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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ 1
19/264

〉フェリオ

 俺のパートナーはおかしい。

 ここ数日、シーナを見ていてつくづく思う。

 まぁ、異世界人らしいから、それも当然と言えば当然なんだが・・・。


 オレ達妖精はパートナーとなった人間の魔力だけは視える。だからオレもシーナの魔力が視えている。

 一見、シーナが身体に纏う魔力はかなり少ない。

 しかも、シーナは魔力の流れを感じる事が出来ないらしく、錬成する時も魔道具を使う時も、無駄に魔力を消耗してしまう。

 だからオレは、シーナの魔力が枯渇しないように、注意して見ていたんだが・・・そんな様子もない。

 あの魔力はどこから出てくる?


 それに、稀に魔力か妙にざわつく事がある。

 それを強く感じたのは、ラインと馬に乗っていた時と、町に着いた直後。

 纏う魔力が一斉に波立ち、溢れ出る。そんな感じだ。

 あの魔力はどこへ消えた?


 しかしそんな疑問は、すぐに解決される事になる。


 昨夜、影魔獣に襲われ時、それまでシーナの周りに張り付くようにしか無かった魔力が、一気に溢れた。

 それはオレが失った魔力を余裕で補い、その後、3個の魔石を魔結晶に錬成し、とんでもないクオリティのマナポーションを錬成しても尚、余りある・・・違うな、減りもしなかった。要するに、底が見えないんだ。


 オレだってオーベロン級の妖精だ。普通の人間なんて比べ物にならない程の魔力は持ってる・・・ハズなんだけどなぁ。

 オレを呼び出す位だから、見たままの魔力量では無いと思ってはいたが・・・ここまでとは。

 恐らく、シーナが『こんたくと』と言っていた、眼の色を変える魔道具が魔力も抑制していたんだろう。 

 シーナの眼の色が、黒から水色と濃紺に変わっていた事にも驚いたが、むしろ納得といった所か。


 そしてその後、流石に疲れたのか黒虎の横で寝入ったシーナ。

 シーナの溢れる魔力で本来の成人の姿になったオレは、折角だからベッドまで運んでやろうかな、と少しばかりの親切心を出し・・・でも、シーナの隣で寝ていた黒虎が人型に変身するのを見て、止めた。

 何故って?シーナがこのまま目を覚ましたら・・・面白い事になりそうだったからに決まってる。


 そして今、早くに目覚めたオレは、シーナが目を覚ますのをワクワクしながら観察している。


「――――――――ッッッッッなぁ!!!!?」


 すると案の定、人型になった黒虎に驚いたシーナが奇声を上げて飛び起きる。

 しかもマジマジと観察した後で、慌てた様に毛布を黒虎に掛けて、何らやら小声で呟きながら、手で顔を覆ってジタバタと身悶えている。

 なんだあの動き、予想以上に面白い。グッジョブ、オレ。


 でも、面白がって居られたのはそこまでだった。

 感情に影響を受けたのか、シーナの魔力が激しく渦を巻いて波立っていたからだ。

 おいおい・・・魔力暴走とかするなよ?

 流石に心配になってシーナに声を掛けようと思ったのと、黒虎の奴がシーナの腕を引っ張ってその腕の中に収めたのはほぼ同時だった。

 その直後、黒虎がボソリと何事か呟く。

 すると、それまでシーナの回りで渦巻いていた魔力が急激に集り、シーナ達の頭上、丁度オレの目線の高さで球状になった次の瞬間・・・。


 ――――――バシャァァ。

 みずぅぅぅぅぅ!!!?


 パァン!!と弾けた魔力は、そのまま水となってシーナ達に降り注いでいた。

 おい・・・おいおいおいおい。

 今、魔力が水になったぞ?

 単独錬成、しかも魔力錬水・・・そんな事出来る奴、今はこの世界に居ないぞ?

 しかもシーナ自身、自分がやったって気付いて無いだろ、あれ。


「おまッ・・・おぅ、お・・・オレだ!」

 コレ、駄目なヤツだ。周りに知られたら絶対に駄目なヤツだ。

「そこの、ソレ・・・その水差しを倒したんだ!悪かった、すまん!」

 明らかに無理がある言い訳だけど、今はこれで押し通すしかない。

 幸い、黒虎は特に気にする事なくオレの謝罪を受け入れてくれたけれど、シーナは疑いの眼差しを向けてきた・・・いや、お前が張本人なんだけどな?


「ところでシーナ、いつまでそのコウガって奴を素っ裸にしとくんだ」

 とにかく、今は落ち着こう。



 ――――――はぁぁぁぁぁぁぁ・・・。

 シーナに黒虎改め、コウガの服を取りに行かせ、オレは大きな溜め息を吐く。


 この能力は『特別』過ぎる。

 シーナはこの世界にとって、余りにも貴重な存在になってしまった。


 アメリアの再来。そんな言葉が脳裏を過る。

 

 シーナには任せろ!なんて言ったが、実の所妖精界で見られる人間界の光景は限られている。

 人間達の感情、特に嬉しい、楽しい、愛しい、この3つの感情が高まった時、人間界の光景が妖精界の霧に映し出される。

 だから、人間界に幸せが溢れていればその分、オレ達も人間界を見ることが出来る。

 でも逆に、人間界に不安が広がればオレ達は人間界を見ることが出来ない。


 アメリアがいた頃、世界は幸せに満ちていた。

 もっと昔、妖精界と人間界の境界が今よりもずっと曖昧だった頃を思い出す程に・・・。

 けれど、アメリアはいつの間にか居なくなった。

 そして人々は、彼女の事を『聖女』と呼ぶようになった。

 彼女が何処へ行ったのか、妖精界からは()()()()()()()()()()()

 だからオレは心配なんだ。

 もしかしたらシーナもある日突然居なくなるんじゃないかって。

 シーナはオレの大切なパートナーだ。だから絶対、居なくなったりしないで欲しいんだ。

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