嗚呼、私のウィザードさま
マリアが思う
(――ウィザードさまに お願いしなきゃっ!)
周囲に炎の力が暴走する中 幼いマリアが周囲を見渡し 目的の人を見付け叫ぶ
『お母さんっ!』
幼いマリアが走って向かう マリアの声にソニアが振り向き驚くと一歩向かおうとするが ソニアの体が隣に居たウィザードに抑えられる ソニアが言う
『マリア!』
幼いマリアがソニアへ向かおうとしている途中 目に見えない結界に弾かれ 僅かに悲鳴を上げて腰を打つ マリアが慌てて顔を上げて言う
『お母さんっ!?』
マリアが思う
(お母さんが居る…っ それなら ウィザードさまも!…ウィザードさまに 早くっ)
周囲の炎は増し 何処かで沸きあがった悲鳴に幼いマリアが顔を向けると マリアの視線の先 建物の外壁が崩れ落ち人々が埋まる マリアが目を見開き ソニアの横に居るウィザードへ叫ぶ
『助けてっ ウィザードさまっ!』
マリアが思う
(”皆を助けて”って お願いしなきゃっ!!)
幼いマリアの声にウィザードが一度視線を向ける マリアが必死に叫ぶ
『お願いっ!皆を助けてっ!ウィザードさま!お願いっ!』
幼いマリアの必死の呼び掛けに ウィザードは冷たい視線を返してから顔を逸らす
マリアが思う
(ウィザードさまなら…っ!)
幼いマリアが驚いて言う
『ウィザードさま… どうしてっ!?』
マリアが思う
(ウィザードさまなら 皆を助けられる!)
幼いマリアの上部で異音が鳴る マリアが見上げると施設の屋根にヒビが入る マリアが驚きソニアへ向いて叫ぶ
『お母さんっ!ウィザードさまっ!?』
施設上部で破壊音が鳴り響く 幼いマリアが再び上部を見上げると施設の屋根が破壊され 炎と共に瓦礫が落ちて来る マリアが悲鳴を上げる
『キャァアアーーッ!』
ソニアの声だけが聞こえる
『マリアッ!』
14年後――
マリアが飛び起きて息を切らせる
「…っ!?はぁ… はぁ… はぁ…」
マリアが肩で息をしながら周囲を見る 朝日の差し込む窓 静かな女子の部屋 マリアがいつもと変わらない部屋の様子に息を整えホッとして言う
「…夢?もう… ずっと見ていなかったのに …どうして?」
マリアがふとカレンダーを見ると マリアの視線の先 カレンダーに印がつけられている マリアがそれを見て微笑して言う
「そっか?やっぱり…」
マリアが思う
(もうすぐ 私も…)
マリアが微笑した後 ハッとして言う
「あっ 時間は…?」
マリアが枕元の目覚まし時計を見て 驚いて叫ぶ
「きゃぁあっ 遅刻っ!」
マリアが慌ててベッドを出て 慌しく準備に走る
会社
課長が叫ぶ
「マリア君っ!」
マリアが慌てて言う
「はいっ!課長っ!」
課長が不満そうに言う
「これで何回目かねっ!?」
マリアが頭を下げて言う
「すみませんっ!」
課長が溜息を付いて言う
「全く… 君は仕事は出来るのだから 後は その遅刻癖を 何とかしたまえっ」
マリアが頭を下げて言う
「はいっ すみませんでした…っ」
課長が立ち去る マリアがホッとする リナが苦笑して言う
「マリア どうしちゃったの?3日も連続で 遅刻だなんて」
マリアが苦笑して言う
「うん… ちょっと この所寝不足で… 今日は特に 朝方夢を見ちゃったものだから…」
マリアが席に座る マキが言う
「まぁまぁ?そう言う時もあるよね~?」
マリアが言う
「いつの間にか 目覚ましも止めちゃってたみたいで… ―けど!明日は 絶対っ 遅刻は出来ないからっ!今夜は 手の届かない位置に置いて寝るつもり!うん!」
マキとリナが疑問して言う
「明日ー?」「やだ?マリア 明日は休みでしょ?」
マキとリナが笑う マリアが頷いて言う
「会社は休みだけど…」
マリアが微笑して言葉を止める マキとリナが疑問して言う
「休みだけどって…」 「もしかして マリアっ!?」
マキとリナが声を合わせて言う
「「デートォ~~!?」」
マキとリナがキャッキャッと騒ぐ マリアが慌てて言う
「ち、違う違うっ!違うったら!」
課長が遠くで咳払いをする マキとリナとマリアが衝撃を受け慌てて仕事に掛かる
昼休み
マリアとマキとリナが手作り弁当を食べている マキとリナが話していてマリアがぼーっとしている マキとリナが気付き顔を見合わせてから言う
「マリア?」
マリアがはっとして言う
「はいっ!…え?あれ…?」
マキとリナが顔を見合わせてから苦笑して言う
「マリア 本当に大丈夫ー?」「顔色も余り良くないし… 早退した方が良いんじゃない?」
マリアが慌てて言う
「あ、ううんっ!大丈夫!違うの!…ちょっと 緊張してて…っ」
マキとリナが顔を見合わせてから マキが言う
「緊張?だって デートじゃないって」
マリアが苦笑して言う
「デートじゃないけど あ… でも…」
リナが言う
「でも?」
マリアが言う
「やっぱり2人には言って置くね?あのね 私 実は… ”奉者”になるの」
マキが呆気に取られて言う
「奉者って…?」
リナが驚いて言う
「それじゃ マリア!?ウィザード様に お仕えするって事っ!?」
マキが驚く マリアが頷いて言う
「うん」
マキが言う
「”ウィザード様”?」
リナが言う
「凄いじゃない!どうして今まで教えてくれなかったの?あ、ひょっとして?本当は秘密にしないといけない事 とか…っ?」
マリアが顔を左右に振って言う
「ううんっ そんな事は無いんだけど その…」
マキが言う
「ウィザード様かぁ~?ふふっ 何か知らないけどさー?ナニナニ様~ なんて言われる人に仕えるだなんて 凄いじゃーんっ!あ!それじゃ もしかして これからは マリアも マリア様ー みたいな!?」
マリアが顔を左右に振って言う
「ううんっ!そんな事無い!友達は友達のままだよっ!?だから 私に様なんて付けないでっ!?」
マキとリナが微笑し頷いた後 リナが言う
「でも 確か 奉者様になるのだって 色々と勉強して 大変なんじゃないの?」
マリアが言う
「えっと… うん、勉強はね 会社が終わった後に 奉者協会の講習会に参加したの …でも、会社の後だと 講習会も後半だけしか受けられなくて」
マキが疑問して言う
「講習会なんて言うのがあるんだ?それじゃ 希望者もそれだけ一杯居るって事じゃない?その中から選ばれたって事はぁ… やっぱり マリア凄いよっ!」
リナが考える マリアが苦笑して言う
「私も まさか 自分が選ばれるだなんて 思って居なかったんだけど …今回はきっと 同じ講習会の人たちから 何人か選出されたから そのお陰だったんだと思う」
リナが言う
「でも 選ばれたって事は やっぱり マリアはそちらを本職にして こっちの会社は… 辞めちゃうって事よね?」
マキが言う
「えー!嘘ぉ~っ そうなの!?そう言う事なら なんで もっと早くっ」
マリアが言う
「あ、ううんっ まだ その辺りはハッキリしていなくて」
マキとリナが疑問して言う
「「え?」」
マリアが言う
「奉者になろうと思った時は そのつもりだったのだけど… 何だか 講習を受けてみたらね?奉者のお仕事って ちょっと頑張れば 副業としてもやっていけそうなの だって 数日に一度の儀式の手配と それに同行するだけだから!」
マキとリナが顔を見合わせてから リナが言う
「そうなの?」
マリアが言う
「うん しかも、ウィザード様が町に ご到着してから 最初の頃は 特に 最低でも5日から1週間は お部屋で安静にしていないと いけないらしくて」
マキとリナが疑問して言う
「安静にって?そんなんじゃ まるで…」「病気か何か…?」
マリアが苦笑して言う
「病気って訳じゃなくて ウィザードになるには 魔力を身体に取り入れる処置をするから その魔力が体に定着するまでは 安静にしていないといけないんだって」
マキとリナが表情を歪め言う
「ひえぇ…」「魔力を取り入れる処置なんてあるのね… 何だか怖いわ…」
マリアが苦笑して言う
「確かに そう言う部分は ちょっと怖いけど… ウィザード様は 人と神様の間の存在って言われてて 人の扱える力を 遥かに越える魔力を扱う事が出来る人 …だから、私は ウィザード様こそ 今の この世界の救世主様だと思うの!」
マキとリナが言葉を飲む マリアの脳裏に過去のウィザードの姿が過ぎる マリアが意志を固める マキが言う
「マリア… 頑張ってね!」
マリアがマキを見る マキが言う
「私は その… ”ウィザード様”ー!の事は 何も知らないけどさ?マリアの事はー!応援してる!」
マリアがマキを見て微笑して言う
「ありがとう マキ!」
リナが苦笑して言う
「もちろん 私もよ!」
マリアがリナを見て微笑して頷く マキが言う
「マリア 話 聞かせてね!?」
マリアが微笑して言う
「うん!」
講習会
マリアが駆け込んで来る 講習仲間と講師が振り向くと マリアが言う
「あ、遅れて… 失礼します…」
講師が苦笑して言う
「マリア奉者様?これまでは 仕方無しとしていたが 正式に奉者として選ばれたからには 今までのお仕事の方は 辞める手続きは進めているのかな?」
マリアが言う
「あ… その… まだ ですが… もちろん!奉者の仕事を 優先する事にしていますので!」
講師が苦笑して言う
「うん… 奉者は 副業を禁止されている訳ではないが くれぐれも お仕えするウィザード様に 不手際の無い様に 君は特に この町のウィザード様に お仕えする奉者なのだから この町の講師である 私からも よろしく頼むよ」
マリアが表情を困らせつつ言う
「は… はい…」
講習仲間たちがコソコソ話す 講師が咳払いをして言う
「ううんっ では、いよいよ明日…」
マリアが表情を落として密かに言う
「やっぱり …会社は辞めなきゃダメなのかな…?」
マリアが溜息を吐く 講習仲間たちが横目にマリアを見る
自宅
マリアが帰宅して玄関で言う
「ただいまー」
ソニアの声がする
「お帰り マリア 遅かったわね?」
マリアが微笑してリビングを覗いて言う
「うん、実はね お母さん」
ソニアが振り向きつつ言う
「うん?どうしたの マリア お風呂沸いてるわよ?」
マリアが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「あ… うん… …それじゃ 入っちゃうね?お風呂!」
ソニアが微笑して言う
「ええ 良く温まって 最近貴方疲れているみたいだから 明日はお休みでしょ?ゆっくり休みなさい」
マリアが微笑し頷いて言う
「う、うん そうだね?…そうする」
マリアが立ち去る
浴室
マリアが湯船に浸かりつつ言う
「やっぱり お母さんには… もう少し後にしよう… もしかしたら 私 奉者として半人前だって ウィザード様に 断られちゃうかもしれないし…」
マリアが湯船に深く浸かって言う
「それに… 私が奉者になる理由 お母さんが聞いたら…」
マリアが視線を落とす 間を置いてマリアが湯船から上がる
廊下
マリアが髪を拭きつつ歩いて来ると ソニアが顔を出して言う
「マリア?」
マリアが立ち止まり振り返ると ソニアが微笑して言う
「そう言えば さっき 何か言い掛けていたでしょう?”実は”って?」
マリアが気付き微笑して言う
「あ、ううんっ 何でもない!早く寝るね?」
ソニアが言う
「そう?それなら良いけど」
マリアが言う
「あ、そうだ お母さん 私、明日用事があって もし、9時になっても起きて来なかったら 起してもらえないかな?」
ソニアが言う
「ごめんなさい マリア 明日はお母さんも 奉者のお仕事で朝は早いのよ」
マリアが疑問して言う
「え?でも お母さん 明日は月に数回しかない お休みの日なんじゃ?」
ソニアが微笑して言う
「ええ、でも 明日は急遽 ウィザード様の外出の予定が入ったものだから そんな時はいつもより早くに行かないといけないから 朝は5時には出ちゃうわね?」
マリアが苦笑して思う
(そうなんだ… お母さん たまの休日まで…)
マリアが言う
「お母さん やっぱり 奉者のお仕事って… 大変?」
ソニアが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「そうね?大変と言えば 大変かもしれないけれど…」
ソニアが微笑する マリアが呆気に取られた後微笑して思う
(折角の休日を潰されちゃうのに… 全然 大変って感じじゃないみたい)
マリアが言う
「お母さんは 奉者のお仕事 好きなんだね?」
ソニアが微笑して言う
「ええ、そうね?奉者のお仕事には 誇りも持てるし それに ウィザード様に お仕え出来る事は とても 光栄な事だから お母さんは 大好きよ?」
マリアが微笑して頷いてから言う
「うん!…それじゃ お休みなさい お母さん」
ソニアが微笑して言う
「お休みなさい マリア」
マリアが立ち去る
施設上部で破壊音が鳴り響く 幼いマリアが上部を見上げると 施設の屋根が破壊され 炎と共に瓦礫が落ちて来る マリアが悲鳴を上げる
『キャァアアーーッ!』
ソニアの声だけが聞こえる
『マリアッ!』
幼いマリアが強く目を閉じて怯える 間を置いてマリアが疑問して目を開くと 強い光の存在に気付きマリアが正面へ視線を向ける 視線の先 ウィザードの持つ杖が強く光っている マリアが驚きハッとして周囲を見る 暴走していた炎が強い風に巻き上げられている マリアがウィザードを見る ウィザードの顔は見えないが ソニアが驚いている マリアが言う
『ウィザードさま… 助けてくれた…!やっぱり お母さんの ウィザードさまが…!』
幼いマリアが微笑する 周囲の風が炎や瓦礫を収め やがて辺りに静けさが戻る 無くなった天上から日の光が差し込み 柔らかな光にマリアがホッとするとウィザードの杖が光を失い倒れる マリアが一度杖を見てから何となく振り返る マリアの視線の先 幼い男の子が倒れている マリアが一歩向かってから ふと周囲を見渡して驚く 多くの負傷者が居る マリアが怯えて改めて男の子へ視線を向ける 男の子の額から血が流れている マリアが表情を落として言う
『皆も… この子も… 私がっ もっと早く お願いすればっ 皆…っ』
幼いマリアが目を瞑って思う
《助かったかもしれなかったのに!》
幼いマリアが目に涙を浮かべる
マリアがハッと目を覚ますと 落ち着いて言う
「また あの夢…」
マリアが息を吐き周囲を見る 見慣れた自室の朝 マリアが言う
「”お母さんのウィザード様”は やっぱり あの時 私のお願いを聞いてくれたのかな?お母さんは お願いは出来なかったって言ってた… 奉者はウィザード様に仕える者 お願いなんて 出来ないんだって… でも だからこそ!」
マリアが思う
(私は!奉者に許される 最初の1度きりの お願いにっ!)
マリアが意を決して頷き ハッとして言う
「あっ!いけないっ!時間はっ!?」
マリアが目覚まし時計を探し いつもと違う場所に置かれた目覚まし時計を見付けると 一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「私も お母さんと同じ ”奉者の素質” が あるのかな?…なんちゃってねっ?」
マリアが微笑して言う
「目覚ましが 鳴る前に起きたのなんて 久しぶり!」
マリアが嬉しそうに伸びをする
玄関
マリアが走って飛び出して来る マリアが慌てて言う
「早く起きれたと思ってったら もう こんな時間っ!」
マリアが走って行き 大通りで慌ててタクシーを止める
マンション前
タクシーが到着し マリアが降りると周囲に人だかりが出来ている マリアが周囲を見てから近くの男性に聞く
「あのっ ウィザード様はっ?もう いらっしゃいましたかっ?」
男性が言う
「いや、まだ来てないよ アンタも見に来たのかい?見学はこのロープの後ろじゃないと ダメなんだぞ?」
マリアが言う
「あ、いえ… 私は その…」
講師が言う
「マリア奉者っ!」
マリアがハッとして振り返って言う
「あ!先生っ!?」
講師がマリアの腕を引いて言う
「ほらっ 急いで こちらへ…!もうすぐご到着される …相変わらず 君は 時間に余裕が無いな?そんなで本当に 大丈夫かね?」
マリアが困って言う
「す… すみません」
講師が言う
「とにかく 今は間に合ったから良い そんな顔はするな ウィザード様の専属の奉者として 相応の態度を取る様にっ …良いね?」
マリアが気を取り直して言う
「はいっ 先生」
マリアが迎えの場に立つと 講師が脇に退く やがて遠くから声が上がる マリアが反応すると視線の先に車が見え ゆっくりとマリアの前まで来て停車する マリアが緊張する周囲がざわめく中 講師が一度マリアを見てから車のドアを開ける マリアが息を飲む 人々の視線の先 開かれたドアからレイが現れる 人々とマリアがレイの神々しい姿に言葉を失う レイが車を降り視線を向けた先マリアが居る マリアがハッとして 言葉を言おうとするが 緊張でぎこちなく言う
「あっ あの…っ ウィ ザード… 様…っ」
マリアが僅かに怯える レイがマリアへ向かいゆっくり歩きマリアの前で立ち止まる マリアが動けずに居ると講師が小声で言う
「マリア奉者っ」
マリアがハッとして言う
「は、はいっ!あのっ 私がっ!あ、貴方様のっ 奉者… です!…えっと?…あっ それでは 早速!お、お部屋へっ ご案内致しますっ!」
マリアがやっと身動きして言う
「こ、こちらですっ」
マリアが足早に先へ向かう レイがゆっくり後を追う マリアがエレベータのスイッチを押してから 思わず胸を押さえて息を切らす レイがマリアの後ろに到着すると マリアの胸がドキッと高鳴る マリアが顔を上げるとエレベータのドアが開く マリアがエレベータへ乗り込み開扉延長ボタンを押したまま表情を困らせて思う
(ど、どうしようっ!?こんなに緊張する…っ!こんな状態で 私…っ ちゃんと お願い を言えるかなっ!?)
