紫贄の心臓 共通①
――約一ヶ月前に私は誘拐されて、見知らぬ海外の研究所に拘束されていた。
「はあ……ここまで来れば大丈夫かな……」
沢山の追手がいたけれど、何故か皆バタバタと倒れていくので外まで逃げられた。
「……誰かいるのか?」
男性が私の気配に気がついてこちらに来ている。
追手とは違うようだし、日本語を話していたから彼に保護してもらったほうがいいのかな?
◆どうしよう?
<保護される>
<少し考える>
どうこうしていると、男性が私の目の前にいた。
「お嬢さん、夜中にこんな場所でどうしたんだい?」
私の上半身あたりに懐中電灯を当て、棘や銃がかすったり泥や葉でボロボロの服装に驚いた様子で声をかける。
「あの、実は……」
「おい、どうしたんだサフレス」
事情を説明しようとすると、彼の友人らしき男性がやって来る。
「何かワケありそうな少女を見つけたんだよ」
「見つけたぜぇ!」
突然発砲され、死を覚悟した。
「あれ……痛くない……」
「大丈夫?」
サフレスと呼ばれていた男性が避けて助けてくれた。
「テメーら、そいつのなんなんだよ!?」
暗くて顔はわからないが、声で研究機関に来た日に見た乱暴そうな若い日本人の男だと思う。
「こんな街中で銃を振り回すとは、さすがは物騒な国だな……」
サフレスさんは銃を持つ相手に挑発した。
「アンタカタギに手出していいと思ってるのか?」
もう一人の男性が銃男の背後にまわって押さえつけて銃を奪い捨てた。
「あの警察は呼ばないんですか?」
「……俺ら留学生だからあまり目立ちたくないんだ」
「それに携帯は海外料金が高いから、スリ防止で持ち歩いてなくてね」
なるほど、やはりここは海外だったのね。
「あの男なら彼が気絶させたからしばらく追ってこないと思うよ」
「銃を持った相手なのに、すごいですね……」
私が関心していると彼等は本題に入ると言った。
「ところで君はどうしてこんな格好で?」
「元は日本にいたんですが一月前に変な研究機関に誘拐されてしまって……」
彼等は顔を見合わせて頷く。
「わかった。とりあえず君は謎の組織に誘拐され、住む場所もお金も無くて困ってるんだね?」
「そうなんです!」
「……誘拐されたわりには平然としてんな」
研究機関ではただ白い部屋に閉じ込められただけなので映画とかにある改造やら薬物投与もなかった。
「どうするサフレス」
「警察に行く所を見られたら成績に響くしなあ……」
彼等は困ってるようなので、自力で行くためにせめて警察のいる地図をもらいたい。
「そうだ。僕達に着いて来てくれないかな?」
「……おいサフレス」
「こんな服で道を歩いていたら危険だ」
――助けてくれたわけだし信用しても大丈夫、というより現状彼等しか頼れそうにないなあ。
「そうじゃなくてさ、知らない男二人に着いて来いって言われて来るわけないだろ」
「え、なんで?危害を加えるつもりはないのにだめかい?」
なにやら二人が言い争いを始めた。
「じゃあどうするんだ……」
「警察の場所でも教えてだな」
「……はあ」
サフレスさんがサラサラと地図を描いて渡してくれた。
■
私は三年前に誰かに銃で心臓を撃たれて、だけど奇跡的に一命をとりとめる。
私が助かると両親と弟、友人が間を開けずにことごとく死んでいってしまった。
両親は突如、衰弱したり友人達は体調を崩して死んだ。
親戚の家をたらい回しになっていると、噂を聞いた研究機関の人達は一ヶ月前に私を誘拐。
「サスペンスドラマの主人公にでもなったみたい」
少女漫画ならいいけど、サスペンスの主人公になんてなりたくないや。
「すみません誰かいますか?」
「早かったね」
――え?
「サフレスさん?」
というかここは警察のいるところじゃないみたい。