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5話 【カルバルーンの宇宙港で】

 第一印象:妙な口調の女の子。でも可愛い。



「あーもー!君ちょっと無茶しすぎ!」


 入り組んだ路地を駆使して怒りの形相で追いかけてくるモヒカン達をなんとか振り切り、宇宙港まで辿り着いた俺達三人。


「気にしなくてもよい。私は正義を貫いたまでだ」

「いや、その気概は認めるけどね」


 聞けばモヒカンが他のプレイヤーを恫喝している所に偶然この娘が通りかかったのが事の始まりらしい。

 そして襲われていたプレイヤーを彼女が助け、逃がした直後に俺達がやって来て先程の展開になったと言う訳だ。


「まったく、素直に運営に報告すればいいのに。ところでまさかとは思うけど、君はAIじゃないよね?」


 俺のその質問に少女は一瞬考える素振りを見せ、そしてこう返してきた。


「例え私がAIであっても御主らは助けてくれた。そうじゃないのか?」


 まぁ、その通りではある。

 そう思ったからこそ俺はあの現場に飛び込んだ訳だが。


「そもそもこのゲームのNPCに搭載されているAIはもう人に準ずるレベルまで育ちつつある。ならば例え私が人でもAIでも、若しくはヴァルーレであっても関係なくこのゲームを盛り上げるプレイヤーの一人、そうではないか?」


 自信に満ちた表情でそう言う少女。

 つまりこの子は人だろうがAIだろうが関係無く、このゲームを現実の一つとして楽しむと言うスタンスの人間なのだろう。


 ちなみに俺とヘリントンもそう言った思考に対する理解はあるし、それなりにそちら側だという自覚もある。

 そうで無ければこのようなゲームはしないだろう。

 俺とヘリントン、そして少女はそれぞれの顔を見合わせてから。


「そりゃそうだ!確かにその通りだな」

「じゃろ?」

「うんうん、でも流石にヴァルーレと言い張るには色々足りないけどなー」

「余計なお世話じゃ!」


 そうして三人で笑いあった後、彼女は俺達の名前を聞いて来た。


「俺の名前は紅夜、こっちは」

「ヘリントンだ。ヘリちゃんって呼んでくれ」


 俺とへリントンは彼女の手を取って握手を交わす。


「私の名はウェスタナ、フリーで活動しておる。ちなみに極悪な海賊ではないからな?」


 うん、先程の行動を見たらよく分かる。


「無所属なんだ?だったら俺達の居る【ラルフィドローグ】に来ない?」


 そして唐突に彼女をスカウトし始めるヘリントン。


「ナンパかの?」


 ウェスタナがヘリントンを見つめてニヤリと笑った。


「いやいやいやいや!そんなナンパだなんて!」


 否定するも顔がニヤけているぞヘリントンよ。


「でも仲良くなれたら嬉しいのはホント!友録しない?」


 へリントンのその言葉に彼女は少し迷った感じで考えを巡らせ始める。

 ほんの少しの沈黙が辺りを包み、やがて彼女の中で何らかの答えが出たのか。


「…こうして知り合ったのも何かの縁だしの。二人とも登録してみる事にしよう」


 ウェスタナは別画面を開いて登録画面を呼び出し、俺達のデータを書き込む準備を始めた。

 そして準備が終わると同時、俺達の前に『登録を許可しますか?』との確認画面が開く。勿論OKを出して登録完了。


「ふむ、二人ともそれなりの成績を残しておるではないか」


 彼女は俺達の詳細画面を開き、閲覧可能にしている撃墜数やランクを確認。

 それを褒められたと感じたへリントンがウェスタナのデータが表示されるフレンド確認画面を開きながらデレた笑いを浮かべ。


「いや~、それほどでも~って、んん?」


 突然変顔を披露した後、怪訝な表情で固まるヘリントン。


「どうした?」

「いや、ちょっと表示がバグってしまったみたいだ。紅夜の方はちゃんと閲覧出来る?」


 ヘリントンは俺にウェスタナの詳細を開くように言う。

 俺は何だか分からないが取りあえず彼女の閲覧が許されている範囲の詳細画面を立ち上げてみて。


「何だこりゃ?」


 と、俺も思わずヘリントンと同じような顔をしてしまった。



【友人No.28】


【ウェスタナ】 接続中?

【所属】

【レベル】 0

【総撃墜数】д&%#

【被撃墜数】&%#π



「?」


 彼女は俺達の表情に気付き、そしてその反応の元凶を知る。


「えと、何だかちとおかしな事になっておるようだな」


 通常だとフレンド画面には顔の画像も表示されるのだが、彼女の詳細画面にはそれすらも表示されてはいなかった。

 おまけにレベルが0という事もありえないのだ。

 このバァル星系はそれなりの強さが無ければ訪れる事は不可能であるし、何よりゲームの最低レベル表記は1からである。


「…バグ持ちな乙女は嫌いか?」


 ウェスタナの、照れたような悲しいようなそんな表情。だが。


「無い無い!問題無い!超いいよ!ウェスタナちゃん大好き!」


 そんな彼女に対して親指を立てて光の速さでそう答えたヘリントン。

 さり気に大好きとか言っちゃってるし、いや、まぁ、別にいいんだけどね。


「それじゃあよろしくだ。紅夜君、それにヘリントン君」


 こうして、俺達とウェスタナは友人になったのである。


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