マリアがハッとして顔を上げる レイは既にエレベータ内に居てマリアを見る マリアが慌てて最上階のボタンを押し閉ボタンを押す エレベータが上昇する
マンション最上階
エレベータが到着する ドアが開くとマリアが飛び出し ハッとして慌ててエレベータのボタンを押す レイがエレベータを出ると マリアが部屋のドアへ向かい鍵を開け ドアを開けて言う
「こちらがっ お、お部屋で御座います…っ」
レイが入る マリアが入りドアを閉めて言う
「えっと… 間取りの方は こちらのキッチンの奥にダイニングが…っ ダイニングの右側に 寝室が有りまして 逆側が…っ」
マリアが言いながら室内へ入って行き ダイニングの入り口に立って 左右を示しつつ言う
「そちらが 瞑想室となっております…っ 結界製造装置等の点検は 全て済まされていますのでっ …えっと 何か不備が御座いました際はっ ほ、奉者であります 私の方へ何なりと…っ!?」
マリアが早口に言い終えて 振り向くとすぐ横に レイが立って居て マリアがハッとしてレイの顔を見上げる レイがマリアへ向いて言う
「この部屋に 2人きりで居る間は 言動に気を張らずとも良い …そうであろう?」
マリアが一瞬呆気に取られた後慌てて言う
「は、はい…っ そ、そうっ です…っ!?」
レイが言う
「…それは 我も 同じく …なれば その 稚拙な言葉も必要ない 慣れた言葉で話したら良い」
マリアが言う
「あ、いえっ!私はウィザード様に お仕えする 奉者ですのでっ」
レイが言う
「我もこの外にて 言葉を放つ事は 許されず なればこそ この場所に居る間は 気兼ねなく 話をしたい」
マリアがホッとして言う
「あ… はい…」
マリアが思う
(良かった… 優しい人みたい …これなら)
レイが言う
「まずは 1つ教えて欲しい 我の奉者とある その方の名を」
マリアがハッとして思う
(き、来たっ!ウィザード様から 奉者への問い掛けっ!これに 私が答えたら きっとっ)
マリアがレイの顔を見上げる レイがマリアを見つめる マリアが頷いて言う
「わ、私は…っ!私の名前は マリア と申しますっ ウィザード様」
レイが微笑して言う
「マリアか 良い名だ」
マリアが微笑する レイが言う
「では マリア ウィザードの古き契約に従い 我は 我が奉者 マリアの望みを1つ受け入れよう 何でも良い 望みを申せ」
マリアが驚きレイの目を見つめる レイが言う
「何か あるか?」
マリアが言う
「はいっ!ウィザード様っ 私っ 1つ ウィザード様へ お願いがありますっ!」
レイが静かに頷く マリアが思う
(そうっ このお願いをする為にっ 私は 奉者になる事にしたのっ!お母さんっ 私 言うわっ!)
マリアが意を決して言う
「1度だけ… 1度だけですっ!私のお願いを聞いて下さいっ!私がいつか お願いをする その時にっ!ウィザード様の お力を 貸して欲しいんですっ!」
レイが言う
「そうか 我が名は …ん?…あれ?」
マリアがレイの法衣を掴んで言う
「お願いしますっ!ウィザード様!ウィザード様のお力が 必要な時が きっとある筈です!その時 私が お願いしたらっ 1度だけっ 私のお願いで 魔法を使って下さいっ!」
レイが呆気に取られた状態から 気を取り直して言う
「…ウィザードは 己の奉者は守るもの その様な願いをしなくとも マリアは我に守られる」
マリアが顔を左右に振ってから必死に言う
「違うんですっ!私だけじゃなくてっ 貴方様の奉者である 私だけじゃなくて!皆を守って欲しいんですっ もう二度と… あんな事故が起きない様にっ!」
マリアがレイの目を見つめる レイが間を置いて言う
「…分かった」
マリアが微笑して言う
「有難う御座いますっ!ウィザード様!宜しくお願いしますっ!」
マリアが勢い良く頭を下げる レイが言う
「だが 本当に その願いで良いのか?」
マリアが反応する レイが言う
「では マリア?マリアは我の事は 何と呼ぶつもりだ?」
マリアが呆気にとられて言う
「え?あ… それは…」
レイが言う
「マリア?」
マリアが微笑して言う
「あ、はい では… 私は!外に居る時と同じ様に 何処であっても ウィザード様の事は ”ウィザード様”と お呼び致します!」
レイが表情を顰めて言う
「…っ 本気か…?」
マリアが苦笑して言う
「はい 本来 ここで私が言うべきお願いは 貴方様のお名前をお伺いする 奉者だけの特権ですが… でも 良いんです!私が1人だけで 知る事が出来る ウィザード様のお名前は 他の人に伝える事も許されませんし それなら!?私は 私以外の人の役にも立つ こっちのお願いの方が!絶対 良い筈ですから!」
マリアが微笑む レイが頭を押さえて不満そうに言う
「あぁ… そう…?…うーん 何か すげぇ 予定 狂った」
マリアが驚き言う
「え?す、”すげぇ”って…?」
レイがマリアの肩を抱いて言う
「なぁ マリア?やっぱ そのお願い やめようぜ?」
マリアが呆気にとられて言う
「はあっ!?」
レイが言う
「だってさぁ?考えてもみろよ?折角 ウィザードと奉者なのに マリアが俺を 外でも内でも ”ウィザード様”だなんて呼んだらさぁ?何も始まらないジャン?」
マリアが固まっている レイが言う
「唯でさえ お互い 人の代表だの 人と神様の間だのってさぁ?外では 硬っ苦しく居なくちゃ いけないんだぜ?せめてここに居る時くらい お互い名前で呼び合わなきゃ 良い関係も 始まらないって?マリアも そう思うだろー?なぁ?マリアー?」
マリアの中のウィザードへの認識が崩壊する レイが疑問して言う
「マリア?」
マリアがぎこちなくレイを見て言う
「あの…」
レイが軽く言う
「ん?何だ?マリア?」
マリアが言う
「貴方 本当に ウィザード様 …ですよね?」
レイが軽く笑って言う
「え?あははっ この姿を見て そんな質問するのか?ここまで完璧な偽物が居たらさ?逆に すげぇって!」
マリアが言う
「いえ… その… 外見は完璧なんですが」
レイが言う
「ん?外見は?あぁ なら 中身の心配か?今は正直 なんかデカイ魔法を1発 見せろって言われてもな 結構キツイけど 俺の魔力はすげぇって!皆も言ってるから!」
マリアが言う
「いえ… そちらの方でもなくて… つまりその…」
レイが言う
「だからさ マリア?」
マリアが疑問して言う
「はい?」
レイが言う
「俺が居れば 儀式の失敗なんて有り得ない!儀式で起きる魔力の暴走は ウィザードの技量不足が原因なんだ けど俺は 5大属性魔法において 最も扱いが難しいとされている 風を操る その時点で 歴代のウィザードの中でも上位に入るんだ!な?これで 安心しただろう マリア?マリアが仕えるウィザードは 最強のウィザードだ!俺には その自信と実力がある!」
レイがマリアを見る マリアがレイを見上げる レイが微笑して言う
「だから 望みを撤回しろ それで」
マリアがハッとしてから言う
「い、いいえっ!駄目ですよっ!?」
レイが言う
「何で!?」
マリアが言う
「撤回はしませんっ!絶対っ!」
レイが言う
「ここまで言っても 信じられないのか!?」
マリアが顔を左右に振ってから言う
「そ、そうじゃないんですっ!私は ウィザード様の 実力ではなくてっ 私は!えっと…っ あれ?」
レイが言う
「だからっ ”ウィザード様”じゃなくてっ!」
マリアが言う
「”だからっ” お願いはっ 絶対変えませんっ!私 その為にっ!」
レイが言う
「”その為に”!?」
マリアが視線を泳がせてから言う
「…いえ?なら?…ウィザード様は?何でウィザード様に なったんですか!?」
マリアがレイを見る レイが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「それは もちろん!」
マリアが疑問して言う
「”もちろん”?」
レイがマリアを抱きしめて言う
「”マリアのウィザード様”になる為だよ!マリア!」
マリアが呆気に取られて言う
「は?…はぁあっ!?」
会社 昼休み
マリアが手作り弁当を前に溜息を吐く
「はぁ~…」
マリアが頭を抱えてうな垂れる リナとマキが顔を見合わせてから言う
「マリア…?」「どうしちゃったの?マリア?」
マリアが言う
「なんか… 幻滅しちゃって…」
マキとリナが呆気に取られてから言う
「確か 今日だったよね?ウィザード様を お迎えするって… マリア あんなに張り切ってたじゃない?」「もしかして それが 幻滅って事は…?」
マキとリナが顔を見合わせる マリアが言う
「アレ 本当にウィザード様なのかな…?私 もしかしたら 講習会の参加状態悪かったから その罰ゲームだったりして…」
マキが言う
「そんなに 酷いの?ウィザード様ってさ?アタシもちょっと聞いてみたんだけど?昨日マリアが言っていた通り 人と神様との間って感じで 人でありながらも もの凄い魔力を持っていて 神秘的で とっても… 人間離れしてる人なんだって?」
リナが言う
「人間離れしている人って…?」
マリアが不満そうに言う
「私もそう思ってた… 実際 途中までは とってもそんな感じで… 本当に 思っていた通りの… 神秘的で神聖なウィザード様 …だったんだけど」
マリアの中に レイの姿が思い出され マリアが深く溜息を吐いて言う
「全然 人間だったしっ 神聖なんかじゃなくて…っ」
マリアの記憶の中で強く思い出される
マリアが言う
『…いえ、なら ウィザード様は?何でウィザード様に なったんですか!?』
レイが言う
『それは もちろん!』
レイがマリアを抱きしめて言う
『”マリアのウィザード様”になる為だよ!マリア!』
マリアが立ち上がって言う
「アレやっぱり 偽物かも!?そんな理由で ウィザードになる筈なんて無いっ!ウィザード様がウィザードになるのは 神様に認められる為だものっ!ウィザード様たちが行う 神聖な灯魔儀式だって この世界を守る為の 神聖な儀式なのっ!それを行うウィザード様が あんな軟派な人で有る筈が無いっ!」
マキとリナが呆気に取られた後言う
「な… 軟派な人?」「…それじゃ 偽物なの?」
マリアが困りつつ言う
「う… う~ん… でも そうだとしたら お部屋とかは 講習用のものだったとしても 灯魔儀式の予定なんかは 講習で用意出来るモノじゃないし…?」
リナが言う
「灯魔儀式って 町中や近郊の村にある 魔除けの灯魔台へ 魔力を与える儀式でしょ?」
マキが言う
「そんなのあるんだ?…あ、もしかして 中央公園の真ん中にある 噴水の事?私が小さい頃は ずっと水が流れていたのに 10年くらい前から 水が無くなっちゃって」
マリアが言う
「うん 灯魔台の魔力は 定期的に魔力の供給をしていないと 止まってしまうの この町と近郊の村は 10年前までは この町のウィザードさまが守って下さっていたんだけど」
リナが言う
「それをまた動かす為の儀式をやるの?凄いじゃない!?やっぱり 私、あの公園には あの噴水があって欲しいし」
マリアが苦笑して言う
「う、うん… そうだね 私もそう思う それに 灯魔台は噴水だけじゃなくて 火や風や土や雷もあるの 何になるかはその土地や 力を与えるウィザード様によって 変わったりするらしいんだけど」
リナが微笑して言う
「うちのお父さんは 旅行に行くと その土地にある灯魔台をいつも見に行くの だから私も色々見たけど 火の灯魔台が一番多いみたい 次に多いのが水かな?」
マキが言う
「へぇ~ でも 公園の真ん中に 火が出る灯魔台なんてあったら 公園で遊ぶ子供たちに危なくないのかなぁ?」
マリアが言う
「灯魔台に灯される魔力は 周囲に結界を張って守る事に力を使っているから 実際に見えている火や水に力は無いの だから 灯魔台の火に触っても 熱くはないんだって」
マキが呆気に取られて言う
「えぇ~そうなの?何だか信じられない 火があるのに 熱くないだなんて」
リナが言う
「私 灯魔台の火や水に触った事があるけど 熱くもないし 冷たくもなかったわ …あ、でも 熱くは無いけど 暖かいって感じかな?水も同じ 川の水ほど冷たくは無いけど 水なんだって分かる程度に冷たいし 後は雷も ピリピリって静電気より弱い感触があったわ」
マキが感心して言う
「へぇ~… 不思議 何だか 魔法みたい」
3人が呆気に取られた後笑って言う
「そっか」「”魔法”だもんね?」「うんうん!」
マキが言う
「それで いつその儀式をやるの?もし中央公園のアレを動かすなら 私その儀式って見てみたいな」
リナが同意を示して頷く マリアが一瞬驚いて言う
「え?あ~…」
マキが残念そうに言う
「私たちは 見ちゃダメなの?」
マリアが言う
「ん?ううんっ!そんな事無い 大丈夫 見られる所もあるの!それが中央公園みたいな… それじゃ 中央公園の灯魔台に灯魔をする時には 2人にも知らせるね?」
マキとリナが嬉しそうに頷いて言う
「うん!よろしく!」「楽しみにしてるわ!」
マリアが苦笑して言う
「うん でも その前に あのウィザード様が 本物なら… って 話だけど…」
リナが言う
「そう言えば 今日 そのウィザード様を お迎えしたのに マリア 午後はこっちで仕事なんてしていて良いの?ウィザード様は?」
マリアが言う
「ウィザード様は…」
マリアの脳裏に記憶が戻る
レイがマリアを抱きしめて言う
「”マリアのウィザード様”になる為だよ!マリア!」
マリアが呆気に取られて言う
「は?…はぁあっ!?」
レイがマリアの頭を撫でた後マリアを見て言う
「んじゃ 手始めに 何しよっか?」
マリアが言う
「な…何って あの…」
レイが言う
「マリアが俺の実力を 信じてくれないなら しょうがない 望みの撤回は今度にして」
マリアが言う
「で、ですからっ 私は そちらを信じてない訳じゃ…」
レイが言う
「まずは お互いに もっと知り合って もっと仲良くなるには~ うん!それじゃ!今日はさ?」
マリアが言う
「きょ… 今日は… いえっ 本日はっ ウィザード様は まだ お体を休めなければ いけないんじゃないですか!?…寝室はそちらです」
マリアが寝室の方を手で示す レイが言う
「ん~ 確かに 少し休みたいけど」
マリアがバックから手帳を出しながら言う
「最初の頃は ご無理は禁物だそうです ですから 最初の儀式の予定も 5日から1週間後に入れるようにと言われています …それで どちらが良いですか?」
レイが疑問して言う
「え?」
マリアが不満そうに言う
「”え?”ではなくて 灯魔神館で執り行う灯魔儀式の予定です 今日はそちらを確認する事が 最重要事項ですから」
レイが言う
「それが 最重要?」
マリアが手帳をめくりながら言う
「そうです この町は10年間もウィザード様がご不在だったので 必要最低限の灯魔台への灯魔しかなされていないんです そのせいで 最近では郊外の村に沢山被害が出ていて 出来るだけ早くに 灯魔作業を開始して欲しいと言われていて… 要望も沢山来ているんです まずは 郊外の灯魔台への灯魔儀式を優先して」
レイが言う
「そんなの大丈夫だって!」
マリアが疑問して言う
「え?」
レイが苦笑して言う
「10年間も持ち堪えてたんだからさ?予定より もうちょっと遅れたって 大した事無いだろ?」
マリアが呆気に取られた後困って言う
「そ、それは そうかもしれませんが…っ」
レイが言う
「だから ゆっくり行こうぜ?そんな予定なんて 後で決める事にして …じゃあ 俺は少し休むから?」
レイが寝室へ向かおうとする マリアが慌てて言う
「あっ ま、待って下さいっ ウィザード様っ」
レイが立ち止まりマリアを見る マリアが言う
「えっと では、最初の灯魔儀式の予定は 5日後では 早いですか?」
レイが言う
「儀式の予定なんて 2,3日前に連絡すれば十分だよ それより 今はマリアの言う通り 少し休む …だから おいで?マリア?」
マリアが呆気にとられて言う
「え?おいでって?」
レイが言う
「マリアは俺の奉者なんだから 寝室でも何処でも 入って良いんだぜ?」
マリアが驚き頬を染める レイが微笑して言う
「だから こっち来て?2人きりで部屋に戻ったら やる事は決まってるだろ?」
マリアが怒って叫ぶ
「…わっ!?私はっ!私は そんな事をするつもりは ありませんっ!」
レイが呆気に取られて言う
「え?」
マリアが怒って言う
「ウィザード様っ!ウィザードは 神聖なものですっ 神様に選ばれる為に 鍛錬を積み より強い魔力を得る為に あらゆる面で禁欲しなければならない 大変な職業ですっ!」
レイが呆気にとられつつ言う
「あ… うん そりゃ 知ってるよ?だって俺 一応 そのウィザードだから?」
マリアが言う
「知ってるのならっ そうして下さいっ!大体…っ 分かりましたっ!十分お元気そうですので!?5日後の午後に 最初の儀式の予定を入れられるように 手配しておきますから!」
レイが困惑しながら言う
「ん?…あぁ そう?そりゃ 構わないけどさ?」
マリアが言う
「”構わない”んですね!?それじゃ 手配をしますからっ!詳しい時間の方は 後日お知らせします!」
レイが言う
「う、うん…」
マリアが手帳に書き込んでから 手帳を閉じて言う
「はい、お待たせ致しました!では ごゆっくり お休み下さい!」
マリアが立ち去ろうとする レイが言う
「え?あ、待ってよ マリア?」
マリアが立ち止まり振り向いて言う
「はいっ!何でしょうかっ!?」
レイが呆気に取られた後苦笑して言う
「あ… いや… だから その…」
マリアがじっと見る レイが言う
「何でも ない… です」
マリアが立ち去る
マキとリナが顔を見合わせてからマリアを見る マリアが表情を困らせて思う
(実はすっごい軟派男で いきなり寝室に誘われたっ!…だなんて言ったら この町のウィザード様が そんな人なんだって 噂になっちゃうかも…?それは ダメよね?アノ人が本物かどうかは分からないけど… 私が今言ったら それが この町のウィザード様としての 噂になっちゃうかもしれない!だから やっぱりっ アレは隠しておかないと!)
