいで!?た、倒れちゃって…」
マリアが心苦しく思う
(う、嘘は言ってないわっ 食事制限 …は ウィザード様の …魔力強化の修行の1つ …だものっ!)
マキが言う
「…それって もしかしてさぁ?」
マリアが驚いて思う
(えっ!?気付かれたっ!?)
リナが言う
「ええ そうでしょ?マリア?」
マリアが観念して思う
(えぇ~!?そんな どうしてっ!?私何か 余計な事…っ!?)
リナが言う
「焼けちゃうわね!マリア!」
マリアが衝撃を受けて言う
「え?」
マキが言う
「愛するマリアの為に 修行を強化しちゃう ウィザード様っ!」
リナとマキがキャッキャ騒ぐ マリアが衝撃を受けて言う
「なぁっ!?ち、違っ!」
リナが言う
「違わないわよ!マリア!」
マリアが言う
「そ、そんなんじゃないのっ 本当にっ!」
マキが言う
「もぅ マリア 鈍感だねー そんなんじゃぁ ウィザード様が 可愛そうじゃーん?」
マリアが言う
「もぅっ!本当に 違うのぉっ!」
病院
マリアが通路を歩いて来てふと気付いて足を止めて言う
「ん?何かな?」
マリアの視線の先 看護婦たちが集まっている マリアが近付いて様子を伺い 呆気に取られる 看護婦たちはレイの病室を覗いている マリアがムッとして わざとらしく咳払いをする
「う、うんっ!」
看護婦たちが衝撃を受け慌てて逃げる マリアがつんと澄まして 堂々とドアの前に立ちノックをして言う
「失礼します ウィザード様」
マリアがドアを開け しっかりとドアを閉める 物陰に居た看護婦たちが残念そうにする マリアがドアを後ろ目に確認してから視線を向けると レイが微笑して言う
「マリア」
マリアがレイの近くへ来てドアを伺いながら言う
「大丈夫でしたか?ウィザード様?…看護婦さんたちに 覗かれてましたよ?」
レイが言う
「うん、大丈夫だよ 知ってたから」
マリアが衝撃を受ける レイが食べていた病院食を口にする マリアが言う
「知ってたって!?」
レイが言う
「外は何処も同じだよ だから早く部屋に戻りたくて… 病院は いつでも 退院して良いんだろ?」
マリアが言う
「あ、はい ウィザード様の退院手続きは 必要ない筈です お医者様や ご自分の判断で 自由にされて良いって習いましたから」
レイが言う
「うん じゃ 早速帰るよ」
マリアが言う
「はい、それでは お車の手配をしておきますね?」
レイが言う
「あ、その前に マリア」
マリアが疑問して言う
「はい?」
レイが顔を背けて言う
「出口付近のクローゼットにあると思うから さりげなく 当然の様に 法衣を持って来てもらえないかな?」
マリアが疑問して言う
「…え?」
レイがマリアへ向き直ると 冷たい表情をしている マリアが一瞬驚いてから気付いてドアへ視線を向ける ドアが僅かに開かれている マリアが理解し言う
「では ただいま お持ちします」
マリアがクローゼットへ向かい 法衣を取ってレイのもとへ向かう マリアがドアからレイを隠す状態で立ち 視線をドアへ向ける レイが微笑して言う
「ありがと マリア」
マリアが言う
「これじゃ 本当に息も吐けないですね?」
レイがベッドから体の向きを変え 着ている服に手を掛けながら言う
「前は別に 気にしなかったんだけど 今は”マリアのウィザード様”だからな?」
マリアがレイへ視線を変えつつ言う
「私の… と言うか ウィザ…」
マリアがハッとして言葉を止め 慌てて顔を逸らして言う
「あ、あのっ!私、外に出てますねっ!」
レイが疑問して言う
「え?そこに居てくれても 助かるけど?」
マリアが顔を逸らしながら法衣をベッドに置いて言う
「い、いえっ!それよりもっ あの失礼な人たちを 追っ払ってきますからっ!」
レイが不思議そうに言う
「ん?ああ そう?」
マリアがドアへ向かって行く レイが入院服を脱ぐ マリアがドアに向かって来ると 部屋を覗いていた看護婦たちが慌てて逃げる マリアがドアを出て しっかり閉めてから 携帯を取り出して ドアの見える位置にある通話スペースへ向かう
マンション 前
車が到着し マリアが降りマンション入り口へ向かい振り返ると レイがやって来る マリアが僅かに微笑してからエレベータへ向かう レイが追って歩く
エレベータ内
マリアが回数ボタンの前に立ち レイが中央付近に居る エレベータが上昇する中 マリアが気付いて言う
「そう言えば このエレベータにウィザード様と一緒に乗って お部屋に向かうのって 初めてウィザード様とお会いした あの時 以来ですね?」
レイが苦笑して言う
「ああ… あの時と違って 部屋の場所は分かってるけど… 魔力も精神力も 足りてないのは同じかな」
マリアが言う
「あの… 魔力は分かる気もするんですが …その 精神力って 何ですか?」
レイが言う
「そうだなぁ… 簡単に言っちゃえば …気合?」
マリアが一瞬呆気に取られた後 ぷっと吹き出す レイが微笑して言う
「マリア ウィザードの素質 有りそうだよ?」
マリアが驚いて言う
「え?」
レイが言う
「俺より有りそうだもん?精神力」
エレベータが到着する マリアが呆気に取られた後 怒って言う
「そ、それっ どう言う意味ですかっ!?ウィザード様っ!?」
レイが帽子で表情を隠しつつ 笑ってエレベータを降りる マリアが追って降りて言う
「もうっ!」
マリアが楽しそうに微笑してからハッと気付いて思う
(あ… 何だか 良いかも…?)
マリアが一瞬立ち止まり レイを見る レイはゆっくり歩いて 軽く顎を引きマリアを横目に見て微笑する マリアが微笑して天井に着いている監視カメラを見てから 苦笑して走って向かい部屋の鍵を開けドアを開ける
マンション レイの部屋
マリアが言う
「では ウィザード様は ゆっくり休んでいて下さいね?私 食料買って来ますか… らっ!?」
レイがマリアに抱き付く マリアが衝撃を受ける レイが言う
「うん… ごめん マリア …マリアだけに イかせて」
マリアが反応し視線を逸らして言う
「い、いえ…」
マリアが思う
(もう…っ 分かってはいるけどっ …こうやって 抱き付かれながら 言われたから… 変に 考えちゃっただけで… 普通に考えれば別にっ)
レイがマリアの耳元でそっと言う
「マリアに負担掛けて ごめん 辛かったら 無理しないで言って?やっぱ 俺も 一緒にイくから」
マリアが赤面して レイを引き剥がして言う
「あ、あのっ!ウィザード様っ!?そ、そのっ 言葉もですがっ 特に 耳元で言うの止めて下さいっ そう言う風にして 言われると…っ!」
マリアが強く目を閉じて思う
(…変に 意識しちゃうのは 当然よっ!!)
レイが一瞬疑問した後 苦笑して言う
「ん?ああ… そっか ごめんマリア 俺まだ 外に居る感覚で こっそり喋んなきゃって… ここなら 普通に喋って良かったんだった」
マリアが驚いて言う
「え?…それじゃ」
マリアがハッとして思い出す
マリアとエリナが少し離れた位置に居る レイが燭魔台の状態に僅かに視線を細めてから マリアへ向く マリアが気付きレイの下へ行く マリアがレイの近くへ来ると レイが小声で言う
『燭魔台の状態が 凄く悪いから 修繕を依頼しないと 効力も薄れるって 伝えておいて』
マリアが呆気に取られて思う
(そ、そっか…っ ウィザード様が外で 奉者へ言葉を伝える時は 他の人に聞こえないように ああやって… つまり その癖だったのっ!?)
