序
描きたいものができたため、投稿させていただきました。
拙い文章かつ誤字や脱字もあるとは思いますが、指摘などどんどん受け付けております。どうぞよろしくお願いします。
ーーー『限界を超えた進化。これが世界を救ってくれると思わないかい?』
青年は、じっと対するさらに若い男を見つめる。
深く深淵を見るかのような黒、しかし、どこか炎ように赤く燃え上がるような瞳がまるで鏡のように映る。
『有り得ませんね。この世界は生まれた時点で、全てが決まっています。たしかに、そう言った例はごくごく稀にありますが、どれもこれもたどり着けてはいません。』
男はぎゅっと拳を握りしめる。
『んー、何故そう言い切れる?』
『歴史が証明しています。かつての英雄たちがそうであったように。』
男は、部屋に飾ってある写真をぐるりと見渡す。
写真は、全身から胸から上など、様々に部屋に飾られており、そこには初代、2代目3代目…とさらに続いている。
『たしかに、そうだね。そういう意味では、僕も"決まった器"でしか無かった。』
青年は、並んだ写真の端に目をやる。
そこには、青年の写真が飾られている。
『俺を含めた歴代の48人の中でもかなりの逸材と言われているが、多分俺では不足だ。』
男はそういうと部屋の窓際に置かれている椅子に腰をかける。
『貴方でもですか?』
男は眉を顰め、青年のほうに目をやる。
不安、焦燥、期待、この男に対する、優と劣の感情が入り混じっていた。
『うん、僕では世界は動かせない。』
青年は、ふと後ろを向き、窓から外を見上げる。
『だけど、そんな不安な顔はしないで。動く時は…来る…。きっとね?』ーーー
ーーーかつて、この世界は人が中心であった。国と国といざこざや内乱など人間同士で争い、憎みあってきた。血で血を洗い、時には同族にすら手をかける、正に醜い戦いを続けていた。ある日までは。
西暦、そう呼ばれた最後の日。
神か或いは悪魔か、天罰か必然か。
異なる世界から来た"異獣"と呼ばれる化け物が世界の大きな脅威となっていた。
異獣は、科学ではおよそ説明が付かないような、大きな力を持って瞬く間に世界を支配して行った。
いがみ合っていた人類は、戦車、銃、核、あらゆる手段で敵を排除しようとした人類であったが、多勢に無勢、僅か1日の間に成す術なく追い込まれていった。
こうして、人間は世界を失っていった。
誰が悪いとか、何が原因とかそういう次元の問題では無い。
人間はここ何万年もの間、頂点に立ち、栄華を誇っていた。
増長、慢心。人間は少なからず、種としての発展を怠っていたのだろう。
そして、目の前に現れた天敵に、何も出来なかった。
もうここまでか、と思われたその時、"光力"という不思議な力を持つ男が、ただ、やられることしか出来なかった人間を守り、異獣たちを倒していった。
そして初めて"失われた世界"を取り戻したのだった。
一方的な支配を許していた人類が、初めて勝ち名乗りを挙げた瞬間である。
人々は歓喜し、希望を持ち、そして願い、思った。
今こそ反撃の時!!!
『人には底力がある。それを引き出せば、異獣に対抗できる。人類よ、今こそ立ち上がれ!そして、失われた土地を今こそ取り返すのだ!!!』
英雄と崇められたその男が"光力"を広め、人類が対抗する術を得た。
狩られる側に回った恐怖を、人間は遥か彼方に置き去りにした生き延びる本能から呼び起こしたのだった。
そして、滅びゆく運命に身を委ねるしか無かった、人が戦い、抗い始めた。
そして、物語は、世界を守り、失われた土地を取り返そうとする人間と世界を征服せんとする異獣が一進一退の攻防を繰り広げる中で生きる1人の少年の物語である。