マリアが頷いて言う
「うん!」
マキとリナが疑問した後言う
「マリア?」
マリアが気を取り直して言う
「あ、うん!あの… きっと!まだ ウィザード様として!お体の調子が整っていないせいなのかもしれないから!5日間 ゆっくり休んだら きっと!身も心も安らいで 神聖なウィザード様として 生まれ変わるんだと思うから!」
マキとリナが呆れて言う
「う… 生まれ変わる?」「じゃぁ 今は…?」
マリアが困って言う
「い、今は… その…」
リナが心配そうに言う
「もしかして 暴力とか… 振るわれたりした?」
マキが驚いて言う
「えー!?うそーっ!?」
マリアが言う
「え、えっと…」
リナが心配そうに言う
「無理しちゃ駄目よ?マリア 奉者様として 頑張らなきゃいけないとか言っても 相手は 凄い魔法を使う人なんでしょ?それに ウィザード様って 皆 男の人だし…」
マキが言う
「そうだよっ マリアは可愛いし 本当に身の危険を感じたら 他の人に変わってもらったほうが良いよ!講習受けていた人は 他にも居るんでしょっ!?」
マリアが呆気に取られた後苦笑して言う
「う、うん… ありがとう とりあえず もう少し様子を見てみるから 次は 5日後… あ、その前に 時間を伝えに行かないと… あ!その前に 手配を整えておかなきゃ!」
マリアが手帳を取り出して調べ始める マキとリナが顔を見合わせてからマリアを見る マリアが手帳をめくり作業をしている
4日後
マリアが会社を出てから気を張って言う
「よしっ 行くぞっ」
マリアが一度頷いてから大通りへ向かいタクシーを止める
マンション
マンション前にタクシーが止まりマリアが降り マンションに入って行く
最上階
エレベータが到着の音を鳴らしドアが開く マリアが出て来て部屋のドアの前で思う
(奉者の心構え1!奉者は ウィザードの従事者として 堂々と 且つ 丁寧に 自信を持って…っ)
マリアが正面を見据えてからインターフォンを押す マリアがハッとして思う
(…てっ これウィザード様に対しての 心構えじゃなかった…っ)
マリアが間を置いて疑問して首を傾げてから 思い出して言う
「あ、そうだ 私 この部屋の鍵を 持ってるんだった …でも 2人で戻る時以外も 開けちゃって良いのかな?」
マリアがバックから鍵を取り出し見つめてから 表情を落として言う
「やっぱり 罰ゲームじゃ なかったのかなぁ…?アノ人が本当に 私の… 私の… ウィザード様…?」
マリアが溜息を吐く
「はぁ…」
マリアが鍵を開けながら言う
「見た目は確かに ウィザード様なんだけどなぁ…」
鍵が開く マリアがドアを開けながら言う
「失礼します ウィザード様」
マリアが正面を向いた状態から ふと気付いて横を向くと レイがキッチンのシンク近くで水を飲み終えた様子で振り向いて 一瞬2人が止まった後 レイが言う
「マリアーっ!」
マリアが一瞬後づ去ると レイがマリアを抱きしめて言う
「酷いよっ マリアっ!4日間も来てくれないだなんてさっ!俺 見捨てられたかと思って すっげー心配して!」
マリアが息を吐いてげっそりする マリアが気を取り直し 不満そうに言う
「ウィザード様 お体の調子は如何でしょうか?灯魔儀式は出来そうでしょうか?」
レイが苦笑して言う
「灯魔儀式なんて!そんなに急がなくても 灯魔台は逃げないぜ?」
マリアが言う
「灯魔台は逃げないですけど 悪い魔力のせいで 自然環境が狂わされたり 郊外では野生動物が凶暴化しての被害とか …何より この町や同じ区域にされている近郊の村の人たちは 灯魔台に魔力が灯されていない事で 不安に駆られるんです ですから」
レイが言う
「ああ 分かったよ とりあえず あれだろ?この町に配属されたウィザードが その灯魔作業を開始したって事実で 安心させたいって?マリアは優しいなぁ?」
マリアが苦笑して言う
「優しいって言うか… 母がそうしているのを見て 素敵だなって思ったんです …人々に安心と安らぎを与えられる そんなすごい事が出来るお仕事って 少ないと思いますし …あ、いえっ そのっ 儀式を行うのは もちろん ウィザード様ですがっ!」
マリアが慌てて訂正すると レイが一瞬疑問した後微笑して言う
「その手配をするのは マリアだろ?だったら 十分 マリアが素敵じゃないか?」
マリアが驚き 微笑してレイを見て言う
「ウィザード様…」
レイが言う
「だって ウィザードは そんな事 考えてないからな?」
マリアが驚いて言う
「え…っ?」
レイが言う
「ウィザードにとっての 灯魔儀式って言うのは 自分の魔力が どの程度高まったのかを 確かめるだけのものだよ」
マリアが言う
「そ、そんなっ!」
レイが言う
「それが 人と神様との間だって言われる ウィザードってもんだよ?マリア」
マリアが呆気に取られる レイが苦笑する マリアが視線を落として言う
「どうして… だってウィザード様は 世界を救える凄い魔力を持っていらっしゃるのに…っ どうしてそれを皆の為に 使おうと思わないんですか!?」
レイが言う
「それは マリアもこの前言ってただろう?ウィザードは 神聖なもので 神様に選ばれる為に 鍛錬を積んでるんだって つまり その通りで 普通のウィザードは神様に選ばれる事を目指しているんだから 人の為になろうなんて事は考えてないんだよ?」
マリアが気付いてショックを受ける レイが微笑して言う
「けど、俺は違う!」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「俺は 神様に選ばれるんじゃなくて マリアに選ばれる為に ウィザードになったんだからな!」
レイが笑顔になる マリアが呆れて言う
「はあ?」
レイが言う
「だからさ?マリアが俺にお願いするんだったら 何でもやってやるぞ!俺にとっては それこそ 神々にどう思われようが どうでも良いんだ!マリアの為になる事が 一番だからさっ!」
マリアが呆れ困りつつ言う
「いえ… 神々は良くとも 私じゃなくて 人々の為になる事を 考えて頂きたいと…」
レイが言う
「じゃ、早速 時間も時間だし 一緒に夕食でも食べに行こうか!?マリア!」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「何が食べたい?何処か高級な店でも行って 美味しい物食べようか?折角 マリアと俺が会ったのに まだ何も お祝いとかしてないしさ!?」
マリアが困って言う
「え… えっと… あの…?」
レイが言う
「ああ、金の心配とか 要らないぜ?街に所属するウィザードに掛かる費用は 全部無料からな!」
マリアが叫ぶ
「人々の税金ですっ!」
翌日 会社
マリアが時計を見て溜息を吐く
「はぁ~…」
マキがやって来て言う
「マーリア!」
マリアが振り向くと マキが嬉しそうに言う
「昨日はどうだった?ウィザード様は… 結局 偽物だったの?」
マリアが困りつつ言う
「う~ん 残念ながら 本物… みたい 昨日 今日の儀式の時間を伝えに行ったんだけど …やっぱり アノ人が 普通に 居たし」
マキが首を傾げて言う
「普通に居たって?」
マリアが溜息を付いて言う
「てっきり 講習会の先生が ”どっきり罰ゲームでした~”なんて 出てきてくれるのを 期待してたんだけど」
マキが一瞬呆気に取られた後笑って言う
「あははっ 面白い!でも もし そうだったら マリアは奉者様じゃ なくなっちゃうんでしょ?だったら 本物で良かったじゃない!?」
マリアが言う
「うーん… それは そうだけど …これから 毎回アレが続くのかと思うと」
マリアの脳裏に マリアに抱きついてくるレイの姿が思い出される マリアが溜息を付いて独り言の様に言う
「昨日だって アノ後 時間を伝えて さっさと逃げて来たけど… このままじゃ何時 向こうの思い通りにされちゃうか 分からないし… はぁ… 一体どうしたら良いんだろう?」
マキが疑問してから 気を取り直して言う
「それで 今日の儀式の時間を伝えて来たって事は 午後の半休は やっぱり その儀式に行く為だったんだ?」
マリアが気付いて言う
「あ、うん 仕事 割り振っちゃって御免ね ちゃんと3日以上前に申請したんだけど」
マキが微笑して言う
「良いよ良いよー!丁度シフト空いてたし マリア頑張ってね!」
マリアが微笑して言う
「うん!ありがと!それじゃ 行ってきます!」
マリアが立ち上がる マキが微笑して言う
「行ってらっしゃ~い!」
マンション
マンション前にタクシーが止まると マリアが降りてエレベータへ向かう
最上階
エレベータが到着の音を鳴らしドアが開く マリアが出て来て部屋のドアの前で思う
(ここまで来て ”やっぱり 嘘でした” なんて事は もう無い筈だから…)
マリアが正面を見据えてからインターフォンを押して思う
(こうなったら 私が!何が何でも あの人を ウィザードに見えるようにっ 何とかしないと!)
マリアが気合を入れて思う
(そうよ!私は 奉者なんだからっ!私がしっかりして!例え あんな…っ 軟派な人でも… やっぱり ウィザード様なんだから!)
マリアが頷き 鍵を探し ドアノブを掴んで言う
「ウィザード様…」
ドアに鍵は掛かっていなく マリアが一瞬驚いてからドアを開けて言う
「ウィザード様?お迎えに上がりまし た…」
マリアが顔を上げると 一瞬で空気が変わり 神聖な空間にレイがウィザードらしい冷たい表情で歩く マリアが驚き言葉を失っていると レイが横まで来てマリアを見る マリアがハッとして慌てて言う
「エ、…エリーム村の灯魔台神館へ向け お、お車の用意が されています」
マリアが視線を泳がせた後 押さえていたドアを更に開けて道を譲る レイがドアを出るとマリアがドアに鍵をかけ 横目にレイを見る レイは正面を向いたまま居る マリアが戸惑いつつ思い出した様に慌ててエレベータへ向かう レイがゆっくりマリアを追う
エレベータ内
マリアが回数ボタンの近くに立っていて 回数表示が下がるのを見つめつつ思う
(この人… アノ ウィザード様… だよね?本当に…?)
マリアが横目に見ようとして止めて思う
(そういえば 初めてお迎えした時も こんな感じで…)
マリアが視線を落とす エレベータの到着音が鳴る マリアが顔を上げ 開扉延長ボタンを押して待つ レイがエレベータを出て行く マリアが続き外へ視線を向けると車が見える
マンション 外
レイが車の近くへ歩いて来ると マリアが助手席側へ走り乗り込んで 運転手へ言う
「お疲れ様です エリーム村の灯魔台神館へ お願いします」
運転手がマリアへ向き言う
「お疲れ様です 奉者様 目的地まで 私が責任を持って お送り致します」
マリアが微笑すると 後部座席にレイが乗り込む マリアが一度視線を向ける レイは視線を向けずに居る 後部座席のドア付近に風が舞い ドアが閉まる 運転手が言う
「では 発車致します」
マリアが言う
「はい」
車が動き出す マリアが一度周囲を見てからレイを見るが レイの表情は帽子のつばに隠れて見えない マリアが一瞬表情を落としてから気を取り直して座り直す
エリーム村 灯魔台神館 外
車が到着すると マリアが車を降り神館を見上げ 呆気に取られて言う
「これが灯魔台神館…」
マリアがハッとして言う
「あっ いけないっ!」
マリアが思う
(今の私は 観光に来てるんじゃないんだからっ!)
マリアが一度頷き 神館へ向かおうとして立ち止まり振り向くと 車の後部座席ドアが開きレイが降り ゆっくり歩いてマリアの近くまで来る マリアが一度レイを見てから言う
「で、では 行きましょう!」
マリアが視線を逸らすように歩き出す レイが続く
通路
案内がマリアの先を歩きながら言う
「奉者様からご連絡を頂き 村民一同 今日のこの日を心待ちにしておりました 既に 灯魔台巡礼者の方々が 儀式の成功と安全を祈願して集まっています」
マリアが驚いて言う
「巡礼者の方々が 集まって?」
案内が微笑して言う
「はい 10年振りに 灯魔台へ力が戻るとあって 皆喜びと期待に胸を高鳴らせています 何処の神館も同じかと思われますが このエリーム村を優先して頂けた事を とても有り難く思っております マリア奉者様」
マリアが慌てて言う
「あ、い、いえっ こちらのエリーム村からの 灯魔儀式要望書は 要望受付当日に着ていたのはもちろんでしたが そこに記載されていた文章が とても 印象的で」
案内が一瞬驚いた後微笑して言う
「文章まで読んで下さっていたとは 光栄です あちらは私が記入したのですが この村の皆の強い要望を 十分に伝えきれていないと 心配していたので」
マリアが微笑して言う
「いえ!とっても強く 伝わって来ました!私 それで…っ」
マリアが慌てて口を隠して周囲を見る 案内が目的地のドアの前に立ち微笑して言う
「マリア奉者様が この区域の奉者様で 本当に良かったです どうか宜しくお願いします」
案内が一礼する マリアが一瞬驚いた後 戸惑いながら 自分の後方に居るレイを伺いつつ言う
「あ、は、はいっ こちらこそ えっと…っ」
案内がドアを開く マリアが開かれたドアの先を見て驚く 大勢の人々の視線が向く マリアが息を飲むと 横をレイが過ぎる マリアが驚く レイが会場内に入ると 人々が息を飲み周囲がしんと静まる レイが堂々と灯魔台へ向かって行く マリアが言葉を失っていると 案内がマリアに先を促し マリアが慌てて一歩入ると 案内がドアを閉める
(※読まなくても良い長文開始↓)
マリアが見つめる視線の先 レイが一度灯魔台へ左手をかざし 軽く5大魔力の性質を確かめる 火の反応が僅かに高い レイが僅かに目を細めてから 灯魔台と距離を取り 向き直ると 魔力を収集する マリアが呆気に取られて見つめる先 レイの前に杖が浮き上がり会場内に火の魔力が集まり始める 人々が見つめる先 周囲の装置から火柱が立ち上がる マリアが驚き周囲を見渡してからレイを見る レイは無表情に居る 人々が息を飲む中 炎が渦巻き灯魔台の上空に大量に結集する 人々が怯え始める マリアが目を見開き怯えると 炎が一気にレイへ向かって来る マリアが息を飲む 炎がレイの前にある杖に突っ込むと杖が光り炎を全て押さえ込む 人々が思わず驚愕の声を上げる マリアが驚きに言葉を失っている レイが杖を掴み一振りすると 押さえられていた炎が舞い上がり 灯魔台に上空から叩き込まれる 激しい衝撃に人々やマリアが思わず目を閉じると 一瞬の後
(※読まなくて良い長文終了↑)
静まった館内の灯魔台に静かに炎が上がり 周囲の灯魔台に連動した装置にも炎が灯っている 人々が言葉を失う レイが向き直り来た道を戻り歩く 人々が慌ててレイへ信仰の眼差しを向け 祈るようにレイの歩みを見守る マリアが驚きに言葉を失って思う
(…凄いっ!これが 灯魔儀式っ それに… 他を圧倒する 魔力と存在感… 間違いないっ この人は!やっぱり ウィザード様なんだ!…こんな 凄い人が 私の… 私の ウィザード様っ!?)
マリアがハッとして顔を上げると レイがマリアの前で立ち止まっている マリアが一度レイの顔を見上げた後 慌てて言う
「お、お疲れ様で 御座いました…っ」
いつの間にか開かれていたドアを押さえ 案内が深く頭を下げて言う
「有難う御座いました 奉者様 これでエリーム村も 平穏を得られます」
マリアが一瞬驚いて案内を見てから ホッとして微笑する レイがマリアと案内を一瞥してから立ち去る マリアが一瞬驚いて言う
「あ…っ」
マリアが慌てて追う
エリーム村 灯魔台神館 外
マリアが神館を急いで出て バックから携帯を取り出しながら言う
「す、すぐに車を呼びますのでっ 少々お待ち下さい!」
レイがマリアの後ろに来て マリアの耳元で小さく言う
「必要ない」
マリアが疑問して振り返りながら言う
「え…?」
レイが杖を持った片腕で マリアを包む様に抱く マリアが驚いて言う
「あ!あの…っ!?」
マリアが驚いていると目の前で杖の魔石が光る マリアが驚くと体が浮き上がり マリアが思わず言う
「キャッ!?」
レイとマリアの周囲に風が舞い マリアが思わずレイにしがみ付いて思う
(な、何っ!?私っ どうなって…っ!?)
マリアが強く目を瞑っていると ふと疑問して思う
(あ、あれ?)
マリアが地に足の着いている感覚に目を開き 横を見て言う
「こ… ここは…」
マリアの視線の先に レイの部屋が見えている マリアが呆気に取られると レイが言う
「マリアー!」
マリアが呆気にとられて言う
「え?」
マリアが向き直ろうとすると レイがマリアに抱き付く マリアが思わず言う
「なぁっ!?」
レイがマリアの頭を撫でつつ言う
「やっぱ 外はお堅くて メンドクサイよなぁ~?マリアもそう思うだろ~?」
マリアが困惑しながら言う
「あ あの… ウィザード… 様…?」
マリアが思う
(あ、あれ?…えっと…?この人 さっきと 同じ… 人… よね?)
レイがマリアの顔を見て言う
「でも これでマリアも 俺の力を認めたよな?」
マリアが呆れつつ言う
「は はい… 残念ながら… あんな凄い事 ウィザード以外の人に 出来る訳無いですし… …認めるしか」
レイが言う
「あー… けどさ?あれ 俺 思ったんだけど ウィザードじゃなくても 出来るな?」
マリアが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?」
レイが得意げに言う
「だって 俺 実力の5割も出さなかったぜ?あんなのが ウィザードの灯魔儀式だったなんて なんか すげぇ 拍子抜けって感じ?」
マリアが驚いて言う
「そ、それって… つまり あんな凄い事でも 余裕があったって事ですか?」
レイが笑んで言う
「全然余裕!」
マリアが驚く レイが言う
「一応 初めてだったからさ?丁寧にやったつもりだけど あんなもんなら もっと ちゃっちゃと終わらせて それこそ マリアとお茶でもしてる方が よっぽど有意義だな?」
マリアが衝撃を受け 慌てて怒って言う
「神聖なる灯魔儀式をっ 女の子との お茶の時間と 一緒にしないで下さいっ!」
レイが言う
「だって 俺にとっては そっちの方が大切だもん?」
マリアが怒って思う
(この人はーっ!!)