マリアがレイを見る レイが微笑して言う
「それじゃ 俺 少し休むね マリア 重い物とか 持てなかったら 無理しないで 少しでもあれば それで十分だからさ?」
マリアが苦笑して言う
「もぅ…」
レイが疑問して言う
「え?」
マリアが気を取り直し微笑して言う
「そんなに心配してくれなくても 大丈夫ですよ!ウィザード様!私、こう見えても 力はありますから!」
レイが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「ああ そっか …そう言えば護身術の達人だっけ?俺も この前 軽々と持ち上げられちゃったもんな?」
マリアが衝撃を受ける レイが微笑して寝室へ向かいつつ言う
「それなら 大丈夫かな?じゃ お休み マリア」
マリアが言う
「は、はいっ お休みなさい ごゆっくり」
レイが寝室に入りドアを閉める マリアが軽く息を吐いた後立ち去る
スーパー
マリアがカートを押しつつ周囲を見渡して言う
「…と、来てみたけど 何買ったら良いかな?来る前に 一応 失礼して 冷蔵庫は見てみたけど…」
マリアの脳裏に冷蔵庫内の様子が思い出される マリアが苦笑して思う
(本当に 綺麗さっぱり 何も無かった… 以前、お部屋の確認をした時には 食料も置かれてたけど… あの感じだと 大体5日分位…?あれから 補給されてなかったのだとしたら …ウィザード様 5日目以降 どうやって生きてたんだろう?)
マリアが米コーナーを見上げながら言う
「…そう言えば お米だけは 5日以上ありそうだった 私たちの食べている 白い精米じゃなくて 玄米だった …そっか 玄米ってダイエットにも良いって言うし 栄養もあるって言うよね?」
マリアが玄米を手に取りながら言う
「栄養か…」
マリアが生肉コーナーを見ながら言う
「食事制限って言うと やっぱり鶏肉って気もするけど 豚肉の方が栄養はあった筈… どの位買っていこう?最初の時みたいに 5日分位かな?冷凍しておけば大丈夫だし」
マリアが商品を手にしながら言う
「後は…」
マリアが野菜コーナーを見ながら言う
「もちろん 野菜も必要よね?でも 確認の時に 冷蔵庫は見たけど 野菜室まで見なかったな… 何を買っていったら良いかな?大体 こんな買い方だと 何か料理を作ろうにも 何の献立も思い付かない… 私、買い方間違ってるかも?」
マリアが立ち止まりバックを漁りながら言う
「何か資料になる物無いかな?講習会で受け取った資料は全部持って来たけど… 食べ物に関しては 食事制限をしてるって事くらいしか 聞いてなかった筈で…」
マリアが資料を見ようとして衝撃を受けて言う
「あっ …そう言えば 仕事持ち帰りしてたんだった 早く帰って仕上げないと 間に合わなくなっちゃう …っと それで 資料は?何か…?」
マリアが困って言う
「う~ん やっぱり無いみたい… どうしたら…?あ、そうだ!」
マリアが気付いて 携帯を取り出しながら言う
「こうなったら 直接 先生に確認してみよう きっと ご存知な筈だし」
マリアが携帯で電話をする
スーパー 外
マリアが大荷物で出て来て言う
「うぅ~っ やっぱり お米に加えて お肉や野菜や果物 トドメに…」
マリアの脳裏に電話から聞こえる講師の声が聞こえる
『季節の野菜や果物 それから100%果汁の飲み物なども 食事代わりにご飲用される事もあるから 欠かさないように』
マリアが表情を苦しめて言う
「これが一番重い… 1人で運ばなきゃいけないから 1本にしちゃったけど 1リットルで1キロだもの お米も軽いのに変えたけど 他のも全部重いから まとまるとキツイ…」
マリアの脳裏に電話から聞こえる講師の声が聞こえる
『そう言えば 君は前半の講義を 全て欠席していたね?宅配業者の資料は 受け取っていないのかな?必要なら 後日本部へ取りに…』
マリアが言う
「近い内に貰いに行こう… ウィザード様は 一緒に来てくれるみたいに言ってたけど それこそ ウィザード様に荷物運びさせるなんて スーパーで買物させるのと同じ位 出来ない事だもの…」
マリアがタクシー乗り場へ到着して一息吐いて言う
「それに…」
マリアの脳裏に電話から聞こえる講師の声が聞こえる
『所で 今頃この様な質問をしてくると言う事は 今まで食料の調達は どうしていたのかね?もしや副職の為に お母様に頼っていたと言うのでは 少々 専属の奉者として…』
マリアが表情を落として言う
「ウィザード様の食料調達って 奉者の仕事だったんだ… …知らなかった」
タクシーが到着する マリアが荷物を持って乗り込む
マンション 前
タクシーが到着し マリアが荷物を持って降り エレベータへ向かって行く
マンション 最上階
エレベータが到着し マリアが荷物を持って部屋のドアの前まで来て 一息吐きつつインターフォンを押そうとしてふと気付いて言う
「…きっと お休み中だし… インターフォン鳴らしたら 迷惑かも?」
マリアが荷物を置きバックを漁り鍵を取り出す
マンション レイの部屋
マリアが冷蔵庫へ食料を入れ終えて言う
「よし これでお仕舞い …お米はここで良いかな?」
マリアが冷蔵庫の近くに米を置き 上体を起き上がらせて一息吐いてから 周囲を見渡し寝室を見て思う
(ウィザード様 大丈夫かな…?)
マリアが寝室へ向かい ノックをしようとして止め小声で言う
「失礼します~」
マリアがそっとドアを開け 中を覗く マリアの記憶にある以前の部屋の様子と変化の無い様子の中 ベッドでレイが眠っている マリアが微笑しドアを閉めて言う
「起さない様に そっとして置こう…」
マリアが立ち去る
マリアの部屋
マリアがノートPCを操作し終えて言う
「は~… 何とか終わった…」
マリアが時計を見る マリアが苦笑して言う
「もう こんな時間…」
マリアのお腹が鳴る マリアが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「お腹すいちゃった 何か食べよう」
マリアが席を立つ
キッチン
マリアが料理を作りながら ふと気付いて言う
「そう言えば…」
マリアが料理を皿に盛りながら思う
(先生に聞いた物を買うだけで精一杯で でも 何か引っかかると思ったら そうよ…)
マリアが調味料を見て手に取りつつ言う
「調味料とか バターや小麦粉 カレー粉とかの半レトルト物や トマトピューレとかも全然買わなかった… 調味料は元々あったとしても 冷蔵庫には何も無かったし あのウィザード様がわざわざ 生のトマトから ピューレを作るとも思えない お肉と野菜じゃ 野菜炒めくらいしか考え付かないけど …大丈夫かな?」
マリアが片づけをして 席に着き料理を前に言う
「それに 精神力…?いつも軽々使う 魔法を使う気合も無い状態で お料理なんて出来るかな?」
マリアが食事を食べようとして止め 言う
「やっぱり 心配 折角退院したのに また倒れちゃうかもしれないもの …ドタキャンしちゃった ライズ村の灯魔儀式も 急いだ方が良い筈だし …あ、そうだ 連絡を」
マリアが携帯を手にして気付いて言う
「…番号なんて知らないわ それに 元々携帯なんて 持ってそうにないし あの部屋には電話があったけど インターフォンに出ないウィザード様が 電話に出るとは思えない」
マリアが時計を見て思う
(今から行くにしては やっぱり遅過ぎる… それじゃ 明日のお昼休み?…ううんっ そうだ!)
マリアが苦笑して言う
「朝一番で 行ってみよう!」
マリアが食事を食べる
マンション 最上階
ドアの前 マリアがインターフォンを押そうとした手を止めて言う
「う~ん… これは 押すべきよね?こんな朝一番に 突然訪問するんだから …起しちゃうかもしれないけど」
マリアがインターフォンを押してから 鍵を開けて言う
「お早う御座います ウィザード様」
マリアが部屋の中を見渡してから 部屋へ上り寝室へ向かうと ノックをして言う
「朝早くにすみません ウィザード様 起きてますか?」
部屋の中からレイの声が聞こえる
「マリア…?」
マリアが微笑し言う
「失礼します」
マリアがドアを開ける レイが起き上がり顔を向けて言う
「マリア どうかしたのか?何か…?」
マリアが微笑し近くへ来て言う
「お加減はどうですか?」
レイが一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「う、うん 悪くないけど」
マリアが言う
「昨日は お食事 食べましたか?」
レイが言う
「あ… えっと マリア ありがとう 食べ物持って来てくれて 重かっただろ?一杯有ったから」
マリアが苦笑して言う
「確かに ちょっと重かったですけど 今度は宅配を頼もうかとも思って」
レイが言う
「宅配…?」
マリアが言う
「お部屋の前に置いて行ってくれるそうですよ 留守でも大丈夫みたいで」
レイが言う
「そうなのか」
マリアが言う
「それより お食事は?」
マリアがサイドテーブルに置かれているコップに気付いて言う
「もしかして 飲み物だけですね?」
レイが言う
「う、うん… でも 大分…」
マリアが言う
「ちゃんと食べないと 元気になれないじゃないですか?今 何か軽いもの作るんで 待ってて下さい」
レイが軽く驚いて言う
「え?マリアが…?」
マリアが微笑してから立ち去る レイが呆気にとられている
キッチン
マリアがコメをとぎ 水と共に鍋に居れ火を付ける マリアが思う
(時間が少ないから 炊飯器よりこの方が早いし …さて やっぱり 病み上がりって言ったら お粥かお雑炊… 病院食の感じだと ここはやっぱり お雑炊かな?栄養有りそうだし)
マリアが冷蔵庫を漁る
寝室
マリアがサイドテーブルにトレーを置いて言う
「はい お待ちどう様」
レイが呆気にとられて言う
「これ… マリアが?」
マリアが取り分けながら言う
「私、割と小さい頃から お料理作ってましたから 不味くは無い筈ですよ?…はいっ」
マリアが微笑して茶碗を向ける レイが言う
「そうだったのか?俺 マリアは 料理なんて作らないんだと思ってた」
レイが茶碗を受け取り雑炊を食べる マリアが言う
「え?そうですか?難しいものは作れませんけど 家庭料理くらいなら」
レイが言う
「美味しい」
マリアが微笑する レイが言う
「ありがとう マリア 凄く美味しいよ …ちょっと辛いけど」
マリアが衝撃を受けて言う
「え?そんなに味付け 強くしてない筈ですが…」
マリアが考える
(あ… そっか?ずっと 断食状態だったら 味に敏感なのかも?)
