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11話 【バァル星系外縁部、転送門宙域戦5】

 彼女と、その乗艦と。



「しかし無事とは言え、手酷くやられたようじゃの?」


 俺とヘリントンの艦に並ぶように白い、未確認と表記された艦がゆっくりと接近して来る。


「えっと、ウェスタナさん?その艦は?」

「あー、これはの、その、つまりあれな訳というか…」


 ヘリントンの問いに何故か言葉を濁すウェスタナ。


 未確認と表示されている通りこの艦はゲーム内で知られているどの艦のデータとも一致しない。

 先程見せた驚異的な機動力もこの艦の性能が既存の艦を遥かに超えているというのは明確である。

 そしてそれは恐らくMODでもチートでもない、別の何かを俺達に感じさせるには充分であった。


 と、その時。


『後方の海賊艦隊より巡航ミサイル。数は12』


 クリューデアビスのAIが高速で接近するミサイル群を察知。

 だが迎撃しようにもこちらの残存艦は少なく、回避しようにも損傷による機動力が落ちたままである。

 そして俺達の艦はあと一撃でも喰らうと撃沈されるぐらいに耐久値が減っていた。


 それでも俺は艦に命令を伝える。


「回避優先!脅威度が高いと思われるミサイルのみを迎撃!」


 こうなれば後は運次第、敵の命中率が低い事を祈るのみだ。

 だがそんな俺達の現状を察したのか、ウェスタナが口を開く。


「ここは私に任せるがよい」


 彼女はそう言うと、俺達の艦とミサイルの間に入るよう移動を開始。


「ポッド放出。防御展開」


 彼女の艦から幾つもの小さな物体が放出された。その数は30以上。

 それらの形状は訓練に使われる模擬戦用のポッドに似ており、素早くウェスタナの艦をリング状に囲むよう展開を始める。


「目標ロック、撃て」


 展開が完了すると同時、彼女が短くそう告げるとそれらは一斉にビームを放つ。


「うわっ!」


 宙域を埋め尽くすビームの奔流、そして広がる撃破されたミサイルの爆光。


「すっげぇ…」


 俺もへリントンも唖然としながらその光景を眺め。


『後方海賊艦隊。撤退を始めました』


 残った海賊も戦力の差に気が付いたのだろう。

 その艦隊は形振り構わない方向転換を行い、この宙域からの逃走し始めたのだ。


 だがそれを確認したウェスタナは。


「賢明な判断じゃ。しかし少しだけ遅かったがの」


 それらは突如として虚空から姿を現した。

 まるでヴァル―レの艦が会戦場に登場するかのようなワープエフェクト。

 そうして現れた重戦艦を中心とする50隻以上もの艦隊が海賊の逃走経路を塞ぐような形で展開し。


「分艦隊、敵を滅せよ」


 ウェスタナの号令と同時に嵐のような攻撃が始まった。

 そしてその攻撃の前に3秒足らずで宙域から消滅する海賊艦隊。


「はっはっはー!これが友の窮地に現れた正義の力じゃ!」


 その光景を前に高笑いするウェスタナさん。キャラが掴めない。

 やがて海賊艦隊だった物の発した爆光が収まり、彼女の分艦隊は現われた時と同じように宙域から一斉に姿を消した。



「さて、と、ここで少し残念なお知らせがある」


 一通りの騒動が終結したのを確認後、通信画面にウェスタナの後ろ姿が映った。

 その画面越しに彼女が俺達に向き直る。


「せっかく友達になれたのだが、それは許可出来ないと言われてしまった」

「え…?」

「つまり、フレンド登録から消去って意味」


 全くと言っていいぐらいに訳が分からない。


「そして、私に関する事は秘密にしてくれると助かる」

「ちょっ?え?」


 突然俺のステータス画面が勝手に開いた。

 そしてこちらの操作を受け付けないまま幾つかの画面が開いては閉じ、最後にフレンド枠が開いてウェスタナとの友達登録が消去される。


 それはヘリントンの方でも同様であり、通信画面の向こうでは薄く微笑むウェスタナの顔。


「もし、またどこかで出会う事があればまた友として接してくれたら嬉しい。ではの」


 通信が切れる。

 それと同時に彼女の乗った艦はこの宙域から、いや、ゲーム内から姿を消した。


 海賊艦隊の大量のドロップ品が浮かぶ中、しばし呆然とする俺達。

 システム画面が再び立ち上がり、勝手に課金管理欄が開くと入金音が鳴る。

 確認すると宛先不明の人物から1万円分の課金通貨が振り込まれていた。


「なぁ、紅夜」

「なんだ?」


 ヘリントンが呟く。


「また、会えるかな?」

「さぁ、でも多分会えるだろ、ウェスタナがそう言っていたし」

「そ、そうだよな!うん!そうに違いない!」


 ウェスタナの正体は謎だったが、そう言う事を前にしてもヘリントンは変わらないようだった。前向きなのは素晴らしいと思う。

 こうして俺達とウェスタナの出会いはたった数時間で幕を閉じる事となったのであった。

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