レイが言う
「って事で 俺の実力は分かっただろ?マリア?」
マリアが疑問して言う
「え?えっと… 常人の私には 魔法の事は分かりませんが… とりあえず 凄いと言う事は分かりました」
レイが言う
「うーん なら それでも良いや?…で?そう言う事だからさ?例の望みは撤回するよな?」
マリアが言う
「は?」
レイが言う
「は?じゃなくて あの 奉者のマリアから ウィザードの俺への お願いって奴だよ」
マリアが気付いて言う
「あ… あぁ… あれは」
レイが言う
「あんなお願いは 俺には必要ない!さぁ マリア 改めて マリアの望みを訊こう!」
マリアがレイを見上げる レイが微笑して言う
「そうしないと 何時まで経っても マリアは 俺を名前で 呼べないだろう?」
マリアが視線を逸らして言う
「それは… そうですけど…」
レイが微笑して言う
「な?だから さぁ!」
マリアが気付いて言う
「あ、でも…?」
レイが疑問して言う
「ん?」
マリアがレイへ向き直って言う
「今日の感じだと 私がウィザード様のお名前を知らなくても 何も不都合は無かったですよね?」
レイが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
マリアがそっぽを向いて言う
「それなら 私 このままでも 良いような気がします」
レイがマリアへ言う
「ダーメー!」
マリアが言う
「何でですか?」
レイが言う
「何でってっ!?」
マリアが言う
「それに 私のお願いは ”私の”お願い なんですから ウィザード様が 名前で呼んでくれって言うのでしたら それは ”ウィザード様の”お願いですから それで良いじゃないですか?」
レイが衝撃を受けて言う
「なっ!?そ、それじゃっ マリアからのお願いじゃ 無いじゃないかっ!?そんなんじゃ 始まらないだろ!?」
マリアが言う
「始まらなくて 結構ですっ 大体 ウィザード様は 何で そうなんですか!?ついさっきまでは とっても ウィザード様らしかったのに それこそ お名前で呼び始めたりなんてしたら 儀式の時まで このままになりそうで困ります」
レイが言う
「別に良いじゃないか~?ウィザードだろうが何だろうが 灯魔台に火でも水でも灯れば良いんだろぉ~?」
マリアが慌てて言う
「駄目ですよっ!?」
レイが言う
「何で?」
マリアが言う
「な、何でって それはっ!」
レイが言う
「”それは”?」
マリアが悩んで言う
「そ… それは…」
レイがマリアを見る マリアが言う
「それは 貴方が ウィザード様 だからですっ!」
翌日 会社
マリアが溜息を吐く
「はぁあ~…」
マキとリナが顔を見合わせた後 心配して言う
「マ、マリア?」「大丈夫?マリア 凄い溜息だけど…?」
マリアが苦笑して言う
「あ、ごめん 大丈夫…」
マキとリナが顔を見合わせてから微笑して マキが言う
「あのね!マリア!」
マリアが疑問して言う
「ん?」
リナが言う
「実は マリアが奉者様になった事を お祝いしようって 話してたんだけど どう?」
マリアが呆気にとられて言う
「え?お祝い?」
マキが喜んで言う
「そうそう!それでね!?良ければ今日 会社が終わってから 3人で イタリアンのお店に行こうって!マリア 今夜大丈夫そう?」
マリアが言う
「あ、うん お昼休みの内に 次の儀式の予定を入れちゃえば良いし 大丈夫!」
マキが言う
「やった!」
マリアが言う
「でも イタリアンのお店なんて 近くにあったっけ?」
リナが微笑して言う
「実は 5日前にオープンしたばっかりの 新しいお店なのよ?」
マキが言う
「特にデザートの種類が一杯あって とっても美味しいんだって!」
マリアが喜んで言う
「そうなんだ?ふふっ それはチェックして おかないとだね!?」
マキが言う
「でしょでしょー!?」
リナが言う
「もぉ マキ それじゃ マリアのお祝いじゃなくて ただ新しいお店に 行きたかっただけ って事がバレバレじゃない?」
マキが照れて言う
「えへへ~ 実はそうなんですー」
3人が笑う
就業後
会社からマリアとリナとマキが出て来て マリアが言う
「それで お店は何処にあるの?」
リナが言う
「えっと~ 番地は31で良かったっけ?」
マキが言う
「うん!そうそう!」
マリアが疑問して言う
「番地って… 通りの名前は?」
リナが言う
「通りの名前は マキストリート!」
マリアが呆気にとられて言う
「え?そんな名前の通りなんて…」
マキが笑って言う
「違う違う!マキリンストリートだよ~ お爺ちゃんは私の事 マキリンって呼ぶから そうなっちゃったの」
マリアが驚いて言う
「マキのお爺ちゃんがって それって どう言う意味?」
リナが言う
「少し前に イーストエンドに出来た新しい通りがあるでしょ?あの通りって その周りの田畑の所有者である マキのお爺ちゃんの土地だったんだって それで 通りの名前に孫の名前をつけたんだよね?マキ?」
マキが言う
「そうそう でも お爺ちゃんってば マキリンで付けちゃうんだもん 通りの名前なのに おっかしいよね~?」
マリアが微笑して言う
「ううん!良いじゃない!素敵だよ!」
マキが照れて言う
「えへへ~ そうかなぁ?」
リナが大通りを見て言う
「バスは行っちゃったみたいだけど タクシーは来てるわね 少し遠いから 3人で割り勘して タクシー乗っちゃわない?」
マキが言う
「賛成ー!次のバス待ってたら 時間もったいないよ!お店は人気あるから 早く入店して名前を書いとかないと 待ち時間凄くなっちゃうって 書いてあったから!」
マリアたちがタクシーへ乗り込む マキが言う
「マキリンストリートの31まで お願いしまーす!」
マリアが微笑する タクシーのドアが閉まり発車する
タクシー内
マリアたちが話をしていて リナが言う
「私、パスタも良いけど イタリアンならピザが食べたいかな?」
マリアが言う
「ピザも美味しいよね?」
マキが言う
「ピザなら軽いから デザートも沢山食べられそうで良いねー?」
リナが言う
「マキはデザートの事ばっかり」
マキが笑って言う
「だってぇ~」
マリアたちが笑う リナが窓の外を見て言う
「そう言えば この通りの名前も マキのお母さんの名前だっけ?」
マキが言う
「そうそう ついでに この隣の通りは お父さんの名前だよ」
マリアが言う
「凄いねー マキのお爺ちゃん 大地主さんなんだ?」
マキが言う
「昔はねー 今はもう この辺の土地は全部売っちゃって 通りの名前だけ残ってるだけだよ」
リナが言う
「でも マキリンストリートの周りの田畑は まだ マキのお爺ちゃんの土地なんでしょ?」
マキが言う
「うん、そうなんだけど 最近は干ばつが酷いから もう駄目かもしれないって言ってた 10年くらい前までは良いお米が取れてて 凄く良かったらしいんだけど」
リナが言う
「そうなんだ… そう言えば 最近全然 雨降らないもんね…?」
マリアが気付いて言う
「あ… それは… 中央公園の灯魔台が 切れているせいかも」
友達たちがマリアを見て リナが言う
「そうなの?」
マリアが言う
「うん… 多分そうだと思う この辺りの区域だと 隣接している村の灯魔台も影響するけど 中央公園は水の灯魔だったから きっと そっちの影響だと思う」
マキが言う
「それじゃ マリア!中央公園の灯魔台を動かせば 良いって事だよね!?」
マリアが言う
「それはそうなんだけど 灯魔台の効力は 自然の力を元に戻すだけだから 動かしたらすぐに雨が降るって訳じゃなくて 自然の環境が戻るには やっぱり時間が掛かっちゃうの それでも大丈夫そう?」
マキが落ち込んで言う
「うーん… それじゃ 駄目かも… 今週中に1度でも雨が降らなかったら 収穫前に稲が枯れちゃうって言ってたし」
リナが言う
「今週中かぁ… 今週の天気予報じゃ ちょっと …厳しいかもね」
マリアが表情を落とす マキが苦笑して言う
「しょうがないよ お爺ちゃんも 畑はギリギリでも田んぼはもう駄目だろうって事で マキリンストリートを造る事にしたんだもん きっと アノ通りの周りも ここと同じ様に 会社や住宅地になるんだと思う」
リナが苦笑して言う
「そっか…」
マリアが言う
「もう少し早く ウィザード様が この町に来てくれていたら…」
イタリアン店
マキが名前を書き 店を出てくると 外に待たせていたマリアとリナへ言う
「1時間待ちだって~」
マリアが言う
「うわ~ 流石人気店だね?」
リナが言う
「大丈夫!そう思って ウィンドショッピングのお店は チェックしておいたから!」
マキが言う
「おおー 流石 流行の最先端を行く女!リナ!」
マリアが笑う リナが言う
「近くに洋服のお店とアクセサリーのお店があるのよ 行ってみない!?」
マキが言う
「行く行くー!」
マリアが言う
「うんうん!」
リナの先導でマキとマリアが歩く マリアが気付いて言う
「あれ?この通りって もしかして イーストエンドストリートに繋がってる?」
マキが言う
「そうそう だからあっち側から来る時には イーストエンドストリートの531って言えば同じだよ?」
マリアが衝撃を受けて言う
「え!それってもしかしてっ イーストエンドストリートの499とすぐ近くって事じゃない!?」
マキが言う
「そうだよ イーストエンドストリートの延長線だもの」
マリアが表情を顰めて密かに言う
「…って言う事は ここって アノ人の マンションの近くって 事…っ!?」
リナが言う
「あら?あの人って…」
マリアが衝撃を受けてリナへ向いて慌てて言う
「えっ!?何っ!?」
マキが言う
「あ!お爺ちゃん!」
マリアが疑問して言う
「え?」
リナが言う
「そうだよね?マキのお爺ちゃんだよね?」
マリアが友達たちの視線の先を見る あぜ道の途中に人だかりがある マキのお爺ちゃんが必死に頼んでいる マリアたちが疑問し リナが言う
「どうかしたのかな?何か…?」
マキが言う
「ごめんっ 私ちょっと 行って来る!」
マキが走り出す リナが言う
「あっ マキ…っ」
マリアが言う
「私たちも行こう!?」
リナが言う
「ええ!」
マリアとリナが追う
マキがお爺ちゃんの下に到着する マリアとリナが走っている途中で 人だかりの先にレイが居る事に気付き マリアが驚いて言う
「ウィザード様っ!?」
リナが言う
「え?ウィザード様って?ひょっとして あの人が マリアの…!?」
レイが周囲に魔力を収集する マリアや人々の周囲で微量の電流が見える マリアとリナが思わず立ち止まる 人々も驚きざわめく 周囲の空気が変わり人々が驚愕して辺りを見渡す マリアが驚いていると あたり一面に濃い霧が立ち込める 風が吹き始め 強風になり霧が風に巻き上げられて上空へ持っていかれる マリアや人々が見上げると レイが杖を振りかざす 上空で激しい音と共に霧が 田畑一面の上空に広がる 一瞬の後 ゆっくり雨が降り始める 人々が驚きに言葉を失う リナが思わず言う
「…凄いっ」
マリアがハッとしてリナを見てから レイへ向く レイが誰とも目を合わせずその場を後にする マキのお爺ちゃんが言う
「有難う御座いますっ!有難う御座いますっ!正に神のお力です!ウィザード様っ!」
人々が驚きに顔を見合わせる レイが歩くと人々が慌てて道を空ける マリアがその様子に気を取られているとハッとして レイがマリアの方へ向かって来ている事に気付き 慌てて思う
(い、いけないっ!今ここでっ!あの人の本性が出たらっ!ここに居る人たちはもちろん マキやリナにまでっ!)
マリアが慌てて視線を泳がせ レイを一度見てから思う
(どうしよう!?逃げ…?ううんっ だ、だめっ!もう間に合わないっ!)
マリアが観念すると レイがマリアの横を素通りする マリアが驚いて思う
(―…えっ!?)
マリアが振り返る レイは何事も無く立ち去って行く マリアが呆気に取られてレイの後姿を見つめる マリアが言葉を失っていると マキが言う
「マリア!」
マリアが驚いて振り返ると マキが言う
「お爺ちゃんが さっきのウィザード様の奉者様である マリアに お礼を言いたいって!」
マリアが慌てて言う
「え?あ、でも 私は何も…っ!?」
マキのお爺ちゃんが言う
「貴方様が あのウィザード様の奉者様で!?この度は 本当に有難う御座いました!この田畑は 私に残された大切なもので この干ばつにやられて 畑はもちろん稲が駄目になったら 大変な損害になる所でした 本当に助かりました!」
マキのお爺ちゃんが深々と頭を下げる マリアが慌てて言う
「あ、そ、それでは 私から… ウィザード様へ そう伝えておきますのでっ …私は 本当に 何もしていないので!お顔を上げて下さいっ」
マキのお爺ちゃんが微笑して言う
「いえ 全ては ウィザード様にお仕えして下さる 奉者様のお陰です」
マリアが驚いて言う
「そ、そんな… 決して そんな事は…っ」
マキが微笑して言う
「良かったね お爺ちゃん!」
マキのお爺ちゃんが嬉しそうに言う
「ああ… マキリンは素晴らしいお方を お友達に持ったんだね これからも仲良くして頂きなさい」
マキが言う
「は~い!」
リナが言う
「この雨で ずぶ濡れ ねぇ?ウィンドショッピングじゃなくて 本当に服を買って着替えないと お店にいけなくなっちゃうわよ?」
マリアが気付いて言う
「あ… そうだね それじゃ 急いで行かないと」
マキが言う
「それじゃ お爺ちゃん 私たち これから3人で ご飯食べに行って来るから」
マキのお爺ちゃんが言う
「ああ、行っておいで この雨をお願いしたのは お爺ちゃんだから これで皆のお洋服を買いなさい」
マキのお爺ちゃんがマキにお金を渡す マキが言う
「有難う!お爺ちゃん!」
マキのお爺ちゃんが嬉しそうに頷く マキがリナとマリアの腕を取って言う
「じゃ 行こう2人とも!早くしないと 風邪引いちゃうよ!」
マリアたちが頷き合い来た道を戻る マリアが一度マンションの方へ視線を向けてから 友達たちを追う
イタリアン店
マリアたちが食事を取っている マキが言う
「ねぇねぇ!マリア!”マリアのウィザード様” 本当に凄いね!」
マリアが一瞬驚いた後困って言う
「う… う~ん… 確かに 魔法は凄いんだけど…」
リナが言う
「そう言えば あんなに凄い ウィザード様なのに マリアはずっと 良くないって言ってたわね?」
マリアが衝撃を受ける マキが言う
「あー そう言えばそうだよね?何で?何処が悪いの?魔法はとっても凄くて ウィザード様自身も 噂通り!神秘的とか神聖 って感じだったよ!?」
マリアが困って言う
「う、う~ん 何て言うか その… 外に居る時は良いんだけど…」
マキが疑問して言う
「外に居る時は って言うのは~?」
リナが言う
「奉者様は 唯一ウィザード様とお話が出来る人だし 私たちには見せない部分が あるって事でしょ?」
マリアが溜息を吐いて言う
「はぁ~ そうなの 本当にそう いつもさっきみたいな感じで いてくれれば良いんだけど」
リナが言う
「でも いくらウィザード様でも ずっと気を張ってたら 疲れちゃうんじゃない?」
マリアが反応する マキが言う
「そうだよねー 外に居る時は駄目なら 内に居る時位は リラックスしないとねー!」
マキがデザートを食べる マリアが不満そうに言う
「それはそうかもしれないけど… あの人 気を抜くと すぐ私の事…」
マキとリナが反応してマリアを見て言う
「”私の事”?」「マリアの事をっ!?」
マリアが一瞬ハッとしてから視線を泳がせ 思いついて言う
「え… えっと… その… つまり… 奉者として以上の事を 求めてくるから 嫌なのっ」
マキが言う
「”奉者として以上の事”って言うと?」
マリアが困って言う
「それはその…」
リナが言う
「もしかして… 恋人としてって事?」
マリアが衝撃を受けて言う
「う…っ」
マキが喜んで言う
「きゃ~ 素敵~!恋人はウィザード様~っ!」
マリアが慌てて言う
「や、やめてっ!そんなのっ 駄目なんだからっ!」
リナが言う
「え~?良いじゃない?ウィザード様が恋人だったらー」
マリアが慌てて言う
「無い無い!ウィザードは 神聖な職業でっ そう言うのは駄目なのっ」
マキが言う
「え~ さっきは 突然の事だったからさ?あんまり見ていられなかったけど 凄い綺麗な人だったし 私ならOKだな~?」
リナが言う
「そうよね 何しろ ウィザード様だもの 何があっても 守ってくれそうだし!」
マリアが言う
「もうっ 2人までそんな事言わないでっ!?駄目なものは駄目なの!そもそも ウィザード様は 神様に認められる力をつける為に あらゆる禁欲をして 魔力を高める鍛錬をしなきゃいけないんだから 彼女なんて 持っての外なのっ!」
マキが言う
「あれ~ そうなんだ?」
リナが言う
「それじゃ”駄目”ね?」
マリアが溜息を付いて食事に手を付けながら言う
「そうなのっ それなのに あの人と来たら…っ そもそもウィザードになった 理由からして 駄目なんだからっ」
マキとリナが顔を見合わせて リナが言う
「あのウィザード様が ウィザードになった理由って?」
マキが言う
「わぁ~ 聞きたい 聞きたいっ!」
マリアが2人の熱いまなざしにたじろいで思う
(い、いけない… 思わず話し過ぎちゃった ここで 理由まで言ってしまったら…っ)
マリアが視線を逸らして言う
「い… 言いたくない…っ」
マキとリナが顔を見合わせた後 楽しんで言う
「ええー 聞きたい聞きたいっ」「そこまで言って 秘密だなんて マリアの意地悪~っ」
マリアが困って言う
「あぁっ もうっ ウィザード様は 神聖的な筈なのにっ!」
別の日の午前中 マンション 最上階
マリアがドアの前でインターフォンを押し 間を置いてドアを開けながら言う
「お早う御座います ウィザードさ…まっ!?」
マリアが言い終わる前に レイが抱き付いて来て言う
「マリアー!全然 お早くないよ マリアっ!何でもっと早く来てくれないのーっ!?」
マリアがうんざりして言う
「時間通り お迎えに上がりました」
レイがマリアを見て言う
「時間通りって 時間ギリギリじゃなかっ!?これじゃ 2人で ゆっくり お茶を飲んでる時間さえ無いよ!?」
マリアが言う
「その時間は 要りませんからっ お車の用意が出来ています!ウィザード様っ!」
レイが言う
「分かった」
マリアが軽く息を吐いてから言う
「はい、それでは…」
レイが言う
「じゃ 遅刻して行こう!」
マリアが怒って言う
「駄目ですよっ!」
レイが言う
「何で?」
マリアが言う
「何でもっ!って言うか 準備も出来てるみたいですし 遅刻する理由もありません!そもそも 儀式に遅刻するなんて 論外ですっ!行きますよ!」
マリアがドアを開けて先行する レイが言う
「あー 待ってよ マーリーアー?」
レイが追い駆け ドアを出た瞬間から ウィザードモードに切り替わる
エレベータ 内
マリアが回数ボタンの前に居る レイが少し俯いた様子で言う
「なぁ?マリアー?」
マリアが反応し振り向く レイが不満そうに言う
「部屋の前の監視カメラはともかくとして このエレベータ内のカメラって 要らないと思うんだけど?」
マリアが一瞬呆気に取られてから周囲を見上げて言う
「え?このエレベーター内の?…あっ」
マリアが上部に取り付けられている防犯カメラに気付く レイが言う
「このエレベータって 俺ら専用だし もし間違って誰か乗っても 部屋の前で分かるだろ?」
マリアが言う
「それは そうかもしれませんが… でも 折角あるのですから 別にあっても良いのでは?」
レイが言う
「いや 駄目だ」
マリアが言う
「何でですか?防犯カメラは いくつあっても良いと思いますけど?」
レイが言う
「だって 折角の この待ち時間の間 俺とマリアで仲良く出来ないジャン?」
エレベーターが1階に到着する マリアが怒りながら降りて言う
「このままで 結構ですっ!」
レイが追って言う
「折角の時間なのになぁ…?」
マリアが足早に車の助手席に乗り込み マリアが運転手に言う
「お早う御座います マミール村の灯魔台神館まで お願いします」
マリアが良い終える頃 後部座席にレイが乗り込んで来る 運転手がマリアへ向いて言う
「はい お早う御座います それでは マミール村の灯魔台神館へ 向かわせて頂きます」
マリアが微笑して頷いてから後部座席を様子見る レイは目を瞑って俯いている マリアが前方を向いてから首を傾げて思う
(本当に 何考えてるのかな?このウィザード様は…?)