レイが言う
「病院食以外で ちゃんとした食事食べるの 久しぶりだな こんなに美味しいものだったんだな」
マリアが言う
「今度は 食料を欠かしませんから ちゃんと ご飯を食べて下さいね?」
レイが言う
「うん ありがとう マリア」
マリアが微笑してからハッとして言う
「あ、いけないっ!時間…っ!」
レイが言う
「ん?時間?」
マリアが携帯で時計を確認してから言う
「それじゃ ウィザード様 お大事に!また来ますから!」
レイが微笑して言う
「うん 待ってるよ マリア」
マリアが微笑した後慌てて出て行く
会社
課長が叫ぶ
「マリア君っ!」
マリアが慌てて言う
「はいっ!課長っ!」
課長が言う
「また 遅刻癖が出て来たのでは ないのかね!?」
マリアが言う
「すみませんっ!」
課長が言う
「それから 今日提出期限の書類は」
マリアが慌てて言う
「は、はいっ!そちらは出来ていますっ!」
マリアが書類を持って課長の下へ向かう リナとマキが顔を見合わせてからマリアを見る 課長が書類を確認してから言う
「うん こちらは良いが… また 今日から何日も続けて遅刻をする事の無いよう 十分気を付ける様に 良いね?」
マリアが苦笑して言う
「はい…っ」
マリアが席に戻って来る リナとマキが笑みを合わせて コソコソ言う
「出るわよ?」 「うんうんっ マリアの溜息が~」
リナとマキが視線を向けた先 マリアが席に座り モニターを見てから微笑する リナとマキが呆気に取られる マリアが気合を入れて言う
「よしっ 今度は こっちのお仕事を 頑張らないと!」
マリアが仕事に打ち込む リナとマキが顔を見合わせる
昼休み
マキが言う
「あれ?珍しい マリア今日はお弁当じゃないの?」
マリアが言う
「うん 今朝はお弁当作る時間が無くて 今、近くのコンビニで買って来ちゃった」
リナが言う
「それって 相当疲れてるって事じゃない?お弁当作る時間も無くて 会社に遅刻するくらいだもの 大丈夫?マリア?」
マリアが言い辛そうに言う
「あ… 違うの 今日はその… 私にしては今までに無いくらい 早起きをして その… ウィザード様の 朝食を作りに…」
リナとマキが呆気に取られた後キャッキャ騒ぐ マリアが慌てて言う
「ち、違うのよっ!ウィザード様は 病み上がりだからっ それにっ 昨夜は仕事で そ、それでっ お食事が心配でっ!」
リナが言う
「早起きが苦手なマリアが 愛するウィザード様の為に 今までで一番の早起きをしちゃだなんて」
マリアが衝撃を受け慌てて言う
「だ、だだだ だってっ!ウィザード様のお部屋まで行って 作るって考えたらっ 6時半には出なきゃ間に合わなくってっ!」
マキが言う
「おまけに 彼が離してくれないから 遅刻しちゃった~ なんて~!?」
マリアが言う
「きょ、今日は ずっと 離してくれてた …って言うか 最初から 抱き付 かれ… ては…っ」
マリアがハッとして口を押さえる リナとマキが驚いてから言う
「なになにっ!?」「今何てっ!?」
マリアが慌てて言う
「な、何もっ!」
リナが言う
「今 何か凄い事言わなかった!?」
マキが言う
「言った気がするーっ!”今日は”ずっと 離してくれてた って事は じゃあ ”い・つ・も” は~?」
マリアが困り怒って言う
「本当に何も無いったらっ!」
マリアが身を静めて溜息を吐く
「はぁあ~っ」
マリアが溜息にハッとする リナとマキが気付き リナとマキが笑う マリアが呆気に取られてから笑う
マリアの部屋
マリアが書類記入を終えて言う
「よしっと 宅配の手配完了 これで ウィザード様が また倒れちゃう心配は無くなったわ …あれは 結局 私のせいだったけど」
マリアが苦笑して書類を封筒に入れて言う
「後は明日 会社へ行く時に ポストに投函すれば良いし」
マリアが封筒をバックに入れながら気付いて言う
「あ… 次の灯魔儀式の予定は 何時にしたら良いかな?なるべく 急ぎたいけど ウィザード様のご体調次第だから…」
マリアが考えながら言う
「やっぱり 退院してから 5日目くらい?だとしたら 後3日… 事前の準備を考えるなら 連絡するのに丁度良い時だけど 神館の灯魔台は 以前の内に用意は済ませていた筈だから もしかしたら すぐにでも出来る状態なのかも うーん…」
マリアが考える
出社時
マリアがポストに投函して言う
「これで 一安心」
マリアが立ち去る
退社時
マリアが一息吐いて言う
「ふぅ… 何だか久しぶりに 落ち着いて仕事が出来た感じ…」
マキが言う
「お疲れーマリア ねぇねぇ 今日久し振りに 以前行った あのイタリアンのお店行かないー?」
マリアが言う
「あ、ごめん マキ 今日はこの後… 奉者のお仕事があって」
マキが言う
「あー ウィザード様と デートだぁ~?」
マリアが衝撃を受けて言う
「ち、違っ!…大体 ウィザード様は 静養中なんだからっ」
マリアが思う
(私のせいだけど…)
マキが苦笑して言う
「あぁ そうだったっけ?」
リナが通り掛る マキが言う
「じゃぁ リナ 行かない?エリナとか誘ってみたりして?」
リナが言う
「ごめ~ん マキ 今日はちょっと…」
マリアが言う
「デートね?」
リナがウィンクして言う
「そう言う事っ それじゃ、お疲れ様 2人共」
リナが去る マキが言う
「あ~あ~ 私だけじゃ~ん?」
マリアが苦笑して言う
「エリナを誘ってみたら?一緒に行ってくれるかもよ?」
マキが言う
「もー良いですー 私も彼氏探しするー ねー マリア?ウィザード様に ウィザード様と同じ位 綺麗な男の人 紹介してもらってよ~?」
マリアが帰り仕度をしつつ苦笑して言う
「ウィザード様と同じ位 綺麗な男の人だったら その人もきっとウィザード様でしょ?そうしたらマキも 奉者にならなきゃだよ?」
マキが言う
「それじゃ そっちも マリア先輩に習うから~」
マリアが笑って言う
「ふふふっ この会社の仕事とは違って そっちを教えるには 私はまだまだなの マキも まずは講習会に 行ってみたら?」
マキが言う
「え~?」
マリアが立ち上がって言う
「マキ 案外 奉者様 合ってるかもしれないよ?…それじゃ お疲れ様」
マキが言う
「お疲れ様~」
会社 外
マリアが歩きながら考えて言う
「…そう言えば さっきは冗談半分で言ったけど マキは本当に奉者合ってるのかも…?たった二言三言の内に あのウィザード様の性格を見抜いてたみたいだし それに あのウィザード様の気迫に 気圧される事も 無かったし …って それって つまり 私が 駄目 なのかも…?」
マリアが溜息を吐く
「はぁ~… …ん?」
マリアが溜息に気付き苦笑して思う
(今度は自分の不甲斐なさに 溜息が出るようになっちゃったみたい)
マリアが顔を左右に振って気合を入れ直して言う
「駄目駄目!溜息を吐くくらいなら 奉者として もっと頑張らないと!…うん!」
マリアがタクシーを止め乗り込む
マンション 最上階
マリアが歩いて来てドアの前で思う
(ウィザード様の体調を確認して 次の灯魔儀式の日にちを決めないと…)
マリアがインターフォンを押して思う
(…ウィザード様 ちゃんとご飯食べてるかな?)
