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友達依存症。  作者: 初恋れもん。
1/1

これこそ人間の醜い本来の感情だと言えるだろう。



本小説は本来の人間らしさ。

奥底に眠る黒い感情に着目して執筆させて頂いています。


主人公の葛藤。

友達に依存してしまう恐ろしさ。


彼女達は一体、

何を目指しているのでしょうか。












窓から吹き抜ける風が気持ちいい今の季節。

私、佐藤由美は黒い髪を風に靡かせていたーーー。




真っ黒な髪に真っ黒な目。

低い鼻に一重のぽてっとした瞼。


私は所謂'不細工'という類に入る顔なんだろう。

母親も父親もお世辞にも美形な顔とは言い難い。




華のJKとやらになって2年。

私はどんどん大人びていくクラスメイト達に

取り残されている気持ちで居た。


ーーー窓ガラスに薄く写る自分の姿。





(…本当に可愛くないなぁ。)





溜息混じりにそう心の中で呟く。


これでも幼き頃は「可愛い。」と、

随分と両親に溺愛され育ってきたものだ。




きっと余計に不細工に見えるのは

この内気で暗い性格のせいなんだろう。





「…由美、なーにしてるの? 」

「優樹菜…」

「何か考え事? 」

「ううん。大丈夫。」





今年、同じクラスになって仲良くなった笹原優樹菜。

常にクラスの中心に居るような子で…。


可愛くて色白でーーー。


男女共々に人気の子だ。

そしてこんな私と唯一仲良くしてくれている。



1人ぼっちの私には優樹菜しか友達が居ない。

でも優樹菜は人気者だ。


イケてる男女グループの中でも特に。





「由美は明るいのが似合うよ? ほら、笑って? 」

「え、なんで…」

「…ね? 可愛い。」





むぎゅっと強引に頬を上げられた私。

絶対可愛くないよなコレ。


長年笑っていないせいか

口元が少し痺れる。





「ねぇ、優樹菜ーーー。」

「おい優樹菜! B組の田中がC組の飛鳥に告るってよ! 」





私の小さな声を遮ったアイツ。

クラス1のイケメンらしい。


優樹菜は「ごめん! 」と

私の前で申し訳なさそうに手を合わせると

ソイツの方へ可愛らしく走っていった。






私の心の中は何故かもやもやとしていた。

感じた事の無い違和感。


ーーー私の友達を取らないで。




友達を取られるという恐怖心と

独占欲が波の様に押し寄せてくる。

その波に溺れてしまった私は自分の感情を掴めないでいた。


こんな気持ちになったのは初めてだ。




「佐藤さん? 大丈夫? 」




机に突っ伏せる私の頭上。

少し濁ったような声が聞こえた。


いったい誰だろうか。




「山田さんーーー。」

「宮嶋さん何かあったの? 」




後ろの席の山田みなみ。

少し肥満気味の体型の女の子だ。


そして、ただ少し肥満気味だからという理由で

…いじめられている。




高校生とは何しも多感な時期だ。



でもだからと言って許される事と許されない事がある。

その上で"いじめ"とは何か良く考えるべきだと私は思う。




ーーーとは言え私は山田さんを助けるような事はしていない。

そういった私の様な傍観者は何よりもタチが悪い。



次にいじめられるのが怖いから。

なんて理由を付けて逃げているだけなのだ。




「私は大丈夫だよ。ありがとう。山田さんは大丈夫? 」

「え…? 」

「いやっ、その…」




私の決め込んだ質問に

山田さんは目を大きく見開いた。


そりゃ無理はないだろう。




「私は大丈夫だよ。もう慣れちゃったし。」

「……慣れた? 」

「ちょっと私が痩せれば良いだけなのにさ。なんかごめんなさい。」




ーーー知らなかった。

山田さんの性格もなにも。


私は知らなかった。

ただ、流れてくる噂しか知らなかった。




「ねぇ、知ってる? 山田みなみってさ。

あんな見た目の癖に男に超媚び売るの! 」


「何それウケる! 」


「私の彼氏の事誑かしてさ。本当にアイツうざい。」


「最低じゃんそれ。アイツ調子乗ってんじゃね? 」




トイレで下品に響く声。

つい聞いてしまったそれを

根拠も証拠もないのに私は信じていたんだ。









「やばかった! 」




そう言って私の方に駆け寄る優樹菜。

さっきまで私の事なんて放ったらかしにしてた癖に。


同じく私の机の前にいる山田さんは

優樹菜の事を見て少し微妙な表情を浮かべた。




「えっと……」

「ねぇ、由美。」




山田さんの言葉を遮った優樹菜。


その大きく潤んだ愛らしい瞳で山田さんを

横目に見ながら私の耳に顔を寄せた。


こそこそ話というものか。




「何で山田と話してんの? 」

「私が1人で居るから来てくれただけでーーー。」




わざと山田さんに聞こえるように話す優樹菜。

山田さんは傷付いた様に俯いた。


優樹菜のふわふわな栗色の髪の毛がチラチラと視界に入ってくる。




「由美、山田みたいな奴が良いの? 」

(……いじめる貴方より断然マシ。)




そう、思うのにーーー。

思っているのに、口が上手く動かない。


それはまるで否定するのを止めている様。



嗚呼、きっとこの時既に依存していたんだ。

友達という存在に。


私を認めてくれる存在に。




「山田とか…無理。」

「…でしょ? やっぱり由美は分かってるわ。」




私のその言葉に優樹菜は満足気に笑う。

山田さんは一瞬驚き、

より暗い表情になってしまった。




(……ごめんなさい。山田さん。)




心の中でそう謝りながらも

私の頭を「偉い偉い。」と撫でる優樹菜を見て

私は幸福感で満たされていた。


優樹菜が私を認めてくれているーーー。


それが狂おしい程に嬉しかったんだ。






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