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レンアイ放送  作者: 逢坂まなみ
都市伝説
2/55

第1話

何気ない、何もない日常だった。



勉強も、恋も、部活も、

何をしても普通以上の何にも

なれやしない、平凡な人間。



退屈な日常に飽き飽きして、

でも変わるのは怖くて。



何も出来ぬまま、高校2年生になった。





クラス替えをしてからは、クラスに知っている人はほとんどいなくなってしまった。



見渡す限りの知らない人。



クラス替えから一か月経った今でも、

クラスメイトの顔と名前はほとんど一致していない。



アウェイな空間だな、とつくづく思う。





でも、少しだけ。



嬉しい奇跡があった。




「瑞季~お弁当食べよ!」




親友の安藤美咲と

同じクラスになれたことだ。



友達の少ない私にとって、

中学から同じの美咲と離れずに済んだことは喜ばしいことだった。



フレンドリーな美咲といれば、

このアウェイな空間にも馴染むことが出来る。



友達は増えないけれど、

美咲がいればそれでいいとまで思っていた。




「いいけど、そろそろ自分の椅子持ってきてよ。二人で座るの結構キツイって」



「やだよ~。安藤と渡辺じゃ席が遠すぎて、椅子持ってくるの面倒くさいんだもん」




そう言って、

美咲は私の椅子に半分腰かけた。



一人掛けの椅子に二人で座るのは、

片脚が攣りそうになるくらいだ。



それでも、美咲と一緒にいれるなら、

その疲れも苦痛ではなかった。



決してこの感情は恋とか、

そういった類のものではないのだけれど。



美咲は私にとって誰よりも特別で、

他に変えようのない存在だ。



中学からずっと一緒にいると、

友情と愛情はほとんど同義な気がしてくる。



美咲は、家族も同然だ。





私の狭い机の上で、

美咲は巾着からお弁当を取り出す。



それを見て、私はふと思った。




「美咲さ、今日って放送当番じゃないの?」



「え?何?」



「ほら、放送委員今日からじゃん」



「……あ、」




美咲は思い出したようにあんぐりと口を開ける。




「やっぱそうじゃん、早く行きなよ」



「やだやだやだ!ここで食べる!」



「委員会変わってから今日が初仕事なんでしょ?初回からサボってどうすんの」



「それはそうだけど……」



「分かったならほら!行った行った!」




そう言って私が美咲のお尻を椅子から追い出すと、

美咲はあからさまに不機嫌な顔になって巾着に弁当を戻した。



委員会に友達なんてとっくにできているだろうに、美咲は私といたいらしい。



少し、口角が上がりそうになる。



美咲は自分の椅子に広々と座れるようになった私をキッと睨んで、重い足取りで教室から出て行った。




美咲がいなくなった教室は、

まさに嵐が過ぎ去ったような静けさだった。



ああは言ったけど、

美咲がいなくなると私は一人だ。



美咲がいればそれでいい、なんて、友達が出来ない言い訳でしかないのだろう。




私にとって美咲は特別で、

きっと美咲にとっても私は特別だ。



けれど、他にもたくさん友達がいる美咲にしてみれば、私とは少し特別度が違うのかもしれない。




放送当番だって、

気付かなきゃよかったな……



そう思いながら、私は一人寂しく

卵焼きを口に放り込んだ。



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