マリアが苦笑し鍵を開けながら言う
「まぁ 子供じゃないんだから そこまで心配しなくても 大丈夫よね?」
マリアがドアを開けて言う
「今晩は ウィザード様」
マリアが部屋に入ると レイが言う
「マリア?」
マリアが声に横を向き言い掛ける
「あ、ウィザードさ…ま…?」
マリアの視線の先 レイが冷蔵庫の前に座り きゅうりを食べている マリアが疑問して言う
「あの~ ご体調は如何かと… 伺いに来たのですが …何してるんですか?その… 良く言えば サラダを召し上がっていると 言おうにも ちょっと…」
レイがきゅうりを食べつつ言う
「うん 昨日マリアが料理を作ってくれたお陰で 体調は すっかり良くなったよ!ありがとな!マリア」
マリアが言う
「…で、そのきゅうりは?」
レイが疑問して言う
「きゅうりって?」
レイがきゅうりを食べる マリアが言う
「その、今召し上がっている物です」
レイが言う
「ああ、これ きゅうりって言うのか?味は知ってたけど 切られる前を見た事が無くて 分からなかったよ」
マリアが言う
「せめて塩を付けるとか… でも、食べるな とは言いませんが 最初の内は もう少し消化吸収の良い物を… 生野菜はまだ 余り良くないかもしれませんよ?」
マリアが思う
(買って来たの 私だけど…)
レイが言う
「そうなのか?マリアは 料理を作れるだけあって 食材にも詳しいんだな?」
マリアが言う
「ええっと… 有難う御座います?」
マリアが思う
(一応… 褒められてるのよね?)
レイが言う
「じゃぁ 別のにしよう」
レイが立ち上がる マリアが言う
「野菜より エネルギーになる物… とりあえず お米は食べて下さいね?」
レイが言う
「お米?ああ そうか 分かった」
レイが米袋を開け 軽くすくうと ぽりぽり食べ始める マリアが衝撃を受け慌てて言う
「ウィ、ウィザード様っ!?」
レイが言う
「ん?」
マリアが慌てて近くへ来て言う
「な、生で食べないで下さいっ!?って 言うか 食べられるんですか!?」
マリアが思う
(ちょっと待ってっ!?まさか…っ!?)
レイが言う
「生で食べちゃいけないのか?けど」
レイがすくった米を持つ手に炎を現して言う
「これ焼いても あんまり旨くないんだけどな?」
マリアが慌てて言う
「焼かないで下さいっ!!」
レイが疑問して言う
「え?焼いてもダメなのか?そう言えば マリア 俺 マリアに訊こうと思ってたんだけど」
マリアが困惑しつつ言う
「な、何ですか?」
レイが言う
「これどうしたら マリアが作った奴みたいに 柔らかくなるんだ?」
マリアが呆れ汗をかいて言う
「…焚いてください…」
レイが言う
「タイテ?」
マリアが言う
「もしくは お湯で煮るって言ったら 分かりますか?」
レイが言う
「お湯で… ニル?」
マリアが言う
「その前に 一応 磨いで下さいね?」
レイが言う
「トイデ?」
マリアが溜息を吐いて言う
「はぁ~ もう 分かりました!」
レイが言う
「え?」
マリアが米を研ぎながら言う
「まずはこうやって お米を洗うんです これをお米を研ぐって言うんですけど」
レイが言う
「へぇ~?」
マリアが炊飯器にセットして言う
「後はこうして 水を入れて この機械に入れて… このボタンを押すだけです 簡単でしょ?」
レイが言う
「それで出来るのか?」
レイが炊飯器を開ける マリアが慌てて言う
「そ、そんなに すぐは出来ませんよっ!?」
マリアが炊飯器を閉める レイが言う
「そうか…」
マリアが言う
「大体45分くらいもあれば」
レイが言う
「そんなに掛かるのか?それなら 肉でも焼いた方が早いな?」
マリアが苦笑して言う
「お肉を焼く事は知ってたんですね?良かったです」
レイが言う
「そのまま食べたら 不味くてさ とりあえず焼いてみたら 知っている味に近付いたんだよ」
マリアが呆れて言う
「やっぱり 生で食たんですね…」
マリアが溜息を吐いて言う
「そんな状態で 倒れるあの日まで 無事であった事が不思議です …ウィザード様 ここにいらっしゃる前までは お食事はどうしてたんですか?…あ、お母様に?」
レイが言う
「食堂に行けば 出される物だったからな?料理を作っている所なんて 見た事も無かったよ」
マリアが言う
「食堂?…えぇっと 会社とか学校ですか?」
レイが言う
「会社じゃないな そうだな 学校みたいなものか?ウィザードになろうと思って この町に来た時は そこの食堂で食べたな」
マリアが驚いて言う
「こ、この町に ウィザードになる事が出来る 学校なんてあるんですかっ!?」
レイが言う
「ああ、サウスサイドストリートにある …けど 俺が居たのは1週間だったけど」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「認定試験を受けたら 合格ラインを越えてたから すぐに魔鉱石の投射を受けたんだ だから 居たのは1週間だけど 1日話を聞いて1日試験を受けて 後は寝ていただけだな?」
マリアが言う
「では その前は?」
レイが言う
「その前も 食堂がある場所に居たよ」
マリアが言う
「そうなんですか… それじゃ お家でご家族と召し上がった事は?」
レイが言う
「家族と食べた事は無いよ 家族とは 会った事も無いからな?」
マリアが驚いた後慌てて言う
「え?あ…っ ごめんなさい」
レイが言う
「ん?どうした?マリア?」
マリアが言う
「えっと… その 悪い事を聞いてしまったと…」
レイが言う
「そうか?分からなかったけど?…マリアは 家族と食べるのか?」
マリアが言う
「あ、はい 母が居る時は 一緒に食べます うちは 私と母だけなので …父はずっと昔に 交通事故で亡くなってしまって 少しだけ覚えていますけど 私も小さい頃だったので」
レイが言う
「そうか なら マリアは今は 母親と一緒に住んでいるのか?」
マリアが言う
「はい …あ、でも 何だか最近は お互いに忙しくて 顔を合わせていない感じですね」
レイが言う
「でも、仲は良いんだろ?」
マリアが微笑して言う
「はい、そうですね 良いと思います」
レイが言う
「そうか それは良いな 俺は多分 父親と会ったら まず ぶっ飛ばされるからな?」
レイが軽く笑う マリアが衝撃を受け言う
「え!?それは どうして?…だって 会った事ないんですよね?」
レイが言う
「会った事は無いけどさ 俺の父親は かなり優秀なウィザードだったから」
マリアが驚く レイが苦笑して言う
「今更 ウィザードになっているようじゃ 遅いって?万が一会ったりなんかしたら きっと 最強魔法で吹っ飛ばされて 地上に送り返されるんじゃないかな?」
マリアがハッとして言う
「”地上に送り返される”って事は… ウィザード様の お父様はっ!?」
レイが言う
「神に選ばれた ウィザードだよ」
マリアが驚きに言葉を失う
会社
マリアが資料をめくる マキが覗き込んで来て言う
「”神に選ばれたウィザード”?」
マリアが驚いて言う
「わっ!?何だ… マキか びっくりした~」
マキが笑んで言う
「就業時間中に 副業はいけませんよ~?センパーイ?」
マリアが苦笑して言う
「はーい ごめんなさーい 後輩~?」
マリアとマキが笑う マキが言う
「ウィザード様が 神様に選ばれるって 本当の話なの?私てっきり 作り話だと思ってた~」
マリアが苦笑して言う
「うん、私も 神様に選ばれるって称するだけで 大灯魔台の灯魔儀式で 一番優秀なウィザード様を お祝いする言葉だと思ってた …でも 違うのかも」
マキが疑問して言う
「違うって?それじゃ 本当に?」
マリアが資料をめくりながら言う
「今まで ”選ばれた”人は何人か居るけど… その人たちの殆どが その後ウィザードを引退しちゃってるの だから …神様に選ばれて 天国に誘われたウィザード様なんて 本当に居たのかな?って…」
マキが苦笑して言う
「居る訳ないじゃん?だって 普通に考えて 天国に人間が… それこそ 生きた人間が行けるはず無いもん 大体 天国なんて あるかどうかも分からないのに」
マリアが言う
「…うん」
マリアが思う
(それじゃ ウィザード様が 昨日言っていたのは…?)
