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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ 2
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〉コウガ~泰然自若な虎獣人~

 俺が守ると決めた女は、少々厄介な能力の持ち主だった。

 元より変な女だとは思っていたが、恐らくとんでもない量の魔力を有し、類稀な想像力で見たこともない魔道具を創り出す。


 ――――――そして、それを感じさせない危機感の無さ。


 アレは自分が"狙われる存在"だなどと、微塵も理解して無いだろう。

 だが、間違いなくシーナは狙われる。

 その能力を欲する者と、その能力を妬む者に。

 その証拠に、カリバのあの錬金術師・・・アイツはシーナに敵意と殺気を向けていた。

 カリバに戻ったら、どうにかしないとな・・・。


 まぁ、まずは今回の件を解決するのが先か。

 その為に今、シーナが新たな魔法薬の錬成をしている訳だしな。


 しかし、今日は久しぶりにヒヤヒヤさせられた。危険と分かっている教会に一人で突っ込むとは・・・全く、なんなんだ、あの行動力は。

 ――――――それにあの水

 

「なぁ、コウガ」

 ボーッとそんな事を考えていると、フェリオが肩に乗ってくる。

「ナンダ?」

「シーナの錬成の手助けをしたいんだけど、オレじゃ無理なんだ。手伝ってくれないか?」

「ベツに構ワないガ・・・」

 フェリオは、何処と無く悪い顔をして言う。

「そしたらさ!シーナが大釜に材料入れ始めたら、後ろから、こう・・・ぎゅっと抱き締めてやってくれないか?」

 声を潜めたフェリオが、よく分からない事を言ってくる。


 ――――――何故、シーナを抱く必要がある?


 怪訝な顔をする俺に、フェリオが小さな前足を合わせて強請ってくる。

「頼むよ!どうしても必要な事なんだ!」

「・・・???まぁ、ベツにイイが・・・」

 それが錬成の助けになるとは到底思えないが・・・妖精が言うなら、そうなんだろう。


 ――――――それに、やっていいと言うなら、断る理由もない。


「やった!コウガは話が分かるなぁ♪」



 話が纏まった辺りで、シーナが此方に気付いて声を掛けてきた。

「何かいい案でもあったの?」

「ああ!すっごくいい案があったぞ!!」

 どの辺がいい案なのかは分からないが、フェリオは自信満々だ。

「どんな?」

「―――取り敢えず、その大釜に他の材料入れてくれないか?準備するから!」

「――――――わかった」

 怪訝な顔をしたシーナだったが、フェリオに押されて承諾したようだ。


「・・・よし!コウガ、今だ!」

 フェリオに小声で促され、シーナを驚かせないようにそっと後ろから抱き締める。

 それでもビクッと肩を震わせたシーナに、一言詫びを入れようと声を掛けた瞬間・・・。


 ――――――ッッッサバァァァァ。


 ―――――――――水、だな。


 突如として空中、シーナの真上辺りから水が弾ける様に出現した。

 咄嗟にシーナの身体ごと上体を反らして避ければ、その水は狙ったように大釜に注がれる。


 ――――――確かに。問題は解決したようだ。


 それにしても・・・今のは明らかに・・・。

 遅れてやって来たフェリオが、それっぽく水差しを持ってはいるが・・・ソレ、意味あるのか?


 ――――――まぁ、シーナだからな。


  俺が守ると決めた女は、かなり厄介な能力の持ち主だ。

 昨日の雨も、今現れた水も・・・シーナも。

 同じ、いい匂いがする。

 水辺の花の匂いだ。

 シーナの首筋に鼻を当て、スンッとその匂いを感じる。


「―――――ッッッひゃぁ!!」

 ――――――ッッッサバァァァァ。


 ――――――ん?


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