第2話
私がちょうど卵焼きを飲み込んだ時、
スピーカーがキィィィィィンと
不快な音を鳴らした。
思わず耳をふさぐと、
クラス全員が同じ行動を取っている。
美咲、初回からなんてミスをぶっかましてくれたんだ。
でも美咲はミスさえ笑い話にしちゃうんだから、今頃新しくできた友達と
「やらかした~!」
なんて言って笑っているのだろう。
いいなあ、そのコミュ力。
私も欲しいや。
なんて思っていると。
《本日の放送は、こちらで行います。
放送委員の生徒は、各自お昼休みを過ごしてください。》
スピーカーから、変声機を通したような
耳障りな声が聞こえてきた。
腕のあたりがぞわっとする、
不快な声だ。
私は思わず肩をすくめた。
「ただいま~。」
私が顔をしかめていると、
美咲がスキップで帰ってきた。
「何、今の放送。」
「知らな~い。
なんか放送室に着く前に流れたから、
普通に戻ってきちゃった。」
面倒だったしちょうどいいや、なんて言いながら、美咲は私の膝の上に座ってお弁当を食べ始めた。
美咲は、さっきの放送を何とも思っていないようだった。
「え、ねえ。
さっきの放送、変じゃなかった?」
「変って?何が?」
「いや、その、声もそうだし、
内容も全部。」
「そうかな?まあ、こちらで行いますのこちらって誰だろう~とは思ったけど、別に変じゃないと思うよ?」
「うーん……そうかな……」
唸る私を見て、
美咲はぷはっと笑った。
「瑞季さ、いつも思うけど考えすぎ!
深く考えないで放送聞こうよ。
なんか楽しい企画かもしんないじゃん。」
美咲はそう言って、
また豪快にお弁当を食べ進める。
確かに。
いつも楽しそうな美咲とは対照的に、
私は何かと考え込んでしまう癖がある。
それは、中学生の時に美咲に指摘されて、
初めて気付いたことだった。
その時も、こんな風に
「気楽に行こうよ!
その方がきっと楽しいって!」
と言われた記憶がある。
せっかく美咲がそう言ってくれたのに、
全然気楽に生きれてないじゃん、私。
美咲の言う通り楽しい企画かもしれないのに、なんでも疑ってかかるのは間違っている。
それでも、私のモヤモヤは消えなかった。
誰か分からない人からの放送ということだけでなく、もっと深い何か。
それが、私を待ち受けているような気がしていならなかった。
「何するんだろうね~。
でもなんか、普通に業務連絡的なやつだと思うけど。」
美咲は一人でそんなことを言っていた。
説明的な口ぶりに、私を安心させようとしているのが透けて見えて、申し訳なくなる。
考えすぎるのはいいけど、このモヤモヤは
美咲に悟られないようにしよう。
あまり美咲に心配をかけたくない。
とにかく、次の放送が来るまでお弁当を食べてリラックスするのが一番だ。
そう思った矢先だった。
《これから、レンアイ放送を始めます。》
また、奇妙な声が教室に響いた。