昼休み
マリアが電話をしている
「…はい、先日は 本当に申し訳ありませんでした 私の不手際で …はい 最優先にさせて頂こうと」
マキがやって来てマリアを見る マリアがマキに微笑して軽く手を振る マキが頷き近くの席に座り手作り弁当を出す マリアが携帯に言う
「え?あ、明日ですか?設備の方は?…そうですか …いえ、大丈夫だと… いえっ 大丈夫です!今度こそっ!はいっ!…はい では 明日の午後3時で!」
マリアが携帯を切り 軽く息を吐いて言う
「まさか 明日になっちゃうなんて… 1日くらい空けると思ったのになぁ…」
マリアが手帳に書き込む マキが言う
「明日の午後行くのー?」
マリアが苦笑して言う
「うん… この前は 私のミスで ドタキャンしちゃったから… ちょっと無理してでも行くしかないなぁ 後で課長に怒られて来よう」
マリアが手作り弁当を出す マキが苦笑して言う
「流石に 今日の申請で 明日の午後は 怒られるね~」
マリアが言う
「原則3日前申請で 2日前でもギリギリの所 …明日だからね?遅刻もするし 私信用無くなちゃうなぁ…」
マリアが書類を見つつ言う
「おまけに 明日の午後って商談1件入ってるのよね~ これはキツイかも…」
マキが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「そんな時は 頼れる 後輩 マキ様に まっかせなさ~い!」
マリアが言う
「ほんっとに ごめんっ!ありがとっ!お願いして良い!?マキ様っ!?」
マキが言う
「おっ任せー!」
マリアが言う
「ありがと~!マキ!今度また ケーキおごるっ!」
マキが言う
「そうこなくっちゃー!それで?その今度はいつになりそう?今日もまた ウィザード様の所に行くんでしょ?」
マリアが言う
「うん まさか明日になっちゃうとは 思わなかったけど 予定を伝えないといけないから」
マキが微笑して言う
「またまたぁ~?本当は それだけじゃないくせに~?」
マリアが苦笑して言う
「後は ちゃんと お食事を食べてるかの 確認!」
マキが言う
「お食事?」
マリアが苦笑して言う
「だって…」
マリアがハッとして言葉を止め 苦笑して言う
「…ウィザード様は 魔力強化の修行の為に 食事制限をされていて 奉者が気を付けていてあげないと ちゃんと食べないから」
マリアが思う
(危ない危ない… 思わず ”お米の焚き方も知らないのよ?” なんて 言っちゃう所だった…)
マキが言う
「へぇ~ やっぱり 神様に選ばれるのは 大変なんだね?…所でさ?奉者様は ウィザード様が神様に選ばれたら どうなるの?一緒に天国に行くの?」
マリアが呆気にとられて言う
「え?まさか…?それは無いと思うけど…」
マリアが疑問して思う
(そう言えば どうなるのかな…?)
マキが言う
「そうだよね?それに マリアまで天国に行っちゃったら 私たちとは会えなくなっちゃうから 奉者は行かないなら良かった~」
マリアが微笑して言う
「うん 私も友達やお母さんと 会えなくなっちゃうのは嫌だもん」
マキが微笑して言う
「だよね!…あ、でも 天国だったらさ?もしかして 死んじゃった人に 会えるのかなぁ?」
マリアが驚いて言う
「え!?」
マキが苦笑して言う
「な~んちゃって!そんな訳無いかぁ?」
マリアがハッとして言う
「あ、う、うん!それはそうでしょう!?」
マキとマリアが笑う
退社時
マリアが思い出す
マキが微笑して言う
『だよね!…あ、でも 天国だったらさ?もしかして 死んじゃった人に 会えるのかなぁ?』
マリアが視線を落として思う
(もしかして ウィザード様が言ってたのは… そう言う意味だったの?お父様は 亡くなった… って事だったり…?でも かなり優秀なウィザードだったって…?)
マリアが首を傾げて言う
「どう言う事なんだろう?」
マリアが思う
(もう一度 聞くにしても… 何だか聞き辛い話になりそうだし)
マリアが苦笑して言う
「まぁ いっか…?」
マリアがタクシーを止め乗り込む
マンション 最上階
マリアがドアの前に来て思う
(…あ、私)
マリアが微笑しインターフォンを押して思う
(このドアを開けるの 嫌じゃ無くなったかも…?)
マリアが鍵を開けながら言う
「相変わらず 出てはくれないのよね… あ、それじゃ?」
マリアがドアを開けつつ思う
(食料の宅配が来た時は どうなるんだろう…?私は鍵を持っているから すぐに開けちゃうけど …ウィザード様 しばらくしたら 確認するのかなぁ?)
マリアが部屋の中へ向いて言う
「今晩は~ ウィザード様?マリアです…」
マリアが室内を見て疑問して言う
「ウィザード様?」
マリアが部屋へ上がりつつ言う
「電気はついてるから 眠ってはいないと思うけど…?」
マリアが周囲を見渡すと 部屋の照明がチラ付く マリアが驚いて言う
「えっ?何っ!?」
マリアが機械音の高鳴りに気付き顔を向ける マリアが瞑想室へ向き迷いつつゆっくり向かう マリアがドアの前で迷って思う
(…多分この部屋に居る でも… 声を掛けては いけないかな?外で待っているべき?…でも どの位?)
マリアが悩んでいると 部屋の照明が再びチラ付き マリアが一瞬驚いてから ドアノブに手を掛ける マリアがドアをゆっくり開けて言う
「し、失礼… します…」
マリアがドアを開けて室内を見る 室内の中央付近にレイが居て 魔力を収集している マリアが一度目を奪われてから 周囲の結界に気付き 結界を作り出している装置を見て思う
(あ… あれは 結界制御装置…?そっか その影響で照明が)
マリアが視線を向ける 結界の中に大量の魔力が渦巻いている マリアが呆気に取られて思う
(あの光は ひょっとして 魔力…?魔力は本来 常人の目には見えないものだけど それでも 極度に凝縮された魔力は見えるって… 凄い… これが魔力なのね?とっても 綺麗…)
マリアが見惚れていると結界の外に風が吹く マリアが抑えていたドアが風に吹かれて内側に開かれマリアが引きずられて室内に入る マリアが思わず声を発す
「あ…っ!」
マリアが慌ててドアを閉め 閉めたドアに背を預けて思う
(危なかった… この風がリビングにまで吹き込んでしまったら 大変…)
マリアが疑問して思う
(あ…あれ?でも おかしい?結果制御装置が動いているのに その結界の外にまで 魔法が?)
マリアが結界制御装置へ視線を向けると 結界にヒビが入り音が鳴る マリアが驚いて言う
「え…?嘘っ!?結界がっ?」
マリアが驚いて見つめる先 結界のヒビが見る間に広がり マリアが息を飲んだ瞬間 音を立てて砕け散る マリアが叫ぶ
「キャァアッ!」
マリアが強く目を閉じると同時に マリアの身が強く抱かれる マリアが驚いて顔を上げると レイがマリアを抱き締めている マリアが驚きに言葉を失いつつ周囲を見ると レイと自分と周囲だけ破片が避けられている マリアがホッと息を吐くと 破片の避けられていた周囲に張られていた結界が消える レイが言う
「マリア」
マリアがハッとして言う
「あっ ご、ごめんさいっ ウィザード様…っ 私…っ!」
レイが言う
「いや、俺こそ マリアが居るとは考なくて ごめん」
マリアが言う
「い、いえっ 私が 勝手に お邪魔をしてしまったので…」
レイがマリアを解放して微笑して言う
「でも、無事で良かった マリア」
マリアがホッと微笑してから 周囲を見渡して言う
「は、はい… あの… それで これは…?一体…?これがウィザード様方の 修行 …ですか?」
レイが苦笑して言う
「いや 修行じゃなくて 昨日マリアに 灯魔儀式は いつでも大丈夫だって伝えただろ?だから 一応 魔力を測ってみようと思ったんだけど …無理だったな」
マリアが言う
「む、無理だった… って?」
レイが言う
「俺 昔から クラッシャーなんだよ」
マリアが衝撃を受け疑問して言う
「クラッシャー!?」
レイが言う
「うん、魔力測定器のクラッシャー?ウィザードの認定試験の時も 片っ端から計器ぶっ壊してさ?危うく 賠償金払わされる所だったし この結界制御装置も 以前使ったときは大丈夫だったんだけど それをウィザードになってから使ったんじゃ やっぱ 駄目だったみたいだ」
マリアが困惑して言う
「…え?それって… つまり… ウィザード様の魔力は… 測定 出来ないほど…?」
レイがマリアを抱き締めて言う
「けど 良かった~!…マリアの悲鳴に気付かなかったら 俺きっと このマンションごと ぶっ壊してたよ!ありがとな マリア!やっぱマリアは 俺の奉者様だよ!」
マリアが呆気に取られて思う
(私のウィザード様は… もしかしたら… 物凄い ウィザード様なのかもしれない…?)
