〈ある親子の会話
明けましておめでとうおめでとうございます。
今年も『シーナの錬金レシピ』をよろしくお願い致します! 2023.1.6
「・・・・・・」
「・・・・・・」
シーナとレッキスが去った後、ぎこちなく席に着いたグルバトンは沈黙を貫く息子に、どう言葉を切り出そうかと思案して、結局何も話せずにいた。
そして沈黙を貫くコウガもまた、産まれて初めてその沈黙に居心地の悪さを覚えていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
そうして長らくの沈黙が続き、痺れを切らしたコウガが再び腰を浮かす。
「ッッ!・・・待テ」
そんなコウガに、グェイアは慌てて制止の言葉を投げ掛ける。
「いや、その・・・話を・・・しよウ」
するとコウガは思いの外素直に腰を下ろし、そのまま立ち去ってしまうのではないか、と危惧していたグェイアはホッと胸を撫で下ろす。
しかしこんな所で安心して貰っては困る。
話をしようと言ったからには、しっかりと会話を成立させなければならないのだから。
「その、なんダ・・・」
普段、ミーミル共和国総長として堂々と、そして朗々と話している者とは到底信じられないその姿。
「・・・すまないイ。私は、スイメイもオマエも、守れなかっタ」
「別に・・・守って貰おうとは思ってなナイ」
そう言って頭を下げたグルバトンに、コウガはフイッと顔を逸らしたが、その表情に感情は見えない。
何故なら、母はさておき自分の事に関しては本当に守って貰おうなどと考えた事も無かったからだ。それが普通で当たり前として育ったコウガからすれば、今更そんな事で謝られても全くピンと来ないのだから。
「そうカ・・・」
その拒絶とも見える態度に、グルバトンはグッと拳を握り締め、言葉を詰まらせた。
そんな父親を横目で見たコウガは、自分が思っていた"父"という存在が、決して自分よりも大きな存在では無い事に少なからず衝撃を受け、つい言い繕うように言葉を続けていた。
「・・・俺は別に、辛いと思った事はナイ。だから、別にイイ」
コウガは自分でもこんな事を言うつもりは無かった。
グルバトンを父と認識はしていても、家族としての情など無いと思っていた。
けれど、自分と良く似た男が苦しそうに顔を歪める姿は、見たくなかった。
「そうカ」
「あぁ」
短い言葉。けれど二人の間には、そこから少しだけ柔らかな空気が流れ始めた。
「スイメイの墓にハ?」
「行ってなイ」
「そうカ」
「あぁ」
「・・・スイメイの名誉ハ、必ず取り戻ス。私にはそんな事しか出来ないガ、それだけは必ずやり遂げル」
「・・・あぁ」
コウガの母にとって、コウガが父に認められる事が願いだった。けれど幼いコウガにとって、母が父に認められる事が願いだった。
だからこそ、獣型に変身出来る様になって直ぐに、父の下に赴いたのだ。
母の名誉の回復。それは父が母を認めたという事だ。
母が死に何年も経って今更だが、それでも母の願いが叶うならば、それを否定するつもりは無い。
「お前は・・・この国に残るつもりは無いのだろうナ」
「そうだナ。俺はシーナと離れるつもりはナイ」
「シーナ殿、カ。私から見ても、あの方は特別な方ダ。しっかりと守ってやるとイイ」
「分かっていル」
「そうカ」
「あぁ」
短く、素っ気ない。けれどその遣り取りは確かに親子の会話だった。