車が発車する
マミール村 灯魔台神館
人々が見つめる先 レイが魔力を収集している 周囲の設備から砂が舞い上がる マリアが反応して思う
(砂… それじゃ この灯魔台には 土の灯魔をするんだ…)
周囲に砂が巻き上がり 上部に集中する 人々が驚き驚愕する中 マリアが冷静に思う
(以前の灯魔の時と同じ… あの時は火だったし 初めて見たから驚いたけど… 今思えば 田畑に雨を降らせた時の方が 凄かった気がする…)
上部に集中した砂が一気にレイへ向かって来る 人々が息を飲む中 砂の攻撃がレイの前にある杖に防がれる マリアが見つめる先 レイが杖を掴み振りかざすと 砂の攻撃が上空に弾かれ灯魔台に叩き込まれる 人々が怯える中 マリアが思う
(この力は ウィザード様にとっては 実力の5割未満だって言ってたけど 確かにそうなのかも…?でも それだって やっぱり 凄い…)
辺りが静まった中 灯魔台から静かに砂が流れ始める 周囲の装置にも同じ様に砂が流れる 人々が言葉を失う レイが向き直り来た道を戻り歩く 人々が慌ててレイへ信仰の眼差しを向け 祈るようにレイの歩みを見守る マリアが微笑すると マリアの横に居た管理人がマリアへ向き言う
「本当に有難う御座いました マリア奉者様」
管理人が深々と頭を下げる マリアが一瞬呆気に取られた後慌てて言う
「あ… い、いえっ」
管理人が微笑して言う
「この村の村民一同を代表して マリア奉者様へ 御礼申し上げます」
マリアが困って言う
「そんなっ とんでもないです 私は手配をしただけですからっ お礼でしたら…」
レイがマリアの横を過ぎる マリアがレイを見てから慌てて管理人へ言う
「あ…っ で、では 私たちは これで 失礼しますっ!」
マリアが急いでレイの後を追う 管理人が頭を下げて見送る
マンション レイの部屋
マリアの足が地に着くと共に レイが言う
「マリアー お疲れさ… ―がっ!?」
レイが抱き付こうとした先 マリアが上手く回避する レイが壁に激突する マリアが言う
「先日はびっくりしましたけど 本当に魔法で 魔法みたいに行きたい所へ 移動出来るって 便利ですね?」
レイが壁から顔を離して言う
「ま、まぁね…?風の魔法は何かと便利だから 俺は 取得するなら絶対これだって 思ってたよ」
マリアが言う
「でも ウィザード様は 水の魔法も使えるんですよね?先日は 田畑に雨を降らせてましたし」
レイが振り向いて言う
「ウィザードは5大魔法 全部使えるのが前提だからな?けど 雨にするには やっぱり 風の力が重要なんだ 水だけ滝みたいに一瞬で流したって 雨にはならないだろ?」
マリアが気付いて考えながら言う
「あ… そう言う事なんですか?」
レイが言う
「そう言う事 …って 事で マリア!」
レイがマリアに抱きついて言う
「堅い話はこの位にしてさ!?一緒にっ!」
マリアがレイを退かして言う
「では 次は!午後2時にお迎えに上がりますのでっ 休憩しておいて下さいっ!」
レイが言う
「なら その前に 一緒にっ!」
マリアがレイの抱擁を回避して言う
「私も お昼休憩を頂きますから!」
レイが言う
「えーっ 折角 午後も儀式に行くんだからさ?マリアも ここで休憩しなよ?でもって 一緒にっ!」
マリアがドアを開けて言う
「私は失礼しますっ!」
マリアが外に出てドアを叩き閉める マリアが息を吐いてから エレベータへ向かいながら言う
「はぁ… ウィザードとしての能力は十分あるのに どうして あーなんだろう?アノせいで 魔力が落ちちゃうとか ないのかな?何だか心配…」
中央公園
マリアが手作り弁当を食べながら思う
(そう言えば…)
マリアが振り返る マリアの腰掛けているのは水のない噴水 マリアが灯魔台を見て言う
「隣町のマミール村に土の灯魔をしたのだから この中央公園に水の灯魔をしたら マキのお爺ちゃんの田畑が潤うのかもしれない… ここの灯魔要望は…」
マリアが手帳を出し 調べてから言う
「あ… やっぱり要望書は出てる どうして 優先してなかったんだろう?」
マリアが弁当を片付けバックを漁り 要望書類のファイルを開く
マンション レイの部屋
マリアがドアを開けて言う
「失礼します ウィザード様」
マリアが正面を向いた状態から ふと気付いて横を向くと レイがキッチンのシンク近くで水を飲み終えた様子で振り向いて 一瞬2人が止まった後 レイが言う
「マリアーっ!」
マリアがげっそりすると レイがマリアを抱きしめて言う
「ほんの少しだけど 早めに戻って来てくれたんだな!マリア!流石 マリアは俺のっ」
マリアが言葉とレイを制して言う
「それより ウィザード様 お願いがあるのですが」
レイが一瞬驚いてから言う
「マリアが 俺にお願いか!?なんだなんだっ!?何でも言って!」
マリアが言う
「午後の灯魔儀式なんですが」
レイが言う
「よし!分かった!そっちはキャンセルで!」
マリアが言う
「勝手に キャンセルしないで下さいっ!」
レイが苦笑して言う
「やっぱりか?マリアの事だから そう言うと思ったけどサ?」
マリアが言う
「灯魔儀式には 事前の用意とかも掛かってますし 何より 巡礼者の方々もお見えになっているんですから そう簡単にキャンセルは出来ないんですっ」
レイが言う
「でも 俺にとっては そんな事より マリアのお願いの方が 大切なんだけどなぁ?」
マリアが怒って思う
(相変わらず この人はーっ!!)
レイが笑顔で居る マリアが気を取り直して言う
「午後の灯魔儀式は 予定通り行きます!…それで、その後なんですが」
レイが言う
「よし!それじゃ その後こそ 一緒に!」
マリアが言う
「はいっ 一緒に!」
レイが驚く マリアが言う
「この町の 中央公園へ行って 灯魔作業を 行って欲しいんですっ!」
レイが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?」
マリアがニコニコして言う
「そんなに張り切って 向かって下さるだなんて!私 とっても嬉しいです!ウィザード様っ!」
レイが不満そうに言う
「いや?そうじゃなくてさぁ?マリアー!?」
マリアが苦笑して言う
「やっぱり 駄目ですか?」
レイが反応して困って言う
「…別に マリアがそうしてくれって言うなら 俺は良いけど」
マリアが呆気に取られた後 喜んで言う
「本当ですかっ!?ウィザード様っ!?」
レイが疑問して言う
「けど 本当に それで良いのか?」
マリアが一瞬呆気に取られた後 ハッとして不満そうに言う
「私はっ 灯魔作業でしたら いつでも 一緒に 喜んで行きます!ウィザード様は いつも 他の事を 仰ろうとするからっ」
レイが困って言う
「いや… 何か 良く分かんないけどさ?あんまり 近い距離で 灯魔作業を続けると 逆に灯魔がされてない場所の方へ 影響が強く出ちゃうだろ?」
マリアが驚いて言う
「…え?」
レイが言う
「そっちの方に 何か対策でも立ててあるのか?例えば 灯魔台よりちっさい 燭魔台への灯魔が 全部してあるとか?」
マリアが言う
「え…?えっと…?」
レイが微笑して言う
「ま、燭魔台への 灯魔作業は 奉者の管轄じゃないからな?影響があろうが無かろうが 俺たちには関係ないか!んじゃ そっちも やっちゃおうか?マリア!」
マリアが慌てて言う
「ま、待って下さいっ!やっぱり 駄目ですっ!」
レイが疑問して言う
「へ?」
マリアが言う
「ではっ その辺りを ちょっと確認してみます… ですから!さっきのお願いは えっと… ほ、保留でっ!」
レイが疑問しつつ言う
「ん?そうなのか?なんだー マリアから折角の俺へのお願いだったのになぁ?」
マリアが言う
「そうではなくって… ウィザード様は好い加減 …あっ!時間です!すぐに行かないと!」
レイが反応し 微笑して言う
「よし!それじゃ マリア!」
マリアが怒って言う
「もう!”マリア”は 良いですから!急いで法衣を着て来て下さいっ!」
灯魔台神館
レイが灯魔儀式をやっている マリアが遠目に見ながら思い出す
レイが困って言う
『いや… 何か 良く分かんないけどさ あんまり 近い距離で 灯魔作業を続けると 逆に灯魔がされてない場所の方へ 影響が強く出ちゃうだろ?』
マリアが視線を落として思う
(灯魔作業は 早ければ良いってものではなかったのね… 私 知らなかった… それに)
マリアが驚いて言う
『…え?』
レイが言う
『そっちの方に 何か対策でも立ててあるのか?例えば 灯魔台よりちっさい 燭魔台への灯魔が 全部してあるとか?』
マリアが思う
(燭魔台への灯魔… そう言えば 灯魔儀式の資料に 燭魔台の事も書かれていたけど… 講習では省かれてた …やっぱり ウィザード様の言っていた通り 奉者の管轄じゃないから 講習には無かったのかも でも…)
雷の攻撃が上空に弾かれ灯魔台に叩き込まれる 人々が怯える中 マリアがその音に思い出した様に顔を上げる 辺りが静まった中 灯魔台から静かに雷が流れ始める 周囲の装置にも同じ様に雷が流れる
人々が言葉を失う マリアが言う
「雷の灯魔だったんだ…」
マリアが周囲を見渡す レイが僅かに息を吐いてから向き直り来た道を戻り歩く 人々が慌ててレイへ信仰の眼差しを向け 祈るようにレイの歩みを見守る マリアの横に居た管理人がマリアへ向き言う
「有難う御座いました マリア奉者様 どうか私どもに代わりまして ウィザード様への 手厚いご奉仕を 宜しくお願い致します」
マリアが反応し 管理人へ向いて言う
「手厚いご奉仕…?」
管理人が言う
「はい これほどの儀式を行われるのですから」
マリアが言う
「あぁ えっと… ウィザード様はそんなに…」
管理人が頭を下げる マリアが微笑して言う
「あ、いえっ 私は手配しただけでっ」
レイがマリアたちの横を過ぎ去る マリアが気付き振り向いてから 慌てて言う
「ではっ 私たちは失礼致します!」
マリアがレイを追う
灯魔神館 外
レイが外に居る マリアがやって来る レイが言う
「マリア?結局 中央公園の灯魔作業は どうするんだ?」
マリアが苦笑して言う
「あ、あれは… その… もう少し考えます」
レイが言う
「そっか?なら 今日はやらないんだな?」
マリアが言う
「はい」
レイが言う
「良し じゃ 帰ろう!」
レイがマリアを片腕で包み 杖に魔力が集まる 灯魔神館から管理人が走ってきて叫ぶ
「マリア奉者様!」
マリアとレイが反応し マリアが管理人の方へ向かって行って言う
「灯魔儀式に何か問題でも ありましたかっ!?」
管理人がマリアの前で立ち止まり マリアへ言う
「いえ、先ほどの儀式の事ではなく 今、隣村のベリテ村から連絡がありまして ベリテ村に大量の野生動物が押し寄せて来たと こちらの村に結界を張ったせいじゃないかと 連絡があったのですが」
マリアが驚いて言う
「えっ!?」
マリアがハッとして思う
(…まさかっ 午前中にベリテ村の隣側にある マミール村にも灯魔儀式をしたせいっ!?)
管理人が言う
「それで、ベリテ村の村長が ウィザード様のお力で お助けを頂けないかと 奉者様へ伝えて欲しいと連絡を受けまして 如何でしょうか?マリア奉者様」
マリアが一瞬驚いてからレイへ振り返る レイが背を向けたまま横目に見ていた視線を逸らす マリアがレイの横へ行って言う
「ウィザード様!?」
レイが間を置いてからマリアへ小声で言う
「断って」
マリアが驚いて言う
「え…っ!?」
マリアがレイを見上げる レイが言う
「そう言うのは 魔法使いの仕事」
マリアが慌てて言う
「な、何でですかっ!?ウィザード様ならっ!」
レイが言う
「ウィザードが出る幕じゃないよ」
マリアが言う
「でもっ!」
レイがつんと澄ましている マリアが視線を落とし泳がせてから管理人の下へ行って言う
「あの… 魔法使いの人とか… 他に人を集められませんか?」
管理人が表情を落として言う
「やはり そうですよね?ウィザード様へ ご依頼出来る事では無いと… 私からも その様に伝えたのですが…」
マリアが言う
「難しそう… なんですか?」
管理人が言う
「元々 魔法使いの方も ウィザード様ほどではないですが 少ないですから 他の村へ助けを求めるにも 急な襲来には対応が間に合わないそうで それで 隣村のこちらにいらっしゃると 把握していた ウィザード様を頼った様で」
マリアが慌てて言う
「で、でもっ 魔法使いさんだって!移動の魔法が使えるんじゃないでしょうかっ!?」
管理人が苦笑して言う
「私は余り詳しくは無いのですが… では 難しいと言う事で 連絡を返して置きます お引止めを致しまして 申し訳御座いませんでした」
管理人が深々と頭を下げる マリアが考えてから言う
「ま、待って下さい!」
管理人が疑問して言う
「はい?」
マリアがレイの前に行って言う
「ウィザード様っ 今回の事は 私のミスだと思うんです!ペリテ村に何の対応も置かないで その両脇の村で 儀式をしてしまったからっ …ですからっ!」
マリアがレイを見つめる レイがマリアを見つめた後 マリアが表情を困らせて言う
「お… お願…」
レイが言う
「分かった」
マリアが驚いて言う
「えっ!?」
レイが言う
「行こう」
マリアが喜んで 管理人へ向いて言う
「行きます!」
管理人が一瞬驚いた後微笑して言う
「有難う御座います 奉者様!すぐに伝えますっ」
マリアが微笑すると レイがマリアを連れ 移動魔法をする
ペリテ村付近 上空
マリアが目を瞑っている状態から目を開くと 驚いて言う
「キャッ!?キャァッ!何で空の上っ!?」
マリアがレイへ向く レイが言う
「だって 俺 ベリテ村なんて 行った事無いンだもん?」
マリアが慌てて言う
「えぇっ!?それじゃ 場所が分からないって事ですか!?そんな状態で 飛んでしまって どうするつもりですかっ!?」
レイが周囲を見ながら言う
「けど 午前中に行ったマミール村との間なんだろ?って事は 上から見れば分かるかと思ってサ?」
マリアが思う
(何てアバウトなっ!?)
マリアが言う
「ではっ 一度地上に下ろして下さいっ!私が電話をして 訊いてみますからっ!」
レイが言う
「大丈夫だって!多分 あの辺だろう?このまま行っちゃった方が早いよ!」
マリアが言う
「多分ってっ!ペリテ村は 割と大きな村なんですよっ!その中で確かな場所が分からなくて 行ける筈がありませんっ!」
2人が移動しつつ レイが言う
「けど 東西の村には灯魔がされてるんだから 結界の効力が弱いのはその間で 村の北側は町なんだ この状態で大量の野生動物って事なら 南のアウターからに決まってる そうとなれば 結界を避けて集まる場所は一箇所だ」
マリアが驚く 2人の移動が止まり レイが言う
「あ ほらな?あれだろ?よし 行くぞ マリア?」
マリアがハッとして言う
「え?あ… は、はいっ!」
レイとマリアの周囲に風が舞う
ペリテ村
人々が悲鳴を上げつつ逃げ惑う中 空から鳥たちが襲い地上では野生動物たちが吠え立てる その中にレイが舞い降りる 人々がレイを見て期待を込めて言う
「ウィザード様っ!?」 「ウィザード様だっ!」
マリアが周囲の様子と人々の声に驚いていると レイが言う
「マリア」
マリアがハッとしてレイを見上げると レイが言う
「後ろへ」
マリアが慌てて言う
「は、はいっ」
マリアがレイの後ろへ行く
(※読まなくても↓)
レイが正面へ向き直り魔力を収集する レイの周囲に風が渦巻く マリアがそれに目を向けていると 鳥の叫び声が響きマリアが驚いてレイの先へ視線を向けると 鳥たちが襲い掛かって来る マリアが驚くと 鳥たちが周囲の風魔法に吹き飛ばされる マリアが呆気に取られる 続いて野生動物たちが襲い掛かって来る マリアが息を飲むと レイが杖を振りかざし 風魔法がカマイタチとなって野生動物たちを切り裂く マリアが驚き目を見開いて口を両手で覆う 残りの野生動物たちが怯えつつ唸り声を上げる レイが見据えて再び周囲に風の魔法が集まり出す 残りの野生動物たちが尻尾を巻いて逃げ出して行く レイが杖を軽く動かすと 風の魔法が動物たちの屍骸を巻き上げアウターへ吹き飛ばす
(※読まなくても↑)
辺りに静寂が訪れる マリアが固まっていると レイが静かに構えを解除する マリアがはっと気を取り直し周囲の人々を見る 人々が息を吐き顔を見合わせる マリアが言う
「終わった…?」
マリアが肩の力を抜くと 村民がマリアの前に来て言う
「貴方が 奉者様ですか?そちらのウィザード様の?」
マリアが一瞬呆気に取られてから 村民へ向き気を取り直して言う
「あ、はいっ そうです 先ほど こちらのベリテ村に 野生動物が押し寄せたとの知らせを 聞きまして」
村民が言う
「この村の両脇の村で 灯魔儀式をやるって話は聞いていた… この村も 灯魔儀式の依頼をしているのに どうして 後回しにしたんだ!?」
マリアが一瞬驚いてから 困って言う
「え?あ… それは…」
村民が言う
「あの動物たちだってっ 両脇の村に結界が張られたから ここに来たんじゃないのかっ!?一度にあんなに来られたんじゃ 雇ってた魔法使いだって 逃げ出してしまうんだよっ!もう少しで この村が大変な事になる所だったっ アンタは奉者なら もっと しっかり考えて 儀式をやらせたらどうなんだっ!?」
マリアがショックを受け視線を落として言う
「す… すみませ…」
マリアが言い掛けていると レイが向き直り村民へ視線を向ける 村民が怯えて言う
「う…っ」
村民がたじろぐ マリアが村民の様子に気付いて疑問すると レイがマリアを包む マリアが一瞬驚いて顔を向けようとすると 杖が光り周囲に突風が吹き抜け 村民が思わず目を閉じ怯んだ後 レイとマリアが居なくなっている 村民が呆気に取られて周囲を見る
マンション レイの部屋
レイとマリアが到着する マリアが視線を落として居ると レイが覗き込んで言う
「マリアー?」
マリアが苦笑して言う
「有難う御座いました ウィザード様 私のお願いを聞いて頂いて…」
レイが疑問して言う
「ん?マリアのお願いって?」
マリアが言う
「ですから 私が…」
マリアの脳裏に記憶が蘇る
マリアがレイの前に行って言う
『ウィザード様っ 今回の事は 私のミスだと思うんです!ペリテ村に何の対応も置かないで その両脇の村で 儀式をしてしまったからっ …ですからっ!』
マリアがレイを見つめる レイがマリアを見つめた後 マリアが表情を困らせて言う
『お… お願…』
レイが言う
『分かった』
レイが言う
「あぁ あれはさ?マリアが自分のミスだって言ったから」
マリアが言う
「え?」
レイが微笑して言う
「奉者はウィザードのパートナーなんだから マリアがミスしたって言うなら 俺が行くのは当然だろ?」
マリアが呆気にとられて言う
「ウィザード様…」
レイが言う
「けど あんなのは マリアのミスでも何でもないよ だから 気にする事無いって!」
マリアが表情を落として言う
「でも 私のせいで ベリテ村に… ベリテ村を後にして その両脇の村に 儀式の手配をしてしまったのは 私ですし」
レイが言う
「そんな事無いよ 連中だって 自分たちの村を守るのに やれる事は一杯あっただろ?」
マリアが驚いて言う
「…え?」
レイが言う
「例えばさ?村を守る為の 用心棒として魔法使いたちを 一杯雇っておくとか それこそ 村にある燭魔台の灯魔作業を その魔法使いたちに依頼して 全部やっておくとか?自分たちで出来る事もやらないで 助けを待ってるだけの連中が 奉者のマリアに文句言うなんて 信じらんないね!」
マリアがレイを見て驚いている レイが言う
「な?だから マリアは そんなに深く考えなくて良いって!マリアは何も悪くないよ!」
マリアがホッとして言う
「ウィザード様…」
レイが言う
「それに そんな事を考える位なら マリアはもっと… 俺の事を 考えてくれれば 良いからサ?」
マリアが衝撃を受け顔を顰めて言う
「はい?」
レイが言う
「って 事で マリア!早速 俺と一緒にっ!?」