マリアがレイを見る レイがマリアを抱いて嬉しそうにしている
会社
マリアが溜息を吐く
「はぁ~…」
リナとマキが気付いて言う
「おや?」「おやおや~?」
リナが言う
「どうしたの?マリア?」
マキが言う
「また何か ウィザード様が?」
マリアが苦笑して言う
「ううんっ ただ、ウィザード様が 凄過ぎて…」
リナとマキが言葉を失ってから言う
「ウィザード様がっ」「凄過ぎて…っ」
マリアが衝撃を受けハッとして言う
「な!?ちょっ!?変な風に受け取らないでよっ!?本当に違うったら!」
リナとマキがキャッキャ騒ぐ マリアが怒って言う
「もうっ!本当にっ そうじゃなくて!”ウィザード様として” 凄い方なのかもしれない って事なのっ!」
リナが苦笑して言う
「そんなにムキにならなくても ちょっとからかっただけよ?」
マキが言う
「そうそう!」
マリアが苦笑して言う
「も~ …それこそ リナの方はどうだったの?そっちこそ デートだったんでしょ?」
リナが言う
「ええ 誰かさんたちとは違って こっちはラブラブよ?うふっ」
マリアが呆気に取られてから気を取り直して言う
「こ、こっちは お仕事ですからっ」
マキが言う
「お仕事でも あーんな綺麗な人と 仲良く出来たら 楽しいだろうなぁ?」
マリアが苦笑して言う
「でも もし本当に ウィザード様と私が リナやマキの言うような 恋人同士になったとしても リナと彼みたいに2人で デートとかは出来ないんだよ?マキ?」
マキが言う
「え?そうなの?」
リナが言う
「あら?そうなの?」
マリアが言う
「もちろんです!」
マキとリナが言う
「何で?」「どうして?」
マリアが言う
「それは!ウィザード様は 修行中で…」
マキが言う
「じゃぁ その後は?」
マリアが言う
「後?」
マキが言う
「普段なら その修行の後とか?最終目的の 神様に選ばれた後は?…だって 本当に天国に行っちゃう訳じゃないんでしょ?」
マリアが驚いてから言う
「え?え~と…」
マリアが考える マキが言う
「大体 ウィザード様って どうしたらなれる訳?元々は 私たちと同じ 普通の人なんでしょ?それが あ~んなに綺麗な人なれるって 凄い気になる!」
リナが言う
「ウィザード様だから綺麗になるって訳じゃないんじゃない?髪や瞳の色は変わるにしても 顔は変わらないんだから… たまたま ”マリアのウィザード様”が 綺麗な人だったって だけじゃない?」
マキが言う
「え~?そうなの~?マリアは ”マリアのウィザード様”以外の ウィザード様を見た事はあるの?」
マリアが言う
「えっと 子供の頃に1度だけ お母さんの仕えている ウィザード様を見た事があるけど …でも やっぱり 綺麗な人だったと思う」
マキが言う
「ふぅ~ん?なら やっぱり気になるな~?奉者じゃなくて 普通の女の子とお付き合いする ウィザード様は居ないのかなぁ?」
マリアが衝撃を受け慌てて言う
「ウィザード様は 神聖な職業なんだからっ そう言うのは駄目なのよっ マキ!」
リナが言う
「それで?そんな神聖なウィザード様との デートの約束はどうなってるの?マリア?」
マリアが言う
「だから デートじゃなくて 灯魔儀式… あっ!ホント 時間っ!急がなきゃっ!」
マリアが慌てて立ち上がり 荷物を持って言う
「それじゃ!後は よろしくね!?マキ!」
マキが言う
「はいはーい いってらっしゃーい!」
ライズ村灯魔台神館
マリアが見つめる視線の先 レイが一度灯魔台へ左手をかざし 軽く5大魔力の性質を確かめる 雷の反応が高い レイが僅かに目を細めてから気を取り直し 灯魔台と距離を取り向き直ると魔力を収集する マリアが見つめる先 レイの前に杖が浮き上がり 会場内に雷の魔力が集まり始める マリアが思う
(雷の灯魔だ… 確か2回目 やっぱり 灯魔される魔力で多いのは 火みたい …でも 次に多いのは?って聞かれると 今の所 火以外は…)
マリアが意識をレイへ戻す 人々が見つめる先 周囲の装置に電撃がほとばしる マリアが周囲を見渡してから レイを見る レイは無表情に居る 人々が息を飲む中 雷が渦巻き灯魔台の上空に大量に結集する 人々が怯え始める マリアが一瞬呆気に取られてから思う
(あ、あれ?以前は こんなに強力だったっけ?…なんだか 怖いっ)
マリアが僅かに怖気て後づ去る 人々が驚愕する中 雷の攻撃が一気にレイへ向かって来る 人々とマリアが息を飲む 雷撃が杖に激突すると 人々が思わず後づ去るが 閉じていた目を開くと 雷撃が全てレイの杖の前で押しとめられている 人々がざわめく中 マリアが言葉を失っていると レイが杖を掴み一振りする 雷の攻撃が上空に弾かれ灯魔台に叩き込まれる 辺りが静まった中 灯魔台から静かに雷が流れ始める 周囲の装置にも同じ様に雷が流れる レイが静かに構えを戻し 来た道を戻る 人々が慌ててレイへ信仰の眼差しを向け 祈るようにレイの歩みを見守る 案内が慌ててマリアへ言う
「マ、マリア奉者様っ 本当に 有難う御座いました…っ」
マリアが慌てて言う
「い、いいえっ!こちらこそっ 先日は一度 予定を入れていながら 当日に失礼を…っ」
2人のやり取りを他所にレイが立ち去る マリアが気付き 慌てて言う
「あっ それでは 失礼しますっ!」
案内が頭を下げる
ライズ村灯魔台神館 外
レイが外に居る マリアが走って来て言う
「お、お待たせしましたっ ウィザード様」
レイが言う
「マリア」
マリアが言う
「は、はい?」
レイがマリアへ向いて言う
「付き合ってもらえないか?」
マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!!」
マリアが思う
(なっ 何っ!?急に…っ!?そ、それは…っ!?)
レイが言う
「ここの前に行った… 確か ポリニ村だったか?殆ど意識が飛んだ状態で やったもんだから 確か 火の灯魔をしたと思うんだけど」
マリアがハッとして思う
(えっ!?…灯魔儀式の …話?)
