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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ5
218/264

家名

「フフッ。姫が伴侶だって。流石姫が作った魔道具は分かってるなぁ」

「ちょッ!これはきっと誓いの輪の所為でッ!!」

「うん。でも、そういう事でしょ?」

「でもそれは、ほらその・・・」


 確かに、誓いの輪は結婚相手に送るのが一般的だから、それを受け取った時点でそう見られちゃうかもしれないけど・・・。

 口ごもる私に、ナイルはクスクスと笑い声を上げ、再びスマホ画面に視線を落とす。


「あれ?そう言えば名前に家名は入らないんだね」

「え?ナイルって家名があるの?」

「一応ね。まぁ、()()()って言った方が正しいのかな?」

「それって、聞いても?」

「クリスタレス。僕の名前はナイル・クリスタレスだよ」

「クリスタレス・・・綺麗な響きだね」

「・・・ありがとう。姫にそう思って貰えるなら、もう少し頑張れば良かったかな?」

「え?何?」

「ううん。なんでもない」


 一瞬、瞳に寂しそうな色が見えた気がするけれど、ナイルはそれ以上は語らなかった。

 家名が()()()と過去形で話したことから考えれば、何かしらの事情があるのかもしれない。


 ピロリン♪

 データを更新しました


 すると、スマホから通知音が鳴りデータ更新を知らせる。


「あ・・・ナイルの名前がナイル・クリスタレスに更新されてる」

「え?本当だ。どういう仕組みなんだろう」

「多分名前に関しては、私が認識してる名前が反映されるんじゃないかなぁと思ってるんだ」

「姫がそう認識すれば、それが名前になるってこと?」

「うん。さっきのキノコもフラメル氏の図鑑を見たら特徴は掲載はされてるけど名前は特に記載されてなかったの。だから私が見て感じたキノコの特徴が名前として表示されてた。人の名前にしても、人の呼ばれ方って通り名だったり愛称だったりで色々変わるでしょ?それでデータが変わるんだと思う」

「なるほどねぇ」


 ナイルが納得といった様子で頷く隣で、少し強張っていたラインさんの表情も和らいだ気がする?

 記載される情報の詳細が分かって安心したのかもしれない。


「待テ。それだと俺のはどうなっタ?」


 そこで声を上げたのはコウガだった。

 どうって、何が?と思ったけれど、そう言えばコウガも"グェイア"っていう家名があるのよね。


「ちょっと待ってね。えっと・・・」


 改めてコウガのステータスを開いて、コウガに見せてあげる。


「・・・ハァ。ん?フッ・・・」


 コウガは画面を見るなり嫌そうな顔をしたかと思えば、次の瞬間には満足そうに笑って私の眼前にスマホを突き出してくる。

 突き付けられた画面にはコウガの個人情報。

 この前は毒の文字以外なるべく見ない様にしていたから、ちゃんと見るのは随分と久し振りだ。そこには―――


名前:コウガ・グェイア

性別:男  種族:獣人族 虎人

伴侶:シーナ・アマカワ(仮)

年齢:17歳

職業:シーナ・アマカワの護衛兼旦那候補


 あッ!やっぱり家名が追加されてる・・・え?


「俺も伴侶で旦那候補ダ」


 えぇぇぇぇ~!!!?

 ドヤ顔のコウガとスマホ画面を交互に見比べて、やっぱり間違い無いとまた慌てる。

 いや、誓いの輪をしている事を考えれば妥当なのかも・・・いやいや、それにしたって駄目じゃない?


「あぁ~やっぱりかぁ。僕だけなワケ無いよねぇ」


 慌てる私とは反対に、ナイルが気の抜けた声でそう言って首を振る。


「条件はまだ五分だからナ」

「だよねぇ。でも、そしたらラインくんはどうだろうね?」


 コウガとナイルが互いに火花を散らした視線を今度はラインさんに向ける。


「でも、ラインさんは・・・」


 多分、自分の情報を見られたく無いと思う。

 今は少し和らいだとはいえ、ヒトヨミの鏡の機能を説明した時からずっと顔が強張っていたもの。


「そう、ですね。私も気になります」

「え?」


 ラインさんは当然断るものと思っていたけれど、それに反してラインさんの答えは意外なものだった。


「そうでしょ?やっぱり気になるよね。ライン君はまだ伴侶の証を送って無いし」


 しかもそれを後押しするようにナイルが煽る。

 いやいや。()()ってラインさんが誓いの輪を贈る前提みたいに言わないッ!それにラインさんが気になってるのはきっとそこじゃ無いから!

 でも本人が気になっているなら、見せないなんて選択肢は無い。


「それなら・・・」


 私はナイルにしたようにラインさんにスマホを渡して操作方法を教えてあげる。

 これなら自分だけ内容を確認できるし、内容を見て人に見せるかどうか決められるから。

 すると、ラインさんは画面を見て僅かにホッとした様に見えたけれど、それは一瞬の事で直ぐ様その表情を曇らせてしまう。


「どうかしましたか?何か・・・」


 ラインさんにとって秘密にしておきたい情報が載っていたんだろうか?と、心配になって聞けば、ラインさんは苦笑をしてスマホの画面を見せてくれる。


「いえ。少し、残念だっただけですので」

「見ても大丈夫なんですか?」

「えぇ。問題ありません」


 残念って何が残念なんだろうと不思議に思いながら、折角なので見せてもらうと―――。

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