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6話 【バァル星系外縁部、転送門(ポータル)周辺宙域】

 海賊と遭遇。



「はぁ、可愛かったなぁ」


 ポータルに向かう間、うわ言の様にそう繰り返すヘリントン。


「その独り言、何回目だよ」

「ああ、彼女こそ俺の天使」


 やばい、本格的にダメだコイツ。


「いや、確かに可愛いけどね?でもゲームの補正も入っているし…」


 一応釘を刺しておく程度の忠告ぐらいはしておこう。しかし彼は。


「うむ、そのCG補正を越えて彼女の内面的美しさが具現化するのだ。まさに美!」

「………」


 俺は何でコレと友達なんだろうか?一瞬ではあるがそんな疑問が頭を過ぎった。


「間違っても本人の前で奇行は止めろよ?確実に引かれるのが目に見えるから」


 このままエスカレートすると犯罪者一歩手前ぐらいになる危うさだ。

 容疑者の友人Kとして取材されるような事態は正直勘弁願いたいものである。


 と、その時だった。

 突如艦橋内にアラートが鳴ると同時に索敵オペレーターから報告。


『警告!本艦隊後方より高速で接近する物体を感知。巡航ミサイル。数は10』

「なっ!?迎げ、いや!回避を優先!」


 俺が率いるクリューデアビスⅡと護衛艦10隻は即座に艦列を広げて回避行動に移行。迎撃しようと回頭した瞬間に横っ腹にぶち当てられるような事態は防ぐべきだろう。


「え?紅夜!?何なんだ!誰だよ!」


 突然の事にうろたえつつも同様に回避行動に入るヘリントンの艦隊。そうこうしてる間にもミサイル群は俺達の居るエリアに到達し。


『ミサイル1から8の回避に成功。9は護衛艦B-1が迎撃に成功』


 そして残りの1つは。


「うわっ!」


 へリントンの短い悲鳴が聞こえた。それと同時に宙域を照らす爆光が一つ。


「やべぇ!こっちの護衛艦に命中した!」


 見るとヘリントンの護衛艦1隻が艦尾の一部をごっそり失っていた。まだ動いているので大破に近い中破という所か。


「誰だコラァ!」


 怒りをあらわにしたへリントンの絶叫。

 俺達はミサイルが飛んできた方向に向かって広域レーダーで最大まで索敵を広げると後方7.5辺りの宙域に怪しい艦隊の反応を二つ確認した。

 しかし俺達の搭載しているレーダーでは対象までの距離が遠すぎる為にその構成内容は不明。

 だがそれらは敵MOBのようなモノではなく、確実にプレイヤーが指揮を執っている艦隊であった。


「あいつ等か?ミサイルぶっ放した犯人は」


 巡航ミサイルの射程は最大で10.0距離、周囲には他の艦影は無し。誰がどう考えてもその艦隊が犯人だ。


「おい!何のつもりだ!」


 へリントンがその艦隊に向けて通信を飛ばした。だがその答えは。


『後方の艦隊、ミサイルを発射。数は10』


 俺はすぐさまヘリントンに向けてコマンドリンクを要請。指揮権がこちらに渡ってくる。


「紅夜、頼んだ!」


 どの艦よりも速く、俺の操作するクリューデアビスⅡが回頭を完了。

 他の艦は回避行動を取りつつ迎撃準備。そして回頭と同時に攻撃準備を終えた俺は後方2.0へと広域殲滅弾を1発だけ撃ち込んだ。


「ヘリちゃん!射線確保して精密射撃!俺が前に出る!」

「あいよっ!」


 相手の正体は十中八九【海賊】だろう。しかも【素行の悪いタイプの海賊】だ。

 俺は問答無用で襲い掛かってくるような連中に対しては遠慮は要らないと判断する。


『目標エリアにて広域殲滅弾起爆。敵ミサイル1から6までの誘爆を確認。7はコースより逸脱。8、9、10は突破。ヘリントン隊3番護衛艦が目標と思われます』


 戦況オペレーターの報告。損傷を負った艦から仕留めるセオリー通りの戦い方だ。


「A-1、B-1、C-1は迎撃、ヘリントン3番艦は回避優先。以降命令あるまで自立行動」

『了解』


 護衛艦が迎撃を開始。ビーム砲による範囲射撃を実行し2つの迎撃に成功。それら攻撃を抜けてきた残りの1つは近接防御のビームガトリングで破壊する。


「ミサイルの数からして相手は10隻前後。当たればいい程度のミサイルでも威力だけはでかいからな」


 巡航ミサイルの一度に撃てる数は平均的に一隻当たり2~3発。

 ミサイルの種類にもよるが、超長距離攻撃が可能で命中率は基本的に中の下程度。

 だがその破壊力は大口径ビーム並みであり、防御力の高い護衛艦であっても当たり所が悪ければ一撃で大破させる事が可能な威力を持っていた。


 しかしこのように説明文だけをみると高性能極まりない武装ではあるが、欠点もいくつか存在している。

 実弾系であるが為に迎撃する事が可能なのだ。おまけに発射する際には艦をその場で静止させる必要があるのだ。

 更に消耗品扱いな上、1発単位で積載枠を圧迫するので搭載出来る数には限りがあった。


 おまけにそれなりなお値段。

 とりあえず『強力ではあるが扱いは面倒。積載に余裕があれば可能な限り載せておけ』というのがこのゲームにおいての巡航ミサイル系の扱いである。


「押し戻すぞ!ヘリちゃんの巡航ミサイル使ってもいいか?」


 しかし俺はあえてそれを使用する選択。


「鬼か!だが分かった。遠慮無くブチかましてやれ!」


 了承を得た俺はヘリントン隊の5隻にミサイル発射を指示。目標は敵艦隊の中央部。


「発射!」


 各艦が巡航ミサイルを5発射出。それと同時にヘリントン隊をその場に残し、俺の艦隊は相手との距離を詰めるべく進撃を開始した。

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