レイがマリアに抱き付こうとする マリアが回避する レイが壁に激突する マリアがドアノブに手を掛けて言う
「では 早速 私は 次の灯魔儀式の予定と 燭魔台の事を調べてきますっ!それから 次の灯魔儀式は4日後の 時間は今日と同じです!それでは また4日後に!」
レイが言う
「えーっ そんなぁ マリアーっ!?」
マリアがドアを出て閉めると 立ち去る
マリアの部屋
マリアがファイルを見ながら言う
「あった!これだわっ!…燭魔台の効力 灯魔台 大灯魔台とは異なり 村や町が独自に備え 灯魔を行う事が許可されており 効力は 灯魔台の50分の1程度 …えっ!?50分の1っ!?」
マリアがファイルを見直して言う
「たったそれだけじゃ… あ、でも 50分の1だとしても 50個あれば灯魔台1つに相当するって事だから… やっぱり重要かも?これからは灯魔台儀式の予定にも 反映させて考える様にした方が きっと良い筈だから…」
マリアが資料をめくっていると 脳裏に記憶が蘇る
レイが言う
『そんな事を考える位なら マリアはもっと… 俺の事を 考えてくれれば 良いからサ?』
マリアが衝撃を受け 溜息を吐いて言う
「はぁ… ウィザードとしての 魔法や知識は十分なのに どうして あーなのかな?…でも」
レイが微笑して言う
『奉者はウィザードのパートナーなんだから マリアがミスしたって言うなら 俺が行くのは当然だろ?』
マリアが微笑して言う
「少し 見直しちゃったかも?」
マリアが苦笑する
翌日 マンション屋上
レイが目を閉じ 周囲に魔力を収集し言う
「これがウィザードの本領か… 弱いとは言え これなら分かる この風たちが 教えてくれる…」
レイが目を開いて言う
「ここからが 本番だ ウィザードとして… いや 我の持つ全ての知識 全ての能力を持って …いざ!参るっ!」
レイが杖を振りかざすと 体が浮き上がり 風に撒かれて消える
会社 昼休み
マリアが資料を見ながら考えて言う
「う~ん…」
マキが横から言う
「マーリア?どうしたの?難しそうな顔しちゃって?」
マリアがマキへ振り向いて言う
「うん ちょっとね 奉者として お勉強中」
マキが苦笑して言う
「わ~ やっぱり 大変なんだ 奉者様!マリアは凄いよ!」
マリアが苦笑して言う
「ううん 奉者様は凄いかもしれないけど 私は全然 …実は昨日 手配ミスをしちゃって 私は 何にも分かってないんだって 気付かされちゃった …ただ各地から送られてきた 要望書の内容だけ見て 予定を立てちゃいけなかったの 会社の商談予定とは やっぱり違ったみたい」
マキが言う
「へぇ~ そうなんだ?…そう言えば 商談予定と言えば マリア 今日の午後に あのレントレ商事の社長との 商談入ってるんでしょ?」
マリアが言う
「うん 相変わらず 向こうの勝手で いきなり今日の午後一番にって だから 本当はミツイ商事と商談する予定だったのを 急遽リナにお願いしたの 資料は渡しておいたけど 悪い事しちゃったなぁ…」
マキが言う
「しょうがないよ それに新規の商談より レントレ商事は大口だし 課長もマリアじゃないと無理だって言ってたから リナもきっと怒ってないよ」
マリアが苦笑して言う
「うん でも 今日のお詫びに リナには今度ケーキでも おごるつもり」
マキが言う
「あー 良いな~ リナ~ それなら 私が受ければ良かったー」
マリアが言う
「マキにも この前半休取った時に 仕事割り振っちゃったから ちゃんと おごるよ?」
マキが言う
「やったー!」
マリアとマキが笑う マリアたちの近くで清掃員(レイ)が清掃している マリアが資料を片付けて言う
「さて、早速 レントレ商事の社長さんを 出迎えに行かないと」
マキが言う
「でも 気を付けてね?マリア?レントレ商事の社長 スケベじじい だから!」
レイが衝撃を受ける マリアが苦笑して言う
「うん ホント 気を付ける」
レイが横目にマリアを見る マキが言う
「まぢで やばくなったら 商談は破棄しちゃって良いって 課長も言ってたし!」
マリアが言う
「うん でも レントレ社長のサインさえもらえれば あっちの提携会社と うちの会社でかなり良い取引が出来るらしいから ギリギリまで粘るつもりだけどね?」
マキが言う
「えー 危ないよ マリア 抱き付かれでもしたら どうするのぉ!?」
マリアが言う
「うーん それは嫌かも… でも、多分 大丈夫!誰かさんのお陰で そう言うの避けるの 上手くなったから!」
レイが衝撃を受け ゴミ箱を倒す マリアとマキが疑問して振り返る レイが背を向けた状態で ゴミ箱を戻し ゴミをほうきで掃いている マリアが言う
「それじゃ 行って来るね」
マキが言う
「あ、第3応接室だよね?リナが第1応接室使うって言ってたけど」
マリアが言う
「第1は他の人が使ってるよ?第2が少し後に 第4なら 午後は空いてたみたいだけど」
マキが言う
「そうなんだ?じゃ伝えておくー」
マリアが言う
「ありがと よろしくね マキ」
マキが言う
「うん 行ってらっしゃーい」
レイがマリアの姿を視線で追う マキがレイを見る
会社の入り口に車が到着し レントレ商事社長(以下社長)が降りる マリアが礼をして言う
「お待ちしておりました レントレ社長」
マリアの後方にレイが居て不満そうに視線を向ける 社長が言う
「やぁ マリア君 急に予定を入れてしまって すまなかったね?」
マリアが微笑して言う
「いえ とんでも御座いません」
社長が言う
「突然 マリア君に 会いたくなってしまってね?…なんてね?あっはっはっ!」
レイがムッとする マリアが営業笑いして言う
「あはっ 有難う御座います 私も レントレ社長に お会いしたいと思っておりました」
レイが衝撃を受ける 社長が言う
「おおっ そうだったのか!それでは 以心伝心って奴だね?マリア君?あっはっは」
レイが怒っている マリアが微笑して言う
「はい そうですね!」
レイが衝撃を受ける マリアが社長へ道を促して言う
「では 応接室の方へ ご案内致します」
社長が言う
「ああ、それでは行こうか?」
マリアと社長が社内へ向かう レイが目で追う
エレベータ待ちで 社長がマリアの尻に触れようと手を伸ばす レイが気付き視線を強める 社長が驚いて言う
「あ痛ぁッ!」
マリアが疑問して言う
「え?」
社長が苦笑して手を押さえながら言う
「いやぁ 急に静電気が あはははっ」
マリアが呆気にとられて言う
「この季節に静電気…?」
マリアが気を取り直して言う
「そうでしたか 静電気は嫌ですよね?ピリッと一瞬ですけど とっても痛くって!」
社長が苦笑して言う
「あ、ああ… ピリどころか ビシッと かなり痛かったが…」
社長がきょろきょろする エレベータが到着してドアが開く マリアが道を促して言う
「では 応接室は3階になります どうぞ」
社長が言う
「う、うむ…」
マリアと社長がエレベータへ乗り込む レイがハッとすると エレベータのドアが閉まる レイが舌打ちをして回数表示を見上げた後 風に撒かれて消える 周囲に居た社員が呆気に取られる
3階
エレベータの到着音と共にドアが開く マリアが言う
「こちらの階で御座います」
マリアが道を示す 社長が言う
「うむ」
社長がエレベータを出てマリアが続くと マリアがふと気付いてレイの後姿を見て思う
(あら?あの清掃員さん さっき1階に居た様な…?)
レイが焦りつつ横目に伺っている マリアが首を傾げて言う
「気のせいかな?」
社長が言う
「さて どちらの応接室かね?マリア君」
マリアが気付き 気を取り直して言う
「あ、はい 失礼致しました 第3応接室は こちらで御座います」
社長が笑んで言う
「ああ 早く2人きりで 応接してもらおうかね?」
レイが衝撃を受ける マリアが苦笑して言う
「あ… はい そうですね…」
レイが悔しそうに顔を引きつらせる
第3応接室
マリアと社長が応接室に入り マリアがドアを閉める レイが横目に見てから応接室の横の通路へ向かい 背を向けて視線を向ける 社長がレイを見てから言う
「マリア君 我が社の極秘資料を見せるから そこのブラインドを下げてくれるかね?」
マリアが言う
「はい 畏まりました」
マリアがブラインドを下げる レイが言う
「あっ」
マリアがブラインドを下げてから疑問して首を傾げて思う
(ん?今 何か聞こえた?)
マリアの後方に社長が居て言う
「さて… マリア君?早速 何から… 見せようか?」
マリアが顔を引きつらせ 素早く回避して振り返り 微笑して言う
「はい それでは 予てよりお願いしておりました 御社の…」
マリアが言い掛けて 窓の外へ向けた視線の先 外窓に窓掃除している人物(レイ)が見えるが 顔の辺りが雑巾で遮られて見えない マリアが疑問して言う
(…あの清掃員さんは 今 そこの廊下に居た?)
社長が言う
「ああ もちろん その資料も持って来たよ ほら ここに」
社長がソファに座り テーブルに資料を出す マリアが気を取り直し向かいのソファに向かう 社長が言う
「これが以前から 御社の課長がマリア君を通して 我が社へ頼んでいた資料 それから… これに私がサインひとつするだけで 貴社は 我が社だけでなく 5つの子会社とも 取引が自由となる どれだけ重要な書類であるかは 今更読まなくても分かるとは思うが 一読 頂けるかな マリア君?」
マリアが言う
「はい それでは失礼を致しまして」
マリアが書類を手にとって読む 社長が言う
「もちろん それらの子会社が 我が社だけでなく 貴社とも取引を許可すると言う事は 我が社にとっても 多少なりとも利益の減少が見込まれている 従って マリア君 君の上司からも 先日その還元分として 新たな取引先を3件紹介してもらいはしたけれどね?こちらは5つの子会社と 何しろ我が社自体が入る訳だから」
社長がマリアの横に来てニヤリと笑んで言う
「こちらとしては その不足分として 何か相応に…」
レイが視線を強める 社長の手がマリアの肩に触れる直前に バチッと音を立てて弾かれる 社長が叫ぶ
「痛あっ!」
マリアが驚いて書類へ向けていた目を横へ向ける 社長が手を押さえて言う
「ま、また 静電気がっ!?」
マリアが呆気にとられて言う
「す、凄い音でしたけど 大丈夫ですか?」
社長が苦笑して言う
「あ、ああ…」
窓の外でレイが怒っている マリアが言う
「それから お言葉ですが レントレ社長 こちらの資料にあるります子会社でしたら 我が社から先日ご紹介した 3件の取引先とは 対等であるとも取られます ですから 我が社としましては これ以上 御社へ取引先のご提供は出来兼ねると」
社長が言う
「そうかね?それでは この取引は無かった事にしても」
マリアが言う
「それでは 先に我が社から ご提供した取引先3社の件はどうなるのでしょうか?我が社としましては 御社を… いえ、レントレ社長のご人徳を信頼した上で 先に 3社の提供を致しましたので」
社長が言う
「そうは言ってもね?これはビジネスだよ?そちらが 勝手に 提供してくれただけで 私が この書類にサインをするかどうかは 私次第と言う事になるのだから もちろん その私を接待する マリア君には 相応の責任がある 君の上司も それを承知の上で 平社員の君に 社長である私の接待を任せているのだろう?」
マリアが言う
「我が社では 役職ではなく 個人の知識と能力を重視して 担当を取り決めています ですので レントレ社長が 役職を重視されると言う事でしたら 我が社も相応の対応をさせて頂くと その様にお伝えしてある筈です」
社長が笑んで言う
「ああ そうだった それで 私は マリア君 君を指名したのだから… 言わずとも 私が何が言いたいのかは 分かるだろう?」
社長がマリアへ手を伸ばす レイが反応する マリアが社長の手を払って言う
「申し訳ありませんが そう言った事でしたら 商談は破棄させて頂きます 上司からもその様に 承諾されておりますので」
社長が書類をひらつかせて言う
「本当に良いのかね?ここにサインをされなければ 君の会社は 3社を我が社へ紹介した上 5つの… いや、我が社も入れて6つの取引先を失う これは 大きな損失となるんだよ?たかが事務員の君には この事の大きさが分かっていないのではないかな?」
マリアが言葉を飲む 社長が言う
「上司にはなんと言われたのかね?それこそ 手段は選ばず 女性の武器をもってしてでも サインを貰ってくるようにと 言われたのではないのかな?そうだろう?マリア君?」
マリアが怒って言う
「手段は任せるとは言われましたがっ 女性の武器をだなんてっ そんなハシタナイ事は言われてませんっ!うちの会社をそう言う会社と 一緒にしないで下さいっ!」
社長が言う
「そんな強気な事を言ったって もう遅いんだよ 人気の少ない こんな奥まった応接室に招き込んでおきながら 今更逃げられると」
社長がマリアへ手を伸ばす マリアが驚いてから気を取り直し構える 同時に窓が叩き開かれ レイが叫ぶ
「それ以上 近寄るなっ!このスケベじじいっ!」
マリアと社長が驚く レイがほうきを振りかざすと 社長が吹き飛ばされて壁に打ち付けられる レイが社長の前に立ち塞がって言う
「お前こそ 今更逃げられると 思うんじゃないぞっ!」
レイがほうきを社長へ向ける マリアが呆気に取られた状態からほうきを見ると ほうきの房の中がウィザードの杖である事に付き驚いて言う
「まっ!?まさかっ ウィザ…っ!」
マリアが慌てて口を塞ぐ 社長が驚いて言う
「だ、誰だっ!?お前はっ!?」
レイが言う
「この期に及んで 俺が誰だ だとっ!?俺はっ!」
マリアが驚いて叫ぶ
「だ、駄目っ!」
レイが叫ぶ
「このビルの 清掃員だぁあっ!」
マリアが衝撃を受け 社長が呆気に取られる マリアが言う
「せ… 清掃員…」
マリアが呆れている 社長が怒って言う
「清掃員ごときがっ 大手会社のビジネスの話に 口を出すんじゃないっ!黙って 掃除でもしていろっ!」
レイが怒って言う
「うるさいっ!黙って聞いてりゃぁあっ 社長だからって 汚ない手を使ってっ!お前こそ 黙って さっさと サインをしろーっ!」
レイが書類を突き付ける 社長が怒って言う
「な…なんなんだっ この会社はっ 商談の最中に 清掃員に怒鳴り散らされるなどっ」
レイが言う
「商談を理由に 女に手を出す奴が何言ってんだっ!?」
社長が言う
「サインなど してたまるかっ!私は帰るっ!」
マリアが思わず言う
「あっ…」
レイが睨んで言う
「待て」
社長が振り返るとレイが周囲に炎を散ら付かせて言う
「サインをしないんなら 生きて帰れると思うなよ?」
社長が驚き 怯えながら言う
「な… なんだっ お前はっ!?」
マリアが言葉を失って呆れている レイが社長へほうきを突き付け 片手に書類を持って言う
「サイン オア デスっ!?」
社長が逃げ帰って行く レイがサインのされた書類を渡して言う
「これで良いんだろ?マリア」
マリアが書類を受け取ってから言う
「”これ”は良いですが… ”貴方”は何をやっているんですかっ!?ウィザード様っ!?」
レイが言う
「え?何をって… 清掃員?」
マリアが言う
「だからっ 何で清掃員なんてっ!?貴方は ウィザード様じゃなかったんですかっ!?」
レイが言う
「じゃぁ ウィザード様 兼 清掃員?」
マリアが言う
「兼任しないで下さいっ」
レイが笑んで言う
「別に良いじゃないか?こっちは格好だけで 仕事はしてないんだしさ?」
マリアが言う
「じゃあ 何してるんですかっ!?って言うか 神聖なるウィザード様が 清掃員の制服を着てるだなんてっ そんな事 前代未聞ですよっ!?」
レイが笑顔で言う
「じゃ 俺が 第一人者!」
マリアが言う
「間違いないです!」
マリアが気を取り直して言う
「って そうではなくてですねっ!」
レイが言う
「だってぇ マリア4日後まで来ない みたいな事言うんだもン 俺 ウィザードの死力を尽くして マリアの居場所探しちゃったよ!」
マリアが言う
「そんな所で ウィザード様のお力を 使わないで下さいっ!それから!こんな事されたら …迷惑ですからっ」
レイが一瞬驚いた後困って言う
「…そりゃぁ 俺だって ここまで来れば マリアが仕事してるんだって事が 分かったからサ?ちょっと見て 帰るつもりだったけど」
マリアが視線を泳がせる レイが言う
「マリア 俺に会いに来るのって いつも5日後とか4日後とかだろ?だから 普段何してるのかな~?ってサ?それで来てみただけだよ そんだけ …じゃ 帰る」
マリアがレイを見て言い掛ける
「あ… ウィザ…」
ドアが開かれ マキが入って来て言う
「マリア!レントレ社長 帰ったみたいだけど!?」
マリアとレイが何事も無い様子で マリアが書類を整理し レイが清掃しているフリをしている マリアが言う
「あ、マキ どうかした?」
マキが疑問してから マリアの下へ行って言う
「あのスケベ社長 大丈夫だった?やっぱり心配でー?」
マリアが微笑して言う
「心配してくれて ありがとう マキ 私は大丈夫よ それに ほら サインも貰えて」
マリアが書類を見せる マキが見て言う
「あっ 本当だ!凄いじゃん マリア!」
マリアがチラチラと横目にレイを見てから言う
「あ、う、うん…っ」
マキが言う
「良く無事にサインもらえたねー?あ、もしかして…?」
マリアが慌てて言う
「な!無い無い!変な事とか 何も無かったよっ!?」
マキが言う
「分かってるって!だって マリア 可愛いけど 実は 護身術の持ち手だもんね!いざとなれば あんなエロじじいなんて 1本背負いだよねっ!?」
レイが衝撃を受ける マリアが衝撃を受け慌てて言う
「そ、そうね!1本でも2本でも!」
マキが軽く笑ってから レイに気付いて言う
「あれ?そこの清掃員さん?」
マリアが衝撃を受ける レイが横目に見る マキが首を傾げて言う
「何処かで 見たと思ったら…」
マリアが焦って思う
(ど…どうしようっ!?ウィザード様は この前 マキに会っちゃってるのにっ!)
マリアが観念する マキがレイへ向かおうとする マリアが慌てて割って入って言う
「あっ こ、この人はっ!」
マキが微笑して言う
「お昼休みの時に 休憩所のお掃除していた方ですよね?5階フロアだけじゃなくて 3階までお掃除してるなんて お疲れ様です でも、会議室や応接室は 就業時間内は入っちゃ駄目なんですよ?そう言う所のお掃除は 就業前の午前8時までか 午後5時以降でお願いします」
マリアが慌てて言う
「あ、この清掃員さんは 新入りさんみたいでっ!あんまり そう言うの分かってないみたいなのっ あ、そうだ!?そう言えば 喫煙所の場所を教えて欲しいって さっき言ってましたね?商談も終わったので 私が案内しますね!?」
マリアが書類を片腕に抱き 向かおうとする マキが言う
「あ、喫煙所なら 丁度その隣の資料室に行くので 私が ついでに案内します!」
マリアが衝撃を受け 慌てて言う
「あ、い、いいよっ!マキっ!私が案内するって!?」
マキが言う
「良いの 良いのっ!マリアは 早くその書類課長に持って行って!課長喜ぶよ!もしかしたら マリア昇進しちゃうかもっ!?」
マリアが慌てて言う
「で、でででっ でもっ!い、良いのっ!私が連れて行くからっ!」
マキが言う
「良いって!私は ついでだもん!マリアは 課長の所に行きなよ!?」
マリアが言う
「い、良いのよっ!マキっ!私が連れて行くったらっ!」
マキが困って言う
「どうして?私がついでに 連れて行くって!」
マリアが言う
「私がっ!」
レイが言う
「では マキさん 宜しく願います」
マリアが驚く マキがレイを見る レイが微笑して言う
「社内案内図を確認してから 向かえば良かったのですが 助かります」
マリアが驚いて言葉を失う マキが喜んで言う
「それじゃ 行きましょ!こっちですよ!」
レイが言う
「はい」
マキとレイが立ち去る マリアが言葉を失ったまま思う
(な… なに?今の…っ!?)
