王の隠し子 共通① 死人に口無し
――幼い頃の記憶なんかゴミみたいな事しかない。
でも、たった一つだけ良いと思える思い出があった。
『私は泣いてないよ』
理由なく親に頬を叩かれ、公園で一人呆然としていた私。
“なんで泣いてるんだ?”
その少年は私より一回り年上で、開口一番にそう聞いてきた。
普通は迷子かとたずねる場面ではないか、幼い私でもわかっていた。
『あのね……パパもママもわたしがいらないっていうの……』
私は少年に帰る家は公園からすぐに見える高層マンションである事を伝える。
『親が本気でそんな事を言うわけない。きっと何か事情があるんだよ』
少年は希望を持たせようとしたのか、本心でそういっていたのか、あの頃より大人に近くなってから疑問を抱くようになった。
『本当に辛くなったら俺が君を助けにいくよ』
あの少年は悪人ではないが、善人ではない。彼は私に嘘をついたのだから。
「よーし、ちゃんと全員分配ったか?」
「あの……プリント」
「あ、ごめん存在感薄くてきづかなかった」
時たま私は影が薄いやらいたのかと驚かれる。
しかし所謂いじめのような陰険さは感じない。
私がそれを受けていない根拠は、毎度代わる代わるでクラスの中でいじめを受けている人が他にいるからという点。
いつかは私のターンが来ると思うと日々が不安だ。
「最近さ密室に閉じ込められるホラー探索ゲーが流行ってるらしいよ」
「それ漫画で?」
「いやネットゲーム。でも自分がガチでそうなったら無理」
怖いなあと思いながら信号を待っていると、向こうでナイフを持った赤毛の男がこちらを見てニヤニヤしているのが見えた。
「なにあれ!?」
「通報しよ!!」
ギャルが怪しい男を写メったり、警察に電話している。