マリアが気を取り直して言う
「あ、は、はい… ポリニ村は 火の灯魔でしたね?その前にやった灯魔も火だったので 続くのは珍しいなって…」
マリアが思う
(はぁ… なんだ やっぱり… って あれ?今 ウィザード様 さりげなく凄い事言わなかった?”殆ど意識が飛んだ状態で”って…)
レイが言う
「ああ、そうだったよな?あれ、やっぱ 良くないと思うんだ」
マリアが驚いて言う
「え?」
レイが言う
「折角今まで 属性を合わせて来たのに あの一角にだけ火の灯魔が続いて… それに ここが雷だって事はさ きっと ポリニ村は水の灯魔だ 対極の火の灯魔じゃ アウターからの影響を防ぐ事は出来ても 自然界の摂理を正すことには繋がらない」
マリアが驚く レイが言う
「だから 今 ここから ポリニ村の灯魔台神館へ行って 灯魔を切り替えたいと思うんだ …それで マリア 悪いが 灯魔神館の管理人に その話を 付けてくれないか?」
マリアが言葉を失った状態から微笑して言う
「はいっ!もちろんっ!」
レイが苦笑して言う
「ごめんな?マリア」
マリアが言う
「いいえっ!私が無理させちゃった所ですから 私の責任でもありますから!では、今すぐに連絡を!」
マリアがバックを漁ろうとするとレイが言う
「いや、言葉だけだと 断られるかもしれないから 直接乗り込もう」
マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
レイがマリアを包む マリアが慌てて言う
「あっ えっ!?で、でもっ!ウィザード様っ!」
レイとマリアが風を纏い消える
ポリニ村灯魔台神館
案内が言う
「えっ!?灯魔の変更… ですか?」
マリアが言う
「はい、この村の周囲の灯魔を行った所 この村に灯した灯魔は 別の属性の方が良いと言う事が分かったので …と、その方が 自然界の摂理を戻す事に繋がるんです」
案内が表情を困らせて言う
「しかし… 灯魔台に灯魔さえされていれば 結界は維持されますので 折角行った灯魔を わざわざ やり直すと言うのは…」
マリアが言う
「し、しかしっ その方が…」
マリアが視線を向ける 視線の先レイが外を見ている 外には田んぼが干ばつしている マリアが気付いて言う
「あのっ!最近村に 雨は降っていますか?」
案内が言う
「え?雨… ですか?」
マリアが言う
「この灯魔台に灯すのは 水の灯魔になります!そうすれば この村の雨不足も 解消に向かいますよ!?」
案内が驚いて言う
「…そうなのですか 確かに 例年降水量が減って 村の田畑が被害を受けているのです …その対策になると言うのでしたら」
マリアが言う
「はいっ!必ず なりますから!」
案内が苦笑して言う
「分かりました では」
レイが先に向かう マリアが一瞬驚く 案内が微笑して言う
「どうか 宜しくお願いします」
マリアが微笑して言う
「はい!」
マリアがレイを追う
火の灯魔がされている灯魔台の前 レイが魔力を収集する マリアが見つめる先 レイの前に杖が浮き上がり 会場内に水の魔力が集まり始める マリアが思う
(火の灯魔を水の灯魔へ変える… 言ってはみたけど 実際の所 どうやってやるのかな?)
マリアが意識をレイへ戻す 周囲の装置から立ち上る火がやがて消え 水が流れ始める マリアが呆気に取られ周囲を見渡してから レイを見る レイは無表情に居る 水が渦巻き灯魔台の上空に大量に結集する マリアが気付いて思う
(いつもより威力が大きい…っ さっきと同じ位?…それで ここまではいつもと同じだけど どうやって 灯魔を切り替えるの?)
マリアがレイを見る マリアの一歩後ろで 案内が怯えて後づ去る 水の攻撃が一気にレイへ向かって来る 案内が息を飲む 水撃が杖に激突すると 案内が思わず小さく悲鳴を上げ 閉じていた目を開くと 水撃が全てレイの杖の前で押しとめられている 案内が言葉を失ってマリアを見る マリアが真っ直ぐ見つめて思う
(もしかして…)
レイが杖を掴み一振りする 水の攻撃が上空に弾かれ灯魔台に叩き込まれる 火の灯魔がかき消され 辺りが静まった中 灯魔台から静かに水が流れ始める 周囲の装置にも同じ様に水が流れる マリアが微笑して軽く息を吐く 案内が言葉を失いつつマリアを見てからレイを見る レイが静かに構えを戻し 来た道を戻る マリアが案内へ向き直って言う
「灯魔の切り替えが無事終了しました ご協力を有難う御座います」
案内がホッと微笑して言う
「こちらこそ… 有難う御座いました マリア奉者様」
マリアが微笑する レイが立ち去る マリアが追う
マンション レイの部屋
レイとマリアが現れる マリアが微笑して言う
「お疲れ様でした ウィザード様」
レイが言う
「うん そうだな?病み上がりで連続は 少し疲れたよ… 無駄に魔力も使ったし」
マリアが苦笑して言う
「ウィザード様 もしかして ライズ村の灯魔儀式をやる時には もう ポリニ村の灯魔を切り替える事を 考えていたんですか?」
レイが言う
「え?鋭いな マリアは?何で分かったんだ?」
マリアが言う
「最初は分からなかったですが ポリニ村で灯魔の切り替えをしているのを見て気付きました その前のライズ村では いつもより わざと威力を上げていたんですね?」
レイが言う
「うん ライズ村の灯魔台が雷だって分かった時に 今の俺で ポリニ村の灯魔切り替えが出来るか ちょっと魔力を試していたんだ」
マリアが苦笑して言う
「ウィザード様 やっぱり 私に あんな事言っておきながら 本当は…」
レイが言う
「そんな事より マリア!」
レイがマリアを抱き締める マリアが衝撃を受けて思う
(ま、まさかっ!またっ!)
レイが言う
「俺 マリアに」
マリアが気を取り直して言う
「も、もうっ!また お茶ですか!?それならそうと 普通にっ!」
レイが言う
「いや、お茶より もっと大切な話なんだけど」
マリアが驚いて思う
(えっ!?大切な…?)
レイがマリアに真剣に言う
「俺 改めてマリアに」
マリアがときめいて思う
(”改めて” だなんて ウィザード様… まさかっ ついにっ!?)
レイが真剣に言う
「お米の焚き方を 教わりたいと思って」
マリアが怒って言う
「ですよねっ!!」
会社
マリアが溜息を吐いて言う
「はぁあ~ まったく もうっ」
リナとマキが言う
「”まったく”まで付いた」「”もうっ”も付いた」
マリアが不満そうに思う
(どうして 灯魔儀式の魔力の調整は出来るのに お米の水加減が出来ないのかしらっ!?あんなの魔力と違って 目に見えるんだから 何も難しくないのにっ!?)
マリアがブツブツ言う
「ただ メモリに合わせる だけなのに…」
リナが言う
「マリア?」
マキが言う
「喧嘩~?」
リナとマキが笑う マリアが苦笑して言う
「違いますっ」
リナが微笑して言う
「な~んだ ちょっと 興味あったのに?」
マキが言う
「だよねだよね~!」
マリアが言う
「もう 2人ともっ」
マキが言う
「それはそうと マリア うちのお爺ちゃんがね?今度収穫する お米を お世話になったウィザード様に 奉納したいんだって言うんだけど」
マリアとリナが衝撃を受けて言う
「ほ、奉納って…!?」「随分また 大げさね?…まぁ お爺ちゃん お婆ちゃんの世代からすると そんな風になっちゃうのかしら?」
マリアが苦笑する マキが言う
「あ、でもさ?ウィザード様って 元々 そう言う人なんでしょ?」
マリアが驚いて言う
「え?」
マキが言う
「お爺ちゃんから聞いたんだけど 元々 ウィザード様は 森羅万象の異変を収める為に 神様に力を与えて貰った人だったんだって?」
マリアが呆気に取られる リナが言う
「そうだったの?」
マキが言う
「だから 自然界の力を使いこなす事が出来て 雨を降らせる事も 逆に止める事も出来る 神様の次に偉い人なんだって?」
マリアが苦笑して言う
「確かに 昔の書物では そうだけど 今は機械的に 魔鉱石の魔力を人体に投射した人の事で… でも 出来る事は同じだから 昔ながらの言い伝えを信じる事は 悪くないかもしれないね?」
マキが苦笑して言う
「な~んだ やっぱり そういうのが現実なんだ?私もさー?流石に神様に力を貰う なんて言うのはないかなー って思ってたんだけど?」
リナが言う
「でも マキのお爺ちゃんの気持ちは 素敵じゃない?マリア こういうのは それこそ気持ちの問題だし 実際 ”マリアのウィザード様”は マキのお爺ちゃんの田畑に 雨を降らせてくれたんだから お米を奉納させてあげたら?」
マリアが微笑して言う
「うん それは私も 良いと思う!丁度 焚ける様になったし」
リナとマキが疑問して言う
「「タケルようになった?」」
マリアが衝撃を受け慌てて言う