マリアが2人の出て行ったドアを見て一瞬止まった後慌てて追い掛ける マリアが追って向かうと レイとマキが微笑ましそうに歩いて行く マリアが表情を困らせて思う
(そもそもっ 神様のもとへ向かう 神聖なるウィザード様は 奉者以外の人間と 言葉を交わしちゃ駄目なんじゃなかったのっ!?)
マリアが隠れながら追う 2人が話しながら資料室の前を歩く レイが言う
「うん?資料室は ここですね?」
マキが気付いて言う
「あ、はい そうです」
レイが言う
「それなら 案内はここまでで 結構です」
マキが嬉しそうに言う
「いえ、本当は 私 資料室に用なんて無かったんで!喫煙所までご一緒します!」
マリアが驚く レイが疑問して言う
「そうでしたか では 手間を掛けました」
マキが微笑して言う
「いえ!私が清掃員さんと ご一緒したかったので!」
マリアが驚く レイが言う
「そうですか」
マキが言う
「あの 清掃員さん お名前 お伺いして良いですか?」
マリアが驚く レイが言う
「何故ですか?」
マキが言う
「えっと… 私は マキって言うんです さっき 呼んでもらいましたよね?ですから 私も」
レイが言う
「私は今日だけの臨時清掃員なので もう マキさんと会う事は無いですよ」
マリアが驚きレイを見る マキがレイを見上げて言う
「あ… でも あの…」
レイが顔を背けて言う
「案内を有難う御座いました 喫煙所に着きましたので 私は仕事をします」
マキがレイを追うように手を伸ばすが レイが喫煙所へ入って行く マキが視線を泳がせてから1つ息を吐いて立ち去る マリアが慌てて物陰に身を隠す マキが去って行く
マキが溜息を吐く
「はぁ~…」
マリアが心配して言う
「あ、あの… マキ?」
マキがハッとしてマリアへ向く マリアが苦笑して言う
「何か… あった?」
マキが微笑して言う
「マリア さっきはごめんね 私 ムキになっちゃって」
マリアが言う
「あ、う、ううんっ!良いの良いの!そっちは ついでだったのに 私がっ」
マキが苦笑して言う
「ううん… 本当はね ついでじゃなかったんだ」
マリアが驚く マキが微笑して言う
「実は 私… 今日 あの清掃員さんを 休憩所で見た時に 一目惚れしちゃって」
マリアが驚いて言う
「えっ!?」
マキが苦笑して言う
「その時は声も掛けられなかったけど… でも もう一度会いたいなーって思ってたら あの応接室でばったり会っちゃったもんだから …それで!」
マリアが苦笑して言う
「そう… だったんだ?」
マキが苦笑して言う
「うん、でもねー あの後少し話したんだけど 名前も教えてもらえなかったんだー それに 今日だけの臨時清掃員なんだって だから もう二度と 会えないのかも…」
マキが視線を落とす マリアが表情を落として言う
「そ、そうなの…?それは 残念だった ね…?」
課長が言う
「マキ君 ちょっと良いかね?」
マキが反応して言う
「あ、はーい」
マキが立ち上がってマリアへ言う
「でも やっぱり もう一度会いたいって思っちゃうの!…ねぇ マリア?これってやっぱり アレかな?」
マキが苦笑してから課長の下へ向かう マリアが苦笑して言う
「会えないと思うと 余計に 会いたくなっちゃうのかもね?」
レイが後ろに居て言う
「ホント そうなんだよなぁ?マリア?」
マリアが硬直してから ゆっくり振り返って目を見張る レイがこっそり言う
「だから もう一回 会いに来ちゃった☆」
レイが笑んでウィンクする マリアが怒って小声で叫ぶ
「な… なぁ…っ!?何やってるんですかーっ!ウィザード様ーっ!!」
マキが惚けて溜息を吐く
「はぁ~…」
マリアが疲れて溜息を吐く
「はぁあ~…」
リナが歩いて来て2人に気付き呆れて言う
「はぁ…?ちょっと2人共 どうしちゃったのよ?」
リナが2人を見ながら席に着く マキが夢見心地で言う
「すっごい 素敵だったなぁ あの清掃員さん…」
リナが言う
「清掃員?」
マリアが頭を抱えて言う
「まったく あのウィザード様と来たら…っ」
リナが呆れて言う
「こっちは ウィザード様?もう、2人とも ここは会社よ?しっかり 会社のお仕事をなさい?」
リナが苦笑する マキが苦笑して言う
「えへへ~ はーい リナ先輩~」
マリアが言う
「そうよね!ここは会社なんだもん!うん!」
マリアが気を取り直して書類を見る リナが言う
「そう言えばマリア 聞いたわよ?レントレ商事のあの社長との商談 成立させたって」
マリアが衝撃を受け周囲を見渡してからホッとする リナが疑問してから苦笑して言う
「相変わらず 凄いわね マリアは」
マリアが言う
「あー ううんっ!違うのっ 今回は その… それより リナ!ミツイ商事との商談を 押し付けちゃって御免ね!その埋め合わせとして ケーキでも ご馳走しようと思うんだけど!今日 この後とか どう!?良ければ…っ」
リナが一瞬呆気に取られてから微笑して言う
「埋め合わせだなんて 私は商談相手を譲ってもらったんだから それをするなら私の方でしょう?それに 今日この後は…」
マリアが言う
「ううんっ!そんな事無いよ!商談予定を入れて置きながら キャンセルなんてしたら うちの会社全体の評価を落とす事にもなるじゃない!?だから リナには本当に感謝してる!えっと それじゃ 今日が駄目なら 明日とかは!?」
リナが苦笑して言う
「それなら 今日この後 マキも一緒に 3人で会わない?2人共覚えてると思うんだけど 大学で同じサークルだった エリナ 今日昼食に入ったお店でばったり会ったの それで 今夜改めて会って 久しぶりに話でもしようって事になって」
マリアが言う
「エリナね そう言えば もう 何年振りだろ?」
マキが言う
「すっごい久しぶりだねー!行く行く!」
マリアが言う
「もちろん!私も!」
リナが言う
「そう 良かった きっとエリナも喜ぶわ 2人の事 メールしておくわね」
マリアとマキが頷いて言う
「うん!」「よっろしくー!」
飲食店
マリア、マキ、リナ、エリナの4人で話をしている エリナが言う
「なんだ 3人共 同じ会社に就職したの?相変わらず 仲良いわね?」
マキが言う
「私は一回 別の会社に就職したんだけど あんまり上手く行かなくてねー?それで リナとマリアから今の会社の話し聞いたら 私にも 合ってるかな~って!だから 2人は 私の大先輩で~す!」
皆が笑う マリアが言う
「そう言えば エリナは大学出た後 資格を取りたいって言ってたけど どうなったの?」
エリナが言う
「うん、私もマキと同じかな?一度他に就職して 働きながら保育士の資格を取って それで 今は保育園に転職して 保育士をしてるの」
マキが言う
「保育士さんか~ そう言えばエリナ 子供好きだって言ってたもんね~?」
エリナが微笑して言う
「うん」
リナが言う
「でも 凄いわね 働きながら保育士の資格を取るって 大変だったんじゃない?」
エリナが言う
「そうね でも そうしないと 授業料が払えなかったから 昼間は仕事 夜は勉強 休日は全部講習に出て 夢の保育士になる為に 頑張っちゃった!」
リナが言う
「私にはとても無理ね~ 尊敬しちゃうわ」
エリナが言う
「自分の好きな事をやってたんだから そんなに苦ではなかったけれどね 逆に 自由な時間は取れるようになったけど 今の方がよっぽど大変 実力が伴ってないって感じで 子供たちの相手に 振り回されてばかりなのよ …ふふっ」
リナが微笑して言う
「でも 満足そうじゃない?やっぱり 好きな事をやれてるからなのでしょうね?」
エリナが微笑して言う
「ええ」
マキが言う
「あー それじゃさ?マリアとは 全く同じじゃない!?」
マリアが飲もうとしていた飲み物を吹きそうになってむせる エリナが一瞬反応してから微笑して言う
「あら?マリアも何か 資格を取ったの?」
マキが言う
「そうそう!それでもって!」
リナが言う
「こ~ら マキ?」
マキが疑問してから言う
「あれー?言っちゃまずかった?」
マリアが落ち着いて言う
「う、ううんっ!大丈夫!余り 言いふらしちゃうのは良くないけど 友達に伝える位は大丈夫だから」
エリナが言う
「え?何何?もちろん 言いふらしたりなんてしないわ マリアも何か習っているの?」
マキが言う
「実は!マリア様は 奉者様なのです~!」
エリナが呆気に取られて言う
「え… 奉者様…?」
マリアが言う
「うん、そうなの 私も仕事をしながら… でも こっちの講習会は平日しか無かったから 休日は普通にあったけどね?逆に今の方が 休日は奉者をして 平日は仕事をしてって事で 休みが無くなっちゃった感じかな」
エリナが言う
「凄いじゃないっ マリア!だって 奉者様なんて 保育士とは違って 資格を取ったから就職出来るって 職種じゃないでしょう?何人もの志望者の中から たった1人選ばれるって!?」
マリアが苦笑して言う
「う、うん…」
マキが言う
「すっごいよねー!マリアは!」
エリナが言う
「流石は 奉者様の娘ね?」
マリアが苦笑して言う
「あは… やっぱり それで… かな?」
マキが疑問して言う
「え…?何それ?」
リナが言う
「あぁ やっぱり その噂 本当だったの?」
エリナがハッとして言う
「あ、ごめん… もしかして?」
マリアが慌てて言う
「ううんっ!良いの!別に 隠してた訳じゃないから …えっと、マキ?実はね 私のお母さんも 奉者なの 今は隣町を担当している ウィザード様に仕えてるのよ」
マキが呆気に取られて言う
「へぇ~… そうだったんだ?」
マリアが言う
「うん…」
マキが言う
「でも 何で隣町の?だって マリアは この町のウィザード様の奉者として選ばれたって事は 他の町なら その町で選ばれるんじゃないの?」
マリアが言う
「うん… お母さんの そのウィザード様は 10年前までは この町の担当だったの それで 隣町に変わった時に 奉者を変更しても良かったんだけど… そのままになったみたい」
マキが言う
「へぇ~ 色々あるんだねー?でも それなら マリアが奉者様を目指した理由が 分かった感じ!マリア お母さんに憧れてー みたいな?」
マリアが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「…うん そう それもあるかな?」
エリナが言う
「2代目奉者様って事なら 私たちも安心じゃない?マリア この町の為にも頑張ってね!?」
マリアが苦笑して言う
「あ… うん、ありがと …頑張る!」
リナが言う
「そうよね?いつも溜息ばかり吐いてるけど この町の代表として マリアも大変なのよね?」
マリアが気付き苦笑して言う
「あぁ… なんて言うか 溜息に関しては 奉者としてなのか どうなのかは 微妙な所なんだけど…」
マリアが溜息を吐く リナが軽く笑う エリナが考えながら言う
「奉者様… か…」
エリナが言う
「ねぇ マリア?奉者様って事は ウィザード様とお話が出来るのよね?それって どんな感じなの?ただウィザード様の 御命令に従うって感じなの?」
マリアが疑問し 少し考えながら言う
「え?えっと… 確かに 人前では余り 話は出来ないけど」
リナが微笑して言う
「あら?でも ”恋人はウィザード様~”なのよね?」
マキが笑う エリナが呆気に取られる マリアが慌てて言う
「違っ!違うったらっ!もうっ ホントに 変な噂にでもなっちゃったら 大変なんだからっ!」
エリナが言う
「恋人なの?」
マリアが言う
「違いますっ!」
マリアが気を取り直して言う
「ウィザード様は そう言うのは無いの!…なのにっ」
リナが軽く笑って言う
「冗談よ 冗談 ウィザード様は”神様になる”為に 修行中なんでしょう?」
マリアが苦笑して言う
「”神様になる”んじゃなくて 神様に選ばれる為に… な 筈なんだけど…」
マリアが思う
(神様も どうでも良い的な事 言ってたような… アノ人は…っ)
マリアが顔を逸らして溜息を吐く エリナが言う
「ねぇ?そんな感じなら… もしかして マリアからの ちょっとした お願い とかって… 聞いてもらえたりする?」
マリアが疑問して言う
「え?」
エリナが苦笑して言う
「なんて やっぱり無理かな?奉者からウィザード様に お願いなんて 出来ないもの?」
マリアが言う
「えっと… 例えば どう言った事?」
エリナが言う
「うん… その、例えばじゃなくて 言ってしまうと マリアは 奉者様なら 燭魔台って知ってるわよね?」
マリアが反応する マキがリナへ言う
「燭魔台?」
リナが少し考えた後ハッとして言う
「あ、もしかして…?」
エリナが言う
「うちの保育園は 私立だから 園内に私設の燭魔台があるの 子供たちにより良い環境を 与えて上げられるようにって」
リナが言う
「あ、やっぱり?私の通っていた保育園にもあったわ 近付いてはいけないって言われていたけど 柵ごしに 良く見てたな~」
マキが言う
「リナはお父さんだけじゃなくて リナ自身も そう言うのが好きなんだね?」
リナが苦笑して言う
「うふっ そうかも?」
エリナが言う
「そう、その燭魔台なんだけど 半年前から 灯魔が切れてしまっていて 保護者からも苦情が来ているの 私も他の保育士たちも 灯魔を依頼したいと思ってはいるのだけど」
マキが言う
「それなら!”マリアのウィザード様”の出番じゃない!?」
マリアが表情を困らせて言う
「あ… その… 燭魔台に関しては…」
マキが疑問して言う
「えー?」
エリナが言う
「私たちも もちろん知ってるのよ 燭魔台は小さな物だから ウィザード様に依頼する物ではなくて 魔法使いに 依頼するものだって」
マキが言う
「へぇ~そうなんだ~?」
マリアが気付いて言う
「あ、そう言えば 今その燭魔台の資料を集めている最中なんだけど この町には300近い燭魔台が備えられているのに 殆ど灯魔がされていないのよね 唯でさえ 中央公園の灯魔台が切れているのだから その分 燭魔台には灯魔しておくべきなのに」
エリナが苦笑して言う
「だって とても費用が高いのだもの」
マリアが言う
「費用?…費用って 灯魔費用?」
エリナが言う
「ええ、それもあるし ただ お招きするのにだって この町だと隣村からって事になるから 1回に付き4、5万は掛かるのよ?」
マキが言う
「隣村からじゃ それくらい掛かっちゃうかもね~」
リナが言う
「この町には いらっしゃらないの?」
エリナが言う
「灯魔作業が出来る魔法使いは 皆 村へ行って修行をするんですって だからこの町に居るのは 見習いさんだけだって言ってたわ」
リナが言う
「ちなみに その灯魔費用って言うのは?出張費用に4、5万掛かった上 私立の保育園で支払うとなると」
エリナが言う
「灯魔費用も 魔法使いさんの技量次第らしいんだけど 一回に最低でも120万 技量の高い方だと150万 それでも3ヶ月もすれば 灯魔は切れてしまうから 切らさないようにするには 年に4回 お願いしなければならなくて」
リナが言う
「1年に480万から600万の出費は痛いわね」
エリナが言う
「聞いた話では 魔力の高い魔法使いさんが行う程 灯魔は長く持つんだって それなら ウィザード様ほどの方が行うなら 3ヶ月所か 倍の半年?もしかしたら もっと長く持つんじゃないかって思って… ねぇ マリア?もし、ウィザード様にお願いするとしたら いくらくらい掛かるものなの?」
マリアが困り考えて言う
「えっと… ウィザード様の灯魔費用に関しては 直接 灯魔台神館や村なんかが支払う事は無いの つまりその… 言ってしまえば無料」
マリア以外が驚く
「「「えっ!?」」」
マリアが言う
「あ、でも その代わり ウィザード様の滞在に掛かる費用とか 交通費なんかは全部 皆の税金で賄われているから 灯魔作業は公務って事かな?」
エリナが言う
「そっか… それじゃ公務から外れる 燭魔台への灯魔は行っては駄目なのかしら?保育園も もちろんずっと灯魔を切らせておく訳には 行かないから 期間を限定して 年に2回だけ行おうかとも話し合っているの でも、いくら冬季や夏季のお休みがある その時期に当てようと言っても 短くても2ヶ月間は灯魔の切れる期間になってしまう… やっぱり子供たちには より良い環境で元気に遊ばせてあげたいと思うじゃない?」
皆がマリアを見る マキが言う
「マリア…」
マリアが視線を落とし考えてから言う
「うん… それじゃ 一度聞いてみる」
エリナが言う
「本当っ!?マリアっ!?」
マリアが苦笑して言う
「うん でも 余り期待しないでね?アノ人 あんまり その… 人の為になる事とか 考えていない感じで…」
マキが言う
「そんな事無いよ!”マリアのウィザード様”は 私のお爺ちゃんのお願いを聞いて 田畑に雨を降らせてくれたじゃん!」
マリアが呆気にとられて言う
「そう言えば…」
マリアが心中思う
(それじゃ アノ言葉は…)
マリアの脳裏に思い出される
マリアが言う
『…いえ、なら ウィザード様は 何でウィザード様になったんですか!?』
レイが言う
『それは もちろん』
レイがマリアを抱きしめて言う
『”マリアのウィザード様”になる為だよ!マリア!』
マキが言う
「きっと 今回も エリナやマリアのお願いを聞いて 保育園の子供たちの為に その灯魔作業ってやつも やってくれるよ!ね?マリア?マ…」
マリアが密かに怒って言う
「…クッ 神聖なるウィザード様が よくも軽々しく あんな言葉をっ」
マリアが怒りに燃えている 皆が呆れて言う
「マリア…?」
マンション 最上階
マリアがドアの前で溜息を吐いて言う
「はぁ~… 仕方が無い エリナと約束しちゃったし… それに」
マリアが思う
(私だって 保育士じゃなくとも… 子供たちの為に 良い環境を作ってあげたいって思う 元々 灯魔作業は その為にあるのだものっ だからきっと これは人々の代表である 奉者の勤め!)
マリアが言う
「よし!」
マリアがインターフォンを押し 間を置いてドアに手を掛けて言う
「留守… なのかな?」
ドアは開かない マリアが間を置いて鍵を取り出し開けながら言う
「そう言えば アノ人1度だって インターフォンに出て来た事ないし 声を掛けるだけでも…」
マリアがドアを開けて言う
「失礼します ウィザード様」
マリアが正面を向いた状態から ふと気付いて横を向くと レイがキッチンのシンク近くで水を飲み終えた様子で振り向いて 一瞬2人が止まった後 レイが言う
「マリア…?」
マリアがハッとして一瞬後づ去って思う
(…く、来るっ!)
