〉ラインヴァルト~生真面目騎士隊長~
予告通り、短いです。
アクアディア王国騎士団、七番隊隊長。
それが私の今の仕事であり、肩書きだ。
七番隊は単独任務に特化し、特殊な任務に就く事が多い。しかし、本来であれば隊長である私が王都を離れる事は少ない。
今回、ナガルジュナの守護をしている十六番隊に参加しているのも、特殊任務によるものだった。
しかし、長期に渡り調査を続けてきたものの、本来の任務の成果はなかなか得られない。
――――そう思っていたのだが、彼女に出会って少しばかり事情が変わった。
――――――カタン。
隣の部屋から小さな物音が聞こえる。
まだ陽が登り始めたばかりの部屋は、それでも朝陽を充分に取り込んで明るい。
――――――彼女も目を覚ましたかな?
その存在を改めて感じ取り、彼女へと思いを巡らせる。
彼女は不思議な女性だった。
謎の多い、と言い換えても良いだろう。
出会った時にも美しい女性だと思ったが、彼女は会う度・・・美しくなっている。
以前は、すぐに消えてしまいそうな儚さばかりが目立った彼女のイメージに、今ではキラキラと輝く水面の様な明るさを感じる所為かもしれない。
とは言え、昨晩、エールと蔓豆を幸せそうに頬張り、アルコールで染まった顔をへにゃりと緩ませる姿は、可愛らしいと表現した方が良いかもしれないが。
まぁ、余りにも可愛らしいその姿に、食堂に居た殆どの者が魅せられていたのは、少し心配でもあるが。
そう言えば・・・躊躇無くエールを呑んでいた事を思えば、彼女は既に成人しているのだろう。
魔力の高い者の寿命は長く、その見た目だけでは年齢を推し測ることなど出来ないとはいえ、流石に驚いた。
時折見せる穏やかで落ち着いた雰囲気を思えば、それも納得、かもしれない。
こうやって考えると、なんとも掴み所の無い女性だと、改めて思う。
大人びて見えるかと思えば無邪気で、慎重かと思えば森へ突撃しようとする程の無鉄砲。
美しく、可愛らしく、無邪気で、穏やかで――――――神秘的だ。
にも関わらず、彼女の自己評価は恐ろしく低いのも不思議だった。
なにより、あの蒼い瞳は紛れもなく稀有であり、誇るべきものだというのに、彼女はそんな自分の眼を隠し、疎んじてすらいた。
その右眼はサファイア、左眼はアクアマリン。まるで絵姿で見たアメリアの聖杯のように美しいというのに。
水が溢れ続ける奇跡の聖杯。私が生まれる以前に消失し、その奇跡を目の当たりにする事は無かったが・・・。
――――――彼女と会う日は、雨が降る。
全くの偶然・・・と言い切るには、昨日道中で見た虹の回数は多すぎた。
とは言え、余りにも荒唐無稽な話だ。
消えた聖杯・・・その再出現を予言されたこの地に現れた稀有な色彩の持ち主。
―――――――――――――――――だが今は、それを考える時では無い。
シーナさんに協力して貰うからには、是が非でも今回事件を解決しなければならないのだから。