「あっ う、ううんっ!何でもないっ!」
マキが微笑して言う
「それじゃ お爺ちゃんに伝えとくね!ありがと!マリア!」
マリアが微笑して言う
「ううん!こちらこそ!」
昼休み
リナが携帯で電話をしている マリアとマキが席に座っていて マキが言う
「リナってば 時間さえあれば 愛しの彼と電話してるんだよ~?」
マリアが苦笑して言う
「先に食べ始めちゃおうか?待ってたら きっとキリがないよ?」
マキが手作り弁当を取り出しながら言う
「賛成賛成!」
マリアが微笑して手作り弁当を出しながら言う
「うん!」
マキとマリアが用意をしている マリアが言う
「あ、そうだ マキ 昨日は本当に有難う 大丈夫だった?」
マキが言う
「うん 何とかね~ 一応 渡されてた資料の通り 商談は成立させておいたよ でも それ以上は何も」
マリアが微笑して言う
「それだけ やっておいて貰えれば十分だよ 本当に助かったから …あ、お礼のケーキはいつにする?今日でも良いよ?明日でも!」
マキが言う
「ねー マリア?ケーキよりもさぁ?本当に 他のウィザード様とか~?」
マリアが苦笑して言う
「だから 女の子とお付き合い出来る ウィザード様なんて 居ないったら」
マキが言う
「それじゃさ?ウィザード様は 本当に?まったく マリアの事 女の子として 見てくれてないの?」
マリアが呆気にとられて言う
「え…?」
マキが言う
「だって 普通に考えたらさぁ?マリアほど可愛い子が 自分にご奉仕してくれたら 喜ばない男の人なんて 居ないと思う~」
マリアが視線を泳がせて言う
「わ、私は そんな… 大体 可愛くなんて…」
マキが言う
「十分 可愛いです~!」
マリアが苦笑して言う
「あ、ありがとう…」
マキが言う
「ねぇ マリア?ウィザード様って 元々何処に居るの?どうしたら会えるの?」
マリアが言う
「え?えっと… 各町に配属されたウィザード様は その町に用意されたお部屋に 住まわれるけど 元々は…」
マリアがふと思い出して言う
「…あ、そう言えば ウィザードになる事が出来る 学校が…」
マキが呆気にとられて言う
「学校?」
マリアが苦笑して言う
「詳しくは聞いていないけど 学校みたいな所があるんだって ウィザード様はそこでウィザードになったって言ってた 確か サウスサイドストリートにあるんだって」
マキが喜んで言う
「それじゃ!そこに行ったら 他のウィザード様にも 会えるじゃん!?」
マリアが言う
「そ、それは そうかもしれないけど…」
マキが言う
「ねぇねぇ マリア!行ってみようよ!?」
マリアが驚いて言う
「えぇえっ!?」
リナがやって来て言う
「ちょっと どうしたの?そんなに驚いて」
リナが席に座り手作り弁当を取り出す マキが言う
「リナ!知ってた!?サウスサイドストリートに ウィザード様の学校があるんだって!」
マリアが慌てて言う
「ま、待ってっ!?学校かどうかは 分からないよ!?ウィザードになれる所だって事しか!」
リナが言う
「ウィザード様の学校なのか なれる所なのかは分からないけど サウスサイドストリートには 魔法使いの養成所があるって話なら知ってるけど 同じ事?」
マリアが言う
「え?」
リナが言う
「前に エリナが言ってたじゃない?この町に居るのは 魔法使いの見習いだけで 魔法使いになった人は 村に行って修行するって」
マキが言う
「それじゃ その修行が終わったら また 町に戻って来て 今度はウィザード様になるって事?」
リナが言う
「そうかもしれないわね?どうなの?マリア?」
リナとマキがマリアを見る マリアが衝撃を受け慌てて言う
「え?あ… 私、その辺りの話は…」
マキが言う
「それじゃ どっちにしても サウスサイドストリートに行けば ウィザード様に会えるかもしれないじゃない!?ちょっと行ってみようよ?マリア?」
マリアが衝撃を受けて言う
「え?わ、私っ!?私は良いよ!もう1人居るからっ!」
マリアが思う
(あの人が 増えたりなんてしたら 大変っ!)
マリアがハッと呆気に取られて思う
(―って 私 何を考えて…?)
マキが言う
「だから!マリアが居れば ウィザード様とお話が出来るんでしょ!?私を学校に居るウィザード様に紹介してよ!ね?お願い!奉者様っ!」
マリアが苦笑して言う
「あ~ そっか そう言う事?」
マキが言う
「そう言う事!だって ウィザード様とお話が許されるのは 奉者様だけだもん!ケーキの代わりに お願い!マリア!」
マリアが苦笑して言う
「もう… 会えるかどうかも分からないのに」
マキが言う
「会えなくっても 付き合ってくれたって事で 商談の借りはチャラにするからさ?ね?ね?」
マリアが軽く息を吐いて言う
「分かった 付き合う」
マキが言う
「やったぁ~!」
マリアとリナが軽く笑う
サウスサイドストリート
マリアとマキが歩いていて マキが言う
「あれから調べたらね?魔法使いの養成所は この通りの216だって!」
マリアが言う
「こらこら~ 後輩~?就業中に私的な調べ事は 禁止ですよ~?」
マキが言う
「えへへ~ ごめんなさーい センパーイ」
マリアとマキが笑い合い 到着してマリアが言う
「216はここだね?確かに 学校っぽい佇まいだけど」
マキが言う
「さっそく建物の周りを 見てみようよ!マリア!」
マリアが苦笑して言う
「はいはい」
マリアとマキが建物の周囲へ行く 裏庭へ辿り着くと 魔法使いたちが魔法の練習をしている マリアとマキが驚いて言う
「あ 魔法だわ」 「あれが魔法?」
マリアとマキが練習風景を見ながら マキが言う
「すごーい!私 魔法を見たの初めて!」
マリアが疑問して言う
「え?だって 以前 田畑に雨を降らせた時 マキも見ていたでしょ?」
マキが苦笑して言う
「あれはもう 魔法って思える粋を越えてて 何って言うか… うん、あの時 お爺ちゃんが言ってた通り ”神の力”って感じ?」
マリアが言う
「神の力か… 言われて見れば そうかも」
マリアが魔法使いの魔法を見て言う
「灯魔儀式の時は もうちょっと 魔法っぽく見えるけど それでも ウィザード様が魔法を使う時は あんな感じじゃないのよね もっと こう…」
マリアが考えてから言う
「自然の力を… 呼んでいるみたいな?」
マリアたちに近い位置に居た 魔法使い(セイ)が反応して横目にマリアを見る マキが言う
「自然の力を呼ぶ?」
マリアが魔法使いたちを見て言う
「うん だから あの人たちみたいに 無理に力が入っている感じは 全く無いの 静かに澄ましてて… なんていうのかな?それで 呼び集められる魔法は 物凄く凄いんだけど それがそうなるのは 当たり前な感じで」
マリアが意識を記憶に集中させて言う
「…むしろ 魔法の方が 力を貸したがっているのかな?杖だって そんなに動かさないし ただ合図として 振るっているだけって感じで もっと軽く使うのよ?」
セイが言う
「おい アンタ」
マリアとマキが驚く セイがマリアへ向いて言う
「さっきっから うるさいんだよ 魔法を使った事も無い奴が 偉そうな事言うんじゃねぇよ」
マリアが慌てて言う
「あ、ごめんなさいっ 聞こえちゃうと思わなくて…」
セイがやって来て言う
「聞こえなければ 良いってもんじゃないだろっ?ただ見て来ただけの事を ここで知った風に言われたんじゃ 俺たちを馬鹿にしているようなもんだ」
マリアが言う
「ほ、本当に ごめんなさい…っ」
マキが言う
「あの、すみません 彼女は奉者なので そう言う風に見えちゃうみたいですけど その話を聞いても 普通の私なんかは 十分皆さんも凄いと思って 見てますから!」
マリアがマキを見る セイがマキを見てから少し肩の力を抜いて言う
「…別に 凄いと思われたいって訳じゃないけど アンタ奉者なのか」
マリアが慌てて言う
「は、はい…」
セイが言う
「そっか… なら 仕方が無いか 本物のウィザードと比べられちゃ 今の俺たちなんか 唯の魔法使いにしか 見えないんだな」
マキが言う
「”本物の”ウィザード?」
セイが言う
「ここに居る連中は ウィザードの認定試験を目前にした連中なんだよ 他の奴らだって 皆気が立ってるから あんまり余計な事言うと 危ない目に会うぜ?」
マリアが困って言う
「あ、危ない目に…?」
セイが言う
「怪我するって事だ 見物するんなら アンタは黙ってた方が良いぞ?」
セイが立ち去る マリアが間を置いて息を吐く マキが言う
「試験の前で 気が立ってるって言うだけだから しょうがないよ マリア」
マリアが苦笑して言う
「うん… 慰めてくれて ありがと マキ 魔法使いさんたちの迷惑にならないように 気を付けるようにするね?」
マキが頷くと マリアとマキが魔法使いたちを見る