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3話 【バァル星、第2都市カルバルーン】

 ショップで聞いた海賊の話。



『いらっしゃいませー!』

『安いよー!安いよー!』


 街の中央通りに響く客寄せの呼び込み。

 そんな街の喧騒をかき分け、俺とへリントンは多くの商店や露店が立ち並ぶエリアを抜けて細い路地へと入る。


 目的はこの路地の向こう。そこに俺達が贔屓にしている装備屋があるのだ。

 場所的には先ほど歩いていた中央通りの隣にあたる道であり、しばらく歩いていると目的の店が見えてきた。

 店先には大安売りの幟が立ち、店の表にまではみ出している雑多なアイテムの乗せられた商品棚。そしてそれらのアイテムを目利きしつつ買い漁るそれなりの数の客の姿。


 その店の名は【船装備の虎ぼる屋】と言う。

 ここは知り合いのプレイヤーが経営する個人店なのだが、いつ訪れてもオーナーは高確率で不在。

 だがその不在店主に代わってこの店を切り盛りしているのが一人のAI店員だ。"彼女"が店番をしているので買い物自体は困らない。

 一部の客に言わせると『このAI店員が店長では?』との事。


 後、そのオーナーが力説するにはこの店は某電気街にあるような"怪しいジャンク屋"と言うコンセプトらしいが、どう見ても魚河岸か駄菓子屋であった。

 俺達はそんな店の奥にあるカウンターに向かうと、そこに配置されていた件のショップ店員がにこやかな顔で。


『らっしゃい!今月は重護衛艦乗りにお勧めな装備、大口径ビームキャノンⅡ型がご奉仕価格!買っとかな後悔するでー!』


 と、今月の一押し商品のセールスを始めてくれた。

 店舗設置キャラの特徴として、艦載AIよりも遥かに“人間”に近い仕草と表情をしている。

 だがなぜ店主がこの店員を関西風キャラに設定しているのかは謎ではあるが。


「俺達は機動艦乗りだから要らないよ、それより機動艦用のエンジン強化パーツと護衛艦用の増加装甲を2つ、それにABP弾頭を2ダースね」

『ほい、まいどおおきにー!』


 そして精算をしている最中、へリントンはこのカルバルーンの街に降りてから気になっていた事を俺に聞いて来た。


「なぁ、今日は海賊っぽいのが多くないか?」

「ん?そういえばここ来るまでにも露店を開いている無所属プレイヤーとかは多かったな、海賊かどうかは分からないが」


 俺は精算を済ませながらそう答える。

 へリントンの言う【海賊】とは特定のロールプレイをする者の一部に付けられた名称であり、その名の通り他のプレイヤーに戦闘を吹っ掛けてアイテムを奪う連中だ。


『んー、今日この街でどっかの海賊の集会があったって話は聞いたで?』


 店員がにこやかな顔で俺達の会話に参加してきた。


「何だよ集会って…」


 へリントンはそう言って呆れ顔。

 俺はその海賊に対して特にこれと言った感情は持ってはいない。

 だがヘリントンはゲームを始めた直後に不運にも初心者狩りを行う海賊と遭遇、逃げ出す事も出来ないまま酷い目にあったらしい。

 それ以来海賊に対していい印象を持っていないと言うのは仕方がない事だ。


「まぁ、海賊にも一応暗黙のルールとかがあるし、今は昔ほど酷くは無いみたいだけど?」


 最初期からのプレイヤーから聞いた話だと初期の海賊はヘリントンが遭遇したような連中が多かったとの事。

 だがいつの頃からか海賊達を纏める"元締め"と呼ばれるプレイヤーが現われ、【海賊魂】なるルールを作って広めたらしい。


 しかもそのルールが世界観と多くのプレイヤーの心に直撃するような内容だった為、あっと言う間に浸透して大半のプレイヤーから『ゲームが濃くなった』と大絶賛。

 運営側もそれを正式設定として採用し現在に至る。


『そうやで、海賊もこの世界の仕様の一つや。そない邪険に扱ってもしゃあないし、基本的にええ人も多いんやで』


 店員はそう言ってにっこりと笑い、そして直後に急に真顔になると。


『でも気ぃ付けや?中にはまだえげつない性根なヤツも残っとるって噂や。もしそんなんに因縁付けられたらすぐに運営に報告、ええな?』

「ああ、りょーかい」


 俺達は店員にそう返して店を出た。

 まぁ、今時そんなヒャッハー的思想な海賊と出会う事自体が奇跡に等しいだろうけど。

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