後編
目が覚めました。
なぜか、そこにはいつも通りの私の自室の風景が広がっていました。
……………………………生きている?
現実を受け入れるのに何秒かかかりました。
◆
状況を整理すると、さっき私は首を吊ったはずなのですが、どういうわけかロープが切れて落ちてしまったようです。
神様、自分が犯した罪にうなされて生きていくことが、私への罰なのですか?
そんなの、辛すぎます。
やり直そう。今度はもっと頑丈なものを使って。
◆
完璧です。これでもう失敗はしません。
早速首に輪をかけて、踏み台にしていた机の椅子を蹴り飛ばしました。
縄が気管を締め付ける感覚が、今はむしろ心地良いです。
1階でインターホンの音が聞こえましたが、無視します。
玄関でお母さんと誰かの話し声がしますが、無視します。
誰かが2階に上がってきていますが、これも無視します。
「綾藤さん‼︎」
部屋のドアを開けて広院寺さんが私の名前を呼んでいますが、これも無視…………したくないです。
「何バカなことしてるの⁉︎」
私は床に降ろされて、怒られました。
「広院寺さん………?どうして、私の家を?」
「血相を悪くして出ていって、心配になったから弓道部の同じクラスの子に聞いたのよ。私、あなたの顔は知ってたけど、名前と住所までは知らなかったから」
「うぐっ…………ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
嬉しさと申し訳なさで、涙が溢れ出てきました。
そんな私を心配そうに、彼女は顔を覗き込んできます。
「ちょっ、一体どうしたの?」
「だって私、貴女のことが好きになって、でも言えなくって、挙句に痴態を晒して、どうしたらいいかわからなくなって………いっそ消えてしまおうって思って……」
「……………………」
つい漏らしてしまった告白に、広院寺さんは黙ってしまいました。
きっと理由を知って、気持ち悪がられたんだと思います。
しょうがないですよね。
彼女はゆっくりと立ち上がって、口に咥えていたせいで私の唾液がついたハンカチを掴み、何も言わずに帰っていきました。
しかし、なんとなくハンカチを愛おしそうに柔らかく持っていったのは、気のせいでしょうか。
その後、部屋にやってきたお母さんに見つかり、自殺はあえなく失敗しました。
私の恋路は、始まることなく終わりを迎えたのでした。
◆
次の日、ホームルームで彼女が転校したと告げられました。
あの後、結局私は死にきれませんでした。
どうやら、消えてしまったのは貴女のようです。
広院寺さんは、まるで矢の如く私の目の前を通り過ぎて行きました。
どうも、壊れ始めたラジオです。
弓道部設定はタイトルと絡ませるためにありました。
恋は必ず叶うとは限りません。しかし、希望が全くないわけでも………?
人によっては中途半端な終わり方だと思いますが、この物語はここで完結させます。
それでは。




