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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ3
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月夜の誓い

「そう言えば・・・まだ名乗っても無かったね。僕はナイル。鬼人族のナイルだよ。よろしくね」


 私がピョーンの高さと、フワッとした微妙な衝撃に漸く慣れた頃、ナイルがニコリと笑顔を向けながら言う。

 確かに・・・ルパちゃんが呼んでたから知ってたけど、自己紹介はまだだった。

 鬼人族かぁ。そう言えばアメリア様の絵本に鬼人族の国が出てきてたっけ?それで鬼って何処かで聞いたような気がしてたんだ。


「私はシーナ。普段はカリバで錬金術師をしてるの。って、これは言ったっけ?」

「うん、聞いた。信じなかったけど。でも、今はちゃんと信じてるよ。さっきはホントにごめんね」

「うぅん。パートナーを連れてない錬金術師なんて、信じられないのも無理ないしね」

「ありがとう。姫は優しいなぁ」


 ・・・・・・・・・・姫ってナニ?


 全く似合わないその呼び方に、なんだか首の辺りがモゾモゾする。


「え、なんで姫?似合わないから止めて」

「どうして?凄く似合ってるのに」

「似合って無いし!恥ずかしいから」

「そう?残念・・・お姫様は恥ずかしがり屋なんだね」

「だからッッ!」

 

 私、からかわれてる!?

 ナイルって、最初の印象と随分と違う。なんて言うか・・・チャラい。


「君は僕のお姫様だよ。いっそここで誓いを立てようか?」

「誓いなんてッ・・・」


 見上げた先には、予想外に優しく真剣なナイルの眼差し。

 あまりにも真剣なその眼に、「誓いなんていらない!」と言おうとした口が止まる。


「鬼人族はね、受けた恩には相応の報いを返すって決め事があるんだ。でも僕は今、何一つ持っていない。だから君に仕えることで、この恩を返したいんだ」

「恩なんて!ルパちゃんの大切な石を譲って貰ったんだから、貰い過ぎなくらいだよ。そもそも私、貴方には何もしてないでしょう?」

「そんな事ないよ。あの男から解放して貰ったし、あの仮面も吹き飛ばしてくれたしね」


 あの仮面って、ナイルが被ってた鬼の形相のやつだよね?まぁ、頬を叩いて吹き飛ばしたのは私だけど、それが恩ってどういう事?・・・もしかして、叩いたこと恨んでる?恩も仇もきっちり返します的な?


「あれは・・・ごめんなさい。痛かった?」

「ん?いや、責めてる訳じゃ無いんだよ?アレは・・・僕が悪かったんだし」


 ナイルの少し気まずそうな声に、私もあの時の事を思い出してしまう。


 ――――――そうだった。私、この人に色んな所を・・・・。


 危ない!今は考えちゃダメだ!

 只でさえ横抱きにされてて密着してるのに、これ以上は心臓と魔力が暴走しかねない。


「今思えばあの仮面、多分あれも善くないモノだったんだと思う。意思を操作されてた気がするんだよね」

「え?そうだったの!?」


 良かった。恨まれては無さそうだし、取り敢えず心臓も魔力も治まってきた。

 でも、あの仮面にそんな効果があったなんて。意思を操作って、それじゃまるで・・・。


「だから、君は僕の恩人だよ。君に、心からの礼と誓いを。この身で君を守り、この心で君に尽くすと誓うよ」


 ナイルの言葉に、考えるのを中断して彼に視線を戻す。

 すると誓いの言葉の後、不意にギュッと強く抱き締められたかと思った瞬間―――――。


 ――――――チュッ。


 デコに、そう・・・オデコにナイルの唇が。


 ――――――――――――――――――ふぁ!?

 ――――――バシャァァァァァ。


 月夜に輝く水滴が、ナイルの跳躍に合わせてキラキラと弧を描いております。

 ええ。それはもう、幻想的な景色ですとも。


 やってしまったぁぁぁぁ!

 久しぶりにバシャァしてしまった!

 だって、だってナイルがデコにちゅうなんてするから。

 雨ならまだしも、この状況じゃ言い逃れ出来ない。


「ッッッ!?―――――水?」


 後ろに流れていく水滴を見送りながら、ナイルが不思議そうに呟く。

 私は咄嗟に、さも驚いた風を装いながら、なんとか言い訳を絞り出したんだけど・・・。


「――――――雨、かな?アレかな?・・・局地的集中豪雨、とかかな?」


 苦しい――――――言い訳が苦し過ぎる!


「――――――ふぅん?」


 水滴を追っていたナイルの視線が、私に戻ってくる。その眼が、何かを探るように私をジッと見つめてきて・・・フイッと視線を逸らしてしまった。


「じゃあ、そう言う事でいいかな?」


 納得してくれた?まだ少し納得してなさそうなその言い回しに、私は押しきるようにブンブンと首を縦に振る。


「本当に?」


 ナイルが確かめる様にもう一度問い掛けてくるので、私は更に力強く頷く。


「うん。良いと思う」


 すると、パァァと笑顔になったナイルが、再び私をギュッと強く抱き締めた。


「良かった!僕の誓い、受け入れてくれたんだね!!」


 ――――――――――はい!?


「これからは、ずっと側にいて君を守るからね」

「ちょっと待って!え?誓い?」

「うん?さっき誓ったでしょ?」


 ――――――――――ソッチの話をしてたの!?

 いやいや待って。ずっと側に居るって何?どーゆー事?

 そんなの駄目に決まってる。折角ルパちゃん達と暮らせるのに。

 アレは、誓いに対して"良い"と言った訳じゃ無いって説明しないと。でも、今それを否定したら、さっきの錬水の話を蒸し返す事になっちゃうし・・・どうしたらいいの!?


「――――――ぅぅッ」

「よろしくね。僕のお姫様」


 そう言ってニッコリ笑ったナイルの笑顔が、何だかニヤリとした悪い笑みに見えたのは・・・私の気のせい?

 あれ?もしかして、これも確信犯なの?

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