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妄想の帝国

妄想の帝国 その26 ヨコハマIR事業誘致説明会にて、新春トンデモ大当たり!

作者: 天城冴

国策IR事業を市民の民意を無視して強行しようとするヨコハマ市、パヤシ市長。世界のカジノの胴元をあつめ、誘致のための説明会を開くのだが…

まだ、正月気分も明けきらぬニホン。そのニホンの大都市の一つであるヨコハマ市では新年から様々行事が行われていた。世界のカジノ業者を集めた大説明会がこのヨコハマ市で、今まさに開催されようとしていたのだ。

「パヤシ市長、あの方が、アメリカ、ベガスの方です。カナガワンケンのクロガン知事と今お話しされているのが中国の業者の方、そちらがシンガポールの…」

と、市役所幹部から説明をうけるヨコハマ、パヤシ市長。

「ほほほ、ニホンのIR候補で、わがヨコハマ市が一番人気だわねー。県知事のクロガン知事も推進派に回ってくれたし。あとは何とか市民を説得すれば、オーケーよねえ。ま、こんなに世界の方々がくるのを見れば市民も賛成派にまわるわよ」

と、IR事業と言えば聞こえはいいが、要はカジノ、博打である。その賭博の胴元を集めてご満悦のパヤシ市長。さすがは統計を誤魔化し、幼稚園・保育園の待機児割童ゼロを実現したようにみせかけただけはある。無茶苦茶な理屈で、市民の実に8割が反対というIR事業をヨコハマに誘致しようと画策中なのである。

「しかし、その、市民が納得しますかね。この間の説明会も市民の質問には答えず、一方的な宣伝というか、民意をまるっきり無視して、市長が喋りたいことをしゃべっただけと批判を受けておりますが」

「ふん、きちんと統計だして、説明したのに、まーだ、そんなことを。ちゃんと調査はしたんですからねえ」

昨年のIR市民説明会では、集計方法の違うアンケートを比べるという荒業をやってのけ、オーサカ市より観光収入がすくないのよん(実はオーサカは国際空港があるため、“ユーがオーサカ市で使った費用は?”という問いに、つい飛行機代込みの旅費を答えてしまったという人が多かったのである)などの、似非統計を基にしたフェイク根拠を乱発し、市民をケムにまこうとしたのだ。しかし、後日、当然ながら渡された資料を反対派市民らが調べなおして、誤りを指摘した。ネット上ではパヤシ市長に対して非難轟々。それでもめげずにIR事業誘致を強行したいのは

「こ、これで、ワタシも次は国政にでるのよ~、政府の、長官のために、政府推進の事業を誘致すれば長官らの覚えも益々めでたく、そしてお金も~」

という、ヨコハマ市民の幸福と利益ではなく、腐敗政府への忖度と事業者からの賄賂が真の目的という、新春にふさわしくない非常にダークな理由からである。

「ほほほ、年の初めの正月気分で、こういう華やかな会を開いて盛り上げた様子を市民に見せれば、IRに対してよいイメージも湧くわよねえ」

と、会場の豪華絢爛というか派手すぎる装飾に目を細めるパヤシ市長。立食形式で各テーブルに並べられた料理はヨコハマ市の名だたるホテルのシェフが腕をふるった和洋中の料理が並んでいる。もちろん中華街の名店の北京ダックも食べるのが惜しすぎる彫刻を施された野菜とともにテーブルの上に鎮座ましましている。

 こんなことに金を使うなら、小中学校にまともな給食をだせ、国保税安くしろという真っ当な批判がでそうだが、市民からの声を聞くことよりも国策IR誘致に熱心な長官の声を聞きたいパヤシ市長、満足そうに壇上に上がり、開会のあいさつを始めた。

「皆様、本日はお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。今年はぜひ、IR事業の発展を願い、大当たりの年にしたい…」

ドーン

下からいきなり衝撃があがった!

不意にパヤシ市長の足元が崩れた!

「きゃああああ」

会場の床が右に左にグラグラとゆれた。

「ひいいいい」

揺れに慣れていないのだろうか、頭の禿げあがた中年太りの白人男性が床に四つん這いになって恐怖に震えている。

ガッシャーン

天井のシャンデリアがぶつかりあい、ガラスの破片が飛び散る。

ガラガラ、ガッシャーン

料理をのせたテーブルが床に倒れ落ちた。サラダに、オードブルに、牛フィレステーキに、パンに、アイスというフルコースが床で混ざり合っている。

「じ、じ、地震だー!」

そう、この日、ヨコハマ市はマグニチュード6という地震にみまわれたのである。

まさに初春から災害の大当たりを引いてしまったパヤシ市長であった。



「ううう、な、なんてことよ~。説明会がおじゃんになっちゃったじゃないの」

かろうじて助け出されたが、あちこちを軽度骨折し、包帯でぐるぐる巻きのパヤシ市長。体はベッドに拘束状態だが、口は相変わらず、自由すぎるほど自由である。

「し、市長、先の地震ではヨコハマ市全体、いや首都圏全体が打撃を受けまして、その」

市民の心配よりもカジノの心配かよ、と内心あきれる市役所幹部の進言を無視し

「カジノの事業の方々は無事だったの!皆さんに何かあったら、大変なのよ、長官もお怒りになるし」

「皆様無事は確認され、すでに帰国の途につかれた方もいらっしゃいます。まあ、建物自体耐震性能はいいです。大揺れしたのは地震の波を逃すためだそうですし」

「え、帰ったの?も、もう一回やるわよー誘致のための説明会!」

「し、市長、それより市の復興が先です。奇跡的に死者がゼロだったとはいえ、建物の倒壊半壊、水道管などのインフラの破損などがあります。今年の予算でまかないきれるかどうかもわかりません」

「それじゃ、来年やれば」

「それが、今度の地震でヨコハマはもちろんニホンに地震が多いことを皆さん、思い出されまして。特にヨコハマの誘致予定地は埋め立て地で、その世界共通語になったツナミ、津波の心配もあるのではないかということで進出はいったん白紙になりました。ニホン国そのものへの誘致も保留にするとのことで」

「そ、それは対策を~」

「しかし、津波や地震対策が万全といえるでしょうか。もしも損害がでて、IR事業の継続不能になったり、予定の利益を出せなかった場合、莫大な違約金がかかります。さらに外国の観光客、それも大物が亡くなったりすれば損害額は国家予算並みになる恐れも」

「ひいいい、そ、そんなああ」

バッターン

パヤシ市長は目をむいて倒れた。

近年頻発する自然災害を軽視し、市民の本当の利益を無視した市長の野望はこうしてついえた。


そして、

「い、イタイ!きっと、IR事業なんか推したから天罰がきたんだ。やはり私は未病研究、病にならない健康な生活のための事業に力をいれるぞ、太陽光発電にもだ」

と足を複雑骨折して入院中のカナガワン県のクロガン知事は隣の病室で固く誓っていた。


ニホンでは、地震、噴火、津波に台風などという自然災害および原発事故などの人災も起きております。このような場所でカジノを作ること自体まさにギャンブルというか博打であり、負けは必須であることをIR事業者の方々や推進の方にはご考慮いただきたいものです。

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