レイがマリアの前で言う
「どうしたんだっ!?マリアっ!?」
マリアが驚き呆気に取られて言う
「…え?」
レイが真剣に言う
「まさかっ また あの社長が マリアの会社に来たとかっ!?来るとかっ!?それとも また 何処かの変な社長の相手を 任されたとかっ!?」
マリアが呆気に取られて言う
「は?しゃ、社長?会社?」
レイが迫って言う
「どうなんだっ マリア!?マリアが灯魔儀式に行く日でもないのに ここに来るって事はっ 何か大変な事がっ!?」
マリアが呆気に取られた後言う
「あ… い、いえ 特に 会社やその他で 問題は…」
レイが呆気に取られて言う
「え?…なら?」
マリアが苦笑して言う
「あ… その ウィザード様に… ちょっと お願いが」
レイが言う
「お願い?」
マリアが言う
「はい 実は 私の友人が私立の保育園に勤めていて その保育園に 燭魔台があるそうなんです」
レイが言う
「うん それで?」
マリアが微笑して言う
「その燭魔台に 是非」
レイが言う
「俺に灯魔をしろって?」
マリアが言う
「え、えっと…」
レイが言う
「燭魔台への灯魔作業は マリアには関係ないだろ?ウィザードのやる事じゃないんだから」
マリアが言う
「あ、はい それは 私も… その友人も 分かっているのですが」
レイが言う
「なら わざわざ聞きに来る必要は無い 用はそれだけ?」
マリアが驚いて言う
「え…?あ、はい… そうですが… ウィザード様?」
レイが肩の力を抜いて言う
「なんだ… もっと マリアに危険があるとか …そう言うのかと思って 驚いちゃったよ けど 危険が無いなら 良かった」
マリアが苦笑して思う
(本当に… 心配してくれてたんだ… それで)
マリアが気を取り直して言う
「お、驚かせてしまって 御免なさい ウィザード様 それで あの… 燭魔台への灯魔作業は 確かに 本来なら 魔法使いさんに依頼するものですが その… ウィザード様でも もちろん 可能なのですよね?」
レイが言う
「そりゃ 出来るけど」
マリアが言う
「その友人に聞いたのですが 魔法使いさんに灯魔を依頼すると とても費用が掛かってしまって… それに 灯魔も3ヶ月程度しか持たないそうなんです」
レイが言う
「あぁ そうだろうね?」
マリアが言う
「ですので その… もし ウィザード様が灯魔をしたら?それは どの位持つのでしょうかっ!?もしかしたら!?」
レイが言う
「燭魔台は 灯魔台と違って 補助装置もないし 燭魔台1つで魔力を維持しなきゃいけないから 俺がやっても1年ぐらいだよ」
マリアが喜んで言う
「ウィザード様なら 1年も持つんですね!?」
レイが言う
「けど ウィザードのやる事じゃない 燭魔台なんて100個も1000個もあって 灯魔台と違って 一度に与える魔力が強過ぎると ぶっ壊れるし 余計な神経使うだけで 魔力を上げる修行には ならないからな?」
マリアが一度視線を落としてから改めて言う
「でもっ あのっ!」
レイが喜んで言う
「だから そんな話なんかより!マリア!」
レイがマリアに抱き付く マリアがうんざりする レイが言う
「こんな時間だけど 折角 来たんだからさ マリアは 俺と 一緒に!」
マリアがレイを引き剥がして言う
「それこそ ”そんな話”でっ 私はっ!」
レイが不満そうに言う
「なんだぁ… やっぱ ただ そう言う話をしに 来ただけなのかぁ…」
マリアがレイを見る レイが首を傾げて言う
「マリアが来てくれるのは嬉しいけど 流石に燭魔台100個やってくれっていうのは無理だよ それなら あの中央公園の灯魔台に灯魔する方が 早いし楽だし 効力も十分」
マリアが言う
「中央公園の灯魔作業は もう少し後を予定してます まずは 郊外の灯魔台への灯魔を優先して」
レイが言う
「ああ そうだね それが良い」
マリアが視線を落として言う
「その… 灯魔台への灯魔とは別に 保育園の燭魔台への灯魔を してもらうと言うは やっぱり駄目ですか?もちろん 1箇所をやったら他のも… と言う事になってしまっては大変なので …私の友人からの頼みと言う事で こっそりと お願いしようと思ったんですが…」
レイが言う
「その1箇所だけ?」
マリアが言う
「はい…」
レイが言う
「うーん… まぁ 友人は兎も角 マリアのお願いなら 俺は聞くしかないかなぁ?」
マリアが言う
「本当ですかっ!?ウィザード様っ!?」
レイが言う
「ああ… だから言っただろ?俺は ”マリアのウィザード様”なんだから マリアがそうして欲しいって言うなら 何でもやってやるって!」
マリアが呆気に取られた後苦笑して言う
「あ… はぁ…」
レイが苦笑して言う
「んで いつかは一緒に!」
マリアが苦笑して言う
「なら 私も ウィザード様に お礼を…」
マリアがハッとする レイが驚いて言う
「え?」
マリアが慌てて視線を泳がせて言う
「あ、いえっ!そのっ!そうではなくてっ!私はっ!」
レイが言う
「マリアが俺に お礼って…?」
マリアが頬を染めつつ視線を逸らして言う
「そ、その…っ」
マリアが思う
(ど、どうしようっ!?思わず いつもの感覚で ”ケーキおごる”みたいに 言っちゃったけど これは違うっ このシュチュエーションで こんな事言ってしまっては!まるで 私がウィザード様とっ!?)
マリアが言う
「ち、違うんですっ!い、今のはっ!そう言う意味じゃなくてっ!あのっ!」
レイが疑問して言う
「え?違うのか?意味って…?」
マリアが慌てて言う
「で、ですから 意味と言うのは いつもウィザード様が 一緒にって…っ!…あっ」
マリアが思う
(しまったっ!ついうっかり説明をっ これじゃもうっ …逃げられないっ!)
レイが言う
「え、えっと… つまり マリアのお礼って言うのは 俺と一緒に」
マリアが強く目を瞑り思う
(でもっ!…ここで断ったらっ!?燭魔台への灯魔はしてもらえないかもしれないっ 折角 エリナの保育園に1年もの灯魔を してもらえる事になっていたのにっ …もうっ こうなったら!)
マリアがレイへ顔を向けて言う
「はいっ!それじゃ 私っ!1回だけっ!」
マリアが思う
(い、言ってしまったっ!!)
レイが驚いている マリアが視線を逸らす レイが言う
「い、1回…?そっか… でも、良いのか?マリア?ずっと嫌がってたのに?」
マリアが身を強張らせて言う
「は、はいっ!」
マリアが思う
(し…っ 仕方が無いわっ!?ここまで来たら もう引き返せない!それに… 相手は このウィザード様ならっ 凄く嫌な相手なんかじゃ… ないしっ?きっと とっても 優しくしてくれそう…)
マリアが意を決して思う
(私っ 決めたっ もう引き返さないっ!)
マリアがレイを見る レイがマリアを見てから心配して言う
「…けど 無理しなくて良いんぞ?マリア」
マリアが驚いて言う
「え?」
レイが苦笑して言う
「だって 例え奉者でも 無理して付き合うものじゃないだろう?嫌いなら嫌いで 仕方がないし… 俺だって 無理やりって言うの好きじゃない… 大体 本来は 2人で楽しむものだろ?」
マリアが視線を落として言う
「そ… そうですけど…」
レイが言う
「だから マリアが嫌だって言うなら 俺は これからも…」
マリアが強く目を閉じて言う
(こんな時だけは ウィザード様の優しさが 返って苦しいっ これなら いつもみたいに 一思いに抱き付いてくれる方がっ)
マリアが気合を入れて言う
「ウィザード様っ!!」
レイが驚いて言う
「は、はいっ!?」
マリアが言う
「私 決めたんです!1回だけ…っ!ですからっ!」
レイが言う
「わ、分かったっ!それじゃっ 俺 自信はあるけど 誰かとするのは 初めてだからっ マリアに満足してもらえる様に 絶対 上手くやるからっ!」
マリアが言う
「は、はいっ!お願いしますっ!」
レイが言う
「う、うん そ、それじゃ とりあえず 中入ってっ」
マリアが気付いて言う
「あ、は、はいっ ではっ お邪魔します!」
マリアが部屋へ上がりつつ思う
(あぁ… この部屋に上がるのは 2回目だけど まさか その2回目が こんな事になるだなんて… でも思えば1回目の時だって やっぱり …寝室へって話になって)
レイが言う
「じゃ、マリア?」
マリアがハッとして言う
「は、はいっ!?」
マリアが思う
(あぁ… そして やっぱり 2回目も 同じなのね…っ)
レイが言う
「俺の方が この部屋の事 知ってると思うから 俺が用意する だから マリアは そこへ座って 待ってて」
マリアが言う
「え?…あっ!は、はいっ」
マリアがソファに座る レイが立ち去る マリアが思う
(確かに この部屋の事は 家主のウィザード様の方が知ってるだろうけど… 用意って何を用意するのっ!?…えっと 普通こういう時って 用意といったら 寝室?バスルーム?)
マリアが顔を上げ思う
(―でっ 何でキッチン!?)
レイがキッチンに居て言う
「所でっ マリア!?」
マリアがハッとして言う
「は、はいっ!?」
レイが真剣に言う
「そう言えば 俺 マリアと こういう話 した事無かったから マリアの好み 全然知らないんだけど」
マリアが言う
「は、はいっ!?」
マリアが思う
(こ、好みっ!?好みって何っ!?どう言うのが好きかって事!?そんな事 聞かれても…っ!私、大体そう言う事 余り知らないしっ!むしろ そういうのは 男の人の方が詳しいんじゃ!?)
レイが言う
「マリアは… どっちが好きなんだ?」
マリアが思う
(どっちってっ!?)
レイが言う
「レモンとか そっちの方?それとも やっぱり ミルク?」
マリアが言う
「えっ!?」
マリアが思う
(レモンとかって何っ!?それは 何かの隠語なのっ!?だとしたら…っ!?)
レイが言う
「どっちが好きなんだ?どっちを 用意したら良い?」
マリアが思う
(どっちか選ばなきゃいけない!?どうしようっ!?えっと… その説明をしてもらうって言うのも… それならもうっ 感覚でっ レモンはすっぱくて… 刺激的!?それならっ!)
マリアが言う
「ミ、ミルク… で…」
レイが言う
「分かった ミルクね」
マリアが言う
「は、はい…っ」
マリアが目を閉じて思う
(で、でもっ 良く考えたら ミルクの方が… 危険っ!?あぁ~ やっぱり 説明をして貰った方が良かったかも!?これで 私 もし どうしても無理だったりしたらっ!)
マリアが顔を上げて言う
「あ、あのっ!」
レイが言う
「お待たせっ 用意出来たよ マリアっ」
マリアが思う
(遅かったっ!)
マリアが目を閉じて思う
(どうしようっ もう引き返せないっ!こうなったらもう 覚悟を決めてっ)
レイが言う
「マリア?」
マリアが言う
「全て!ウィザード様にっ お任せしますっ!」
レイが言う
「…そっか 分かった 大丈夫だよ!これは 俺 いつも1人でやってるから」
マリアが目を閉じていると 小さな音とお湯を注ぐ音が聞こえる マリアが疑問して思う
(ひ、1人でってっ!?な、何をしてるのっ!?普通こういう時って 2人で一緒に… それか 1人ずつ …に行くとかっ!?でも なんだか お湯の音?それに 何かハーブ的な… いや ハーブと言うか これは…っ この香りはっ)
マリアが目を開くと 視線の先で砂時計が終わる マリアが疑問して思う
(砂時計…?何を計って?)
マリアが横を向くと レイがティーポットの上で軽く指先を回す ティーポットから小さな音が鳴る マリアが呆気に取られる レイが紅茶をカップに注ぎマリアへ向けて言う
「はい マリア」
マリアが呆気にとられて言う
「…紅茶?」
マリアがレイを見るレイが微笑する マリアが受け取って言う
「あ、有難う御座います…?」
マリアが呆気に取られていると レイが自分の分の紅茶を注いでマリアの横へ座ると マリアへ向いて言う
「さぁ 飲んで!マリア!」
マリアが呆気にとられつつ言う
「え?あ、は、はい… い、頂きます…」
マリアが恐る恐るカップに口を付ける マリアが驚いて言う
「あ… お、美味しい… それに とってもいい香り…」
レイが喜んで言う
「良かったー!満足してもらえて!」
レイがマリアに抱き付く マリアが思う
(―えっ!?)
レイが言う
「それに 流石は 生粋の奉者様だよな!マリアは!ミルクティーが好きでも 最初は何も入れないで 飲んでくれるなんてさ!お茶を飲む作法が なってるよ!マリアは!」
マリアが呆気にとられて言う
「は… はい?」
レイが紅茶を飲みながら言う
「けど ここまで来たら もう無理しなくて良いんだぜ!大丈夫!俺 そういう魔法の微調整は得意なんだ!砂糖やミルクを入れたって その分紅茶の成分を凝縮させれば 味も香りもちゃんと引き立って 美味しく出来る!」
マリアが困惑しながら言う
「は…?あの…?」
レイが言う
「遠慮しなくて良いって!マリア!ミルクにもちょっとだけ活性魔法をかけてやれば 紅茶の茶葉と同じ様に 味も香りも引き立つし!…はい!」
マリアの目の前でカップに砂糖とミルクが勝手に入り 小さく魔法の光が弾ける マリアが呆気に取られてからレイを見る レイが嬉しそうにしている マリアが紅茶を一口飲んで言う
「お、美味しい…」
レイが喜んで紅茶を一口飲んで言う
「うん!美味しい!やっぱ 1人で飲むより 一緒に飲んだ方が 1味も2味も違う!すげーウマいよ!マリア!」
レイが紅茶を飲む マリアがハッとして思う
(―ま、まさかっ!?)
マリアが言う
「一緒にって…?」
レイがお茶を飲み干してから言う
「こうやって マリアに お茶をご馳走出来てさ?俺やっと ”マリアのウィザード様”として 認められた気がするよっ!」
マリアが言う
「…え?私がウィザード様を ウィザード様として認めるって…?」
レイが言う
「だって マリア いつも10時と3時のお茶の時間に居ないし 折角会える灯魔儀式の日だって 時間をずらして飲むお茶も 嫌がって逃げちゃうだろ?けど 今日はやっと一緒に飲んでくれた… 時間は お茶の時間とはかけ離れた こんな遅い時間になっちゃったけどな?」
マリアが言う
「…それじゃ いつも言ってた 俺と一緒に…って言うのは…?」
レイが言う
「もちろん!俺と一緒に お茶を飲もう!って!」
マリアが思う
(お茶だった…)
レイが嬉しそうにしている マリアが呆気に取られている
会社
マリアが溜息を吐く
「はぁあ~~…っ」
マキとリナが顔を見合わせてから リナが苦笑して言う
「マリア …駄目だったの?」
マリアが言う
「へ?」
マキが苦笑して言う
「しょうがないよ マリア エリナだって きっと…」
マリアが言う
「あ いや、違うのっ 灯魔作業はしてもらえる事になって 今日仕事が終わったら 早速行く予定 …保育園もその時間なら 子供たちも皆帰ってるから 人目に付かなくて 丁度良いって」
リナが微笑して言う
「なんだ それなら 良かったじゃない!」
マキが喜んで言う
「流石 ”マリアのウィザード様”ー!」
リナが微笑して言う
「マリアの日々の溜息が 報われたのかしら?」
マリアが衝撃を受ける リナとマキが疑問して言う
「マリア…?」
マリアが苦笑して言う
「あ… いや… 何でも…」
リナが言う
「ふふっ 神聖なるウィザード様も 恋人の マリアのお願いには それこそ 神をも恐れず 規則を破っちゃうとか?正に ラブロマンスよね?」
マキが言う
「ホント ホント!これぞ 愛の力っ!」
マリアが慌てて言う
「ち、違っ!」
リナが微笑して言う
「隠さなくても良いじゃない?私たちも 約束通り 燭魔台へウィザード様が灯魔して下さる事は 内緒にしておくから!…と、その代わり?」
マキが言う
「神聖なるウィザード様とは 何処までその神聖なる領域を 踏み外しちゃったのかな~?」
リナとマキがキャァキャァ騒ぐ マリアが赤面して言う
「ちょっ ちょっと待ってっ!本当に 違っ!」
課長が咳払いをする マリアたちが衝撃を受け 黙って仕事に戻る マリアが書類を前に思う
(神聖なるウィザード様は…)
マリアが思い出してから 思う
(想像以上に ”神聖過ぎて” こっちが勝手な誤解をしていました …だなんて …言えない)
マリアが溜息を吐く リナとマキが遠目に見て 含み笑いを合わせる
保育園
エリナが驚き言葉を失う マリアが微笑して言う
「お待たせ エリナ!」
エリナがレイを見て言葉を失った状態からハッとして慌てて言う
「ウィザード様っ ほ、本日はっ こちらの 勝手なお願いを 聞き入れて頂きましてっ!」
マリアが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「エリナ 大丈夫よ そんなに緊張しないで?」
エリナがマリアを見て言う
「マリア…」
マリアが微笑して言う
「それで 燭魔台は何処?」
エリナがハッとして言う
「は、はいっ では ご案内致します…っ!」
エリナが向かう マリアが微笑してから一度レイを見てエリナに続く レイが続く
レイが燭魔台の様子を見る マリアとエリナが少し離れた位置に居る レイが燭魔台の状態に僅かに目を細めてから マリアへ向く マリアが気付きレイのもとへ行く マリアがレイの近くへ来ると レイがマリアの耳元に小声で言う
「燭魔台の状態が 凄く悪いから 修繕を依頼しないと 効力も薄れるって 伝えておいて」
マリアが驚いてからレイを見て言う
「…あ、はいっ」
レイが一度頷く マリアが気付き エリナのもとへ向かう エリナが疑問していると マリアがエリナへ言う
「エリナ あのね…?」
マリアがエリナへ伝えていると レイが燭魔台に手をかざし 杖を構えて魔力を収集しつつ調整をする マリアがエリナへ伝え終えると エリナが言う
「…そうなんだ 分かったわ すぐに修繕を依頼する 有難う マリア」
マリアが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「うん!」
マリアとエリナがレイを見る レイが作業を続けていて しばらくすると 燭魔台に静かに炎が灯る エリナがホッとする マリアが微笑する
マンション レイの部屋
レイとマリアが現れる マリアが言う
「お疲れ様でした!ウィザード様!」
レイが言う
「ああ… 本当に疲れた…」
マリアが呆気にとられて言う
「え?」
レイが言う
「唯でさえ 耐久力の低い燭魔台なのに あんなにボロボロで… ちょっとでも加減ミスったら ぶっ壊しそうで… すげぇ ハラハラしたよ」
マリアが呆気にとられて言う
「そう… だったんですか?とても そんな風には見えなくて …いつもの儀式の時と同じ感じでしたが?」
レイが言う
「そりゃぁ… マリアのお願いで ”マリアのウィザード様”として行ったんだからさ?カッコ悪い所 見せられないだろ?」
マリアが呆気に取られた後 微笑して言う
「ウィザード様… 有難う御座いましたっ!」
レイが部屋へ上がりながら言う
「うん… 何よりキツイ修行になったよ もうやりたくないけど… って事で 俺もう休む お疲れ様 マリア」
マリアが呆気に取られた後言う
「あ、はい お疲れ様でした …お休みなさい」
レイが寝室へ入りながら言う
「お休み~」
レイが寝室に入りドアを閉める